今邑彩のレビュー一覧
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美しい薔薇には棘がある
著者が神代植物園を訪れて描いたという薔薇の記述は、その美しさを読者に伝える。
西洋的なイメージがある薔薇だが、実は東洋の血を掛け合わせて作っているために、謎めいて魅惑的な花になったのだそうだ。
可憐な要望の中に鋭い棘をもっているために、正反対の代名詞であったり、死、美などのイメージを持って語られることもある薔薇。
本書ではその薔薇が咲き誇る屋敷の中で殺人事件が起きる。
雪子という第一の夫人が亡くなった。
屋敷の住人たちは何かにつけ、雪子、雪子と懐かしむ。
どれだけ彼女は美しかったのだろう、どれだけ素晴しかったのだろう。
彼女の魅力は屋敷の皆を虜にした。
一方、第二夫人 -
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ミステリ&ホラー
表題作は初出が93年なのでちょうど20年前。
それを含む6編の短編集。
多くのミステリがこの間に刊行され、映画やドラマが作られて来た。
そのため、ある程度慣れ親しんでいれば、かなり早く結末の予想がつくものもある。
『隣の殺人』はそのひとつ。
とは言っても、ちょっとした刺激を求めて想像力を働かす主人公の姿は不気味さがある。
面白かったのが『恋人よ』。
これは一人芝居にもできそうだし、熱帯夜の百物語にもいい。
じわじわとくるこの怖さはたまらない。
今は固定電話に吹き込むよりも携帯、スマホに伝言を残すことの方が多いかもしれない。
メールでこんな内容がきたらこわい、が、やはり人の -
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ネタバレ3+
本格+怪奇。
前作に比べ若干キャラが立ってきた貴島柊志シリーズ2作目。
あとがきで“エピローグは別に読まなくてもいいです、そういうのが楽しめる人のために残しました”とあるが、結局読まなきゃ楽しめるかどうかもわからないので困る。忘れてくださいと言われてもそう簡単に忘れられないし。しかもどう考えてもエピローグありきの本編の構成・バランスだし(エピローグがないとあれやこれやが投げっぱなしに)。
確か『ルームメイト』(映画化おめでとうございます)でもモノローグ○は読まなくてもいいみたいなことをあとがきで書いていたが、これはつまり、初出時にそういう風に(怪奇エンドっぽくというか、カーっぽく -
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『蛇神』、『翼ある蛇』でも書かれていた話が再びリピートされ
やたらと長い神話ネタコラムを読んだ後はちょっと話が進み
話がピークに差し掛かろうとすると本が終了するという
悪しき慣習がここでも繰り返されていました。。。。
最近のテレビでよく見る、人をイラッとさせるパターンである
話のボリュームが10ある話をやっていて
1〜3の話をした後にCMが入り、
CMの前にやっていた3からはじまって5まで進んだところでCM、
CM前の5から話が始まって、7で終わってまたCM、
CM前の7から始まって8まで進んだところでまたCM、
CM明けは1から8までの振り返りをやって9に入り
盛り上がった所で「はい今週は -
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再読。
訃報を知り思わず手に取りました。
今邑さんのデビュー作です。
タイトルにもある卍の形の屋敷を舞台にした館モノ。
物語の舞台は88年頃ということで、一昔前の昭和を感じさせます。
伏線も分かりやすく犯人は結構直ぐに分かってしまうのですが、卍形の屋敷の構造を活かしたトリックはなかなか面白いです。
文体の読みやすさや余白を残した終わり方はデビュー作からだったのかと改めて思います。
正直なところ本格ミステリとしては荒削りで詰めが甘い部分もあるにはあるのですが、後の今邑さんらしさの片鱗が伺え、ここがスタートで次第に昇華されていったのだと感慨にふけってしまいます。
ご冥福を心からお祈りします。