島田雅彦のレビュー一覧

  • 簡潔で心揺さぶる文章作法 SNS時代の自己表現レッスン

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    私の最も好きな作家の文章論であり、ゆえに読む前の期待値が大きすぎたのかもしれない。タイトルは「文章作法」であり、前半はたしかに文章作法として読めたのだが、後半に移るにつれ、内容は人生論あるいは社会批評になってしまった感がある。
    思い切って、本書を人生論、もしくは社会論評として読めば、内容はそれに見合った、著者ならではの洞察にあふれた書として読むことができる。だが、「文章作法」を読みたいという動機で本書を手にした私には、いささか拍子抜けの感があった。
    島田雅彦氏の小説は、かなりの数を読んだと自負しており、その中にはすばらしい佳作が多くあった。だからこそ氏の書いた「文章作法」に期待した。少しでも島

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    2019年10月07日
  • 人類最年長

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    江戸からの東京に変わり、日露戦争、関東大震災、東京大空襲、そして平成の終わりまで、たったひとりで生きてきた男がいた。

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    2019年09月04日
  • 人類最年長

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    幕末に生まれ、明治から現在まで、さらに未来を生き続ける男。自らの人生譚を通して、平民目線での日本の近現代史を伝える。それぞれの時代は、種々の書籍、映像あるいは年長者の語りで学んできたが、ここに一連の経緯をまとめていただく。とまあ、数奇な男の生涯が小説の体を成してはいるのだけれど、史実をなぞってとりわけ突飛な創作もないので、復習になりましたというところ。ヒモテツの時間の講釈は楽しかった。歴史上の人物は実名と思いきや、児玉誉士夫は鬼頭洪太で登場。松本清張のキャストを拝借していいのかな。

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    2019年06月17日
  • 彗星の住人―無限カノン1―(新潮文庫)

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    曽祖父母から続く四代の親子たちの壮大な恋物語。
    何が壮大かって、マッカーサー、お蝶夫人などが登場するのである。
    フィクションだと分かっていても何だかワクワクする。
    次巻では天皇も登場するらしいのだから本当にスケールが大きい。
    恋物語そのものよりも、文章の美しさに惹かれる。

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    2018年10月17日
  • 虚人の星

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    ネタバレ

    実は初めての島田雅彦。特に理由はないのだけれど、今までなぜか読む機会が訪れなかった。

    最初はもやもやさせられるのだけれど、途中からはエンタメ的な流れになって、ページを繰る手が止まらないくらい。
    でも話が盛り上がってくるにつれ、不安も覚えはじめる。期待される話の流れに対して、残ページ数が足らない気がするのだ。大団円の長ぜりふは、おそらく作者がいちばん言いたいことだと思うのだけれど、その後の展開がなく終わるので、読後感も結局は中途半端なまま。村上龍ならここから第2巻まで話をふくらませるだろうに、トム・クランシーなら1話4巻物で大河ドラマ化するだろうに、実に惜しい(笑)

    余談ながら、解説を書いて

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    2018年07月08日
  • 深読み日本文学(インターナショナル新書)

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    最初のほうの、エロの章は面白い。源氏物語はあまり興味なかったが、この本をきっかけに、谷崎版で読もうかと思った。最後のAIの章は、わかるけど、不要な章だなあ。

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    2018年04月29日
  • 虚人の星

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    日本を取り巻く国際状況を著者の見解でぶった切ったビジネス書。物語として読むのではなく、国際関係、今後の展開そして日本が取るべき態度の参考文献として読むべき本。

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    2018年02月25日
  • 深読み日本文学(インターナショナル新書)

