大沢在昌のレビュー一覧
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同性愛の男性が。
ノン気、というのでしょうか、全く同性愛の趣味の無い男性に、惚れちゃうわけです。
惚れらてしまった男は、相手が同性愛者だと知っていて、でも自分は全くその気がないよ、という前提でしか、接しません。
まあでも、それでも良い訳です。
別に隙を見てキスしたいとか触りたいとか、そういう次元じゃないんです。
純愛。
だからまあ、「私は実は同性愛者です」と言わなければ、傍目には、「熱い友情」とでも見えるような。
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2011年の、大沢在昌さん「新宿鮫Ⅹ 絆回廊」。
前作の「狼花」が2006年だったので、足掛け5年。
ちなみに、2016年現在、長編としては未だ新作が出ていませんので、かれこれ、もう5年。
ちなみに、「新宿鮫シリーズ」の、発表のペースは。
①新宿鮫 1990
②毒猿 1991
③屍蘭 1993
④無間人形 1993連載開始
⑤炎蛹 1995
⑥氷舞 1997
⑦風化水脈 2000連載開始
⑧灰夜 2001
⑨狼花 2005連載開始
⑩絆回廊 2010連載開始
となっています(多分。間違ってるかもですが)。
やっぱり、書く方も疲れるし、飽きるんでしょうね。
完成度落としたくなかったら、発表ペースを落とさないと、キツいでしょうねえ。
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「出所した犯罪者が、逮捕に関わった刑事を恨んで、殺そうとする」
という犯罪が、今回の物語の軸です。
それ自体に国際性もありませんし、激しい銃撃戦もない。
ある意味、とっても人情味あふれる小さな事件。
(その上、美女も美男子も出てきません(笑)。初老の犯罪者、初老の刑事、中年の刑事... そして、初老のオカマさん...)
ただそれだけ、の小さな事件にミステリーを謎かけて、人物の魅力をチラ見せしながら見せ過ぎず。
小さな出来事が、人物と人物の間を「セリフ」が行きかう会話の味で十分に堪能できる、というおおらかな自信。
なんというか...「緊密過ぎない緊張感」 「計算されていないから積み重なる説得力」 みたいなものがあります。
そして、いったい何の話なのか?
というのは、後半に進むに従って、輪郭がハッキリしてきます。
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過去に関係しちゃった人間との結びつきとか。
嫌でも止められない人間関係、家族とか。
そういうものに縛られて、行くよねえ。歳を取るにつけ。
まあ、痛かったり残酷だったりもするんだけど、
止められないんだよねえ。それが無いと。
それでまあ、次の世代へ、次の世代へ、因果は巡る...だ、なんて、若い頃には思ってもみなかったけどねえ...
と、まあそういう。
寒い街角で目を伏せてつくため息の、淋しさとアタタカサ、みたいな情景なんですね。
マア、その狙いが素晴らしいか、なんてことは実はどうでもよくて。
その狙いを、こんなに上手く(面白く)描かれると、脱帽ですねえ、と思いました。
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これはもう。
エンターテイメント小説、ハードボイルド小説、大都会での犯罪物語、呼び名はともあれ、そのジャンルで長年小説を書き続けてきた作者ならではの。
大らかで真っ直ぐで、ざらざらした木彫り、鉈彫りみたいな肌触り。さすがですねえ。
「こういうような小説」は、星の数ほどあるでしょうが、
「こういう出来栄えの小説」は、滅多にあるものぢゃないです。本当に。
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脇役の1人に過ぎない暴力団幹部がいて。
途中でチラチラ出てきて、ラストで主人公に自首するんです。
そこでその暴力団幹部が「ま、仕方ない」みたいなことを主人公と語り合うのですが。
こういう何気ない脇役の何気ない場面が、なんだかもう、男臭い映画の名場面のようにキラキラしてるんですよねえ。
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ちなみに、前作で警察を辞めた「香田さん」が、公安関係の下請け機関で働いていて、重要な情報を主人公に持ち込む役回り。
もうこの「香田さん」をめぐる世界は、主人公とのバチバチ敵対感が、さながら「ブラック・ジャック vs ドクター・キリコ」のわくわく感です。
こういう、宿命的に「白すぎるツマラナサ」を背負っている正義の主人公に対して、「ブラック主人公」みたいなキャラクターをちゃんとぶつけてくる。
その人物がまた、たまに憎らしいけど、随分魅力溢れてたりする...。
大抵の面白いヒーローものには、「ドクター・キリコ」が必要なんですよね。
さすが、手塚治虫さん。
(...って、遡ると、手塚治虫さんも大好きで、漫画化までしている、「罪と罰」の中の、スメルジャコフさんに行きつくのか...
