島田雅彦のレビュー一覧
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とてもいい内容だと感じました。
私は虫が苦手ですが、内容は文句なく素晴らしいです。
表紙にある四冊が主軸で、人類の歴史と多くの人々、関連する書籍も紹介されています。
政治や体制の主義主張などを叫ぶだけの眠たいものを想像していたら、驚くほどに人の持つ陰のような部分を浮き彫りにしていました。
・服従したがる本能(生存目的)
・強烈な承認欲求
・生まれてきた不安
どれも普段は無視しできる範囲で暮らしています。
そして、本題の「ナショナリズム」。その生まれ、価値、その危険性にも堂々と切り込んで、具体的に示してくれています。私が常々「ナショナリズム」を唱えるメディアから感じる薄気味悪さの -
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妻子持ちの銀行員が突然失踪した。しかも背任と横領の嫌疑がかかっている。真面目で誠実な人柄ゆえ、そんな犯罪に手を染めることは考えられないが、実際に融資するはずの金が全く関係ない中小企業に融資されていた。
実は銀行が加担する悪事を暴露するための爆弾が炸裂するまでの時間稼ぎとして自ら失踪したのであった。
路上暮らしの先輩達に助けられ、確信犯的な認知症の女性に助けられて今か今かと刻を待っていたが、ついに悪事を潰された人物の刺客に囚われ絶体絶命のピンチに陥る。危機を脱し、家族の元へ帰れるのか…。
島田雅彦の本だなという感じ。難しいこと考えてるなと思いきや俗なことだったり。
主人公の銀行員のキャラがけっ -
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日本文学の伝統は「色好み」なんだそうです。
その出発点となった源氏物語は、言うまでもなく光源氏の恋愛物語。
当時、考えられ得るありとあらゆるパターンの恋愛が網羅されていました。
なぜ、そんな物語が編まれたのか。
そこには政治的な思惑がありました。
それは、天皇を中宮彰子皇后の寝室に足繁く通わせる政治的思惑です。
その意味で、源氏物語は「天皇のためのポルノグラフィティであった」などと聞けば、俄然、興味が沸くというものです。
源氏物語から始まる「色好み」の伝統は、後世の作家に受け継がれていきます。
井原西鶴は「好色一代男」に世の介の54年にわたる性遍歴をつづりました。
源氏物語は「桐壷」から「夢浮 -
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冬期休暇のため長くて分厚い本が読める!と、気になっていた日本文学全集シリーズ。
現代語訳のため相当読みやすく、休み前半で読めた。
【井原西鶴「好色一代男」 新訳:島田雅彦】
光源氏、在原業平の流を汲む色好みの世之介さん、幼少のころから60歳までに遊びに遊んだ女3,742人と男725人、使ったお金は現在価格で500億近く。
そんな世之介さんの一代記(まさに一代限り。何も続かない、何も残らない)を
7歳から60歳までを1年ごとに54章で書いたもの。
昔増村保造監督、市川雷蔵主演の映画を見ました。
映画での世之介役の市川雷蔵は実に自由で前向きで明くて良かった!
光源氏や在原業平はいじいじグダグダ -
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「優しいサヨクのための嬉遊曲」
愛する女の向こうに敵がいて
愛する女のためにそいつと和解する
ラブアンドピース、しかしそれによって押し殺された感情もあり
いつかゾンビのようによみがえってくるのかもしれない
その不安が、プロレタリアへの嫌悪ともなる
「亡命旅行者は叫び呟く」
努力すればかならず報われるという信仰があって
それゆえに貧乏人への嘲笑が正当性をもっていた時代
むなしい頑張りでむなしくすり減った人間性を回復させるため
休暇を利用して女を買おうとソ連に旅立つ日本人の話
当時の貧乏なモスクワ市民は
まさしくかつての日本人…エコノミックアニマルの群れだった
むしろそこに「私」を捨ててきた彼は