あらすじ
ツイッター、ブログなどSNS全盛時代に求められる美しい表現とは何か。
短編小説の名手でもある著者が、ときに古今東西の名著を引き合いに出しながら名文の書き方を教える。
大学での講義をまとめた現代文章読本。
芥川賞選考委員で現代文学の旗手、文壇の貴公子・島田雅彦が、古今東西の名著から豊富な事例を引き合いに出し、「人に伝わりやすい短文の作り方」をアドバイス。
大学教授としてSNS世代の若者と接している経験も生かし、現代人に役立つ短い文章のテクニックをアドバイス。
教授を務める法政大学の授業「メディア表現ワークショップ」を基に書いたSNS時代の文章読本。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私の最も好きな作家の文章論であり、ゆえに読む前の期待値が大きすぎたのかもしれない。タイトルは「文章作法」であり、前半はたしかに文章作法として読めたのだが、後半に移るにつれ、内容は人生論あるいは社会批評になってしまった感がある。
思い切って、本書を人生論、もしくは社会論評として読めば、内容はそれに見合った、著者ならではの洞察にあふれた書として読むことができる。だが、「文章作法」を読みたいという動機で本書を手にした私には、いささか拍子抜けの感があった。
島田雅彦氏の小説は、かなりの数を読んだと自負しており、その中にはすばらしい佳作が多くあった。だからこそ氏の書いた「文章作法」に期待した。少しでも島田氏の文章に近いものが書けるように、せめて、自分の文章力を上げる一助とすべく、本書を手にしたのである。その結果、読み始めるときの期待値と読後の満足度の差がいささか大きくなってしまった。
人生論として、社会批評として読めば、その内容は概ね首肯できる。下手な社会評論家のコラムやブログなどより、はるかに正鵠を得ている。期待値と満足度の差は、拘泥したまま読み進めてしまった自分の責任であるかもしれない。せめてサブタイトルででも、「人生論」的な内容を彷彿とさせてほしかった。その点が、個人的には、非常に悔やまれる。
ところで島田氏の文章自体は、非常に難解とも思える内容を扱っているにもかかわらずすっと読み進めることができる。さすがに文学教授も務める氏の面目躍如といったところである。時折、やや牽強付会に思える記述もあるにはあるが、概ね島田氏の考えには共感できる。そう考えてみると、タイトルも決して方法論に偏ることなく、あくまでも「文章を書くための心構え」としての「作法」であることを理解したうえで読めば、腑に落ちる内容は全篇にちりばめられているのであり、その意味でこれはもう社会的文学論であるのかもしれない。
巻末には島田氏が、新聞記事から法律の条文まで添削している。ここを読むと、無駄をそぎ落とすことで、かえって物事は明確に、かつ分かりやすく伝え得るのだということを痛感させられる。