島田雅彦のレビュー一覧
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購入済み
面白かった
一気に読んだ。
長生きし過ぎたおじいさんの一人語りというスタイルは決して真新しいアイデアでは無いが、時世時節に変化していく宮川の生き様は痛快であり、自分も心の片隅で長生きしたいと想っているので共感したり、その逞しさに憧れたりする作品だった。
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島田雅彦氏の独特なものの見方、表現が満載の書だった。『源氏物語』に始まり、漱石、太宰、谷崎や一葉らの作品を、著者独自の視点で「深読み」し、我々が読むのとはおそらく異なる解釈を見せてくれる。果ては、解釈の域を超え、これらの作品を俎上に載せながら、社会論のようなフィールドにまで話が及ぶ。
各章の名前も面白いが、それはそのままその章のテーマであり、その中で思いも寄らない作品が取り上げられたりしながらも決して話の一貫性が破綻するようなことはなく、実に面白おかしい、それていて深い島田氏の解釈が読める。以前、別の新書で氏による日本社会論を読み、そのときも独自の解釈にうなったものだったが、今回の話もまたおお -
Posted by ブクログ
世代が近い作家の書く日本文学史であり、その上の世代が書く物と共通するものもあるが味付けは違い、自分自身としては共感しやすかった。文学は、その書き手が生きている政治、経済状況、また世代によって、異なるものであることを基本に著述されている。古典であればあるほど、本来の日本人らしさが如実に現れるところもあるが、それすら、その時代の政治状況が反映されている部分がある。源氏物語もしかりである。最後に多様性があるから、文学は成り立つものであり、多様性がなくなることは文学の危機状況になる。本書を通じて著者の現代の政治状況に対する危機意識が通底して述べられでいた。
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Posted by ブクログ
名所旧跡というものがある。人の口に上るので、自分では特に行ってみたいと思っていなくても、一度くらいは行っておいたほうがよいのではと思ってしまう、そんなようなところだ。古典というのもそれに似たところがあるのかもしれない。学校の歴史の授業で名前だけは聞いていても、『雨月物語』はともかく、色恋や女郎買いを主題とした『好色一代男』や『春色梅児誉美』などは、文章の一部すら目にしたことがない。ましてや山東京伝の名前は知っていても廓通いのガイドブックである『通言総籬』などは作品名さえ教科書や参考書には出てこない。しかし、出てこないから、大事ではないということではない。
「色好み」というのは、日本の文化・伝 -
Posted by ブクログ
島田雅彦が\'85年に発表したこの作品は、狂気と刺激、そして愛に満ちた人生に於いて極めて強烈に残った一作です。初めてこの作品に触れた十代の頃はとにかく主人公・真理男に自身を重ねていたものです。彼の狂気の言動と行動が私の十代の感性にはリアルに感じられていたのだろう。感情移入するのにそう時間はかからなかった。真理男の言葉は滅茶苦茶でも真理を深く秘めている。彼は単純に世界を憎んでいるわけでも見下している訳でも無い。この世が天国であって欲しいと云う「願い」が強すぎるあまり、其の反作用として嫌悪が激しいのだ。それは焦がれる「世界」に認められない愛に飢えた孤児の様に。
この作品の中には多くの印象