竹内薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
以前、本書の著者であるカルロ・ロヴェッリの『時間は存在しない』に非常に感銘を受け、他の著作も読んでみたいと思っていたので、物理学についての入門書である本書なら気軽に読み進められそうだと思い購入。
『時間は存在しない』もそうだったように、本書を読み始めてまず感じるのは、その文体の読みやすさである。
相対性理論や量子力学も含めた最新物理学について、7つの章(講義)に分け、どんな読者でも理解できるように優しく(時には詩的に)語りかけてくるのだ。
巻末の訳者あとがきにもあるように、本書は2015年にイタリアの出版界のベストセラーランキングにおいて(科学書カテゴリではなく)総合1位を獲得したというのも頷ける。
第6回講義では、太古の昔から哲学者や物理学者の間で議論され、自分も以前から関心のあった"時間"について述べられている。
特に「過去」と「未来」に関して、著者はボルツマンの熱力学の見地から「過去と未来の間の違い(未来と過去を区別する根本的な現象)は、熱いものから冷たいものへの熱伝導である」と言い切っており、熱力学、統計力学、エントロピー理論などについてさらに興味が沸くとともに、シンプルな結論付けはいかにも物理学者らしい見解だとも感じた。
ただ、誰もが身近に感じながらもその正体を暴くことができない"時間の流れ"については、その謎を解く鍵は熱であるとしながらも、最新物理学の理論でも明らかになっておらず、ブラックホールのメカニズムが解明されれば時間の流れとは何かが判明するだろうと述べており、このような未来へのロマンを感じさせる論調が多くの読者に受け入れられたのかもしれない。
本書は第6回講義までに、数式等を使わずに最新物理学についてわかりやすく解説されており、それだけでも一読に値するが、最後の第7回講義では、人類と自然との関わりについて、人類が抱く飽くなき知的欲求の素晴らしさ、物理学を学ぶ意義などが述べられて締めくくられている。
専門分野を基に、ただ真理を追究することに邁進する学者は数多いるだろうが、それだけでなく、大局的見地、哲学的見地、そして芸術的見地から物理学の素晴らしさや自然の美しさを世に広めることのできる著者と訳者に改めて敬意を表したい。
150ページ程度の文庫本ではあるが、物理に挫折した高校1年の時に読みたかったと心底感じた1冊であった。 -
Posted by ブクログ
ひとつひとつで生命の要件を満たしている細胞が、膨大な数集まり情報を交換しながら緻密に正確に分業を行い秩序立って生物のかたちを成している。情報交換は化学的な操作で行われる。化学物質の濃度の濃淡で空間的な情報が伝わるという話が特におもしろかった。膨大な数の化学反応がそれぞれ時間を守って少しの狂いもなく行われるのは、そのプロセスを知れば知るほど、ほとんど奇跡のように感じてしまう。
自分が奇跡のような緻密さを保持している機械であることを実感し、また同時に、自分や人間がそれほど特別な存在ではなく、空間的にも時間的にも、連続する世界のほんの一部分なのだと感じた。 -
Posted by ブクログ
【人間は考えることもできる「感じる生き物」】
著者はふたつの学問分野を利用してこの着想を説明している。
「脳の構造を研究する神経解剖学」と「心と精神を研究する心理学」
左脳も右脳も、感情的な大脳辺縁系の細胞群を均等に分かち合っており、
左脳、右脳各2つずつの合計4つのキャラの特徴などの説明が記載されている。
「考えるキャラ1」左脳の大脳皮質
●順序だてて物事を考える。
このキャラがいないと日常的な自分の身の回りのことや仕事はうまくできなくなる。私たちの体を「乗り物」と考えている。
「感じるキャラ2」左脳の辺縁系
● 危険の警鐘を鳴らす
脳の最も原始的な部分。今現在の経験をすぐに過去の経験と照らし合わせ、安全かどうかを判断する。常に欠乏感を抱えてるキャラなので突発的に反応しやすい。私たちの体を「責任」と感じている。
「感じるキャラ3」右脳の辺縁系
● 今ここでの歓喜に浸る
「今この瞬間」についての感情を「今ここで」体験している。未来も過去もないため、「今、ここ」に五感を通して体験を楽しんでいる、夢中、というイメージ。私たちの体を「おもちゃ」と感じている。
「考えるキャラ4」右脳の大脳皮質
● 宇宙、無限とのつながりをもつ
悟りの域に達したもしくは近い視点のイメージ。自分が思う「偉大な存在」。私たちの体を「魂の神殿」ととらえている。
