【感想・ネタバレ】島田雅彦芥川賞落選作全集上のレビュー

あらすじ

デビューからわずか四年で、芥川賞に六回ノミネートされ、六回落選した現・芥川賞選考委員島田雅彦の華麗なる落選の軌跡にして初期傑作集。大学在学中に発表された鮮烈なデビュー作「優しいサヨクのための嬉遊曲」のほか、「亡命旅行者は叫び呟く」「夢遊王国のための音楽」を収録。作家生活三十周年記念企画。

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Posted by ブクログ

「優しいサヨクのための嬉遊曲」
愛する女の向こうに敵がいて
愛する女のためにそいつと和解する
ラブアンドピース、しかしそれによって押し殺された感情もあり
いつかゾンビのようによみがえってくるのかもしれない
その不安が、プロレタリアへの嫌悪ともなる

「亡命旅行者は叫び呟く」
努力すればかならず報われるという信仰があって
それゆえに貧乏人への嘲笑が正当性をもっていた時代
むなしい頑張りでむなしくすり減った人間性を回復させるため
休暇を利用して女を買おうとソ連に旅立つ日本人の話
当時の貧乏なモスクワ市民は
まさしくかつての日本人…エコノミックアニマルの群れだった
むしろそこに「私」を捨ててきた彼は
その罪深さを、追いかけてきた「私」に断罪されたあげく
結局、お茶漬けナショナリズムで癒されるという

「夢遊王国のための音楽」
無教養ではないが上昇志向が強く、無駄に気位の高い中流家庭に育ち
頭がおかしくなりかけている男の子の話
まだパソコン通信も一般的には認知されてない時代だが
「秘密結社」という形で、引きこもりの連帯を夢想している

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2017年10月31日

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