竹岡美穂のレビュー一覧
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“「……心葉くん、今、どこを見てた」
「……えーと」
正直に答えたら、殴られるだろうか。
けど、遠子先輩は正直に答えなさいというように、上目遣いに睨んでいる。
「関東平野のような洗濯板です」
とたんに、ペットボトルが飛んできた。
「なによそれーっ!わたしの胸が、洗濯板で関東平野だって言うのーっ!」
水が、ばしゃりと降りかかる。
「うぅっ、ひどい!ひどいわ!わたしだって好きで洗濯板なんじゃ」
涙目の遠子先輩がさらにげんこつを振り上げたとき、部室のドアが、勢いよく開いた。”
牛園君の話と小鹿ちゃんの話が特によかった。
最後のちぃ視点の話とか素敵で、思わず泣いた。
ちぃと流人には幸せになってほしいよ。
“喉が小さく鳴った。
頭の中に、綺麗な鈴の音が、りん、と響いて。
空っぽだった心に、あたたかなものが、静かに降り積もってゆく。
流くんのほうへ向かう足が、自然と速くなる。
凍りついていた頬がとけて、泣きそうになる。
胸も、喉も、全部震えている。
流くんが、目を細めてうんと愛おしそうに笑っている。あたしのほうへ、ゆっくり近づいてくる。
―――嘘つきのちぃも、空っぽのちぃも、愛してるよ。
いつも、流くんが言ってくれること。
そのたび、心の一番深いところが甘く、熱くなる。
あたしも流くんが好き。流くんを愛している。
だから――だからね、流くん――。” -
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“そう言いながら、夕日の色をした大粒の涙をあふれさせる。
ああっ、本当にっ!なんて、早とちりなんだっ!森!
オレは呆れるやら、腹が立つやら、胸が切なくなるやらで、気がつくと、言えなかった言葉を口にしていた。
「オレが好きなのは、琴吹じゃねーよ」
「えっ」
「オレが好きなのは、おまえだ、森」
鼻水をすすりながら、手で顔をごしごしこすっていた森が、目をまんまるに見開く。
「なに……言ってんの?反町くん?」
「だから、オレが好きなのは、最初からおまえなんだっ」
ああ、言っちまった。やべ、顔が熱くなってきた。”
ななせがすごく可愛い。
あと、森ちゃんと亮太君のカップルは本当楽しそう。
“「けどさ!先輩も、人に教えるだけじゃなくて、たまには自分のために読んで、実践してみるのもいいと思うぞ」
天野先輩が目を見開く。
オレは、晴れやかに言った。
「恋をしろよ!文学少女!」
それはオレの、彼女へのエールだった。
ためらったり誤魔化したりせず、自分の気持ちをしっかり見つめて、まっすぐに行動すること。ハイネやバイロンや中也やゴールを通じて、それを教えてくれたのは、この“文学少女”だから。
「卒業おめでとう!」” -
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“「心葉くんはわたしのものよ!あなたなんかには、絶対に渡さないわ!」
水風船みたいに頬をふくらませて叫ぶ“文学少女”の背中で、ぼくは顔を真っ赤に染めて、口をぱくぱく動かしたのだった。
その、二十分後―――。
「いいかげんにしてくださいっ!いつ、ぼくが、あなたのモノになったんですか!」
牛園さんが男泣きに泣きながら走り去ったあと、ぼくは文芸部の部室で、遠子先輩に文句を言っていた。
この人はよりによって、牛園さんに向かって、心葉くんと両想いなのはわたしのほうよとか、心葉くんをとっちゃダメぇとか、叫んだのだ。
「だって―――だって、心葉くんは、大事な文芸部の後輩なんですもの」
ぼくが本気で怒っているのを、さすがに感じているのだろう。ご機嫌を窺うように、びくびくした上目遣いで答える。
この場合、“大事な”が掛かるのは、“後輩”ではなく“文芸部”だ。ぼくと遠子先輩の間に、甘いエピソードは一切ない。糖分ゼロのビスケットのように、味気も色気もない関係だ。なのに、いきなりあんな告白まがいの台詞を叫ばれたら、びっくりするし、恥ずかしすぎる。”
短編詰め込み。
もぎたての果実のような初々しさと瑞々しさのある甘い話。
今までの補足的な間の話とか、最終話のその後の話とか。
表紙で遠子先輩が心葉君の袖を引っ張ってるのがなんか可愛い。
“遠子ちゃんはそこで、うきうきと包装紙を選びはじめた。
「……遠子ちゃん、手作りもするの?それともラッピングだけ交換して、手作りっぽく見せるの?」
