冨山和彦のレビュー一覧
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日本の経済力という面を考えるとき、グローバルな企業の競争力ばかりに目が行くが、実際にGDPと雇用の多くを占めるのは、地域に根差したローカルな企業である。グローバル経済とローカル経済とではそこに働く力学が大きく異なるため、それぞれについて正しい見方をする必要がある、というのが本書の骨子だ。二つの経済の大きな違いは、「規模の経済性」が効くグローバルと「密度の経済性」が大きな意味を持つローカル、ということができる。
グローバルで競争する企業は、グローバルで「規模の経済性」を得るため激しいシェア争いを勝ち抜くことが必要であり、そのために経営者は正しく経営資源を競争優位性を持つ事業に集中させることが必要となる。電機メーカーをはじめとする日本企業はこの選択と集中ができずに不採算事業とともに沈んでいった企業が多かったと指摘する。日本政府のこのフィールドでの役割は、そういったグローバル企業が競争しやすくするための規制緩和を徹底的に行うことである。
課題となるのは優秀な人材の育成や誘致である。著者は、グローバル企業が活動する理想の場としてシリコンバレーを念頭においている。グローバルな競争においても起業が重要で、その数を増やすために、優秀で高い意欲を持つ人にとって起業することが有利となるような社会になるべきだと考えている。著者はよい傾向にはなっているとして、「東大を出て日本の安泰な企業に行きたがるのは、東大の中では二線級の人たちだと言われるようになった」という。こういった人材がいったん外資系コンサルファームに行き、その後若いうちに起業するものも多くなっているという。著者は自らの成功体験を背景にした高いエリート意識を隠さないが、優秀なトップクラスの人間はグローバルで勝負をするべき、という発想がある。
一方で、これからの日本はローカルをどのようにしていくのかが国家としてはもっとも重要な事項となる。これをグローバル企業の競争モデルと混同してはいけない、というのがこの本が他の類書とは異なる主張をしているポイントだろう。ローカルにおいては集約化と穏やかな退出を可能にするための規制作りが重要事項となる。グローバル企業の最重要KPIは資本効率性で、ローカル企業の最重要KPIは労働生産性であるという指摘がそのことをよく表している。
バス運航事業などのローカルの事業体では、競争事業者は実質上存在しない。グローバルな事業とは異なり、営業地域が異なるバス会社同士は、同じ事業を行うにも関わらず、互いに競争関係にはない。そういったローカル企業の例としては、他にいくつも挙げることができる。例えば、地方のケーブルテレビも同様である。そのようなローカル企業の場合、経営の良し悪しはオペレーションの効率性に依存する。しかし、ローカルにおいては競争がないから効率性が悪い企業もブラック企業として生き残れてしまう。それは国家にとっても地域社会にとってもよくないことである。この解決策として、サービス業の最低賃金を上げることで、効率性の悪い企業が音を上げて効率性のよい企業や経営者に任せるところまでいかせるべきだという。同時にそのときは、ソフトランディングが可能なような規制を整えることが必要であるという。地域交通機関、医療介護、保育といった公共サービスにこそこの考えが当てはまる。補足として、信用保証制度による過大な債務規模が、これまで一生懸命に中小企業をつぶすまいとしてきた結果であり、つぶれるべき企業が生き残っている状況が作り出されている証拠でもある。
著者は、地方ではコンパクトシティ化を進めることを説くが、これは集約化であるとともに限界集落からの退出をどうやって穏やかに進めるのかという話である。鉄道の駅と主要バスターミナルの駅に駅前商店街を復活させることで、モビリティの問題なども解消する(バス会社も効率的になる)。冨山氏は、みちのりホールディングスという東北・北関東地方を中心としたバス運営会社の経営者でもある。地方では雇用はなくなっていくのではというイメージがあるが、実際には地方から先に人材不足が始まっているという。実際に、みちのりホールディングでも常にバス運転士の不足に泣かされているという。その上で、人手不足対策を「労働生産性の向上」「女性と高齢者の活用」「外国人の雇用」の順番で考えることが重要であると指摘する。日本社会のシステムは移民に対しては脆弱であるため、むやみに外国人の受け入れを進めるべきではないのだという。
