渡部昇一のレビュー一覧
-
ネタバレ
「福祉国家」という甘い罠
一部ご紹介します。
・国家が「ゆりかごから墓場まで」というと、そんなに面倒を見てくれるなら自由などいらない、という人が出てくるものだ。しかし、これは悪魔の声に他ならない。国家が本当に魅力的なことを言い出した時は警戒せねばならない。
・全体主義者は、目的は手段を正当化すると考え、目的さえよければ嘘でも何でもかまわないと考える。だから、彼らは平気で約束や条約を破る。独ソのポーランド分割然り、ソ連の対日参戦然り。
・「社会」と「国家」の区別がはっきりしているかどうかというところに「社会政策」と「社会主義政策」の違いがある。
社会がやるというのは、ボランティア、福祉団体などが担い手になる。
一方、国家は強制的に税金で取り上げてばらまく。
その違いは、社会が「お互い様」という関係でやるのに比べ、国家は徴税権という伝家の宝刀を持ってやるということだ。だから、社会と国家の区別がなくなるというのは、とても恐ろしいことなのである。
・地獄への道は善意で舗装されている。「悲劇排除されるべし」「かわいそうな人がいない社会を」などと正義を盾にしたとたん、国家が全てを握る全体主義に踏み込む危険性があるのだ。「自分たちの正義」に賛成しない人には福祉を与えないということになるからだ。
・教育組織を「人文学」から「現実科学」へ移行させることは、その国家に致命的な悪影響を与えてしまう。何かを発明することで、産業に貢献し、貿易が増えるといったように自然科学の方は確実に役に立つ。一方、人文学の方は一見役立たずに見えるかもしれないが、実はそうではないのだ。人文学の伝統が軽視されることは深刻な堕落を招いてしまう。人文学は人間形成に不可欠だからだ。
・全体主義者が唱える「歴史は科学的法則に従うものだ」という主張は誤りである。「科学的」とは、ある理論を出して、それを実験し、検証することが誰でも同じにできるということだ。だから「社会科学」というのは本来ならばおかしいのである。社会を対象にしてそんなことはできないのだから。それなのに、全体主義者たちは、意見が違うと、自分たちは科学的に正しく、相手が間違っているという論法で弾圧したのである。
・理屈で分からないものを潰していく共産主義国家は凄絶な環境破壊を引き起こした。東欧然り。ソ連然り。そしてチャイナ(中華人民共和国)然りである。 -
Posted by ブクログ
渡部昇一を知ったのは、
講談社現代新書 知的生活の方法
の著者としてだ。
旭屋書店の本店で第一刷を購入している。
その後の 続知的生活の方法、
講演会で入手した 知的余生の方法
そして最後が
終生 知的生活の方法
本書は、2004年に出版した 老年の豊かさ を
2016年〜2017年初頭にかけて書かれた
本書の修正加筆原稿から渡部昇一の死後に発行されたものである。
色々意見はあるとは思うが、一本筋が通っているところは認めるだろう。
最初の本に書かれた事で、座右の銘にしているのは
求めよ さらば与えられん
だ。
終生 知的生活の方法 でも それを貫かれていると思う。
子供へは遺産でなく教育を残すこと
両方残せれば良いが、優先すべきは教育だ。
(美田も買えれば良いけど。)
それは実践して来た事なので納得する。
オカルトチックな事ほ必ずしも賛成しないが
知的生産は、梅沢忠夫
知的生活は、渡部昇一
これは刷り込みされている。
で、本書を斜め読みせず、完読して満足している。 -
Posted by ブクログ
初版と言うか第一刷を持っている。
本書の出る前は、知的と言うと京都大学教授の梅棹忠夫さんの知的生産の方法だった。
そこに上智大学教授渡部昇一さんの知的生活の方法が出た。
発想法、KJ法の東京工業大学教授川喜田二郎、
地球物理学東京大学教授の竹内均、
頭の体操の千葉大学教授多湖輝等々が活躍していた頃だ。
岩田一夫もその頃か。
知的生活には、エアコンが必要だ
と書いて、一部からは 贅沢だと叩かれた
という時代だった。
しかし本書は新鮮だった。
知的という言葉を、生産から生活に拡げた功労者だと思っている。
日経新聞のおかげで、渡部昇一さんの講演会を聴く機会を得たのも、本書の縁だと思っている。
まとまってないけど、リリース。
-
Posted by ブクログ
●若かりし時代に読んだ本で、座右の一冊です。
●私は読書が好きで、先人に学ぶ事や擬似体験する事が人間形成に役立つと考え、色々な本を読んできました。そのように、読書する事の意義を考えていた頃に、この本に出会い、その後の読書姿勢に役立ちました。
