塩野七生のレビュー一覧
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ネタバレ五賢帝の2人目からトライヤヌス、ハドリヤヌス、アントニヌス・ピウスの3名を取り上げます。偉大な皇帝たちで、ゴシップも少なかったというだけに、記録が少ないという皮肉な時代だそうです。(老醜をさらし、晩節を汚したハドリヤヌスを除いて。やはり引き際の重要さを痛感します)にも関わらず詳細な調査で、3名の人生がこんなにも見事に蘇るのは流石です。面白いのはトライヤヌスのブリニウスへの返信書簡で急成長するキリスト教への対策について指示をしている件です。この時代からすでに極めて正しくキリスト教について認識されていたことが分かります。そして、ドナウ川にかけたトライヤヌス橋の建設、ダキヤ(ルーマニア)の征服、ハド
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ネタバレ君主論・戦略論などを書いた権謀術数の大家のイメージが強いマキャヴェッリの若い日から、フィレンツェのメディチ家に対する反乱(ロレンツォの弟ジュリアーノ・メディチの死)、そして一代を築いたロレンツォ・メディチの死後僅か2年後のメディチ家の衰退、サヴォナローラの台頭と失脚、チェーザレ・ボルジアなどの興亡、そしてメディチ家の復活などを見、そして自ら失脚し失意の晩年。彼の人生を通して変転に満ちたフィレンツェの歴史を描く。著者も書いているとおりもう一方のイタリアの大国ヴェネツィアと比較し、なんと一貫性のない歴史なのか。その背景の下でマキャヴェッリが生まれたということも頷けます。マキャヴェッリに対する愛情に
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ネタバレ4世紀に入り、ローマ帝国は専制君主の帝国へと変質していく。ローマは「共和制」の時代から「帝国」であったことを今更ながら気がついたように思います。小さい政府であったローマ帝国がディオレクティアヌスにより、軍政・税制改革、そして4皇帝による分割統治をどうして検討せざるを得なかったのか。彼の引退の引き際の素晴らしさに拍手するとともに、引退後の権力のなさ(妻と娘が皇帝により冷たくあしらわれ、惨めに殺されて行く・・・)に複雑な思いがします。そしてコンスタンティヌス大帝がどのようにして一人皇帝として権力を握るのか。そして大帝と呼ばれることになった理由として、キリスト教との関わりが言われるが、必ずしも彼はク
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塩野七生「我が友マキアヴェッリ」の文庫本3分冊を読み、ついでに勢いで、武田好「マキャベリ『君主論』」を読む。
高校時代、世界史は大学入試のために勉強した社会科目のうちの一つだった。もちろん、マキアベリの名前は、その著作「君主論」とともに出てきて、国の統治には権謀術数を駆使し、冷酷に徹して、目的のためには手段を選ぶべきではない、などと学んだような気がする。マキアベリ自身もそれを実践した人物で、マキァベリズムとは、そんな恐ろしい政治思想だとも・・・・。
塩野七生さんの「我が友マキアヴェッリ」によれば、マキアベリは、フィレンツェ共和国のノンキャリア外交官とでもいうべき地位に過ぎないわけだ -
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ネタバレコンスタンティヌス大帝の後のローマの混乱、そしてキリスト教の支配が確立する時代について著者は極めてキリスト教に批判的な考え方をしています。そういう意味では私には「違うだろう」という気持ちはあるのであうが、大帝の次男コンスタンティウス、背教者ユリアヌス、そしてテオドシウス大帝がどのように支配を確立していったかを示しています。そしてテオドシウス大帝以上に権力を持ったアンブロシウス司教が大帝との間でカロッサの屈辱に匹敵する事件を起こしていたということは新鮮な気持ちで読みました。この時代に既にキリスト教がそのようにして堕落の様相を呈していたということに人間の罪の深さを痛感します。著者が何度か書いていま
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ネタバレローマ法王をテーマにした一冊。「ローマ人の物語」以来、新作の文庫本が出ると必ず手に取ってしまうことが続いている。それくらい、クセになる塩野氏の小説。
この時代は、昨日のヒーローが一転して今日の悪魔になってしまうようだ。民衆に教養がないので、感情で動いてしまう。それを操るのがローマ法王だったりするのだ。法王が本当に『神の代理人』かどうかは疑わしいが、世間を動かすと言った意味で『神の代理人』であったことは間違いない。
これは1972年に出された作品という。関係者の日記だけで構成された章もあり、初期作品の試行錯誤っぷりを垣間見ることができて面白かった。