塩野七生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
天才とは、その人だけに見える新事実を、見ることのできる人ではない。誰もが見ていながらも重要性に気づかなかった旧事実に、気づく人のことである。
ローマの元老院は、絶望的な現状の打開に、はじめから大風呂敷を広げるという誤りは犯さなかった。全戦線は視界に収めながらも、必要に迫られている戦線から、当時のローマの力でできる範囲で、反撃を開始したのである。
シラクサには、アルキメデスがいたのである。一人の人間の頭脳の力が四個軍団にも匹敵する場合があることを、ローマ人は体験することになる。
ローマは旧敵国の指導層の子弟、つまり旧敵国の指導層予備軍を選んでローマで学ばせ、ローマのシンパに育てるやり方を好んだ。人質といっても、牢獄につながれるわけではない。適当な家庭に預けられ、家族同様にあつかわれ、その家の子供たちと一緒にその家の家庭教師に学ぶのが、ローマ人の考える人質であったのだ。
七百年もの長い歳月、カルタゴは、広大な土地を、多くの島々を、そして海を支配下に置いてきたのだった。それによって、カルタゴは、これまでに人類がつくりあげた強大な帝国のいずれにも遜色のない、膨大な量の武器と軍船と象と富を所有するまでになっていた。・・・それが今、落城し、完全に破壊され、地上から姿を消そうとしている。スキピオ・アフリカヌスは、伝えられるところによれば・・・、敵のこの運命を想って涙を流したという。勝者であるにもかかわらず、彼は想いを馳せずにはいられなかった。人間に限らず、都市も、国家も、そして帝国も、いずれは滅びることを運命づけられていることに、想いを馳せずにはいられなかったのである。