宇江佐真理のレビュー一覧
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短編集。
平成7年にデビュー後、3年間連載したという初期のもの。
作者の地元・函館に近い松前藩の記録を元にしたものなど、かっちり描かれています。
松前藩は日本最北の藩だそう。
松前藩に忠誠を誓うアイヌ12人の「夷酋列像」という絵があり、見事な絵だが、実像とは違うという説もあり、いつか取り上げたいと思っていたとのこと。「蝦夷松前藩異聞」という作品にまとめた。
「藤尾の局」は商家の後妻になって、なさぬ仲の息子達の狼藉に悩まされる女性。
末娘がなぜ怒らないのかと話を聞くと、大奥奉公で苦労した経験があり、それに比べれば大したことはないから、と。その時一度だけやり返したが、実は後悔が残ったのだという。 -
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人気の「髪結い伊三次捕物余話」4作目。
流れるような文体で、時代色たっぷりなのに、わかりやすい。
前作でお文の家が火事になって焼け出され、やっと夫婦になった伊三次とお文。
深川芸者の文吉として鳴らしたお文に長屋暮らしは無理があったが、お文のほうも、すぐ引っ越したいとは言わなかった。
長屋のおかみさん連中は皆よってたかって、炊事の面倒まで見てくれたのだ。
ところが、思いがけない事件の余波で、お文は長屋を飛び出すことに…
これっきりになってしまう仲ではないけれど、ここは自分の居場所でなかったと道に立ち尽くすお文の心情が哀しい。
伊三次が手伝いをしている奉行所の不破が「お文に無理をさせたんじゃな -
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シリーズの・・・・・何作目だったっけ?今回もジュニア世代の活躍が目立ちますが、従来のシニア(?)世代もまだまだ主役で頑張っています。そんなこんなで読み進めたところ、最後の最後で・・・、なんとゆうことでしょう!そりゃーヒドイよ、宇江佐センセ!とゆうラストで今回は幕を閉じます。コレを読んでる今のご時世と照らし合わせ、何ともフクザツな思いがします。まあ、これをお書きになっている頃には、2011年の日本がこんなことになってるとは思いもしなかったのでしょうが。でも、そんな中でも強く生きようとする人々の姿もあり、ちょっと救われました。また続編をお待ちしております。
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江戸時代を選んで書いているのは、名もない一人の庶民と自分が繋がっているかも知れない、という思いからだと著者の宇江佐さんは語っているそうです。また、今の時代の便利さやスピードに対する疑問からともおっしゃっているそうです。
今の時代、スマートフォンなどが登場し、どんどん便利になり、さまざまなものの流れが速くなっています。
人と人との関係も、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアがコミュニケーションに欠かせなくなりつつあります。情報の伝播力はすさまじく、中東では革命に一役買っていたという。
ネットを中核にしたコミュニケーションの領域には、もはや国境は見当たりません。
今回の -
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髪結い伊三次と深川芸者のお文のシリーズ3冊目。
粋な江戸下町の情緒と、不運や罪にまみれつつも繋がりゆく人の縁。
「因縁堀」
廻り髪結いの伊三次は、北町奉行所の同心・不破友之進の小者(手先)もつとめていたが、前作で不破から離れる。
その後も、不破の妻のいなみの危機を救う急場にひそかに駆けつけたりと、関わりもあったが、元に戻る決心はつかなかった。
お文が女掏摸に財布をすられ、そのやり口が地元の者ではないと気づく伊三次。
岡っ引きの増蔵がその女と何か関わりがあるらしい?
「ただ遠い空」
お文の女中のおみつは結婚が決まっている。
お文を慕い、後が決まらないと辞められないというおみつ。
そんな所へ、事件 -
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シリーズ2冊目。
江戸時代に生きていたの?と思うような自然な書きっぷり。
芸者と間夫という仲の文吉と伊三次。
廻り髪結いの伊三次は、同心の不破の髪を毎朝結いに行き、時おり手伝いもしていました。
伊三次は貯めておいたお金を盗まれて店を持つ夢が遠のき、所帯を持ちたいと思いながらも、文吉こと、お文にはっきりしたことを言えずにいます。
深川芸者で自前で出ている文吉には、ふたたび旦那の話が。
張り合う芸者より着物がみすぼらしいと比較された文吉は、思わず…
二人の間には危機が。
一方、伊三次はたまたま昔のご贔屓の所に立ち寄った後で、老人が殺され、思わぬ強盗の疑いを掛けられてしまいます。
不破はかばいきれず -
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通詞の娘で長崎で育った女性・田所柳が子供の頃から語学に興味を持つ。
父はもとは職人だったが、オランダのカピタンがみやげにする櫛や簪などを買いに来る店だったためにオランダ語を覚えたのが評判となり、通詞として認められ、幕府から長崎に派遣される。
安政三年、お柳が10歳の時から始まります。
お柳は特にフランス語に堪能で、女だてらに通詞になるのが夢。出島に出入りできる女性は遊女のみなので当面は無理だったのだが。
父を認めてくれていた榎本の御前の息子・榎本釜次郎(武揚)と幼なじみだったという。
釜次郎が海軍伝習所に2年学んでいた間、休みには家に来る関係だった。
父を亡くした柳は江戸に戻り、母親と二人で生 -
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藩主の敵討の手伝いをすることになった刑部小十郎。父親の伝手を頼って江戸市中の借家に住まうことになる。その大家であり古道具屋「紅塵堂」の娘・ゆたとふたりは互いに惹かれあう。周囲に翻弄されつつ不器用に生きるふたりを中心とした青春時代小説。
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この話は別のお話『銀の雨』と設定を共有しています。『銀の雨』に出てきたゆたがヒロイン。正直、『銀の雨』を読んでいると、あのゆたが恋なんて(笑)と思ってしまいます。ごめんなさい。
もどかしいような切ないようなそんなお話です。主人公が藩に仕える武士で(嫌々ながらも)仇打ちの為に奔走する為、かなり武士について踏み込んでいるかなと思います。
個人的に賢龍のそ