「いいえ。これは特別なの」
「特別?本命用ってこと?」
遠子ちゃんが、ぽっ!と頬を赤らめる。
「えーと、そ、そういうのではないのだけど……やっぱり、せっかくバレンタインデーなんだから、なにかあげたいかなぁって……。だから、少しずつチョコを集めていたの。けど、そのままあげるのは、あんまりだし……。まったく不純な気持ちはないのよっ。ただその……せめて外見だけなら、うんと可愛くしても、いいかなーと思って」
「遠子ちゃん、言ってる意味がよくわからないよ」
遠子ちゃんは、真っ赤な顔でおろおろしたあと、照れくさそうににっこりした。
「つまり、“特別な義理チョコ”ということよ」” -
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“家族に梅味の煎餅を、舞花にうさぎのぬいぐるみを選んで、さっさとレジへ行こうとすると、遠子先輩がぼくの手元を見て言った。
「心葉くん、それだけ?お友達の分はいいの?」
「旅行土産を渡すような知り合いは、いませんから」
ありのまま淡々と告げると、身を乗り出してきた。
「ななせちゃんは?最近よく一緒にいる芥川くんは?それに千愛ちゃんだって」
「竹田さんには遠子先輩から渡すでしょう。芥川くんとはそういう仲じゃないし、琴吹さんには、嫌われてるみたいです」
遠子先輩が、驚いたように目を見張る。
「ええっ、心葉くん。ななせちゃんから暑中見舞いをもらったでしょう?」
「いいえ」
何故、暑中見舞い?
遠子先輩は腕組みして「うーん……」と唸り、すぐに顔を上げてにっこりした。
「やっぱり、ななせちゃんにお土産を買いましょう。芥川くんにも千愛ちゃんにも!日々のおつきあいは、ささやかなことの積み重ねが大切なのよ。お土産からはじまるロマンスや友情もあるんだから。ほら、この干し柿なんか美味しそうよ」
「干し柿からはじまるロマンスって、どんなですか!」”
太文字が一体誰の視点なのかが最後に明かされるところが好き。
すごいなって思う。
だけどこれ、太文字はすべて同一人物視点と考えていいのか少し迷う。
“あの夏、彼女の心の中で揺れ動いていた、ひそかな葛藤と哀しみを想像するとき、ぼくの胸は、あたたかく、切なく、締めつけられる。
卒業してゆく彼女と最後に交わした約束や、彼女がぼくに残していった小さな憎しみや、痛みが、甘くよみがえる。
変化はあの夏から、すでにはじまっていた。
花のような、月のような、夢のような――やっぱり、あの夏は特別だった。
時計を見ると、じきに午後三時になるところだった。
キッチンで、お茶の支度をしているのだろう。時折、ぱたぱたと歩く音や、棚を開け閉めする音が聞こえてくる。
今日はレモンパイを焼くのだと、酸っぱくて美味しいのだと、張り切っていた。
合い鍵を渡してあるので、仕事場兼自宅のこのマンションに、毎日のようにやってきて、ぼくの世話を焼く。
もぉ面倒くさいから引っ越してこようかなと、この前も甘えるように言っていた。いいかげん結婚しちゃえよと、よく友人にひやかされる。
そろそろドアを開けて、呼びに来るはずだ。
ぼくは書きかけの原稿を保存し、ワープロソフトを閉じ、立ち上がった。
――あなたは、私を知りますまい。” -
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カバー絵の様子が少し変わってたり、章毎に標題の部分にセラフェノ文字も表示されて雰囲気が出てる。
この文字はただのデザインなだけでなく、きちんとした意味もあるらしい。
今まで学園がメインだった舞台は、新種のタカリスト…一連のエッグ事件の中身が披露されるという、凱旋都市エンジェに。
その披露会にイ短調による依頼でネイトやクルーエル達が出席することに。
披露会に先駆けて開かれる名詠武道会を見に行くところで新キャラも登場。
クルーエルの中のアマリリス、夜色名詠のネイトの対局な空色名詠のシャオ、少なからず思っている人物と再会したエイダ、そしてすべての事柄の根源となる、ミクヴェクス(ただそこに佇立する者)。
物語がどんどん収束に向かっているのが分かるね。
ネイトとクルーエルの関係も少しずつ変わってきてお互いを意識し始め、ちょっと意識が暴走気味のクルーエルが可愛かったり。
そんなクルーエルの道行きはネイトの選択で左右するというアーマの言葉。
当のネイトは夜に忍び込んだ闘技場でシャオと対面…ってところで終了。
次はいろいろとこの世界の謎の一端が判明しそうで楽しみだね。