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     直木賞芥川賞選考委員でもある作家島田雅彦氏、彼の独自の思想と観点による日本文学史概論。
     全十章は時代順に構成され、古典『源氏物語』に見る色好みの伝統から、西鶴と近松に見る江戸文学、漱石・一葉・谷崎から迫る近代文学の深奥、太宰と安吾らの作品から感じる戦後日本の精神と文学、そして文学の未来「AI小説」までと内容は多岐に亘る。
     多様な視点と膨大な知識の上に成り立つ歴史観、そして作家の感性から日本文学史を捉え直し、日本文学に通底する日本人のDNAと文学そのものの存在意義を確信に満ちた光で照らし出す新しい文学論。


     私にとって日本文学は茫洋たる大海と同じである。文学史の概要を言葉の上で理解する

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    2017年12月18日
  • 筋金入りのヘタレになれ

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     オイラも居酒屋でここで書かれているようなことをしゃべっている。でも、その多くは誰かの受け売りに言葉だ。冷静に考えたら、得意になってしゃべっていることが恥ずかしくなる。テレビで知ったことよりも、本で知ったネタが増えたことが救いかな。いずれにしても気が付いたら人のふんどしで相撲を取っていることは多いように思う。
     タイトルに惹かれて手にしたけど、「筋金入りのヘタレになれ」って言われてもオイラみたいに酔っぱらいの戯言ばかりしゃべっている人間からすると結構ハードルが高いってことがよくわかった。精進しようっと。

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    2017年09月16日
  • 別冊NHK100分de名著 「幸せ」について考えよう

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    別冊NHK100分de名著 「幸せ」について考えよう (島田 雅彦;浜 矩子;西 研;鈴木 晶)
    アダムスミス、フロイトなどの過去の識者は幸福をどうとらえたのか?を総合的に解説。
    まず資本主義の開祖アダム・スミス。どちらかというと自由放任のイメージがあるが、金銀財宝の量に富の源泉を見出す重商主義を否定し労働によってこそ価値が生まれるという労働価値説を展開しました。重商主義ならぬ「重人主義」。
    人々に、話す力と同じくらい黙っている力があれば、世の中はもっと幸せになるだろう。──スピノザ
    「幸福」について、初めてちゃんとしたかたちで語った哲学者はアリストテレス(*)です。『ニコマコス倫理学』という

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    2016年11月21日
  • ニッチを探して

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    島田雅彦というと、私が現役の高校生だったころから、国語便覧に載っている偉いセンセイである。
    読まねばならぬ・・・はずなのだが、なぜか食指が動かず、今まできてしまった。
    初島田である。

    銀行員藤原道長が、支店長の悪を暴き、せめて差し違えることができれば、と、これまでの生活から「離脱」する。
    娘の彰子、妻の香子(紫式部の本名ともいわれる)、そして彼の逃亡生活を助ける熟女源倫子、といった名前を見ていくと、何か現代の貴種流離譚なのかと思ってしまうが、そう読むと、波乱万丈なシーンさえ安心して読めることになるが、一方で特権意識に満ちた、かなり胸糞悪い話になってしまう。
    これは却下。

    意外とグルメ小説と

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    2016年11月13日
  • 好色一代男/雨月物語/通言総籬/春色梅児誉美

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    それぞれ初めて読みました。
    井原西鶴 好色一代男
    上田秋成 雨月物語
    山東京伝 通信総籬
    為永春水 春色梅児誉美

    それぞれ、江戸文化の良さや面白さについていまいち
    理解できないというか、合わない感じがしました。

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    2016年08月12日
  • 筋金入りのヘタレになれ

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    何年たっても、ゼミの先生はみなゼミ生に似たようなことをいうものだなあと思いました。島田先生は今いちばんと思う仕事に就いて、何年かのちには、違う仕事につきたくなるかもしれないからあらかじめそのときの準備をしておけと。私のゼミの先生は、真剣に取り組むことを必ず2つは用意しておけと。先生はえらいので、先生のいうことは卒業後ずっと守っておいて損はないと思います。