著者は多くの企業再生に携わったが、旅館街の再生の話など印象深いものがいくつもある。カネボウやJALのリストラでは、人員整理に手を付けることに対して躊躇はなく、実際に多くの社員が再就職できたという(実際にリストラに会った人はこれを読んでどう思うかというのは気になるが)。一方、ローカル企業においては、地域に根ざすその人の人生が破綻しないようにものすごく気を遣うことになったという(この時点ではまだ地方でも人余りの問題があった)。また、日本の大企業の企業再生に関わった著者の指摘する日本企業の問題点としてダイバーシティの欠如を挙げていることが印象的である。「地頭が良い、地頭が悪い、知識がある、知識がないということで、意思決定を間違える企業はほとんどない。ガバナンス上の大きな過誤は、ほとんどが人間の性から生まれている」というのは、グループシンクや過度の忖度などが大企業の中で生じがちなことから示唆的である。
この本を読んで気が付いたことのひとつは、通信事業者というのが極めてローカルの世界のビジネスであるということだ。技術がグローバルになり、端末も世界で売られているものと同じものとなり、インターネットというグローバルな世界との接続を担うことからグローバルの世界のビジネスをしているのかと無意識には思っていた。しかし、競争環境という点を見ても、Verizonやチャイナテレコムと直接競争するわけではないということからもわかる。そうやって見ると、違ったふうに見えることもあるかもしれない。その意味でも役に立ちそうな本である。 -
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著者は、産業再生機構の元COO。この組織の運営を引き受け、倒産した起業の経営及び再生に従事してきた。この経験からの提言だけに非常に迫力があり、最近メディアで人気になっている経済アナリストや、経済学者、元大臣だった作家などとは、まったく重みが違う。 特に、「ゲマインシャフト(地縁や血縁で深く結びついた伝統的社会形態。日本的)」と「ゲゼルシャフト(利害関係に基づいて人為的に作られた社会。アメリカに代表される。)」との対比からの日本の進むべき方向や優位性に対する言及は、マネージメントの端くれである自分にとっても非常に重要な示唆であった。この話から思い出すのは、「民族は、それを偉大にした特性により滅びる」との塩野七生の言葉である。確かに今の日本企業、特に大企業は、「和(悪く言えば、シガラミ)」によってがんじがらめ。残念ながら、我が社もその例に漏れず、日々社内調整に莫大な時間が浪費される。このような悩みをお持ちのビジネスマン諸氏よ、この本を読み、あなたの組織を変えよう。
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ネタバレ最近感じている、「何となく世界ってこんな風に動いてる?」が活字化されていて、すっきりした。ただローカルに対する思い入れは、筆者の現在の立場もあり、やや強すぎるように思う。海外現地法人のローカル化は、新興国では筆者が言うほど進んでおらず(それが弱みであるといえばそうなのだが)、それに一時的にでも対処できる人材(経営×英語or現地語×技術)のニーズは高い。彼らは中継ぎで、世界ランクが多少低くても構わない。そういった人材すら確保できていない日系大手企業は、今後のあり方が求められていると思う。
以下内容メモ
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これからは、デジタル×ローカル×シリアスの世界。
第一期:IBM→wintel(コンピュータ)
第二期:ソニー→アップル(AV、通信)
第三期:IoTがリアルな全産業へ
今後起きること
ビジネスサイクルの短命化
製品・サービス・機能の標準化・モジュラー化
スマイルカーブ現象
(バリューチェーンの真ん中は儲からない)
小さいこと若いことの優位性向上
※疑問)シリアス領域でも??
