宮城谷昌光のレビュー一覧
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宮城谷版劉邦物語である。いつものように豊富な資料をベースにディテールが構築された、新しい像を持った劉邦像が描かれている、と言っていいだろう。
上中下巻の連続刊行が予定されている、すでに連載が終了している作品のようだが、この上巻では兵を挙げて官軍を打ち破ったところで物語はクローズしている。
さすがの文章の巧みさであり、近刊で見られるように(一時あまりに淡泊だった描き方から脱却して)物語の温度も高め。歴史的に見ても重要な夫人の呂氏がよく描写されている辺りも、「草原の風」などに比べて物語の持つ濃さを感じさせるところだ。
氏の作品では「長城のかげ」や「香乱記」においてすでに劉邦が現れてはいる -
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中国 戦国時代中期の名将・楽毅の小説。
生き方自体が哲学であり、その言動が彼の生き方そのものを映している。
そんな一本筋の通った潔さ・清々しさに胸を打たれる逸品である。
宮城谷小説には珍しく、物語の冒頭から青年の楽毅が登場する。
序盤の彼は、孫子の兵法を学び、過去の歴史を学ぶ、小国の宰相の子として登場する。暗愚な君主に率いられた中山国でいかに生きるか、悶々と悩む彼の行動にはまだ迷いが多く、正直この時点ではこの小説の魅力に疑問を感じた。
しかし、読み進めるほどに楽毅が成長し、いつしか孫濱兵法を戦場だけでなく外交・内政でも発揮する、実践する哲学者とでも言いたくなる楽毅像が出来上がってくる。
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中国の戦国時代中期ごろの名宰相・孟嘗君こと田文を主人公とした歴史小説。
しかし田文を主人公としているものの、本書は戦国時代という時代全体を広く描き出すことに成功しているように思う。
あくまで周王室を中心としてその下に各国が封じられている体裁を取りつつも、既に周王室の威光は衰えきって存在感がない。
それに乗じて、各国が中国の覇権を奪うべく、(戦争含む)外交を駆使して離合集散を繰り返す「昨日の敵は今日の味方」といった乱世の空気。
また、政府のうちに目を向ければ、権力欲に支配された私利私欲を追求する官吏たちが互いに互いの足を引っ張る陰謀が繰り広げられ、王に取り入るための阿諛追従を行い、真に気骨の -
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ネタバレいよいよ最終巻。
本当に読み終わるのが惜しかった。そして読み終えた今は、とても寂しい。
このどっしり三冊、充実してます。
結局復讐だけではないんですよ。
誰かを助けたいとか、不平等のない世界にしたいとか、そのために旧弊はいらぬと、だから(恨みもあるせよ)王を倒さなくてはならなかった。
つ、続きほしい…!
斉に封ぜられた太公望のその後が知りたい…。(宮城谷さんの語りで)
下巻で登場して一気に私の心を奪った召公セキ。(漢字でない…)
太公望より一回りぐらい若い(設定の)ようですが、とても男気があってかっこいいのです。さすが。
さて牧野の戦いで周が商を破り、天下を獲ると、すぐに武王が崩御してしま