恐るべし、ドストエフスキーさん)
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以下、完全に個人的な備忘録。
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新宿署の刑事・鮫島さんの死っている、プロの売人「露崎」。
この露崎さんというのが、そりゃ、売人で犯罪者なんですが、ある意味「プロ」。
軽い感じなんですけどわきまえていて、なかなか好ましい人物。
この露崎さんから、「初老の大男が、警官を殺すために拳銃を買いたい、と、新宿を歩き回っている」と情報が入ります。
今回の出鼻は、鮫島さんがこの謎を追います。
どうやら、長く刑務所に居た、元ヤクザなのではないか。
この謎を追ううちに、とある暴力団と、提携する中国人犯罪者集団の姿が。
そして幾つかの死体。露崎さんも。
結局、謎の大男は「樫原さん」と言って。
かつて、暴力団でもないのに、腕一本で幅を利かせ、子分も抱えていた「愚連隊」の親玉みたいな人でした。
この「樫原さん」は殺人で服役。
中国人の女性との間に息子が産まれていて。
なにかと大変だったので、鮫島さんの上司の「桃井さん」が、中国に帰国させてあげていた。
ところがその後、色々不幸な偶然で。
「樫原さん」は、「桃井さん」が自分の妻を乱暴して中国に送還したと勘違い。
激しい恨みを燃やして出所してきました。
そしてこの、「樫原さん」を慕ってサポートしているのが、
歌舞伎町でバーをやっている、同性愛の初老のオカマさん。
そして、その「樫原さん」の息子は、中国人として成人して、中国と日本とアジア各国を股にかける、犯罪者になっていました。
物語は当然のように。
主人公、樫原さん、その息子、オカマさん、桃井さん、全員が、川が海に流れ出るように、同じ場所に吸い寄せられていきます...。
そして。
逮捕のアクションのバタバタの中で、桃井さんが殉職。シリーズ第1作からの連続出演キャラクター。うーん。名残惜しい。 -
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ネタバレ若者たちの間で流行っている薬「アイスキャンディ」。
錠剤を口にすると、すっと頭が冷静になり、感覚が鋭敏になる。そして何よりも安い。
今までになく手軽でお洒落な覚せい剤の出どころを追う鮫島。
そして鮫島とぶつかる麻薬取締官事務所。
取引の主導権を巡って争う「アイスキャンディ」の卸元と、東京の暴力団。
地方の財閥一族の愛憎。
そして鮫島の恋人・晶の運命。
いくつもの物語が平行して動き出す。
徐々に終焉に向かって収束していく後半は、とにかく続きが気になって、本を置くことができない。
妨害されようと、時間が足りなかろうと、とにかく一歩一歩確実に犯人たちを追いつめていく鮫島。
しかし事態は一歩一歩では追い付けないくらいの急転直下を迎えるのである。何度も。
それでもあきらめない鮫島の姿を読むのは、とてもスリリングで楽しい。
物語の構成も素晴らしいと思う。
ただ、地方財閥の香川一族が…。
こわいもの知らずのやんちゃな次男という仮面の下は、自分に甘く自己中心的な進。
頭が切れて冷静な長男という仮面の下は、若い頃の心の痛手が消えることなく、屈折した愛情を抱えたまま破滅していく昇。
いやこれ、20代ならまだしも、いい大人がこのメンタルはダメだろう。
しかも、思い通りにことを進められるだけの権力を持っているときたら、それは社会の迷惑でしかない。
癒えることのない心の傷を抱えているからと言って、不特定多数の若者に覚せい剤を売ったり、他人の人生を踏みにじったり、家名に泥を塗ったり、何も知らない家族を醜聞に巻きこんだりする権利はない。
自分だけが悲劇の主人公のつもりなのか、いい年をして。
本気で読んでいたから本気で腹が立つ、彼らに。
メインストーリーがいいだけに余計。
それほどに面白かったということなのだけど。
香川一族、嫌いだな。破滅するなら一人でして、って感じ。 -
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ネタバレ前作の「毒猿」では、台湾やくざと台湾の刑事が、プロとして自分の仕事を全うしながらも互いを信頼していたけれども、この「屍蘭」は犯罪の素人の女たちが、鮫島を追いつめていく話。
彼女たち・綾香とふみ枝は、決して誰にも知られてはならない秘密で繋がっていて、しかし必ずしも互いを信頼しているわけではない。
全く対照的な「毒猿」と「屍蘭」ではあるけれど、途中で読むのをやめられないのはどちらも同じ。
ただ、最後まで読んでみてもふみ枝という女がよくわからない。
なぜ綾香のためにそこまで献身的になれるのか。
自分は見捨てられるのではないかという不安を感じながら、綾香を守るために自分の手を汚し続けるふみ枝。
彼女はベテランの看護師で、命を守る人だったはず。
看護師であり、サイコパスだったってこと?