●共感した点を少し書きます。「①知的な生活が細々とでも続いている確実な外的指標としては、少しずつでもちゃんとした本が増えているかどうかを見るのが、一番簡単な方法である。②十年間に一冊も本らしい本を買わなかった、ということは、この人は日常生活のみをやって過ごしたということをなので、知的生活はなかったと言ってもよいだろう。③知的な生活が細々とでも続いている確実な外的指標としては、少しずつでもちゃんとした本が増えているかどうかを見るのが、一番簡単な方法である。④あなたは繰り返して読む本を何冊ぐらい持っているだろうか。それはどんな本だろうか。それがわかれば、あなたがどんな人かよくわかる。しかしあなたの古典がないならば、あなたはいくら本を広く、多く読んでも私は読書家とは考えたくない。」長くなったが、今でも私の読書の座標軸です。
●この本を早く読む事が出来てよかったと思っています。前述した他にも著者の経験談を元に参考になることが沢山あります。読書が好きな人に読んで貰いたい一冊です。蛇足ですが、本書は講談社現代新書史上最大のベストセラーだそうです。 -
Posted by ブクログ
人間を総合的に理解しようという試み。
これまで(第二次世界大戦前の段階)人間は、物理的、生理学的、精神的などさまざまな分野で「科学的に」分析、研究されてきており、とくに物理のように、定量的にとらえやすい分野の研究が進んできた。しかし、人間は研究され尽くされているわけではなく、分野は偏りがあり、人間を総合的に捉えることはされてきていなかった。さまざまな視点から分析し、提言を行う名著。
書かれた時期はモダンタイムス時代なのか、これに対する反動からの提言も多いように感じる。しかし、極端に専門化が進んだ科学のありかたを考え、総合的にとらえようという視点を与えてくれる点、非常な名著であると感じる。
そして、人間はいかに人知を超えた存在であるか。謙虚な姿勢を求める書でもある。 -
Posted by ブクログ
この本は、梅田望夫さんの「Web時代を行く」という本で取り上げられていて、気になったので読んでみた。
本当に面白いと思えるものを見つけること、そして見つけたものに対して継続的に活動や努力をし続けることが知的生活の根本的な考え方かなと。
好きなことを見つけたら、余暇のほとんどの時間をそのことに費やしても苦にならないし、モチベーションも維持できるというものだろう。
知的生活には、絶えず本を買い続けることや、知的正直(わからないのに、わかったふりをしない)であることの重要性が書かれている。
後半は、ワイン、散歩、クーラー等の効用が書かれていて、さらっと面白い。
また、知的生活には、家族との付き合いや結婚にも慎重であるべきというような記述や、本の置き場所が重要だから書斎や書庫、部屋が載った家の設計図まで載ってて、どこまで!?という感じもするが、そこは著者の情熱なのかなと。
なかなかよい本でした。 -
Posted by ブクログ
人生において、
自身の人生のモデルとなるような「師」と出会えるかどうか非常に重要なことだ。
「師」というのは、
心底こうゆうふうになりたいというような直感で自分自身が見いだすものだ。
やはり、若さというのは
「いつになっても将来のことを考えている」人であって、皮肉なことに年齢が30代でもすでに将来のことを考えなくなり老人の域にいる豪傑もいることだろう。
いくつになっても頭脳と身体は鍛えることができることは、この著書を拝読してもよくわかる。
ゲーテもこよなく孤独を愛したように、精神の修養には、静謐(せいひつ)な時間と空間が必要だ。
苦労は買ってでもしろとよく言うが、
読書ほど買ってでも苦労した方がよいものもあまりないだろう。
古典など、世界の超良書を若い時分に読みこなす習慣が身につけば、その複利は雪だるま式になって後年になって返ってくる。
世の中には、超人的な老人がいる。
むしろ、年齢は高いが精神も肉体も相当に若い意味で、若人である。
90を超えても尚より一層精力的に活動をし、身体も鍛えて筋力が70の時よりも向上している。
99歳でスキーをしたり、60を超えてから300冊の本を執筆したりと、この本はそういった例の枚挙にいとまがない。
やはり、知的生活には健全な肉体が必要不可欠なのだ。
種の起源の原理を発見したウォーレスという博物学者が信仰心からではなく、自然科学的な調査から、霊魂は存在すると結論づけたことは驚きだ。