あらすじ
寒気に包まれた檻の中で鮫島は意識を取り戻した――。自殺した同僚・宮本の七回忌で、鮫島は彼の故郷へやってきた。故人の旧友・古山をはじめ、古山の妹・栞、麻薬取締官・寺澤、不良警官の上原、バーのママ・平良マリー……、多くの人々と出会った。そして、その夜、拉致された。誰が何を目的に鮫島を狙ったのか!? 底知れぬ闇が広がる! 新宿から遠く離れた見知らぬ街で、孤立無援の闘いに鮫島は身を投じる。
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寝床で読む小説として、長らく読んでいなかった「新宿鮫」シリーズを選んでみた。でも、これは寝床で読む小説ではなかった。頁を繰るのが止まらなくなって、逆に眠れなくなってしまう。
相変わらず、大沢在昌はうまい。とにかく息もつかせぬ展開で一気に読ませる。
何より共感するのは、保身のために節を曲げることをしない主人公・鮫島の生き方だ。
たとえそれが小説の中だけのことであるとしても、そんな生き方をしている人物がいると思うだけでも勇気づけられる。
Posted by ブクログ
これは、番外編と言っていいでしょう。
舞台は新宿ではなく、自殺した同期の宮本の故郷で全てが始まり終わる。
そもそもは鮫島が拉致監禁された。理由は不明。
鮫島を助けるために宮本の親友・古山が動いたが、鮫島の解放と引き換えに彼が捕まってしまう。
古山を助けるため、鮫島は走る。
地元で手広く水商売をしている古山、彼を調べていた麻薬取締官、鮫島を見張っていた地元警察、そして地元の暴力団。
狭い地域で密接に交差するこれらの関係。
いったい何が起こっているのかわからないまま、宮本と古山の友情のために走る鮫島に胸が熱くなる。
人が死に過ぎて、死んで欲しくない人までも死んじゃって辛いけど、これは男の友情の物語なのです。
いつもの新宿鮫とはテイストが違うけど、これはこれで好き。
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新宿鮫シリーズを読み終えると、当たり前なんだけど「あー、終わっちゃった。」という感じが残ってしまう。終わりは付き物なのだけど、まだ続いてて欲しい気持ちがいつも漂う。
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鮫島のことを知らない数多くの人たちが当然のように鮫島に協力するなんてことは、本来なら現実感がなくて置いてかれそうになるけど、それをさせない鮫島のスター性。彼ならば皆が彼のために尽くしてもおかしくない。灰夜という題名はこの物語にとても合っている。
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珍しくお膝元の新宿が舞台ではなく、自殺した同期キャリアの地元である九州が舞台の作品です。たぶん鹿児島かな?登場人物も新キャラばかりで、おもしろかったです。
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新宿鮫シリーズ第7作。
今回の舞台は新宿を離れ、九州のとある地方都市。鮫島に"手紙"を託した同僚・宮本の法事のためにこの街を訪れた鮫島は、何者かに拉致監禁されてしまう。
これまでのシリーズとは異なり、桃井や藪といった味方がおらず、孤軍奮闘する鮫島の周りに登場する人物が果たして敵なのか味方なのかモヤモヤとしながら読み進めた。
ストーリーは文句なしに面白いが、やはり鮫島は新宿にいる方がしっくりくる。
Posted by ブクログ
鮫島の握る情報がついに明かされるのか!!と、終始ドキドキの緊張感の中で読み進めたのだが、何だか意外な展開に…?舞台も新宿を遠く離れているのでこれは番外編だったのか、あら残念。しかし、この巻面白かった。鮫島のカッコよさは相変わらずだが、その他にも古山、木藤、石崎…そして今泉!!!それにしても、警察小説の中で、これほど優秀な刑事って他にいないよな!次巻も楽しみ!