鮫島が組織の中で追い詰められていきながらも、彼女たちを追いつめていく様は圧巻。
王手飛車取りからの逆転。
これが癖になるんだよね。 -
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「ルパン三世」という、テレビアニメがありますね。ありましたね。
僕は子供のころから、大人になっても、基本的に大好きです。楽しめます。
(と、言っても考えたら10年近く、見ていないかもですが)
あの面白さっていうのは、物語、シリーズ、ヒーローもの、という楽しみ方を考える上で、実に判りやすい例だなあ、と思うのは。
大まか25分の1話完結。
中には、名作、と呼ばれるものもあります。
「雨の午後はヤバイぜ」「脱獄のチャンスは一度」「七番目の橋が落ちるとき」「死の翼アルバトロス」「荒野に散ったコンバットマグナム」...
(狡いようですが、大隅正秋さんのルパンと、宮崎/高畑さんのルパン、僕はどちらも好きです)
なんですが、圧倒的に多数の作品は。
単発の25分のドラマとしては、「なんじゃこりゃ!」というひどい出来のモノが多いんですね。
冷静に考えると。
なんだけど、面白い。
これはもう、話がどうこうというよりも、
「ルパンたち、というキャラクターと出会えれば、とりあえず満足!」
ということなんだと思います。
実はそれが、「1作1作の単独作品としての芸術的完成度」なんぞよりも、娯楽、愉しみとしては、とっても大きいのですね。
(ただ無論、1本1本がオモシロイに越したことはありません。特に、22分ずーっとじゃなくても、部分だけでも)
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大沢在昌さん。新宿鮫シリーズの、第8作。「灰夜」。2001年。
なんとなくシリーズ順に読んでいます。
この「灰夜」は、発表順で言うと、第8作なんですが、内容の時系列で言うと、第7作の「風化水脈」より以前の出来事、という設定だそうです。
(ま、ほぼどうでもいいのですが)
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今回の趣向は、「場所が新宿ではない、ということ」に尽きますね。
ならもう、「新宿鮫」じゃないじゃん!
という気もしますが、まあ、大ヒットシリーズなので。番外編的に。
友人の法事で、とある県(名言されていませんが、どう考えても100%、鹿児島県)で、トラブルに巻き込まれる。
そして、事件が始まってから解決まで、1昼夜の出来事。
もう一つの今回の趣向は、「朝鮮」「北朝鮮」ですね。
鹿児島県は朝鮮とは関わりが深いですね。
※司馬遼太郎さん「故郷忘じがたく候」。名作です。
ネタバレざっくり言うと、
北朝鮮が国家として覚せい剤を日本のヤクザに売っている。
見返りに、日本で作った、「国際禁輸措置になっているハイテク機器」を仕入れている。
実行しているのは、在日朝鮮人。
なんだけど、そんなことに関わりたくない、主人公・鮫島さんとの友情を優先したい、という在日朝鮮人も現れます。
そして、そんなことと全く関わりなく、夜の町で生きている在日の人も。
お話としては、そこに、北朝鮮の特殊工作員、というのも絡んできます。
この辺は、第2作「毒猿」が彷彿としますが。
それに、公安警察、不良警官、暴力団、が絡んできます。
言ってみれば、ここまでの新宿鮫の要素のオン・パレード。オールスターゲームみたいな...。
そして、見事なまでに。
●前半、何が起こったか五里霧中。強烈な謎、サスペンスの中、いきなり監禁されるピンチから、反撃に転じる主人公。
ココはやっぱり面白い。わくわくしますね。
そして、
●あっち行ったりこっち行ったりしているうちに、なぜか何人かがしゃべらなくて良いことを勝手にしゃべって、巨大すぎる秘密があっという間に判明、
そしてそれを何故だか主人公が独りで全部カタストロフな終局導く。
という、ココのところはやっぱり、にやにやしちゃうくらい、割と強引(笑)。
まあ最早、かわいいと言っても過言ではないくらい...。
ただ、結局は。
暴力と理不尽と既得権益、脅迫と恫喝と弱い者いじめがまかり通る世の中で、
それらに敢然と立ち向かい、毎回毎回、死にかけながらも死なない鮫島さん(笑)。