→経営力の時代へ
これからは限界費用ゼロ→完全競争へ
スイッチコストないため広告モデルも市場原理へ
サイバー空間で完結するネットビジネスの終わり
(唯一ライブコンテンツ配信はコト消費社会なので伸びしろあり)
日本は少子高齢化で人手不足のため、AIで生産性をあげても反発されない稀有な国。既に製造業はカンバン方式などで生産性が高いため、サービス業に効果を見込む。
AIはERPのように皆が使い始める分野なので、使わないと取り残されるが、自社開発は時代遅れになる可能性あり。
先端技術領域はアカデミズムとの連携&投資機会のポートフォリオ化・管理が必要。過去を見ると、製薬業界の再編が参考になる?
自動車はモジュラー化、デンソーもボッシュのようにティア0.5化するべき。
精度と耐久性が必要な分野は長年のノウハウで材料技術へ行き着くため、中国よりドイツや日本に利あり。
オープンで不連続なイノベーション(ソフトウェア)の世界と、クローズドで蓄積的なイノベーション(ハードウェア)の世界の統合がキー。
また同時に、グローバル企業とローカルチャンピオンとが手を組むことになる。
会社の枠を越えたオープンイノベーションスペースをつくれるか?ベンチャー、大企業、研究者…。
日本の組織が変わるのは諦めたとき。外資系経営者の経営Whatの追求は企業文化の変革にはならない。
企業の中央研究所はクローズドなので、大学に立場を奪われ、産学連携が今後の鍵になる。
AIによってレポート作成は容易になり、中間管理職の仕事は減るため、ローカルな中小企業の経営陣にシフトしていくべき。 -
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巨人と西武じゃないほうの、「GとL」に関する発言で話題になった、おなじみIGPI(経営共創基盤)の冨山和彦さんの一冊。
GとLに、続いて今回はC(カジュアル)とS(シリアス)という軸で異質な2つの領域をわかりやすく解説し、両者がいかにAIと関わることが今後良い結果を生むか等についてわかりやすく解説されていました。
GとLにしても、CとSにしても、どちらがよくてどちらがわるいという話ではなく、そのいずれもがあってこそ世の中はうまく回るということで、私はこれからもLの世界で生きて行くわけでございます。
付箋は、なんと大量の46枚付きました。 -
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ネタバレ変革のリーダー、今必要とされているリーダーとはどのようなリーダーなのかについて、語られた本。
グロービスで学ぶOBHの内容とも整合しており、非常に学びが多く、良い方向性を示してくれる良著。
<メモ>
・現場に近い情報は課長クラスが圧倒的に持っている。上部構造では決められない難しい問題ほど、現場レベルで決められる場合が多い。
・差を生むのはマインドセットの違い。
・北欧は福祉に厚い半面、自助の精神を持つことを子供の頃から教え込まれるのが普通。公助は厚いが共助が縮小し、人々の孤独は高まっている状態。共助が厚い日本とは根本的に異なる。
・ミドルは事業のマイナス面をボディブローのように撃ち続けることが重要。これが効いてきたところで最後の一打を放つ。これは外圧を使ってもいい。銀行や経理部、マスコミなど。社会の力を借りながら、社内的には一生懸命説得を続ける。ボディブローが効いていない段階で外圧を使ってもあまり効果がない。
・合理的思考の基本となるフレームワーク
1 客観的事実の認識:その主張の背景事実を把握する
2 主観的事実の理解:関係各社の立場の違いや主張の裏にある真の目的関数、価値選択を理解する
3 価値・規範の選択:その中でより本質的に重要な目的、価値を考える
4 規範に基づく事実評価:価値を実現する手段やその価値規範に照らして背景事実を評価し、各人の主張に根拠があるか否か論理矛盾や事実との齟齬がないか分析する。
5対策提示:主張の当否を判断し、否であるならば、未来に向けた価値実現のためにより合理的で有効な代替策を構築提示する。
・過去の事象の評価はその評価が目的ではなく、未来に向けた有効な対策を講じる材料として評価すべき。
