宇江佐真理のレビュー一覧
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江戸に専門の検死医がいたかどうかは不明だそうだが、検死ばかりしている医者一家の三男坊とお産婆の妻の話である。彼女の作品の女性主人公はみな職業持ちで、内助の功を誇ってばかりではない。勝手に作り上げられた大和撫子の型にはまらない主人公たちを見ているのはいい気分だ。夫婦としてのバランスもとてもいい。武家や大店はいざ知らず、一般庶民はほとんど共働きだったというし、こちらが本当の江戸の生活かもしれない。獣の肉を食べると出るものが臭いと笑わせて始まる山くじらは寄生虫で終わる悲しい話だった。表題になっている室の梅も暗さやつらさを乗り越え明るく、常套でもいい終わり方だった。
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表題はなんとローリング・ストーンズのPaint it Blackからだとか。作家さんというのはいろんなところからアイデアを探し出すものね。独り者同士飄々と暮らしていた伊三次と文だけど、一緒になって、ややが出来てなぜか伊三次が一気に男前になった。文は赤ん坊に振り回されている気ままに生きてきた初心者母という意外だけど、やたらにできた母親になるより現実感があっていい。彼女の年まで一人で生きてきて、そうそう他人に合わせられるものでもなく、ましてやNoは受け付けない子供の世話は大変。
まだまだ続きそうなこのシリーズ、緑川や不破も子供の世代が顔を出してきていい感じ。あとね、カバーの絵がいいね。というか少女マンガに和服を持ってくる漫画家さんにはぜひこれで勉強してもらいたい。 -
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短編集。
平成7年にデビュー後、3年間連載したという初期のもの。
作者の地元・函館に近い松前藩の記録を元にしたものなど、かっちり描かれています。
松前藩は日本最北の藩だそう。
松前藩に忠誠を誓うアイヌ12人の「夷酋列像」という絵があり、見事な絵だが、実像とは違うという説もあり、いつか取り上げたいと思っていたとのこと。「蝦夷松前藩異聞」という作品にまとめた。
「藤尾の局」は商家の後妻になって、なさぬ仲の息子達の狼藉に悩まされる女性。
末娘がなぜ怒らないのかと話を聞くと、大奥奉公で苦労した経験があり、それに比べれば大したことはないから、と。その時一度だけやり返したが、実は後悔が残ったのだという。
妹に話を聞いた息子達は‥
表題作の雪は、富士山の雪。
男装で、剣の腕を磨いてきた娘・知佐。
剣の指導者としてお城に上がる夢を抱いていたが、なかなかそれは難しいこと。心配した両親や伯父が一計を案じ、縁談をまとめてしまう。
江戸見物に同行したら、明日は祝言と言われるのだ。
相手は一回り年上で、3年前に妻を亡くし、幼い子がある鶴見俵四郎。
驚愕して断る娘に、相手方もそれは無理があると同意、帰る算段がつくまで逗留するようにと言ってくれる。
俵四郎は仕事で帰りが遅く、約束した手合わせも出来ないまま日が過ぎる。
寂しげにしている子供・松之丞と遊んでやって懐かれて、男親ともいつしか惹かれ合うように。
落ちつく所は見えるが、心地良く引っ張っていってくれます。 -
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人気の「髪結い伊三次捕物余話」4作目。
流れるような文体で、時代色たっぷりなのに、わかりやすい。
前作でお文の家が火事になって焼け出され、やっと夫婦になった伊三次とお文。
深川芸者の文吉として鳴らしたお文に長屋暮らしは無理があったが、お文のほうも、すぐ引っ越したいとは言わなかった。
長屋のおかみさん連中は皆よってたかって、炊事の面倒まで見てくれたのだ。
ところが、思いがけない事件の余波で、お文は長屋を飛び出すことに…
これっきりになってしまう仲ではないけれど、ここは自分の居場所でなかったと道に立ち尽くすお文の心情が哀しい。
伊三次が手伝いをしている奉行所の不破が「お文に無理をさせたんじゃないか」というのは優しいですね。
伊三次もくわしく事情を知って反省し、ようやく家を構えることにする。
「鬼の通る道」は不破の一人息子、龍之介が論語を習いに私塾に通うようになる。
当時、素読吟味は侍の大事な教養で、試験もあり、不破の妻いなみが受けさせたがったのだ。
伊三次がいなみのことをいつも褒めるので少し悋気したこともあるお文だったが、いなみと知り合うようになって、深く納得しているお文。
しかし、どちらかというと剣術の方が得意な龍之介は熱を出してしまう…?
「さんだらぼっち」とは、米俵の両端に当てる藁の蓋のこと。
桟俵法師がなまったもの。
大切なお米を入れる物だから、使い終わった後にも拝む物を乗せるのに使ったりする。
木戸番の夫婦が、疱瘡が流行ったときに、このさんだらぼっちを家の棚に載せて拝んでいたのが外から丸見えで、夫婦に懐いて通う子供達がこの店のことをさんだらぼっちと言うようになり、挨拶するにも使ったのだ。
木戸番では木戸の開け閉てや夜回りの他に、日用品も置いて売っていて、お文も馴染みになる。
お文の女中だったおこなはお文の家が焼けて居場所をなくし、水茶屋へ勤めに出ている。
正吉がおこなに気があって通ってくるので、正吉の親や番頭が心配して釘を刺しに来る。
正吉もいささかぼんやりした若者なので、世間を知るようにと岡っ引きの増蔵親方の所に見習いに来ているのだったが。少し大きな米搗き屋の一人息子なのだ。
おこなは、もともと水商売でそこの主人と結婚したこともある女だから、かたぎの店の女主人に迎えられることはまずあり得ない…
湯屋に嫁いだもう一人の女中おみつは、妊娠。幸せになっていると思われたが?
所帯を持ったものの、波乱の続く時期になっていたんですね。