言ってみれば現代の月光仮面の叔父さんなんですが(笑)。
そこに「警察官であり、上流階級(キャリア)であり、しかし放逐され流浪する貴種(プリンス)であり、その特権を振いながらも汚れた街を行く」
という、小説上のリアリズムベースの上を飛び跳ねることで、ただの「正義の味方」に停滞しない生活感が主人公にあります。
結局は、その主人公の新宿鮫さんが、それなりに「らしく」活躍してくれれば、多少の完成度は低くても愉しめちゃうんやなあ、と。
と、言う訳で、ふっと頭をよぎる、
「もはや、ルパン三世状態...」
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ただ、なんだかんだ、読ませどころ、魅力も必ずあるのが、大沢在昌さん。
「灰夜」はやっぱり、地方都市の生臭さ、生々しさ。
そして、在日というマイノリティで、偏見激しい地方で生きる事、というヒリヒリした皮膚感覚。
これは面白かったです。
(危険なゾーンのネタを、犯罪アクション娯楽小説でいじり倒しながら、やっぱりどこか通底音として、大沢さんはリベラルな知性主義なのではないだろうか、と勝手に思います) -
Posted by ブクログ
いきなり私事ですが。
過去2~4週間くらいか、ちょっと仕事がばたばたして、落ち着かない時期がありまして。
合間の時間でも落ち着かないし、どこか脳みそが仕事を離れきれない。
誰にでもそんな時期は、濃淡ともあれ、あると思うんです。
そうなると、なんていうか...むつかしい本、読み応えのある本、を読み辛くなってしまうんですね。
でも、一方で、そんな時期だからこそ、いつでもどこでも短時間でも、スマホさえあれば電子書籍で楽しめる「読書」というのは、大切な息抜きで、気分転換。
「アタマ空っぽに、わくわく楽しめるような、男の子的な、娯楽小説を読みたいな」と。
それで、
「新宿鮫シリーズでも読むか!」。
でも、という言葉は大変に失礼なんですが。
これが、ハマりまして。
仕事都合で、けっこう「待ち時間」があったり。
そこは、ぼーっとしてても良かったりするので。
そんな「合間」含めて、するする楽しめて。
割と忙しい中でも、気分転換、日々のヨロコビでありました。
感謝感謝。
僕と同じような、時間を切り売りする会社員労働であれ。
自営業とか、専業主婦、家事仕事であれ。
カラダなり神経なりが、疲れて疲れて、やっと自分の時間が出来たときに。
わずかな時間でも、お気に入りのタレントさんとかが出ている情報番組とか、
お気に入りのチームが快勝したスポーツニュースとか、
そういうのを楽しむ時間って、ものすごく貴重だなあ、と思うんですね。
(そういう時間を、近くに居る人が尊重してくれないと、すごく腹が立ったりするぢゃないですか(笑))
それと同じような感じですね。
それはそれで、素晴らしい、読書の快楽。パチパチ。
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大沢在昌さん、「新宿鮫シリーズ」第5作。「炎蛹」。1995年。
今回は、「三つの事件が錯綜する」という、かなり変化球な手法が特色です。
イラン人絡みの、組織的な集団窃盗団を追い詰める話。
これは、組織はそれなりに潰したものの、首謀者の仙田というなんだか魅力的な中年男はとり逃す。
それから、歌舞伎町の外国人娼婦連続殺害事件。
これは、哀しい身の上の日本人のおっさんが犯人で、犯人側の心理も描かれる。
それから、歌舞伎町などのラブホテルで起こる、連続放火事件。
これは、家庭環境のせいか、女装しての放火行為に走る歪んだ若者の独白も入ります。
それから、日本の稲作に壊滅的な打撃を与えかねない、外国から持ち込まれた害虫の蛹を抑える仕事。
これは、甲屋、という名前の、防疫官が魅力的なゲストとして出てきて活躍する。
割とパラレルに複数の事件を(基本的な関連がない事件を)描くというのは、犯罪捜査職業の人の現実はそうかもしれないけれど、
物語としての「探偵もの」では、ほとんどタブーと言って良いものだと思うのだけど、そこそこ面白く描けています。
なんだけど、大沢さんもこの方式は、この後のシリーズでは一度もやっていませんね。
それに、正直、面白いのは、