・意思決定にはタイミングが重要、不可逆的な意思決定は先送りすべきかどうかの現時点で決めるかどうかという意思決定自体が大きな意味を持つ。リスクコストと情報不完全性のリスクコストを見比べて判断する。
・改善と変革は異なる、ゲームは改善では差がつかず、どのタイミングで投資意思決定できるかが重要となっている。経営における勝ち負けはシェアではなく、儲かるか儲からないか。
・引き算の戦略思考、戦略を考える前提要素は1経済構造、2市場環境、3競争ポジションの3つ。
・摩擦から生まれるコストや混乱を最小化して、実行に移すこと。それが本当の経営。血も涙も流れない範囲で目的設定をするから意思決定が歪む。
・古典的な文学しょや哲学書、宗教書、歴史書は組織論の教科書として示唆にとんでいる。特にマキャベリの君主論やシェークスピアの戯曲など。
・ある組織や集団において主流派にいる人間こそが革命をなしうる。主流派と言われている人たちこそ矛盾や課題を理解している。与党的な立場にいるからこそ権力の使い方、権力の怖さ、権力の限界もよく知っている。
与党として考えて行動する。リーダーたる者はそこから逃げてはいけない。
・グローバルモードは多様性の負の側面に耐えるということ。
・ガバナンス改革、革命は10年単位での長期的な努力を継続する覚悟が求められる。
・共同体の調和を重視する集団は現状維持を目指す。日本の場合はよく曲がらない車で、トップが一人で運転できないため単にブレーキを強くしたところで意味がない。アメリカはスポーツカー。危険なためブレーキは社外取締役が踏めるようになっている。
・持続的に企業価値を高めてきた会社の共通点はトップの顔が見える会社、最終的に誰が物を決めているかはっきりしている会社。
・国家レベルの重要なスキームであっても、実質的に物事を正しく決めているのは、数人の課長クラスの官僚と外部ブレーン。本当にわかっているほんの数人でスキームを作り上げてしまえば、後の要路を根回ししたり、決断できる大臣総理からトップダウンで下ろしてもらったりという戦術レベルの話を使える。
・自分が関わるべきだと思う重要案件については積極的に関わる姿勢を持っておくこと。
・部課長クラスの人は一次情報をたくさん持っており、大きな影響力をもつ。経営トップのごとく考え、決断し、行動する人材が重要。
・捨てることは成長すること。捨て続けることができる企業のみが成長を持続できる。
・部下評価で成果と能力を混同しない。 -
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経済政策を考える上で、過去にとらわれて実態に合っていないという指摘を読み、個人的には非常にすっきりした思いです。
マスコミで流れる企業のイメージはあまりに画一化しすぎていて、どうも実態と合っていないのでは、というのは何となく思っていましたが、理論的にとても整理されていました。
経済の考え方として、グローバルとローカルを分けて考える必要があります。
・Gの世界:製造業やIT産業が中心になる世界
基本的に「モノ」(製造業なら車などの有形物、ITんら情報などの無形物)を扱い、規模の経済性が効く、資本の集約性
・Lの世界:非製造業が中心、本質的に「コト」の価値(観るコト、運ぶコトなど)を顧客に提供、分散的な経済構造、対面サービス、同時性・同場性のある経済圏、密度の経済性、不完全な競争、労働集約性
これまでの加工貿易立国時代から時代が移り、両者の経済的な関連性は良くも悪くも薄くなってきているため、両者の考え方、政策も分けて考える必要があります。
一方のみを意識した政策を行っても、関連性がないためトリクルダウンも起きない。
だからこそ、政策を分けて考える必要があります。
「GかLか」の二者択一ではなく、両者は良くも悪くもあまり連関していないので、GはGとして、LはLとして、それぞれに最適な政策を選択・遂行しても、あまり矛盾は起きないのではないか
という指摘を踏まえ、今後の政策の推移を見守っていきたいと思っています。
<この本で得られた気づきとアクション>
・ローカル経済でできる方向性が見えた。それにふさわしい支援はできているか
・製造業の中でもグローバルを目指すものとそうでないものの区別はできるか、どの段階でどのような支援をできるのか。
<目次>
第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
