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Posted by ブクログ
島田雅彦が\'85年に発表したこの作品は、狂気と刺激、そして愛に満ちた人生に於いて極めて強烈に残った一作です。初めてこの作品に触れた十代の頃はとにかく主人公・真理男に自身を重ねていたものです。彼の狂気の言動と行動が私の十代の感性にはリアルに感じられていたのだろう。感情移入するのにそう時間はかからなかった。真理男の言葉は滅茶苦茶でも真理を深く秘めている。彼は単純に世界を憎んでいるわけでも見下している訳でも無い。この世が天国であって欲しいと云う「願い」が強すぎるあまり、其の反作用として嫌悪が激しいのだ。それは焦がれる「世界」に認められない愛に飢えた孤児の様に。
この作品の中には多くの印象的なシーンが登場する。例えば真理男が書いた「金脳児の生涯」という童話や彼がロシアで迷子になる場面、真理男の恋の遣り取り、最後に部屋に引き篭もる場面、総てのシーンが島田雅彦氏の流暢な文章で鮮明に描写される。其れらはどれも振り返るに、島田自身の生涯に密接に関わる出来事の描写ではないかと感じる。あたかも架空の世界を描いてある様に思わせながら、実は自伝とまではいかないまでも作者自身の体験して来た様々な嫌悪をここにぶちまけたのかも知れない。現に話の最後には真理男という人間が、作者その人であり読者自身であることを悟らされる。そう、この物語の主人公はやはり私たち読者だったのである。だが、その総ては作者の理想に満ちている。作者から読者への期待に満ちている。「真理男の様に生きろ」と。そしてこのメビウスの輪のような世界を断ち切れ、と。(…決して絶望しないように。)読後感に残る切なさを胸に大人となった私たちが天国に近づいているのかどうか、いつかあらためて読み返してみるのもよいかも知れない。
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