宮城谷昌光のレビュー一覧
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やっと楽毅という大器が燕の昭王のもとで花開きます。中山国での不遇な時期を読んできたので、成功が自分のように感じられました。徳をもって人を動かすということは2300年前の中国においても、現代においても変わらないと感じました。楽毅のように”見事に生きたい”と感じさせられました。
印象的な文章
・失敗を心中でひきずりつづけると、起死回生の気をとらえそこなう。それは戦場における教訓にすぎないともいえるが、大きな勝利とは、相手の失敗につけこむのではなく、自分の失敗を活かすところにある。
・雲のうえに頂を持つ高山に登ろうとするのに、その山層のすさまじさに圧倒され、おじけづいていては何もはじまらない。最初の一歩を踏み出さねば、山頂は近づいてこない。
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ネタバレ古代中国の革命を描く中で、夏王朝の滅亡を桀王ひとりの暴虐に帰すのではなく、体制の限界と見ているのが合理的で、湯王を単なる聖王とも、桀王を単なる悪王ともしていない点に読み応えがある(宮城谷版『三国志』での後漢の衰亡もそのように描かれていたように思う)。
しかし合理一辺倒ではなく、あくまで古代は古代であり、呪術が生きている遠い時代としても書くところに、物語の奥深さと伸びやかさがあった。
主人公・伊尹は、史書において「阿衡」(「はかりのごとき人」)と称賛され、政治における絶妙な平衡感覚をもったひととされるけれど、この小説そのものも虚と実のバランス感覚が卓絶した作品であるのだろうと感じた。 -
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ネタバレ「――四千未満の兵力で十万余の敵軍に勝てようか。
彼此の兵力が隔絶していながら勝利を得た武将とは(中略)太古からいままでの歴史のなかで、戦史を綴るとすれば、太公望ただひとりがそれである。(中略)太公望は十倍の敵を撃破したのである。だが、楽毅の場合は、二十五倍の兵力をもつ敵を迎え撃たねばならない。」
文章が故事を紐解きながら、生き生きと物語を盛り上げる。
山野に王を迎え、迫る趙軍を鮮やかにはらい続けた楽毅であったが、ついに王は隠棲を選び、中山国は滅亡する。亡国の臣となった楽毅が、魏で士官の道を探すことを決めるまでを描く第3巻。
楽毅の周囲から少し離れ、趙国の内紛・沙丘の乱についても描かれるが、脇役ながら、その光景の中で恵文王に従う高信期の忠心がまた美しく映し出される。 -
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ネタバレ宮城谷さんの作品は「孟嘗君」「太公望」「楽毅」などを読んだ。
重耳は、それらの作品に出てきた英雄たちと比べると、かなり地味である。
それでもこの作品が面白いのは、やっぱり展開が素晴らしいからだと思う。
重耳という主人公自身は地味なのだけれど、彼を取り巻く環境や、彼が過ごす時の流れが峻烈極まりない。
なので全く飽きずに、春秋の一時代を、重耳と一緒に駆け抜けているような感覚に浸れた。
上巻ではあんなに小さかった重耳が、中巻から下巻にかけて半端ない苦労をなめて、最後には名君になっている。
報われたね〜、よかったね〜、と安心するとともに、ちょっと寂しくなった。
マイナーなアーティストを応援していたら、いつの間にか有名になっちゃって複雑……あの気持ちに似てる。
重耳の周りにいる人たちも、最前線で活躍したかと思ったら、年をとって、いつのまにか死んでいたり、誰かに殺されたり……
これぞ戦国の歴史という感じ。
その無常さがあるからか、重耳が先生である郭偃に再会するシーンはかなりホロリときました。
この小さな文庫本の中に、時の流れが詰まっていて、すごい密度だなぁと思った。
歴史小説は主人公が超ヒーローというのももちろん面白い。
けれど、歴史を追体験するという意味では、地味な主人公の方が、地道に生きている現代人には合っているのかも。
そんな新しい見方を与えてくれた素晴らしい作品でした。