久しぶりにとてものめり込んだ小説。一度読み終えたあと、どうにも本の世界から戻れずに、もう一度最初のページを開いた。
二度目もわくわくした。やっぱりファンタジーが好きだ!
ただ、好き嫌いはけっこうはっきり分かれそうな内容です。
舞台は、太平洋上に浮かぶ島イシャナイ。
近代の国際社会よって「
...続きを読む発見」されたその島では、欧州からの移民によって築かれた国家と、それに対抗するゲリラの抗争が続いていた。
島の生態調査のためやって来た主人公の瞳子は、そこで、ゲリラのリーダーにして、原住民族の象徴とも言うべき「ヤン」と出会う。
先進国が押し付けた国際社会のルールによって、蝕まれ壊されていく後進国。
「発見」される前は独立して自給自足できていた小さな島を、外からの「支援」なくしては成り立たないようにしてしまう残酷さ。
本来なら優劣のないはずの個々の文化を無理やり一個の枠におさめて、弱者を作り上げている。
枠へおさめるためなら暴力も非道徳も厭わず、一度枠へ入ってしまえば二度ともとには戻れない。
これが国際社会の一面なのだと思うと、やるせなくなる。
なによりも、ただそこに存在していただけのヤンが人格を与えられ、重い決断を背負い、そしてすべての結末へ向かっていくことが、悲しくてならなかった。
瞳子が、熱帯林を「生態系」ではなく「美しいもの」として見るようになったのと同じく、頭に詰め込まれた固定観念というフィルターを外して、思うままに、感じるままにものごとを受け止め、それらを信じられるようになりたいです。
昔は、それが確かにできていたはずだから。