今邑彩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ一切の無駄がない作品。
どの事件、エピソードも余すところなくミステリの因子として活用される。おまけに文章も上手く、読み物としてのコクもある。
特に推理の肝となる時間差トリックや犯人の供述の綾などがごくごく自然に書かれており、すっと読まされるために驚きも大きかった。なるほど!と膝を思わず叩いてしまった。
この辺の文章の自然さは女子大生の同居人、久保まことの正体や坪田の部屋をノックする人物の消失などの小技トリックにも驚きをもたらす事に成功している。こういう小技が本格ミステリには読書の牽引力として必要なのである。
本作は題名から察するにウィリアム・アイリッシュをモチーフにしており、各章の章題もウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)作品を思わせる(というかその物ズバリもあるが)物ばかりだ。詩のような美麗な文章とまではいかないが、足が地に着いた堅実な筆致は読んでて、信頼めいたものを感じた。
今邑作品は数年前に『i 鏡に消えた殺人者』を読んだが、そちらでも盛り込まれていた最後のオカルト趣向が本作にも盛り込まれているのが嬉しい。
今回は闇へと開かれた古びた扉が描かれた油絵。ここから何者かが飛び出し、所有者を死へいざなうのだ。しかし、やはり『i』を読んでいるだけに二番煎じ感は拭えないのは確か。
今回の犯人―坪田の家政婦―はちょっと考えれば解っただろうと思う。実際、家政婦大野の悲しい過去を語るエピソードには布石めいた匂いを感じ、付箋をつけておいた。中間、睡魔に負けてボロボロな状態で読んでいたところがあったので、そこにヒントが隠されていたのに気付かず勿体無かった。
この作家、『このミス』や『本格ミステリ・ベスト10』や『週刊文春』など各種年間ミステリランキングにランキングされないので、そろそろ離別しようかと思っていたが、作品に漂うミステリ色は私好みのそれなので、考えを改め、今後も付き合っていく事に決めた。
世間よ、今邑彩を読むべし!と声高に叫びたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ● 感想
今邑彩のデビュー作。筆者が「中公文庫版あとがき」でも書いているが、新本格ブームの最中に出版された、本格ミステリである。筆者が改めて読んだ感想として、「意外に面白く読み耽ってしまった。」とされている。
大きな仕掛けは、アガサクリスティの「ナイルに死す」や、坂口安吾の「不連続殺人事件」と同じ。一見、犬猿の仲に見える、安東匠と布施宵子が、実は結託しており、共犯者であるというもの。共犯であればこそ成立するアリバイトリックを、共犯者ではあり得ないと誤信させるというプロット。このプロットそのものは、使い古されたものではあるけれど面白い。
この手の作品では、共犯者の関係をいかに自然に隠すかであり、その意味では、安東匠と布施宵子の関係は、主人公の萩原亮子をうまく使って匠に隠されている。プロローグの存在も含め、それと分かってみるとあからさまな伏線も仕込まれており、よくできた本格ミステリという印象
ただし、宵子と亮子がたまたま出会った福子を、字の文章で「祝子」と書くなど、フェアプレイとは言えない部分もある。全体のプロットが、使い古されたものということもあり、このあたりが、中公文庫版あとがきの「ミステリーファンの間では酷評に近かったんじゃないのかな。」という部分につながるように思う。
評価としては★3で。本格ミステリとしてよく練られた良作と感じるが、一方で、やはりメインプロットが「ナイルに死す」型なのはやや減点。このプロットで、筆力のある人が書けば、この作品程度の驚きはだれでも出せそう。そういった意味では、このプロットは、パクリとかいうレベルのものではなく、一つの形ともいえるか。
密室トリックと暗号トリックが陳腐なのも、メイントリックでないとはいえ、減点材料。全体の雰囲気と丁寧さがあるので、駄作ではないが、★3どまりと考える。
