島田雅彦のレビュー一覧
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159歳まで生きて明治維新から平成までを見てきた男、という話なんだけど、それほどSFファンタジーぽさはなくて、一般人の目から見た歴史という感じ。もっと政治的な事件やできごとについて語られるのかなと思っていたんだけど、それよりも、たとえば文明開化、日露戦争、関東大震災、第二次世界大戦、終戦、オリンピック、高度経済成長などを、ごく一般の人たちがどういうふうに見ていたか、そのころどんなふうに暮らしていたかがわかる感じだった。本当にその当時実際に生きていた人の思い出話のようにリアル。主人公159歳まで生きた男が子ども~若者までの時代、つまり明治、大正、昭和の戦後くらいまでの話がより詳しい感じだけど。
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所謂「居酒屋」に留まらず、本書は「酒と料理と人が居る場所」について語られている。
語られる料理やお酒を食べたくなるのはもちろんのこと、そのお店、その場所、その国へ行きたくなること請け合いだ。
テレビの食レポが胡散臭くて嫌いな私だが、それは味のみを語るからだろうか。いや、味すら語っていない。レポーターの感想だけ聞かされても、食べたくはならない。
本書は、料理を食べ、土地のお酒を飲み、なぜそれを欲するのか自分の原体験や現状を振り返る。難しいことは何も書かれておらず、呑み食いは生きる糧だよね、と再認識させてくれる。
そして、では自分も空想居酒屋を実際に開店しようとなる。結局、料理とは自分好み -
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ネタバレ皇后とお付きの侍女とがインターネットを武器に政権の腐敗と戦う、由緒正しい通俗小説。著者の作品史から見ると、10年後に書かれた『エトロフの恋』の続編にあたる。
初出は『新潮』2019年6月・12月号。タイミングを考えても、2016年8月の明仁天皇の退位メッセージにインスパイアされた小説の一つであることは明らか。この小説では、天皇が米国に隷属化する政権の保守政治家たちを糾弾する「おことば」を発信、皇居内で皇后とともに自己幽閉することで「世直し」=「令和の改新」を目論んでいく。興味深いのは、天皇と皇后がロシアの大統領と中国の国家主席との間で個人的なコンタクトを取り、反米=後の生存戦略を企んでい -
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ネタバレ本屋で見かけ、そのタイトルに惹かれて手に取った。前半部分はタイトルを表象するような哲学的な内容であるのに対し、後半はその実演編(?)としての位置付けなのか、著者自身が飲み歩く描写が多く、個人的には前半の方が馴染んだ(後半に出てくる店も是非行ってみたいとは思うが)
本書を通じて自身の中で顧みたことは、「自分はどれだけ自らの思考に自覚的であるか」ということ。以下にも引用した通り、何か特定のテーマについて思考を巡らせていることを人は「思考している(A)」と捉える傾向にある。思考が何らかの論理的帰結を導き出すための手段なのだとすると、所謂「思考している(A)」状態は、比較的長く細い論理を紡ぎ出している -
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4人がそれぞれ一冊ずつ紹介するスタイル。
アンダーソンという人の想像の共同体が面白かった。
過去と正しく決別できていないからこそ、未来の日本人に対する無関心がある。
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第二に、歴史家の客観的な目には国民(ネーション)は近代的現象に見えるのに、ナショナリストの主観的な目にはそれは古い存在と見える。要するに、新しいのに当事者には古く見える。これこそ、ナショナリズムの最もふしぎなところです。
逆に、ヨーロッパのいずれかの国に植民地化され、まとまった行政単位として扱われたという事実が、結果的に、植民地の人々に「我々 ○ ○人」という意識を植え付ける結果となった、と考えるほかありません。 -
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ネタバレ同じ時代の空気を吸って生きてきた同年代作家として、共感するところが多い。子育てしたのも同じ時期だ。
『君が異端だった頃』の続編となる自伝小説。石原慎太郎や中上健次、大江健三郎、古井由貴吉との交流譚が相変わらず興味深い。
「親バカでない親はいない」にあるとおり、やはり「優しいサヨク)も人の子であり、親である。息子への溢れる愛情を隠さない親バカぶりが感動的でさえある。
実名のまま自らの生い立ちが書かれることを「ミロク」君が許したのは、きっと深い信頼関係があるからなんだろうな…
でも、いちばん言いたかったのは、終わり近くにある次の部分ではなかったか?
「…自分とは唯一無二のものというよりは -
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「輝かしき文学史的事件! 芥川賞最多落選者であり現・芥川賞選考委員である」などと称される島田雅彦さん。少しお堅いイメージがあったのと、食指が伸びず機会を逸してしまい、今回が初読です。
今の社会の閉塞感を打破するような、爽快な青春小説でした。疲弊した地方都市に、どこまでも前向きな坊主が現れ、地元の高校生4人に目を付けます。ここから「原石発掘プロジェクト」がスタートしていきます。
彼らは、失敗しながらも夢を見る力を少しずつ獲得して、絶望を希望に変え、町おこしへつなげていきます。しかし、古里のためという悲壮感は漂わず、あくまでも自分のため仲間のためがメインです。
また、現実社会の問題点を指摘