島田雅彦のレビュー一覧

  • 美しい魂―無限カノン2―(新潮文庫)

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    “究極の恋愛小説”を謳った作者キャリア渾身の三部作の第二作。
    旅と悲恋を宿命付けられた血族の、遂に核となる4代目カヲルとロイヤルレディに定められる不二子とに費やした1冊。
    天皇制への疑問を誘うような、少し左にも感じる内容だが、話の主旨はそこではなく、展開も重層的で面白い。どうしても先を期待してしまうような読者心理の誘導が素晴らしい。

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    2024年08月01日
  • 彗星の住人―無限カノン1―(新潮文庫)

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    作者の当時の力を全て注いだ三部からなる大作。
    作品の中心に据えられる“カヲル”の恋愛の顛末を、カヲルの姉である語り手アンジュから、カヲルの娘フミヲへと伝聞で伝えられる作品構成。
    一部である本作は、カヲルの曽祖母の恋愛から始まり、祖父、祖父から父とエピソードが降りてゆく。この継承や流転のシステムは三島由紀夫の名作から公然と影響を受けている。
    軽さはあるものの、ウィットの散らされた書き口はボリュームに反し読みやすい。

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    2024年07月25日
  • 絶望キャラメル

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    すっきり爽快な青春小説でした。本作を読むまでは、「ため息を1つすると1つ幸せが逃げるぞ!」と言ってきましたが、認識を変えざるを得ませんね。

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    2024年06月16日
  • 英雄はそこにいる 呪術探偵ナルコ

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    シャーマンのナルヒコは狂言回しで実質主人公は、かっこよくも哀しいサトウイチローだった。それにしても殺害された大阪府知事は書かれた時期から見ると例の方。作品発表の時期から10年以上たったがどんどん現実の状況が悪くなっていることに暗澹となる。島田雅彦氏の作品にしては読みやすい印象。

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    2024年06月03日
  • 散歩哲学 よく歩き、よく考える

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    都市、郊外、田舎と散歩する著者
    飲み歩き、人との出会い。散歩を哲学する。
    移動の自由は多くの人間に認められた権利とのこと
    東京は海外の街と比べて常に変わる街らしくいつの時代を通じて、東京タワーなどシンボル的な存在は変わっていく。
    哲学とか難しく考えなくても、歩くことは気分転換にもなるし、健康のためにも良いと思えば自然と外へ足が向く気がします。これから暑くなるので、高い所を目指すことになるかもしれませんが。

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    2024年05月31日
  • 散歩哲学 よく歩き、よく考える

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    歩きながら考える。目的なく散歩することを通じて体感する人類としての本質。あてどなく彷徨いながら思索する作家の徒然なるエッセイ。

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    2024年04月07日
  • 別冊NHK100分de名著 「幸せ」について考えよう

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    好色一代男
    好色一代女
    井原西鶴

    お金があっても、好色に身を費やしても幸せとは限らない。
    例えば美貌にかまかけて、スポーツ選手や実業家と結婚し、ママタレントとなり、自分のブランドを立ち上げるセレブの道も幸せかどうかわからない。

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    2023年08月24日
  • 時々、慈父になる。

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    父親になって息子をどう育てるかどのように育って欲しいかと真剣に悩む姿に、世の父親と違って息子としては有り難くもあり煩わしくもあったのではないかと思った。
    このエッセイは島田氏の存在表明のようでもあり旅日記でもあり彌六の子育て記録でもある。タイトルにあるような慈父かどうかはわからないがミロクとの関係描写のところが一番興味深かった。

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    2023年08月22日
  • 別冊NHK100分de名著 ナショナリズム

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    4人がそれぞれ一冊ずつ紹介するスタイル。
    アンダーソンという人の想像の共同体が面白かった。

    過去と正しく決別できていないからこそ、未来の日本人に対する無関心がある。

    ===

    第二に、歴史家の客観的な目には国民(ネーション)は近代的現象に見えるのに、ナショナリストの主観的な目にはそれは古い存在と見える。要するに、新しいのに当事者には古く見える。これこそ、ナショナリズムの最もふしぎなところです。


    逆に、ヨーロッパのいずれかの国に植民地化され、まとまった行政単位として扱われたという事実が、結果的に、植民地の人々に「我々 ○ ○人」という意識を植え付ける結果となった、と考えるほかありません。

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    2023年08月18日
  • 時々、慈父になる。

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    ネタバレ

    同じ時代の空気を吸って生きてきた同年代作家として、共感するところが多い。子育てしたのも同じ時期だ。

    『君が異端だった頃』の続編となる自伝小説。石原慎太郎や中上健次、大江健三郎、古井由貴吉との交流譚が相変わらず興味深い。

    「親バカでない親はいない」にあるとおり、やはり「優しいサヨク)も人の子であり、親である。息子への溢れる愛情を隠さない親バカぶりが感動的でさえある。

    実名のまま自らの生い立ちが書かれることを「ミロク」君が許したのは、きっと深い信頼関係があるからなんだろうな…

    でも、いちばん言いたかったのは、終わり近くにある次の部分ではなかったか?