【脳の作戦会議のステップ】
BRAIN(脳)の頭文字順で作られている。
・Breathe = 呼吸に集中する
→特にキャラ2が暴走して危険検知モードになるのを防ぐのにとても有効的
・Recognize = 識別する、気づく、認識する
→どのキャラが反応したかを観察する、意識する
・Appreciate = 正しく評価する、感謝する
→反応したキャラに寄り添う、そして他の3つのキャラも見守ってるイメージしてホッとする感覚を見つける
・Inquire = 尋ねる、意見を出し合う
→各キャラの視点の意見を出し合ってみる、もしくは反応したメインキャラにもう少し質問をしてみる
・Navigate = 舵をとる
→全員の意見を元に最終的な合意ポイントを決め、みんなで協力していくことを進める
【感想】
今のこの感じ方、考え方はどの脳の部分(キャラ)なんだろう?と意識と観察をするようになったのがとても新鮮で、何か嬉しいコツを掴めた気持ちになったのでこまめに脳の作戦会議を開催したいと思いました! -
Posted by ブクログ
父親という立場で子供と関わる自分にとって、遺伝子と気質の関係、気質と子供の性格や行動の傾向、親である自分と子供それぞれの気質の相性、それら最新の行動遺伝学が学べる知識を吸収した上で、無数の組み合わせの中の一つである自分(及び妻)と我が子の場合に、親としてどのような行動を選択すれば子供の人生がより豊かなものになるか、一つでもヒント・行動指針を得たいという思いで読み始めました。
本書では、最新の現代科学に基づいて、子供の脳や行動は遺伝子の影響を受けており、親側が一律に理想的な子育てをすれば、子供が正しく成長するというのは幻想だということがはっきりと書かれています。ついつい親は子供を白紙のような存在だと勘違いしてしまう…というくだりが特に印象的でしたが、子供は白紙ではなく、母と父という二人の親のDNAの一部をそれぞれ受け継ぎ、その子自身に特有の遺伝的気質が既に書き込まれている楽譜のようなものであると考えれば、出来るだけその楽譜に沿った形で子供が豊かな音楽を奏でられるようにサポートしていくことが親の本来の役目だと思うことができました。
また、「親は我が子の行動をコントロールすることはできない」という考え方を子育て観の根底に持っておくことも、とても重要だと感じました。最終9章に記載されている内容ですが、例え話として、子供をパートナーや親友と同じように考えてみると良いという話はとても刺さります。パートナーや親友は、その人のことを好きだから一緒に行動を共にしているわけであって、お互いに高めあったり話し合って良い関係を築いていくということはするが、「相手を思い通りの形に変えよう」とは思わないはず。親と子供の関係でも、そのようにある種のリスペクトを持って個人として尊重し、愛し、その個性が花開くようにサポートすることを心から楽しむ姿勢が大切だと感じました。
第3章のチェックシートでは、子供の気質、そして親としての自分の気質も大凡把握し、これまで感覚的だったり思い込んでいた自分と子供の相似点・相違点をより正確に捉えることもできました。この本で学んだ知識・考え方も組み合わせて、自分と子供という唯一無二の関係性の中で自分なりのしなやかな子育てを模索していこうと思わせてくれる、とても科学的かつポジティブな子育て本でした。 -
Posted by ブクログ
多くの教育関係者や親御さんに読んでもらいたい本。現在の教育が抱える問題点をズバリ指摘し、その解決法の一端を紹介している。
(以下、主張の抜粋、感想など)
現在の教育システムは、元々従順な軍人を育てるためにできたもの。従順な従業員を欲する因習的な企業からもニーズはあるかも知れない。しかし、時代は工業化社会から情報化社会に移り、さらにAI社会へと向かおうとしている。そこで大事なのは、忠実に指示に従う人(そんなものはAIに取って代わられるだろう)ではなく、自ら学んで新しい方向に向かえる人材。
子どもたちは、遊びを通じて自然に学んだり創造したりできている。全てを指示するのではなく、対話しながら子どもの能力を発展させるのが良い。極端な例として、Googleで検索できることを暗記させるのは良くない、という話が出てくる。今の学校は「学校ゲーム」で良くできると思われている子どもは、そのゲームになれているだけだと言う。
「先生が言ったとおりに」という教育は、すぐさま捨て去る方が良いだろう。