夢枕獏のレビュー一覧
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「瓜仙人」「鉄輪」「這う鬼」「迷信」
「ものや思ふと……」「打臥の巫女」「血吸い女房」の7篇収録でシリーズ3作目。
村上豊のカラー絵にもなった「鉄輪」。
丑の刻参りの末に生成りの鬼になった徳子は強烈。
物語もかなり強烈。
「ものや思ふと……」では宇宙の概念がつづられる。
宇は天地、左右、前後・・・の空間を意味し、
宙は過去、現在、未来・・・の時間を意味する。
空間と時間を合わせた宇宙という言葉を、
中華文明はすでに持っていた。
そして、人は呪という手段でこの宇宙を理解していた、
と、晴明は続ける。
また、言葉は呪を盛るための器であるとも言う。
──んんん、もしかして数学的認識は呪なのだと思 -
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陰陽師シリーズの一作目、昭和63年(1988)作。
獏さん37歳くらいかな。
シリーズを虫食いで読んでいたのと、
昨年2年ぶりに『陰陽師 烏天狗ノ巻』が
出たので読み直そうと決めた。
再読の一作目、やっぱり面白い。
「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」
の「名前はこの世で一番短い呪(しゅ)」、
「眼に見えぬものさえ名という呪で縛ることができる」と安倍晴明は言う。
これで、もう縛られてしもうたがね。
「梔子の女」「黒川主」「蟇」「鬼のみちゆき」
「白比丘尼」では人魚の肉を食し不老不死になった尼から、鬼を払う話。
この女は晴明の初めての女。
──花は枯れるから花で、枯れぬ花は花でない。
『あ -
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ついに無門と柳の決戦が始まった「ゆうえんち」4巻。
これがラストバトルとなるか、それとももう一盛り上がりあるのか。ありそう。
決戦の前に明かされた無門と愚地克巳の父親死亡の真相。サーカスにいた頃の生みの親と、育ての親の結末。育ての親というと語弊があるか。克巳はおそらく、ことの真相は知らないのではないのかな?事件当時はまず知らないし、現在でもどうなのか。それについての描写あったかなぁ。
育ての親というのは、無門も克巳も神奈村正介でなく、松本太山であり愚地独歩であるのは、その後の彼らの成長を見れば自明。語弊という言葉では足りないな。
過去を語り終えて、さあ決戦という前にまさかの愚地独歩参戦。相 -
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柳龍光と神野仁、葛城無門と羽鳥薫、葛城無門と神奈村狂太。
まさか神奈村狂太が無門の叔父だとは、まさか御留式の使い手とは。「ゆうえんち」で明かされた人間関係の中でも結構なレベルの驚き。
これ大丈夫?バキ世界の相関図どんどん更新されてゆくのだけど。案外、世間は狭いんだなぁ、と思います。そして、久我重明の存在が夢枕獏ワールドとの繋がりも生んでしまっているので、もう広がりすぎて何が何だか。
便利すぎるよ、彼。そもそも「獅子の門」と「餓狼伝」をつながってしまう形で久我重明を登場させたのは、板垣さんなのでお互い様か。
「好きにやってください」の二人なんでしょうね。
なかなか出会えない柳と無門。違う場所で -
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男による男のための、実に男くさい小説。
エヴェレスト南西壁、極限に挑んだ羽生や山男達の物語のようで、実はカメラマン深町がただひたすら、もんもんとする、実に青臭い男の物語でもある。
「なぜ登るのか」は「なぜ生きるのか」に通じる問いかけ。
登場する男たちは、山頂に到達した時の達成感、高揚感、清々しさとは無縁で、その高嶺にある幻影を求め、悩み、うめき、歯を食いしばり、這うように歩き、まるで胃袋のものを吐き出すように言葉を絞り出していく。
深町も言っているけど、あの場所、あの濃い時間を一度体験してしまったら、もう日常と言う、ぬるま湯の世界では生きられないんだな。取りつかれた者たちの物語。