Posted by ブクログ
「ルパン三世」という、テレビアニメがありますね。ありましたね。
僕は子供のころから、大人になっても、基本的に大好きです。楽しめます。
(と、言っても考えたら10年近く、見ていないかもですが)
あの面白さっていうのは、物語、シリーズ、ヒーローもの、という楽しみ方を考える上で、実に判りやすい例だなあ、と思うのは。
大まか25分の1話完結。
中には、名作、と呼ばれるものもあります。
「雨の午後はヤバイぜ」「脱獄のチャンスは一度」「七番目の橋が落ちるとき」「死の翼アルバトロス」「荒野に散ったコンバットマグナム」...
(狡いようですが、大隅正秋さんのルパンと、宮崎/高畑さんのルパン、僕はどちらも好きです)
なんですが、圧倒的に多数の作品は。
単発の25分のドラマとしては、「なんじゃこりゃ!」というひどい出来のモノが多いんですね。
冷静に考えると。
なんだけど、面白い。
これはもう、話がどうこうというよりも、
「ルパンたち、というキャラクターと出会えれば、とりあえず満足!」
ということなんだと思います。
実はそれが、「1作1作の単独作品としての芸術的完成度」なんぞよりも、娯楽、愉しみとしては、とっても大きいのですね。
(ただ無論、1本1本がオモシロイに越したことはありません。特に、22分ずーっとじゃなくても、部分だけでも)
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大沢在昌さん。新宿鮫シリーズの、第8作。「灰夜」。2001年。
なんとなくシリーズ順に読んでいます。
この「灰夜」は、発表順で言うと、第8作なんですが、内容の時系列で言うと、第7作の「風化水脈」より以前の出来事、という設定だそうです。
(ま、ほぼどうでもいいのですが)
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今回の趣向は、「場所が新宿ではない、ということ」に尽きますね。
ならもう、「新宿鮫」じゃないじゃん!
という気もしますが、まあ、大ヒットシリーズなので。番外編的に。
友人の法事で、とある県(名言されていませんが、どう考えても100%、鹿児島県)で、トラブルに巻き込まれる。
そして、事件が始まってから解決まで、1昼夜の出来事。
もう一つの今回の趣向は、「朝鮮」「北朝鮮」ですね。
鹿児島県は朝鮮とは関わりが深いですね。
※司馬遼太郎さん「故郷忘じがたく候」。名作です。
ネタバレざっくり言うと、
北朝鮮が国家として覚せい剤を日本のヤクザに売っている。
見返りに、日本で作った、「国際禁輸措置になっているハイテク機器」を仕入れている。
実行しているのは、在日朝鮮人。
なんだけど、そんなことに関わりたくない、主人公・鮫島さんとの友情を優先したい、という在日朝鮮人も現れます。
そして、そんなことと全く関わりなく、夜の町で生きている在日の人も。
お話としては、そこに、北朝鮮の特殊工作員、というのも絡んできます。
この辺は、第2作「毒猿」が彷彿としますが。
それに、公安警察、不良警官、暴力団、が絡んできます。
言ってみれば、ここまでの新宿鮫の要素のオン・パレード。オールスターゲームみたいな...。
そして、見事なまでに。
●前半、何が起こったか五里霧中。強烈な謎、サスペンスの中、いきなり監禁されるピンチから、反撃に転じる主人公。
ココはやっぱり面白い。わくわくしますね。
そして、
●あっち行ったりこっち行ったりしているうちに、なぜか何人かがしゃべらなくて良いことを勝手にしゃべって、巨大すぎる秘密があっという間に判明、
そしてそれを何故だか主人公が独りで全部カタストロフな終局導く。
という、ココのところはやっぱり、にやにやしちゃうくらい、割と強引(笑)。
まあ最早、かわいいと言っても過言ではないくらい...。
ただ、結局は。
暴力と理不尽と既得権益、脅迫と恫喝と弱い者いじめがまかり通る世の中で、
それらに敢然と立ち向かい、毎回毎回、死にかけながらも死なない鮫島さん(笑)。
言ってみれば現代の月光仮面の叔父さんなんですが(笑)。
そこに「警察官であり、上流階級(キャリア)であり、しかし放逐され流浪する貴種(プリンス)であり、その特権を振いながらも汚れた街を行く」