● あらすじ
萩原亮子は、婚約者の安東匠と、正月に匠の実家に行く。匠は、安東家から、いとこの布施宵子と結婚しなければ、養子縁組を解消するといわれていた。
その夜に、布施品子と安東美徳が殺害される。翌日、布施笑子と安東幸彦が襲われるが、これは幸彦の狂言。さらに翌日、安東隆広が殺害される。
安東隆広が布施品子と安東美徳を殺害し、猫を利用したトリックで密室を作り、自殺したと思われた。
布施宵子が自殺するという騒動を起こし、安東匠は実家に戻る。安東匠は心変わりをし、萩原亮子との婚約は解消。これで話が終わると思われたが…。
1か月後、萩原亮子は、安東匠の噂を聞くために、安東匠と知り合った小杉章介の家に行く。そこで、連続殺人事件の話を聞き、事情を話すと、匠と宵子が、昨年の10月に、恋人然として東京で会っていたのではないかという話を聞く。
事件の真相は、安東匠と布施宵子による共犯。そもそも安東匠が萩原亮子と知り合い、実家に連れて行ったことも計画の一環だった。
品子を殺害し、宵子が美徳を誘って、殺害。その現場を萩原亮子に見せる。
小杉章介は、真相を見抜く。証拠は萩原亮子が福子と出会っていたことと、ボタンを落としたこと程度。しかし、これらを利用し、警察に相談し、警察が安東家を訪れるところで物語は終わる。
● 事件
● 最初の殺人事件
被害者→布施品子、安東美徳
● 安東幸彦の証言
誰かが部屋の前を歩く音を聞いたと証言
● 2番目の事件
布施笑子と安東幸彦が襲われる。
→安東幸彦が布施笑子を襲い、自身も襲われたと狂言
● 3番目の事件
被害者→布施隆広
エアコンがついた部屋での密室殺人
ダミーの真相→猫を利用し、密室を偽造した自殺
ワープロに遺書を偽造。パスワード解読の暗号
● 登場人物
萩原亮子
ヒロイン。安東匠の婚約者として、安東家に行き、殺人事件に巻き込まれる。
安東匠
探偵役と見せかけて真犯人
布施宵子
安東匠、萩原亮子と敵対する存在と見せかけて、実は安東匠とつながる真犯人。布施福子の娘で、品子の妹
安東いつ
安東匠の祖母
布施祝子
安東いつの長女。安東匠の義母
布施福子
安東いつの次女
安東美徳
布施祝子の息子。
安東三恵
安東美徳の妻。幸彦の母。日本人形のような美人
布施品子
布施福子の娘
布施隆広
布施品子の夫。地方大学の助教授
布施笑子
高校受験中
安東幸彦
高校受験中
原口春実
布施笑子の家庭教師
水島喜一
安東幸彦の家庭教師
小杉章介
絵描き。萩原亮子の友人。萩原亮子と安東匠が会うきっかけとなる人物
● プロット
安東匠と萩原亮子が恋人と見せかけて、実は、萩原亮子は安東匠にだまされている。安東匠は布施宵子と裏でつながっており、連続殺人を計画する。
● 物理トリック
卍の館の構造を利用した場所の誤認トリック。萩原亮子に場所を誤認させ、偽の殺害現場を見せることで、アリバイを偽造した。
● 叙述トリック
● プロローグの男女は、一見、誰と誰か最後まではっきり書いていない。真相は、安東匠と布施宵子。エピローグにつながる。
● その他
猫を利用した密室トリック、パスワード解読の暗号トリックあり -
ネタバレ 購入済み
流石の迫力
流石、絵の迫力が凄い。
やめられなくて、一気に読んだ。
ミステリに慣れている人には、もう少しビックリしたかったというか、
伏線が素直すぎると思った。 -
Posted by ブクログ
もっともっと怖!!!ってなるかと思ったけども。
最初の冒頭できっとこれひっくり返るだろーなーって予想が付き、ラストであまりびっくりできなかったのはあるかなぁ。
鏡とか、双子とかは結構ありがちな流れだよなぁ。
と。
ただ、読みやすくてズンズン進んでしまうほどにさきが気になるのはある!!!
この方の本はホラー色の強いミステリーが多いので、ヒヤヒヤドキドキが楽しいんだけど、今回はラスト1ページで少しだけひんやりを残して終わる普通のミステリーでした。
鏡の足跡のトリックはさすが!!!!!!、と、唸ってしまったけども。
面白いし読みやすいし、怖くないので怖がりさんにもおススメです!!!!!