第3章 ローカル経済圏のリアル
第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する -
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グローバル経済に注目しがちだが、実際はグローバル企業は例外的で、分散型のローカル企業が多く占める。
グローバル経済への対抗としては、里山資本主義は面白いがそのような条件がそろう事例は限定的だ。
ローカル企業が地域に還元することでローカル経済は循環する。
少子高齢化が進むなか、ローカル経済は人手不足状態だ。ローカル企業の労働生産性を向上させる。
ローカル企業を選別し、みこみのない企業には退出してもらう。
ローカル企業が効率化、集中することでローカル経済は活性化するとしている。
退出のめやすのひとつとして担保中心の融資から、銀行員の目利きに基づく融資に戻すという提案には非常に納得できた。 -
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201607/
(事業計画とは)事業という無形物をリアリティのある「物語」として有形化する手段である/
戦うための計画書である以上、冷静な頭で客観的に状況を分析し、論理的に考え、組み立てる必要がある。しかし、最後の最後、計画策定に関わる人々が、それぞれの人生に関わる切実さ、真摯さ、そして熱さを共有できるか否かが、ビジネスの世界におけるリアルな戦争計画の質を大きく規定する。魂の入っていない事業計画には、現実の成功はついてこないからだ。/
事業計画作成は、大きく以下の流れで完成までのステップを踏むことになる。
a目的(何のために・誰のために)を明確にする
b①作成すべき資料を明確にする
b②納期(作業可能期間)を明確にする
c収集すべき情報(何を前提条件とするか)を検討し、入手する
d入手した情報に基づいて、前提条件の将来数値を考え、エクセルモデルを作成する
e出来上がったエクセルモデルの違和感を検証し、必要なシミュレーションを行う
fエクセルモデルを完成させる(暫定版)
gプロジェクトオーナー(社長・部門長・部長など)に報告する
h見直し指示があった場合、cまたはdまで戻ってモデルを見直し、再度報告する
iエクセルモデルを最終化する
j実績に基づいて、エクセルモデルをアップデートさせる/
目的は、事業計画策定に関わるすべてのメンバーが、同じ内容として認識していることが重要である。/
成熟した企業に対しては、少なくとも短期的ではなく、中長期の目標の先にあるべきなのは、「売上そのものの拡大」ではなく、「利益を伴った売上の拡大、または維持」、すなわちボラティリティ(価格変動の度合い)の高いリスクをとった方向性への舵取りではなく、資本の有効活用ということがより求められるのではないだろうか。/
1.当該インダストリーにおける「エンドゲーム(最終戦争)の姿」や「勝ち組の姿」を洞察すること
2.そしてそこに行き着くための「勝ちパターン」(ゲームのルール、1つあるいは複数の成功のセオリー)を見極めること
3.それを鏡にして、自社の競争力の源泉(コアコンピタンス)や経営モデルを照らし合わせてみること
4.自社にとって固有の勝ち抜きシナリオ(自社の事業戦略)を導き出すこと
ある業種や業態において「5年後、10年後に、勝ち組と負け組がクリアになったとき、それはどんな構図になっているか」をじっくりと考えたことはあるだろうか。その業界において、競争がとことんまで繰り広げられ、最終的にどうなっていくのか。競争が徐々になくなっていき、業界の構造が安定してきた姿と言ってもよい。/
横軸に「エコノミクスのローカル性(事業の商圏単位の広がり)」、横軸に「技能集約・知識集約」「資本集約・設備集約」をとった表で考える/
競争優位と持続性という観点で、本質的に、差別化されていると言えるのは、2つの要素が満たされる場合である
①潜在顧客(需要側)からの視点では、重量の差が購買の意思決定の重要な要素にであり、その差異ゆえに他の製品よりも高い満足度を見出し、高い経済負担も覚悟すること