という、小説上のリアリズムベースの上を飛び跳ねることで、ただの「正義の味方」に停滞しない生活感が主人公にあります。
結局は、その主人公の新宿鮫さんが、それなりに「らしく」活躍してくれれば、多少の完成度は低くても愉しめちゃうんやなあ、と。
と、言う訳で、ふっと頭をよぎる、
「もはや、ルパン三世状態...」
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ただ、なんだかんだ、読ませどころ、魅力も必ずあるのが、大沢在昌さん。
「灰夜」はやっぱり、地方都市の生臭さ、生々しさ。
そして、在日というマイノリティで、偏見激しい地方で生きる事、というヒリヒリした皮膚感覚。
これは面白かったです。
(危険なゾーンのネタを、犯罪アクション娯楽小説でいじり倒しながら、やっぱりどこか通底音として、大沢さんはリベラルな知性主義なのではないだろうか、と勝手に思います)
Posted by ブクログ
J様後追い第7弾
ほんとにこれまた全く違うストーリーで、ほんとは5をつけようと思ったのに最後の読後感で一個落としてみました。
でも限りなく5に近い。
このシリーズ、悪いやつはとことん悪そうなのもいるけど、警察にも犯罪者側にもとにかく出てくる人物が魅力的。
今回もなんだかんだ言って家族や友達を思いやる人たちであふれていた気がします。
ちなみに、最初読み始めた時はなぜこんな状況に?!というのと、前作でのこともあり天罰だ!と思ってしまったのは女の嫌なところでしょうか。
余分に取っていた休暇も事件ですっかり終わってしまいましたが、晶からの連絡なし。残念。ってこと気づいてるかなぁ。
次回は復活してくるでしょうか?また楽しみです。
Posted by ブクログ
いよいよ鮫島が握る情報が明らかになるかとおもったが、事態は思わぬ展開となった。それぞれの利害、使命、友情をめぐり展開はどこに落ち着くのかと気になりながら読み進めた。悪事を働いていたほとんどの人間は最後に死んでしまったのは鮫島や須貝にとっては残念だったろう。俺としては古山が死んでしまったのが残念であり、後に残る栞やマリーのこれからが心配だ。いつものことだが、鮫島の事件解明能力は何者も及ばないだろう。改めてそう思った。
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新宿鮫らしいカッコ良さが前面に出てますし、謎解きモードで楽しみではありますが、うーん、もうちょっと明るさとテンポの良さがあるといいのだけれど、読むのがちょっとしんどかった。
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あらすじを読み、公安ネタで追いかけられる、とあって、ついに内部抗争劇?!え、でも今さら動くの??とか思ったら、そっちの公安じゃなかった(笑)。公安絡みの事件、てだけでした。いや、まぁ、当時ネタも結構出てきましたけど。
しかし、段々事件が過激になっている気がするというか。鮫島さん、命張りすぎちゃう??て感じがします。人も最近ガンガン死んでしまうし。。
Posted by ブクログ
シリーズ第7作にして番外編?
そう思えるほど、今までと趣が違う。
まず、『新宿鮫』なのに舞台は鹿児島オンリー(あからさまに町の名前は出てこないが、方言や街の描写でわかる)。
そのため桃井も藪も香田も、そして晶も出てこない。どころかあれだけいつも晶に対する心情描写が多かったのに全くゼロ。どこにも誰の名前も出てこない!
そして完全に一人称のみ。
”汚れた町を行く孤高のヒーロー”パターン。
冒頭は(因縁?の)宮本の7回忌参加で始まるが、これは”鮫島”というキャラでなくとも成り立つ作品。
その分、シリーズの面々が好きな人は少々物足りないかもしれないし、ストーリーは展開が早いが、かなり無理もあり、個々の思惑と行動があまりにも極端で、途中のセリフにあるように、『そもそも鮫島が七回忌に来ていなかったら何も起こらなかった』というのも真実。
一気に読み終われるが、シリーズのレベルを期待するとちょっと肩透かしを食らった感がある。
全てが灰に帰する、火山灰の街…ダブルミーニングのタイトルが面白い。