あらすじ
伊尹の狙いは夏と商の和親だったが、時代の流れはこれを許さず、ついに夏と商は激突することになり、夏王朝は滅亡する。湯王は商王朝を開くが、伊尹の仕事はまだ終わりではなかった。(解説・齋藤愼爾)
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開基の功より、守成の勇
紀元前1600年という遥か昔の、文字もない時代の出来事や人間模様を、ここまで完成した物語にしていることに驚嘆する。
また、摯の誕生から商夏盛衰まで、摯の立場や各后のパワーバランスの目まぐるしい変化がうまく描かれているため、最後までだれる部分がなかった。
時代背景にある呪術的思考を、新鮮に感じつつも、そうした一つひとつの思考に共感できる部分があることもまたおもしろい。
それにしても、夏滅亡寸前まで、桀が目覚めなかったのが口惜しい。
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古代中国の革命を描く中で、夏王朝の滅亡を桀王ひとりの暴虐に帰すのではなく、体制の限界と見ているのが合理的で、湯王を単なる聖王とも、桀王を単なる悪王ともしていない点に読み応えがある(宮城谷版『三国志』での後漢の衰亡もそのように描かれていたように思う)。
しかし合理一辺倒ではなく、あくまで古代は古代であり、呪術が生きている遠い時代としても書くところに、物語の奥深さと伸びやかさがあった。
主人公・伊尹は、史書において「阿衡」(「はかりのごとき人」)と称賛され、政治における絶妙な平衡感覚をもったひととされるけれど、この小説そのものも虚と実のバランス感覚が卓絶した作品であるのだろうと感じた。
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資料が少ない中、様々な知識を積み重ねて想像で空白を埋め物語に仕立てる。
三国志なんかとはまた違った中国の話という感じ。
異国で古い時代ということで読むのは少し大変だけどその分、雰囲気は残ってるかな。読む価値のある小説だと思います。
連載ものだったのか章が細かく分けられているのでルビなんかも何度も振ってくれるので最初は戸惑っても慣れるのも早いんじゃないかな。
楽しく読み通しました。
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自作農の主人公がスカウトされて、勤務先で活躍していく話。現代風に言うと。
そう書くと途端に面白くなさそうに見えるのはなぜだろう。
大きなことは、一人ではできない。組織に属する必要がある。
が、組織に属した途端、多くの人は組織の価値観に染め上げられる。
そうした状況の中で、いかに素志を貫徹できるか。
際立った組織人というものに感じる魅力というのは、その一点に限られるんじゃなかろうか。
主人公は組織(商)に属してしまったことで、その清冽さを失った。
けれど、組織の中で彼の持つ理想を実現しようとし、かつ実行したという点で、その生き様には際立ったものがある。
なんだけど、そうなると所謂「普通の歴史小説」って枠になっちゃうんだよねえ。
いやまあ素材的にそうならざるをえないんだけど、上巻の清々しさが強烈な印象だっただけに。
Posted by ブクログ
商王朝立役者の伊尹のお話。
奇跡の人である主人公がステップアップして出世してくのが爽快。
…なのに不遇でもあるため全体的にトーンが暗いのもにおってくるのがまたまたいい。
宮城谷さんはどれもこれも歴史書を読んでるみたいな気にさせてくれるから好き。