●主人公と同じく、「公に奉仕する専門的なシゴト」に、プライドと喜びを持っている、甲屋という防疫官のおっさん。主人公との弥次喜多風の道中記。
(同時に、消防の中の放火捜査官も描かれて、これも面白い)
●外国人犯罪組織に君臨する、ダース・ベーダー的な(パルパティーン的な、というべきか)仙田という男の存在感。
●いつもながら、違法行為に堕ちる可哀そうなヒトの独白的なエンターテイメント。今回は、娼婦に恨みを持つ、惨めな中年男...。女装しての放火に走る歪んだ青年...。
(良く考えたら、「新宿鮫」シリーズを貫くこの手法って、煎じ詰めれば、ドストエフスキーさんの「地下室の手記」、なんですよね)
という三点だと思います。
それぞれの事件の解決への終盤戦は、それなりにドタバタと。
並行して描かれる分だけ、良く考えたら雑なところもちょっとあります。
まあでも、そこを突っ走れる中心線(ヒーロー)がいるから、出来る試みですね。
それでも、ヒッチコックの映画「ロープ」が、彼の最高傑作ではないのと同じで、そんな素晴らしいってわけでもないと思います...。
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前作「無間人形」では、主人公の恋人さん(ロック歌手さん)が、事件に巻き込まれて大いに関係しました。
そこでもう、やりつくした感があったのか判りませんが、「炎蛹」では、それほど絡んできません。
なんていうか、アクセント、というくらいですね。
これはこれで、別段、恋人さんとのラブロマンスにはさほど嗜好の薄い、ハードボイルド志向のおっさん読者の僕としては、大歓迎でした(笑)。
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仙田、という魅力的な犯罪者を作って、
捕まらずにこの作品を終えているんですね。
完全に、「シリーズもの」ということを意識した世界観の作り方。
こういうのは、好きです。楽しめますねー。 -
Posted by ブクログ
新宿鮫シリーズの、第4作。1994年。
直木賞を受賞した作品で、シリーズ最高傑作、という人も多い1冊。
今回の敵は、
「東北の巨大財閥の兄弟が、覚せい剤の販売をしている。
それを卸して貰って捌いている暴力団」
という設定。
ただ、主人公にも読者にも、「覚せい剤を作って卸している大元」はなかなか分からない仕掛け。
だいたい、新宿鮫シリーズの特徴なのですが、読者、次いで、主人公に、仕掛けが全て分かるまで、つまり前半の方が面白い。
後半は、もうちょっと具体的に、つまり個人個人のアクションとか死の危険といった、
「まあまあ、そりゃさ、ゆっくりあわてなければいずれは悪者は捕まるよね」
というレベルのスリルとサスペンスで引っ張られて行きます。
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あと、やはりこのシリーズの特色は「けれん」ですね。
「無間人形」の犯人たちも、一体全体どういう動機で全てが転がり始めたのだか、よくよく考えるとよくわかんない(笑)。
なんだけど、自滅的に麻薬仕事にのめり込んでいくエリート、従姉妹の美女との運命的?な恋愛と失恋の過去、などなどの「けれん」で、なんだか読めてしまう。
(無論、その「けれん」がどっちらけで、読むに値しない、という読者もいらっしゃると思います。それはそれで、人の好みですね。僕はけっこう...ストライクゾーンが広くて楽しめます(笑))
それから、後半の怒涛のアクションと解決が、かなりご都合感があったとしても。
このシリーズが読めてしまう理由の一つとして思うのは、「犯人の側の魅力」ですね。
この辺は、「刑事コロンボ」も「メグレ警視」もそうだと思いますが。
例えば「無間人形」だと、色と欲と恐怖と不安に溺れ死んでいく、財閥の弟くん。
財閥の弟くんに良いように振り回されながら、虎視眈々と逆転を狙って牙を剥く、ヤクザ。
などなど、の、犯罪に加害者として参加してしまう、ヒトの弱さというか、「わかっちゃいるけどやめられない」的な事情と感情。
これがなかなか、滋味深く読ませます。
それから「無間人形」では、主人公の恋人さんが、「主人公の恋人だから」という理由で危険にあって、暴力にさらされるという事件への絡み方をします。
