夢枕獏のレビュー一覧
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星5つでもよいのだが、「音無しの剣」の術理が明かされる下巻はさらに面白いはず。星4つにとどめておく。
史実に詳しい者なら、近藤・土方・沖田が本作で死ぬことはないと解りきっている。だったら、架空の剣豪と刃を交えても安心していられるかというと、ハラハラさせてくれる夢枕獏の筆力。
新選組ファンにとってバイブルと言える司馬遼太郎『燃えよ剣』。本作の沖田総司は、司馬版に殺人嗜好症を加味したような残念な奴。あと一歩で半村良『産霊山秘録』の沖田になってしまう。
大好きな土方歳三が活躍するのは嬉しいが、「丈六尺に近い」というのはどうだろう。実際は170前後ではないか。 -
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晴明は、都に大きな異変の前兆があると感じた加茂保憲から、顔にできた瘡に苦しむ平貞盛を救ってほしいという依頼を受けますが、貞盛のもとを訪れた晴明は、蘆屋道満がこの件かかわっていることを知ります。その後も、都にいくつもの異変がつづけて起こり、それらはすべてちょうど二十年前の事件の関係者たちをめぐるものであることが明らかになっていきます。
将門伝説を題材にとった長編で、かなりおおがかりなストーリーとなっています。飄々とした態度で事件のなりゆきを見つめる道満はもちろん、将門の首級を上げた俵藤太やとらえどころのない浄蔵など、登場人物たちもそれぞれが独特なキャラクターの持ち主で、これらの仕掛けを著者がど -
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2021年最初の一冊にふさわしい良作。
深町の平凡な人生に納得できない葛藤
羽生丈二の山にかける熱い想いや挫折
ジョージマロリーのエヴェレスト登山の謎
色々な要素が詰まっていて読み応え抜群。
カトマンズという異国の地が主な舞台となっているのも個人的には旅の情緒があってよい。
平凡な人生を特別なものにしてくれる、自分は周囲の人とは違う、生きている実感を山は与えてくれる…
深町のマロリーの写真にすがる気持ちや羽生の生き様にそんな人間のうちに秘めた欲望を読み取った。
だからといって全く平凡な人生を送っている自分は山へ気持ちがいかない。自分では考えられないからこそ
ここまで山に取り憑かれた男たち -
購入済み
漫画版餓狼伝を読み、原作に興味が出てきたので購入。
丹波文七だけでなく他の登場人物全員の、戦闘描写、心理描写が多いので感情移入して読めました。
漫画版ではあっさり終わった丹波VS梶原戦でしたが、原作では深い闘いが繰り広げられてとても面白かったです。
何よりスッキリとした文章なので、格闘技に詳しくなくても読みやすい。 -
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もう『陰陽師』のパラレル・ワールドもしくはこのお話の空海&橘逸勢ペアが後の夢枕版:安倍晴明&源博雅ペアの前世と考えて読むことにしました。そうしたら、どうして同じような話なんだろう…という邪念が消えて、素直に楽しめるようになりました(笑)
この巻はそれなりに話が動いたのでクライマックスへ向かってのワクワク感がありました。高力士さんから阿倍仲麻呂さんへの「手紙」がもったいぶっていた感はありましたが…。
密教の話は、晴明さんが博雅さんに話す「呪」の本質と同様わかったようなわからないような感じだったけれど、なんとなく普段感じない角度から「人生」を考える「種」がもらえたような気がしたかな。般若心経の