②供給側(競争)の視点では、その差別化された要素について、他者が容易に追随できず、その格差が比較的長期に維持される仕組みを供給側が組織内に内在化していること
この2つを満たす仕組みが供給側に形成していると、本質的な意味で差別化できていると言える/
付加価値の中身にちゃくもくする。7000円分のコストを規定する要因(コストドライバー)を分解していみよう。高炉メーカーのコストドライバーはシンプルな構成なのに対して、外食の場合のコストドライバーは、とても多く、細かい。このようにコストドライバーが多様な事業は、いろいろな工夫の余地がある。そのため、競争要因が多くなり、様々な形態での戦い方が生まれる可能性が高い(勝ちパターンが数多く並存する)ことを示唆している。外食と言っても、店のサイズや立地、店内の装飾、メニューなど、業態としては数え切れないほどある。外食だけでなく、卸売業も、比較的コストドライバーは多様なインダストリーである。/ -
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ネタバレ筆者は、ボストンコンサルティングや産業再生機構で豊富な実務経験をお持ちの冨山和彦氏。著者自身、本書の中で「経営と事業のリアルな本質を語れるものは企業価値や資本政策を語るべからず」と述べられており、実際の現場経験をベースに書き綴っている内容にとても説得力を感じます。
組織を動かしていく上で、筆者が重視する視点の一つとして、「人間の弱さ」が挙げられている。人間は物事を認識する際、「見たい現実を見る」生き物とのこと。「性弱説」に立って人間を理解すれば、社会、組織の多くの現象が理解可能になる。そして、そのような現実にこそ、経営や組織がとんでもない過ちや腐敗を起こす根源があると述べています。
「現場にいる人たちのパワー」の重要性にも触れています。「経営とはとにかく人である」と言い切っておられます。細々した職務規定や指示命令なしに、自発的に働く現場人材の存在が求められる。そのため、小賢しい組織論やスキル論なんかよりも、人間集団に対する動機づけが必要とのこと。この部分が、リーダーシップの一つのポイントなのでしょう。筆者も、産業再生機構のご自身の経験を引用し、「合理」だけでなく、「情理」も踏まえたマネジメントの重要性を指摘しています。
官僚機構の問題点を指摘した部分では、「相互安全保障」を目的とした会議や根回しの業務量は人と人との組み合わせの数に応じて増えていくこと、スタッフ部門が超多忙な状況では、管理職や中高年オジサンの頭数は思い切って減らした方が業務遂行能力も意思決定のスピードと的確性も向上するなどと書かれています。思い切った意見ですが、現在社会のパラドックスの一面かもしれません。
私が個人的に注目した部分に、チームのメンバーの役割に関する記述がありました。筆者は産業再生機構で行っていた「再生の仕事」は「戦時」であると述べています。そして、極度の緊張感がある環境下で、他の職員に業務にも理解を求め、自分の専門外とする態度を認めないようにしたといいます。なぜそのように決めたかというと、仕事が佳境に入るほど専門家はプロであろうとし、チーム内に衝突を生むためだそうです。ただ、それぞれの専門家は壁を破るべく、猛烈な勉強をする必要があります。
私たちは組織の中で働きながら、社会を考えています。筆者は、自己益(=一人ひとりの動機づけ)、組織益(=企業組織として動機づけられている方向性)、社会益(=社会全体の有する動機づけ)がシンクロすることが重要であると述べています。「経営者は飲み屋での話題が昔の自慢話になったら引き際かもしれない。ゴールのない経営に自慢や答えがあるはずがないのだから」と書かれています。経営は本質的に絶え間ない努力が不可欠であり、そのためのリーダーシップが求められているのではないかと考えらさせられます。
本書の後半はリーダー論ですが、とても興味深く有意義な学びの時間を得ることができました。また、いつか、自分の立場が変わってから読み直してみたいと思う一冊です。 -
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201604/