これはこれで、こういったシリーズの場合、「2度も3度もその手を使うと、さすがにドッチラケ」というカードだと思うのです。
でも、恋人さん(インディーズのロック歌手、という設定)の設定を活かして、「地方でくすぶってるかつてのバンド仲間」が、「ヤンキー仲間と犯罪者になっていく」という、それはそれでなんとも哀愁ただよう人間ドラマを作れています。そのあたり、上手いですね。
相変わらず、前半の作りが圧倒的。
覚せい剤犯罪の全貌が見えてくるまでの、霧の中をてさぐりで進むサスペンスは極上でした。
(後半終盤のかなりなご都合性も、いつも通りではあるんですが、ま、それを批判するくらいなら、読まない方が良いのでしょうね)
そして、「踊る大捜査線」や「横山秀夫の世界」と並び、「キャリア、ノンキャリの警察社会」を取り込むことで、「リアリズム係数」を上げているシリーズなのですが、
「無間人形」では「麻薬取締官」という、厚生省管轄の仲間と言うかライバルというか、を描くことで、またまたそのあたりの「リアルっぽさ」を稼いでいますね。
そして、前半のサスペンス、後半のややご都合なたたみかける解決、リアリズムっぽい周辺の描き方...
それらが相まって、「確実にスッキリ、サスペンスとカタルシスを味わえる、安定ヒーローものの小説物語」を作れてるんですねえ。
批判したり限界を指摘するのも簡単ですが、意外にこれ、難しい。
そして、僕もそうですけど、多くの男性読者に需要はあるんですねえ。 -
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新宿鮫シリーズの第3作。1994年。
今回は、
「不法に赤ちゃんを堕胎させ、その赤ちゃんの死体を臓器売買などで海外に不法に輸出して暴利を得ている一味」
が、敵役です。
その一味と言うのは、ボスが美容クリニック経営者の美女。そして、その手先である元刑事、無免許医師、そして看護師のおばちゃんです。
魅力は、なんといっても看護師のおばちゃん。
このおばちゃんが、地味なおばちゃんなんだけど、非情で凄腕の殺し屋、という設定。
そしてこのおばちゃんは、私利私欲が無い。美容クリニック経営者の美女のことを、「娘」のように愛していて、そのためならなんでもする、というキャラクター。
第1作ではヤクザやホモのプロ犯罪者。第2作では、国家に鍛えられた殺しのプロ。
という流れから一気に目新しいカタキヤクです。流石。
前半、まだ敵の全貌が分からず、振り回されながら主人公が徐々に敵を知っていくあたりが、面白かったですね。
その辺りで、主人公の恋人さんもちょこっと事件に巻き込まれます。
そういったやり口も、ほどほどで面白い。
後半は、ちょこっとバタバタしますかね。
といっても、このシリーズを楽しむのであれば、多少のご都合を批判するのは的外れ、なんですけどね。
金田一耕助シリーズもそうなんですが、だいたいにおいて最大の殺人者、最大のドラマを背負った犯罪者が、最期に追い詰められつつも、自殺しちゃうんですよね。
そのあたり、パターンと言えばパターンで、微笑ましい限りです...。 -
Posted by ブクログ
やっぱり読み返すと、ぶっちゃけ左より。リベラル。
現今で言うと、読み手次第かもしれませんが、アンチ自民党。
まあ、犯罪ミステリーの作者っていうのは、ちゃんとしてれば大抵社会派なんですけどね。
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「毒猿」大沢在昌さん。再読。
新宿を舞台に、一匹狼の刑事「鮫島さん」が活躍する「新宿鮫シリーズ」、第2作。
鉄板保障な、男子のエンターテイメント。
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第1作では、
●改造拳銃作りの名人・木津の工房を抑える戦い。
●木津の銃を使った警官殺しの犯人を検挙するための戦い。
●主人公鮫島さんと、インディーズロック歌手・あきらさんとの恋愛関係。
●主人公の初期設定説明、レギュラー陣の初期設定説明。
●警察内の人間関係の初期設定。
という五つの線が主人公周りにあって、
●警官マニアの異常心理者が、犯人なりすまして捜査を混乱させる。
