竹岡美穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“わたしが不安を感じている間も、瞳ちゃんの目に浮かぶ憎しみは、手のつけようがないほどふくれ上がってゆく。ひりひりした空気が瞳ちゃんを包み、顔が苦痛にゆがみ、呼吸も荒くなる。
「櫂を裏切った相手を、あたしは絶対許さないっ!」
吐き出された言葉は、熱い渦のようだった。
瞳ちゃんが、こんなに激しい目つきをするなんて!こんなに憎しみをあらわにするなんて!わたしの体も渦に投げ込まれ、真っ赤な炎に炙られたみたいだった。息もできないほどに、鼓動が高まる。
瞳ちゃんが憎んでいるのは、先生?
忍成先生が、『こころ』の先生みたいに、櫂くんを裏切ったから?だから許せないと言っているの?
胸が灼けた鏃で、ぐちゃぐちゃ -
Posted by ブクログ
“「……あたし、彼氏なんていらない」
「中二でその発言は寂しいよ、舞花」
「だって、あたしだけ彼氏作ったら、お兄ちゃん、世話をしてくれる人がいなくなって可哀想だもの」
「同情してくれてありがとう」
お兄ちゃんがあたしを抱き寄せて、髪を撫でてくれる。
「お兄ちゃんに彼女ができるまで、あたしも彼氏なんか作らない」
どうして大西の顔が頭に浮かぶのか。わからなかった。
それに、どうして胸が酸っぱくなるのかも。
こんなに近くにお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんの香りを吸い込んでいるのに。
胸が、酸っぱい。
「うん……じゃあ舞花に彼氏ができるまで、お世話になろうかな」
お兄ちゃんが優しくつぶやく。
ずっとずっと -
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“「怪物なんて、いない。人が怪物になるんじゃないか」
わたしを見つめる瞳は黒い翳りを帯びている。そこに胸を刺すような、痛みが浮かんでゆく。
「……もしかしたら、ぼくも怪物かもしれないよ」
一瞬、部屋の中がシンと冷たくなった。
怪物?
心葉先輩が?
窓の外は、赤と黒が混じりあったような暗い夕暮れの色に沈んでいた。それがだんだんと夜の闇の色に変化してゆく。人が怪物に変わってもおかしくないような、怪しい風景で……音楽室に二人きりで……。
わたしは夕日のように、ぽっと赤くなった。
「それって、わたしを襲いたくなっちゃったとかですか?大胆すぎです」
心葉先輩が、「へ?」と目をむく。
わたしは両手を頬にあ -
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“「……心葉くん、今、どこを見てた」
「……えーと」
正直に答えたら、殴られるだろうか。
けど、遠子先輩は正直に答えなさいというように、上目遣いに睨んでいる。
「関東平野のような洗濯板です」
とたんに、ペットボトルが飛んできた。
「なによそれーっ!わたしの胸が、洗濯板で関東平野だって言うのーっ!」
水が、ばしゃりと降りかかる。
「うぅっ、ひどい!ひどいわ!わたしだって好きで洗濯板なんじゃ」
涙目の遠子先輩がさらにげんこつを振り上げたとき、部室のドアが、勢いよく開いた。”
牛園君の話と小鹿ちゃんの話が特によかった。
最後のちぃ視点の話とか素敵で、思わず泣いた。
ちぃと流人には幸せになってほしい -
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“そう言いながら、夕日の色をした大粒の涙をあふれさせる。
ああっ、本当にっ!なんて、早とちりなんだっ!森!
オレは呆れるやら、腹が立つやら、胸が切なくなるやらで、気がつくと、言えなかった言葉を口にしていた。
「オレが好きなのは、琴吹じゃねーよ」
「えっ」
「オレが好きなのは、おまえだ、森」
鼻水をすすりながら、手で顔をごしごしこすっていた森が、目をまんまるに見開く。
「なに……言ってんの?反町くん?」
「だから、オレが好きなのは、最初からおまえなんだっ」
ああ、言っちまった。やべ、顔が熱くなってきた。”
ななせがすごく可愛い。
あと、森ちゃんと亮太君のカップルは本当楽しそう。
“「けどさ! -
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“「心葉くんはわたしのものよ!あなたなんかには、絶対に渡さないわ!」
水風船みたいに頬をふくらませて叫ぶ“文学少女”の背中で、ぼくは顔を真っ赤に染めて、口をぱくぱく動かしたのだった。
その、二十分後―――。
「いいかげんにしてくださいっ!いつ、ぼくが、あなたのモノになったんですか!」
牛園さんが男泣きに泣きながら走り去ったあと、ぼくは文芸部の部室で、遠子先輩に文句を言っていた。
この人はよりによって、牛園さんに向かって、心葉くんと両想いなのはわたしのほうよとか、心葉くんをとっちゃダメぇとか、叫んだのだ。
「だって―――だって、心葉くんは、大事な文芸部の後輩なんですもの」
ぼくが本気で怒って -
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“家族に梅味の煎餅を、舞花にうさぎのぬいぐるみを選んで、さっさとレジへ行こうとすると、遠子先輩がぼくの手元を見て言った。
「心葉くん、それだけ?お友達の分はいいの?」
「旅行土産を渡すような知り合いは、いませんから」
ありのまま淡々と告げると、身を乗り出してきた。
「ななせちゃんは?最近よく一緒にいる芥川くんは?それに千愛ちゃんだって」
「竹田さんには遠子先輩から渡すでしょう。芥川くんとはそういう仲じゃないし、琴吹さんには、嫌われてるみたいです」
遠子先輩が、驚いたように目を見張る。
「ええっ、心葉くん。ななせちゃんから暑中見舞いをもらったでしょう?」
「いいえ」
何故、暑中見舞い?
遠子先輩 -
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