塩野七生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
19世紀前半のフランソワ・ミショーの「十字軍の歴史」。そのドレの挿絵に塩野七生さんの文章がついた四部作の序章。
十字軍というと世界史の教科書のたった数行の知識しかないのですが、ドレの絵、簡単な地図、簡潔な文章で大まかな流れは俯瞰できたと思う。
罪深い悪人も聖地巡礼さえすれば救われる例の一つとなった極悪非道のアンジュー伯フルク。
人間社会で起こりがちな不祥事を迫害だと過剰な反応をしてしまった隠者ピエールを利用して、「神がそれを望んでおられる」を旗印に始まった聖地征服への戦い。そこから500年近くの戦いへと突入していくこと。
リチャード師子心王、
ジハードを叫んで初めてイスラム教徒の統合に成功 -
Posted by ブクログ
もう十五年以上も昔、夏休みにリュック一つでギリシャ一人旅をした。三週間かけてギリシャ国内だけをめぐる、学生ならではのおおらかな旅だったので、スパルタへも足を運ぶ機会を得たのだが。自分はスパルタ人だと名乗る将校が出てくる一篇で、その時のことを思い出した。スパルタへ向かう道のことや、辿り着いた時のこと。
その一篇だけでなく、氏が自分が高所恐怖症を自覚した時の描写や、法王とすれ違った時のエピソード。もう、何もかもが上手い。まるで情景が目に浮かぶよう。本当に氏が楽しんで書いていたのが伝わってくる。
ローマ人の物語は途中までしか読んでいないので、また是非最初から、今度は最後まで読み切りたいと思う。 -
Posted by ブクログ
日本人へ-リーダー編に引き続き、ローマを中心とした歴史の観点から日本の政治について書かれている。
筆者は日本人の政治力や外交能力には期待していない。
誰がやっても一緒だし、どーせ能力なんてないんだから、とりあえずは継続性だけ持たせましょうよって考えが多く見られる。
革命が必要だった遥か昔と違い、何とかしなくても何とかなってしまうこの世の中だからこそ、新しいタイプの政治家も生まれにくいのだろう。
口先だけ、目先のことだけでコロコロ変わってしまう政治より、能力劣っていることを認め、長期的な視野で本当の痛みを伴う改革やりましょうよ。
あとフェミニストに対して、「本当に男女均等が実現されたらあ -
Posted by ブクログ
ネタバレヴェネツィア共和国の経済体制、経済体制を維持するための合理主義に基づいた政治システムの運用と文化の変遷について。ヴェネツィアは、経済合理性を追求した各種制度の確立・運用によって東地中海の覇権を獲得し、中東との貿易を行うことで中世の西欧では最大の経済国となり、文化の中心地ともなった。東地中海世界にトルコが台頭した時期に、他のキリスト教国から非難される中でトルコに年貢を支払ってまで地中海交易路を維持したのも経済合理性のためである。近世にアメリカ大陸が発見されたたために、西欧世界にとって地中海貿易の重要性が低下するについて伴いヴェネツィア共和国は経済力を失い、ナポレオンの圧力のもと崩壊した。
-
Posted by ブクログ
中世を舞台にした短編集
一番面白いと思ったのは最後の話のジョバンナでしょうか。
ローマ法王は歴代男性のみですが、女性の法王がいたという伝説?史実?があるそうです。カトリックでは当然女性法王の存在は消されているようですが。
とても博識な女の子が修道女になり、女を捨てて修道士になり…果てはローマ法王に上り詰めます。ですがこの短編集が愛の〜と題されているので、これだけじゃつまらないですよね。やっぱり途中で恋心に目覚めちゃいます。
結末ですが、法王は女であることを隠し、ある日突然出産します…この結末は○ンペストがよく似ていて、この章にヒントを得ているのではないかなと思いました。。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ文藝春秋に2006年から昨年までの5年間連載された塩野氏のコラムを再掲したもの。
歴史作家としてのプロフェッショナルな姿勢と深い知識、歯に衣着せぬ男性的な物言いと、長年にわたるイタリア生活で培われたグローバルな視点。
プライドと自信に満ちたその語り口がちょっと鼻につく感じがないではないが、おっしゃっていることはおしなべて納得である。
殊に、国際社会における日本の位置付けや日本の政治家、官僚の体たらくについての分析は、なかなかに鋭い。
民主党はこのような人材をアドバイザーに招いてみたらいかがだろう。山積する問題に風穴を開けるのは、意外に離れた視点で客観的にものを考えられる人の思い付きのよ