労働生産性(投入される総労働時間を分母として、付加価値額を分子として計算)とその推移を計算している企業は、その重要性の割りにとても少ないので、「どこが儲かっていて、どこが儲かっていないのか」を探す「見える化」に加えて、ぜひ労働生産性も試算してほしい。いろいろな改善切り口が見えてくるに違いない。/
選択捨象マトリックス:
・コア事業かノンコア事業か
・GOOD事業かBAD事業か
多くのローカル企業にとってコア事業とは、「もっともマネジメントの自信がある事業はどれか(自社内の相対評価)」、さらには「他社のトップに経営させるよりも、自分達が経営したほうが、事業の長期的な価値が向上するのはどれか(他との比較)」と考えると、よりしっくりくる。/
ローカル企業においては、営業部隊の商品知識等のスキルやマインドセットが大幅に低下しているケースが少なくない。営業部門のマネジメントがPDCAの回し方も理解していないケースも多い。こうした状況で、営業部隊の建て直しは容易ではない。一定の時間もかかる。そのため、経営改善計画の立案にあたっては、まずは、売上は保守的に作る必要があるだろう。そして、その保守的な売上げでも利益が創出できるコスト構造、固定費削減を考える。間違っても、現在のコスト構造を全体とした売上げ計画を作ってはいけない。/ -
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全国896の自治体は消滅の危険性があると、
それに対する処方策をとく。
■大学進学率50%を超えた状況にあるなら、グローバル大学(G型大学)とローカル大学(L型大学)に分けて、G型大学の役割をグローバルで通用する極めて高度なプロフェッショナルな人材の輩出するのに対して、L型大学の役割を生産性向上に資するスキル(簿記等)保持者の輩出(職業訓練)しとした。
■「若者が地方に残れるようにするには、生産性を上げること・・・中略・・・地方の生産性は現に低いぶん改善の余地も大きいが、生産性を上げるためには、『強きを助け、弱きは退出促進』することが必要。これには痛みを伴うが、今や地方は人手不足で、退出企業の従業員にも別途雇用の受け皿があるから失業を心配する必要がない。最低賃金を引き上げて、新陳代謝を促せ」
G型、L型大学の区別などはあってしかるべきだと思うが、大学のようにPh.Dをもっていないと二級市民である場所では、簿記を大学で教えると言う考えは、なかなにか容認されないようだ。(富山和彦もさまざまなバッシングを受けたといっている。) -
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この本の著者の富山和彦さんは「産業再生機構」設立時、COO(最高業務執行者)という要職にいた方で、現在は経営共創基盤(IGPI)CEOである。
富山さんがこの本で言いたいのは、企業にはG(グローバル)会社とL(ローカル)会社があり、G会社では今までのやり方をドラスティックに変えなければダメだ、という事である。
その為にはまずあなたの会社で、事業、機能そして人材の新陳代謝が起きるのは当たり前ですか?と問う。
具体的には「大会社に入り、ずっとその会社で勤め上げることは、サラリーマンとしてまっとうな人生である。」という考えは即座に捨てるべきだという。
例えばM&Aで自分の所属する部門が他社に売却された場合、最初の内は「嫌だな」と思うが、M&Aは基本的にその事業を必要とする会社に買収されたのであるから、これまで以上に能力の発揮できる環境に恵まれる。そして多額のボーナスも出れば、もう以前いた会社のことは「きれいサッパリ」忘れるそうだ。
次に平時において、増収増益モードの黒字事業の売却は可能ですか?と問う。
この「代謝」のタイミングは、早ければ早い方がいい。なぜなら対象となる事業部門や機能部門の現場の強い抵抗は避けられないので、急ぎ過ぎるくらいがいいという。
また、黒字のうちの売却は撤退に伴うリストラは避けられるし、より高い対価でエグジット出来るので、それをコア事業や新規投資の成長原資に回すことが可能になるという。
続いて「選択と捨像」は一度やって終わりでなく、常にやり続けなくては意味がないとまで説く。即ち、新陳代謝が旺盛で、自己免疫力が活発に働いていれば、機能を失った細胞はどんどん新しい細胞に置き換えられていく。そしてこれを定常的に行うと日本的経営は生きてくるのだ。そのようにすると「十年に一度の大リストラ」をしなくていいという。
