【感想・ネタバレ】深読み日本文学(インターナショナル新書)のレビュー

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Posted by ブクログ 2018年12月19日

島田雅彦氏の独特なものの見方、表現が満載の書だった。『源氏物語』に始まり、漱石、太宰、谷崎や一葉らの作品を、著者独自の視点で「深読み」し、我々が読むのとはおそらく異なる解釈を見せてくれる。果ては、解釈の域を超え、これらの作品を俎上に載せながら、社会論のようなフィールドにまで話が及ぶ。
各章の名前も面...続きを読む白いが、それはそのままその章のテーマであり、その中で思いも寄らない作品が取り上げられたりしながらも決して話の一貫性が破綻するようなことはなく、実に面白おかしい、それていて深い島田氏の解釈が読める。以前、別の新書で氏による日本社会論を読み、そのときも独自の解釈にうなったものだったが、今回の話もまたおおいにうならされつつ、時にクスリと笑わせてもくれる。
主軸はあくまでも文学論だが、展開されるテーマは多岐にわたる。それらの複数のテーマを、島田氏は行ったり来たりしつつ、あるいは絶妙に絡ませつつ、様々な文学論が繰り広げられる、といった趣である。
あらためて島田雅彦という人物を好きになった。面白く読み進めていくうちに、いつしか自分の中に一つ芯ができあがったような気がする。

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Posted by ブクログ 2018年07月27日

世代が近い作家の書く日本文学史であり、その上の世代が書く物と共通するものもあるが味付けは違い、自分自身としては共感しやすかった。文学は、その書き手が生きている政治、経済状況、また世代によって、異なるものであることを基本に著述されている。古典であればあるほど、本来の日本人らしさが如実に現れるところもあ...続きを読むるが、それすら、その時代の政治状況が反映されている部分がある。源氏物語もしかりである。最後に多様性があるから、文学は成り立つものであり、多様性がなくなることは文学の危機状況になる。本書を通じて著者の現代の政治状況に対する危機意識が通底して述べられでいた。

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Posted by ブクログ 2023年05月26日

 題名から堅苦しいのかと思いきや、気づけば説明解釈に納得し、つい作品を読んだ気にもさせてくれる。勿論それは非常に危険なことなのであるが、紹介されている作品や、簡単にその作者の時代背景や、どういった生き方をしたかも詳細に説明もしてくれており、作者作品に興味を持たせてくれること間違いない。
 最新の作品...続きを読むでなく、古典や王道の漱石をまた読みたくなる。最後の方は未来における文学がどうなる、どうあるべきかの指針を、人間自身の人工知能との付き合いを通して考えている。

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Posted by ブクログ 2019年07月20日

日本文学史の1000年をざっくりとかつ斬新的に説明してくれている。

特に、色好みの日本人・ヘタレの愉楽・恐るべき漱石・俗語革命・エロス全開の章が面白い。

著者が作者から離れた立ち位置にいる方(時代が離れている)が面白い。





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Posted by ブクログ 2018年04月25日

 そう深くは、ない。
 文学史としては、割と常識的かな。
 ただ、高校レベルから離れている人には、けっこう面白いと思う。

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Posted by ブクログ 2018年01月15日

日本文学の伝統は「色好み」なんだそうです。
その出発点となった源氏物語は、言うまでもなく光源氏の恋愛物語。
当時、考えられ得るありとあらゆるパターンの恋愛が網羅されていました。
なぜ、そんな物語が編まれたのか。
そこには政治的な思惑がありました。
それは、天皇を中宮彰子皇后の寝室に足繁く通わせる政治...続きを読む的思惑です。
その意味で、源氏物語は「天皇のためのポルノグラフィティであった」などと聞けば、俄然、興味が沸くというものです。
源氏物語から始まる「色好み」の伝統は、後世の作家に受け継がれていきます。
井原西鶴は「好色一代男」に世の介の54年にわたる性遍歴をつづりました。
源氏物語は「桐壷」から「夢浮橋」まで54帖で構成されています。
つまり、井原は確信犯として源氏物語をパロッたんですね。
文豪・谷崎潤一郎の「痴人の愛」は、15歳の美少女を自分好みの女に調教しようというサラリーマンの男の物語。
私もドハマりした作品ですが、今なら間違いなく犯罪でしょう。
実は、この「痴人の愛」も源氏物語がベースになっています。
10歳の若紫を見初めた光源氏が、育て上げた末に自分の妻にしたというあのエピソードです。
そんなふうに日本文学の系譜を見て行くのも面白いですね。
文学なんていうと、敷居が高い感じがしますが、その中心にあるのは、少なくとも日本では「エロ」だということを再認識しました。
最後の章の「テクノロジーと文学」の章も興味深いです。
つまり、人工知能に小説は書けるのか、ということ。
著者の見立ては、約束事の多いエンタメ作品は書けるのではないかというもの。
「売れ筋狙いで仕事をしているエンタメ作家から、真っ先に人工知能に仕事を奪われることになります」
ベストセラーと縁のなかった純文学作家である著者のやっかみもあるような……。

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Posted by ブクログ 2018年04月29日

最初のほうの、エロの章は面白い。源氏物語はあまり興味なかったが、この本をきっかけに、谷崎版で読もうかと思った。最後のAIの章は、わかるけど、不要な章だなあ。

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Posted by ブクログ 2017年12月18日

 直木賞芥川賞選考委員でもある作家島田雅彦氏、彼の独自の思想と観点による日本文学史概論。
 全十章は時代順に構成され、古典『源氏物語』に見る色好みの伝統から、西鶴と近松に見る江戸文学、漱石・一葉・谷崎から迫る近代文学の深奥、太宰と安吾らの作品から感じる戦後日本の精神と文学、そして文学の未来「AI小説...続きを読む」までと内容は多岐に亘る。
 多様な視点と膨大な知識の上に成り立つ歴史観、そして作家の感性から日本文学史を捉え直し、日本文学に通底する日本人のDNAと文学そのものの存在意義を確信に満ちた光で照らし出す新しい文学論。


 私にとって日本文学は茫洋たる大海と同じである。文学史の概要を言葉の上で理解することは海の広さと形を地図で確認することと同じように難しくはないが、その実態を体感的に理解するにはその広さと深さの前にただただ立ち尽くすしかなかった。
 本書はそんな大海にいくつかの島を用意し、先導者として航路を示してくれる。本書で紹介され論じられている『源氏物語』、井原西鶴、近松門左衛門、夏目漱石、樋口一葉、谷崎潤一郎、『日本風景論』、『代表的日本人』、『武士道』、『茶の本』、太宰治、坂口安吾、これらの書と文学者の著書をまずひとつの目指すべき島として日本文学「海」の航海を改めて始めてみようと思う。本書にはそれぞれの島の案内図と見所が記されているのだから。
 また本書は、文学作品とはそれぞれの作家の単なる創作物ではなく、そこには日本人の価値観やその時の社会情勢、経済や歴史や精神との深い結びつきがあることを教えてくれる。文学の最奥部を見つめ、文学からしか抽出できない「人とは何か」「私達とは何か」というテーマに対する答えを導き出そうとする著者の姿勢を感じ取ることができる。

 筆者の言葉では、文学とは
「権力による洗脳を免れる予防薬であり、そして、求愛の道具」であり、
「好奇心を鍛え、逆境を生き抜く力を与え」てくれるものであり、
「路傍に咲く一輪の花のように、悪人の心には情を、絶望する者には希望をもたらす」
ものだという。
 日本文学の価値を再発見できる一冊である。

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