という、別線がありました。
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第2作っていうのは、矢張り、初期設定説明が省かれますから、ちょっと足取りが軽くなりますね。
違法シンナーの売買を現場で抑える、というアクションから始まって、
その犯人が外国人に刺殺される、という事件から、今回は「外国人」なんだなあ、という感。
そして、とある捜査で「異様に殺気のある中国人(台湾人)」をマークしていたら、それは刑事だった。
その刑事は「毒猿」と呼ばれる台湾の凄腕の殺し屋を追って来日していた。
「毒猿」は、恐らく台湾の軍隊、特殊部隊出身で、自分を裏切った台湾ヤクザの親分を殺すために来日しているらしい。
一度狙ったら、ゼッタイに殺す、というプロ。
格闘技、銃器、爆発物、なんでもござれ、だという...。
という導入。
●主人公と、その台湾の刑事の間の、オトコの友情。
●いわゆる中国残留孤児二世の、奈美という女性の話。新宿の風俗店で働いていて、ひょんなことから「毒猿」と知り合い、共に行動することになる。
●「毒猿」に狙われている、台湾ヤクザの親分の、回想、不安、焦燥。
というくらいのシンプルな話の線で、ずんずん進んでいきます。
この回は、「主人公と女性ロックシンガーの恋愛路線」は、あまり前に出てきません。
ハードボイルドに犯罪物語を突っ走って欲しい読み手としては歓迎。
そして、「奈美さんと毒猿くんパート」が、やっぱり秀逸ですね。
不幸と哀愁に満ちた、かわいそうな奈美さんが、毒猿くんと二人三脚を組んでいく、危うい道行には、素直にのめり込みます。
それから、主人公と台湾刑事との会話では、
台湾の複雑な現代史、力で押さえつける政府、などなどが語られます。
台湾ヤクザの回想では、(その人はかつて、台湾政権の走狗として汚れ仕事をしていた設定なので)さらにどす黒い、「権力」の有様が見えてきます。
そして、奈美さんパートでは、単純で複雑で浅くて深い、「差別」の問題も大きく描かれます。
と...いうような枝葉を広げながら。
開き直ったようなハードアクション路線のドンパチが中心に展開されながら。
でも、当然ですが、気持ちのドラマが無いと、ド派手な見世物があっても面白くないですから。
結局のところは、大いに王道な、「男の友情路線」なんですね。
●主人公ー台湾刑事
と
●台湾刑事ー毒猿
という2本の男の友情が、結局最後のドラマになっていき、物事を突き動かしていきます。
ま、やっぱり、こういうのに弱い男子としては、多少の弱点があっても、するすると愉しめちゃうんですねえ...。
ほぼ、イッキ読み。 -
Posted by ブクログ
J様後追い第7弾
ほんとにこれまた全く違うストーリーで、ほんとは5をつけようと思ったのに最後の読後感で一個落としてみました。
でも限りなく5に近い。
このシリーズ、悪いやつはとことん悪そうなのもいるけど、警察にも犯罪者側にもとにかく出てくる人物が魅力的。
今回もなんだかんだ言って家族や友達を思いやる人たちであふれていた気がします。
ちなみに、最初読み始めた時はなぜこんな状況に?!というのと、前作でのこともあり天罰だ!と思ってしまったのは女の嫌なところでしょうか。
余分に取っていた休暇も事件ですっかり終わってしまいましたが、晶からの連絡なし。残念。ってこと気づいてるかなぁ。
次回は復活してくるでしょうか?また楽しみです。 -
Posted by ブクログ
中国人との偽装結婚。
元警察官であった甲賀は、
杜英淑に偽装結婚を依頼される。
偽装結婚あいての 李青珠が 警察に保護される。
そして、逆行性健忘症 記憶喪失になっていた。
そのオンナは、きりりとして、背が高く、武術にも長けていた。
記憶が徐々にもどってくる。
しかし、李青珠は、替え玉がいた。
一体李青珠とは、誰なのか。
武術大会で優勝したことで、実名が分かる。
そのオンナは、上海なまりで、
どんなつながりがあるのか?
上海のボス 老大 が殺される。
引退しようとしている老大をなぜ殺すのか?
殺したのは、誰なのか?殺す理由は?
そして、偽装結婚をする意味はなぜ?
スリリングな展開。
「へび」が 重要なキーワードとなる。
やぶをつついて 何がでてくるのか?