竹内薫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ・第Ⅰ部…ネイチャーとサイエンスの違い
・第Ⅱ部…2誌を巻き込んだ科学史上の事件
・第Ⅲ部…日本の科学のあるべき姿とは
・特別鼎談…(天文学)中川貴雄・(生物学)中垣俊之・著者
「新潮45」に連載された「科学の興亡 ネイチャーVS.サイエンス」を加筆修正したもの。メッセージ性の強い書名で少し腰が引けてしまうが、実際のところ評論と言うより科学エッセイに近い。
読者自身に科学的な視点で物事を考えてもらうことを目標に据え、常に中立的立場から率直な物言いがなされているところが評価できる。
私は幼少時代に「子供の科学」を買い与えられていたものの、結局ほとんど手をつけなかったような科学嫌いだが、本書は抵抗なく読めた。全篇を通じて科学ネタが満載で、「実現可能なタイムマシン」や「粘菌レーダー」の件には興味をそそられた。また、鼎談で生の研究者の声を聞けるのもよい。「科学は(もしくは自分の研究は)何の役に立つか?」という問いに対する各人の回答が興味深い。
本書の白眉は、2誌の違いを歴史から運営方針まで丁寧に解説した第Ⅰ部だと思う。私は仕事上「ネイチャー」や「サイエンス」を扱うが2誌の違いはわからなかったので、第Ⅰ部は非常に役立った。第Ⅰ部・第Ⅱ部は、とくに理系学生に強くお薦めしたい。
<メモ>
『ネイチャー』
英・商業誌
発行元:出版大手のマクラミン社→独・ホルツブリンク社(サイエンティフィック・アメリカン誌の親会社)の傘下へ
編集長:個性的
特色:批判的主張やニュース記事など、ジャーナリズム色が強い
日本語コンテンツ→ネイチャー・ジャパン社「ネイチャー月刊ダイジェスト」
態度:寛容・余裕
『サイエンス』
米・会員誌→同人誌的色彩
発行元:科学振興団体のAAAS
編集長:優等生
特色:アメリカの科学政策を導くという壮大な理念
態度:合理性 -
Posted by ブクログ
やはりこの著者は科学エッセイがおもしろい。「バカヤロー経済学」は、正直結構首をかしげざるを得ないところが多かったのですが、この本は文句なくおもしろかったです。唯一、タイトルが内容とあまり合っていないように思える点だけが不満でしょうか。
この本は、元々月刊誌に連載された「科学の興亡 ネイチャーvsサイエンス」というエッセイ集をまとめて書籍化したものだそうで、そのため各章の内容が完全に独立していて、いわば11本のエッセイ+巻末鼎談という構成になっています。そして、内容も、題名から想像されるような日本の科学教育を弾劾するようなものでは全くなく、イギリスの科学誌「ネイチャー」とアメリカの科学誌「サイエンス」を対比させつつ、現代科学や学会の様々な話題について、切れ味よくわかりやすく述べてくれているもので、肩肘張ったところは全くありませんでした。
いろいろおもしろいところはありましたが、僕として実は一番印象に残ったのは、科学の部分ではなく、日本における英語の使用に関して述べていたところでした。
社内英語公用化に関して、「人間の論理的思考の大部分を司る言語は、付け焼き刃でこなせるほど甘いものではない。(中略)英語が堪能でない日本人社員同士が、拙い英語でしゃべり合っていては、その英語力に見合った想像力しか発揮できないのは、火を見るより明らかだ。日本企業が世界と伍して戦うために必要なのは、写真全員が拙い英語を振り回すことではなく、高度な能力を備えた通訳を必要な人数だけ雇い入れることだと私は思う」との意見が書かれていましたが、自分自身の経験に即しても全面的に同感しました。
原発についての意見についても説得力がありましたし、勉強になること代でした。また、日本語で読める「ネイチャー・ダイジェスト」の存在も、これを読んで初めて知りました。早速購入してみましたが、これは確かにお値打ちです。
久々に読んだ甲斐のある本でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
「学校の物理」しか知らない人たちへ、この世の不思議を解き明かそうとする「ワクワクどきどきした冒険の世界」、すなわち「生きている物理」の世界をお届けしようと竹内氏が筆をとったのが、1989年春のこと。
それから20年以上の歳月を経て、ついに待望の復刊!!
「竹内流の考え方」の原点はどのようなものだったのか?
叔父の絶妙なツッコミで得られる効果とは?
物理好きなら見逃せない一冊。
[ 目次 ]
海岸線の長さ―数学
アインシュタインと猿―相対論
80日間世界一周―力学
ガリレオとピサの斜塔―素粒子・力学
2と3の違い―天文
物はなぜ見えるか?―素粒子
乱雑さの問題??エントロピーの話―その他
なにもないのになにかがある話―量子力学
潮の満干―天文
次元の話―素粒子〔ほか〕
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
「ロバストネス」をキーワードとした良書。
ロバストネスとは、しなやかな、したたかな強さのこと。
対:フラジャイル、もろさ
類:ホメオサタシス(ただし、ホメオスタシスが一定の状態を保つことであるのに対し、ロバストネスはそうとは限らない。)
ロバストネスを向上させる4つの方法
1)システム制御
2)冗長性+多様性
3)モジュール化
4)デカップリング
1)システム制御
フィードバックによる修正
2)冗長性+多様性
故障があっても直接パフォーマンスに影響させない(腎臓が二つあれば一つだめになっても大丈夫、のように)
3)モジュール化
細分化することで一部が壊れても全体までには影響させない。
4)デカップリング
ノイズを消去する
いくらでもロバストにできるか?
Ans.むり。
Because:ロバストネスと、フラジリティ(ぜい弱性)と、性能と資源の4つがトレードオフ関係にあるから。 -
Posted by ブクログ
タイトル:人類という「帝国」が支払うべきツケの記録
古生物学の世界的権威が、ホモ・サピエンス30万年の歩みを「栄光」ではなく「絶滅へのカウントダウン」として描いた衝撃作。
地球を支配した現生人類は、実は過去のボトルネックにより遺伝的多様性が驚くほど乏しく、農業革命以降は過密と環境搾取によって「絶滅債務」を膨らませ続けてきたという事実に背筋が凍ります。現在起きている世界的な少子化や環境危機も、単なる社会問題ではなく「種の収容限界」に達した生物学的必然として腑に落ちました。
単なる終末論ではなく、冷徹な科学的知見に基づいているからこそ説得力が段違いです。「人間中心主義」の傲慢さを粉砕し、私たちが生きているこの繁栄がどれほど奇跡的で危うい「借り物の時間」なのかを突きつけられる一冊。知的好奇心を満たしつつ、深い内省を与えてくれます