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    2016年07月26日
  • 迷い婚と悟り婚

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    島田氏は結婚を勧める根拠として7つの理由を挙げているが、その中に離婚できる、というのがある。統計的には3割を超える確率で結婚は破綻していることをふまえ、結婚は決して永久就職ではなくなってきている現実を静かに指摘する。離婚を奨励しているわけではないが、いつまでもつか分からないというのが心構えでいるのが相当ということ。うまくいくときはうまくいくし、いかないときはどのように努力してもうまくいかない。そう達観するのが身のため。墓場まで一緒にいなければならないと考えるから苦しくなる。結婚をくびきとして考える必要はない。いやになったらいつでも別れればいい。そういう感覚でおれば結婚の敷居もグンと低くなる。

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    2016年06月20日
  • 小説作法ABC(新潮選書)

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    ネタバレ

     身もふたもない言い方からはじめますと、小説のみならず、あらゆる表現活動を行おうとする際、自分の無意識のパワーなどというものを過信してはなりません。この〈特別な私〉が主体であれば、カメラのシャッターを切れば自意識が反映されたすばらしい写真が撮れ、舞台に立てば魂の叫びが観客の心を打つ演劇表現になる……などとは、ゆめゆめ思ってはならないのです。

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    2016年05月27日
  • エトロフの恋―無限カノン3―(新潮文庫)

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    無限カノン三部作の最後。
    前二作の二人称の語りとは違い、カヲルの一人称で語られる。
    命がけの恋を失った後、なんだかんだで妻子を得たがその後、商売道具である歌声を失いどん底へ。偶然にも旧友と再会し、なぜかエトロフ島に住むことになる。そこで現実離れした人々と出会い交流を深めていく中で自身も悟りの境地に至り、それまでの苦しみから解放される、失ったはずの恋によって。
    正直な感想としては、この三作目は必要だったのか?と言うか、こういうカタチでしか決着できなかったのか?と思ってしまう。
    恋を失った後が端折られ、妻との出会いや生活も端折られているため、歌声を失った後、何故妻子の元へ戻れなかったのかが理解でき

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    2016年05月16日
  • ニッチを探して

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    今まで読んだ事の無い感じの構成。人からの推薦で読んだが、自分だったら手に取らなかったであろう。手に取ったしても、途中で挫折したかもしれない。

    最後は結末が見えてしまったが、この作品は映像にしたら面白いかも?

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    2016年02月25日
  • ニッチを探して

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    ネタバレ

    ニッチって何回言うねん感は否めない

    緻密さ?こだわり?の反面、やたらざっくりしている部分もあり、バランス感にやや違和感があるが、これも味かな?

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    2016年03月15日
  • 傾国子女

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    美貌というのは一時の権力だという。
    もし自分がもっと美人だったら、あれもうまくいくかも、これもうまくいくかも、そう思ってしまうが、実はそうとも限らないようだ。
    本書の主人公、白草千春は、その美しさから自分の運命が翻弄されてしまう。
    かわいそうなほどに。
    義理の父との約束はおぞましいし、「壇のおじさま」は高校生の千春に後継出産を依頼する。
    気持ち悪い、そんな感情が先立つ。
    「壇のおじさま」は彼女を大切にしていた。
    同じように、あの彼も、この彼も、彼女を愛おしい、大切だ、そう思っていたのかもしれない。
    たとえそれが一瞬であって
    千春は死んで、やっと自らから解放されたのだろうか。

    彼女の人生を語る

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    2016年02月06日
  • ニッチを探して

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    映画でも逃亡ものが好きなので読んでみたけど、想像していたものとは違っていた。
    主人公にとっては逃亡よりも離脱だったんだな、だから逃亡ものに期待していた切迫感とか緊迫感がなかった。
    そして、何故か食べ物の描写が多かった。
    ニッチを探していようと、生きることに食べることは必要不可欠だからですかね?
    下町グルメ情報が面白かった。ホワイト餃子は知っていたけどファイト餃子なんて知らなかったよ。

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    2016年01月12日