では、どのタイミングで事業に見切りをつけばいいのだろうか?という問いには、構造的にマーケットシェアが下がっているときは、それがシグナルになる。当該マーケットが10%で伸びているのに対して、3%~4%で売り上げが伸びている場合など、黄色信号である。
このように相対シェアが下がるときは、たいてい粗利率も下がっている。売り上げがあがているのに粗利率が下がってきたら、良くない兆候である。つまり参入企業が増えると、基本的に単価には低下圧力がかかる、それに対して自社のコストが十分下がっていないと、付加価値率は低くなってしまう。あるいは市場内で差別化されたポジションを築けていない場合も、やはり付加価値率は下がる。
そうなると、もう量とコストのパワーゲームで、圧倒的なスケールメリットを追求しないと絶対に勝てないと言う。
そして、グローバルな競争をしている世界におけるコア人材については、日本的な「正規雇用サラリーマン」というモデルはすでに時代遅れになっているとのことだ。
即ち年功的な賃金カーブが維持できるのは、30歳くらいまででそれまでは全員同じように成長するが、その後は成長が落ちる人や止まる人、さらに伸びる人に枝分かれる。だからその先は完全な能力給でやらざるを得ないのだと説く。
この議論を究極まで突き詰めると30代・40代で社長が生まれてくることは必然で、つまりグローバル企業のトップともなると「24時間365日」働けるために、すべての体力と知力を振り絞って働ける人を選ぶべきだとの結論だ。
議論をさらに深めると「要は儲かるか儲からないかだ」ということに帰結していくことだ。ソニーの故盛田昭夫さんが、経営について講演したときのメッセージが”Name of the game is profit!"(要は儲かるか儲からないか、これが僕たちのやっているゲームの本質です)という話だ。
つまるところ、優れた経営者・長期的に成功を持続してきた経営者の共通項は、結局のところ、「儲けること」すなわち利益への執念と「稼ぐ力」へのこだわりだったそう。
このようなグローバル企業では、多様性が必要だが社員に外国人・女性が多くないとハーバードやケンブリッジ、MITやスタンフォードの学生はそのような会社を選ばないという。
彼らの多くは、入社したい会社の役員名簿をウエブサイトで見て、外国人・女性・社外取締役が少ないと、入社を希望しないという。何故ならそのような人材こそグローバル競争に必要な多様性を生み出すのであるからだ。
そんな富山さんの経営するIGPIは完全なプロフェッショナル型組織であり、コア人材ほど流動性が高い。毎年10%くらいは入れ替わっている。これがむしろ自然な組織であると説く。
IGPIでは会社の固有ノウハウも叩き込むが、簿記会計や企業法務、財務モデリングなど他社に移っても即座に使えるユニバーサルスキルも徹底的に身につけさせる。
そのような事をする理由は、若い人を育てることは公共財を作っているのと同じだから、採るも採られるのもお互い様だという考え方である。
したがって、昨今企業がMBAの留学費用を、帰国後転職されるから自費にするというのは、反対であるそうだ。
ここまでの議論で明らかなように、グローバル企業の真っただ中にある企業において、トップはサラリーマンの究極の「上がり」ポストではない。いいかえるとトップアスリートみたいなものだと、富山氏は説く。
よく「うちの業界は特殊で、同じ業界出身者でないと社長は無理です」とか「うちの会社は特殊なので内部昇格でないと社長は持ちません」という話を富山さんは、ほぼあらゆる業種で聞いてきたが、ローソンの新浪氏、カルビーの松本氏、りそなホールディングの細谷氏、JALの再建を委託された稲盛氏、全て業界未経験の方ばかりである。そのような方こそ、グローバル企業に必要とされる”トップアスリート”であるという。
以上のように、かなり端折ってこの著書を紹介してきたが、私は久しぶりに”宝物”と言える書物に出会えました。しかし、富山氏が言うように、上記の事はG(グローバル企業)での話であり、日本企業の99%はL(ローカル企業)だという事を忘れないでほしいとのことです。そしてどちらを選ぶかはみなさん自身の意思決定に関わることです。
富山和彦さんは日本の宝です!!!