    「…自分とは唯一無二のものというよりは

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    2023年07月25日
  • 時々、慈父になる。

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    息子を連れて世界中旅をするという羨ましい環境。とはいえどんな親も同じように育児は手探りで一生懸命。
    作家の実態を垣間見れて興味深かった。この作者が特別なのか、作家業とはこんなものなのか、凄まじい仕事量に圧倒された!

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    2023年07月11日
  • 深読み日本文学(インターナショナル新書)

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     題名から堅苦しいのかと思いきや、気づけば説明解釈に納得し、つい作品を読んだ気にもさせてくれる。勿論それは非常に危険なことなのであるが、紹介されている作品や、簡単にその作者の時代背景や、どういった生き方をしたかも詳細に説明もしてくれており、作者作品に興味を持たせてくれること間違いない。
     最新の作品でなく、古典や王道の漱石をまた読みたくなる。最後の方は未来における文学がどうなる、どうあるべきかの指針を、人間自身の人工知能との付き合いを通して考えている。

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    2023年05月26日
  • 絶望キャラメル

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    結構好きだった。学びは無いが、若者のサクセスストーリー、恋愛、地域興しなと色々な要素が含まれている。ハッピーエンドでライトな気持ちの良い作品。

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    2023年03月07日
  • 絶望キャラメル

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     「輝かしき文学史的事件! 芥川賞最多落選者であり現・芥川賞選考委員である」などと称される島田雅彦さん。少しお堅いイメージがあったのと、食指が伸びず機会を逸してしまい、今回が初読です。
     今の社会の閉塞感を打破するような、爽快な青春小説でした。疲弊した地方都市に、どこまでも前向きな坊主が現れ、地元の高校生4人に目を付けます。ここから「原石発掘プロジェクト」がスタートしていきます。
     彼らは、失敗しながらも夢を見る力を少しずつ獲得して、絶望を希望に変え、町おこしへつなげていきます。しかし、古里のためという悲壮感は漂わず、あくまでも自分のため仲間のためがメインです。
     また、現実社会の問題点を指摘

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    2022年06月15日
  • カオスの娘 呪術探偵ナルコ

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    何年ぶりに再読したんだろう。
    最初、読んだ当時はあまり面白くない印象しか
    持たなかったけれど、今読んで見ると面白い。

    理解出来る所まで自分が成長したのかなぁ

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    2021年11月29日
  • スーパーエンジェル

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    オペラの原作 近未来SF

    人間がAI「マザー」に支配、ゲノム管理される世界から不要として弾き出された「異端者」主人公「アキラ」
    自由は人間本来の姿であると気づき、マザーの束縛から離れ、監視役ヒューマノイド「ゴーレム3」達と未来創ってゆく物語です

    ゴーレム3のAIらしい人との認識のズレが面白く感じられます

    夢と世界の創造の実現に量子論を使った奥深い作品です

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    2021年10月10日
  • 空想居酒屋

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    空想「居酒屋」という題だが内容は著者の深い実経験に基づいた食のエッセイである。国内外、それも揚げ物やら、塩分過多つまみなどのB級グルメを思い出と共に旨い食べ方を紹介している。美味しいではなく、旨いという感じ。

    食とそれを提供してくれる場所(居酒屋、人)への敬意を感じるエッセイ。

    全てが行ってみたい、食べてみたいが、一番気になるのは韓国の二日酔いに効くというスープである。

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    2021年09月26日
  • 空想居酒屋

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    コロナ禍だから進む空想の世界。各国の食を堪能してきた筆者が振り返る逸品の数々。

    食に関するエッセイ。何とも不思議な雰囲気を持った本。

    最後は空想から実際に筆者が作る「何処でも居酒屋」。

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    2021年06月21日
  • 退廃姉妹

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    戦後食べていくために、自宅を米兵の慰安所とする姉妹。たくましい。ほんと、生きていればこそ、なんだよなぁ。戦中戦後を綴るのには、いくら頁があっても足りず、筆舌に尽くし難い事実がそこかしこにあっただろう。それに反するようなあっけらかんとした文体が印象的だった。面白かった。

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    2021年05月05日
  • 美しい魂―無限カノン2―(新潮文庫)

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    島田雅彦の恋愛小説。普通の恋愛じゃないし、儚い夢みたいなものなんだけど、そのシーンが楽しそうで、印象に残った。
    ライバルは皇太子、とかモデルもなにもないんだけど、堂々とすごいものを書くなぁと思う。カヲルがすれ違っていて、運命というより彼自身の臆病さと自信のなさからこうなってしまった感じがする。

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    2021年05月04日