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Posted by ブクログ
島田雅彦氏の独特なものの見方、表現が満載の書だった。『源氏物語』に始まり、漱石、太宰、谷崎や一葉らの作品を、著者独自の視点で「深読み」し、我々が読むのとはおそらく異なる解釈を見せてくれる。果ては、解釈の域を超え、これらの作品を俎上に載せながら、社会論のようなフィールドにまで話が及ぶ。
各章の名前も面白いが、それはそのままその章のテーマであり、その中で思いも寄らない作品が取り上げられたりしながらも決して話の一貫性が破綻するようなことはなく、実に面白おかしい、それていて深い島田氏の解釈が読める。以前、別の新書で氏による日本社会論を読み、そのときも独自の解釈にうなったものだったが、今回の話もまたおおいにうならされつつ、時にクスリと笑わせてもくれる。
主軸はあくまでも文学論だが、展開されるテーマは多岐にわたる。それらの複数のテーマを、島田氏は行ったり来たりしつつ、あるいは絶妙に絡ませつつ、様々な文学論が繰り広げられる、といった趣である。
あらためて島田雅彦という人物を好きになった。面白く読み進めていくうちに、いつしか自分の中に一つ芯ができあがったような気がする。
Posted by ブクログ
世代が近い作家の書く日本文学史であり、その上の世代が書く物と共通するものもあるが味付けは違い、自分自身としては共感しやすかった。文学は、その書き手が生きている政治、経済状況、また世代によって、異なるものであることを基本に著述されている。古典であればあるほど、本来の日本人らしさが如実に現れるところもあるが、それすら、その時代の政治状況が反映されている部分がある。源氏物語もしかりである。最後に多様性があるから、文学は成り立つものであり、多様性がなくなることは文学の危機状況になる。本書を通じて著者の現代の政治状況に対する危機意識が通底して述べられでいた。
Posted by ブクログ
日本文学の伝統は「色好み」なんだそうです。
その出発点となった源氏物語は、言うまでもなく光源氏の恋愛物語。
当時、考えられ得るありとあらゆるパターンの恋愛が網羅されていました。
なぜ、そんな物語が編まれたのか。
そこには政治的な思惑がありました。
それは、天皇を中宮彰子皇后の寝室に足繁く通わせる政治的思惑です。
その意味で、源氏物語は「天皇のためのポルノグラフィティであった」などと聞けば、俄然、興味が沸くというものです。
源氏物語から始まる「色好み」の伝統は、後世の作家に受け継がれていきます。
井原西鶴は「好色一代男」に世の介の54年にわたる性遍歴をつづりました。
源氏物語は「桐壷」から「夢浮橋」まで54帖で構成されています。
つまり、井原は確信犯として源氏物語をパロッたんですね。
文豪・谷崎潤一郎の「痴人の愛」は、15歳の美少女を自分好みの女に調教しようというサラリーマンの男の物語。
私もドハマりした作品ですが、今なら間違いなく犯罪でしょう。
実は、この「痴人の愛」も源氏物語がベースになっています。
10歳の若紫を見初めた光源氏が、育て上げた末に自分の妻にしたというあのエピソードです。
そんなふうに日本文学の系譜を見て行くのも面白いですね。
文学なんていうと、敷居が高い感じがしますが、その中心にあるのは、少なくとも日本では「エロ」だということを再認識しました。
最後の章の「テクノロジーと文学」の章も興味深いです。
つまり、人工知能に小説は書けるのか、ということ。
著者の見立ては、約束事の多いエンタメ作品は書けるのではないかというもの。
「売れ筋狙いで仕事をしているエンタメ作家から、真っ先に人工知能に仕事を奪われることになります」
ベストセラーと縁のなかった純文学作家である著者のやっかみもあるような……。
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