福井晴敏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
その題名から内容を推測できない小説こそ面白い。
著者の意図が最後までわからず、シナリオがどう展開されていくのか予想できない。
そんな面白さが秘められていると思う。
この物語の魅力は、「人間くさい」ところ。
特に夢や目標は持たず、なんとなく生きてきた元・刑事の男と、大切な人を守るために全てを敵にまわして逃亡する少年。
「平凡」と「非日常」という、真逆の世界で生きていた二人が、ひょんなことから出会い、ぶつかって、失敗しながらも、変わっていく。
人の世の「悲しさ」と「美しさ」、そして「優しさ」がじわじわと伝わってきて、読み進めているうちに、胸がきゅっとなります。
もう一つ魅力的なのは、著者の福井 -
Posted by ブクログ
全10巻(読書記録によれば、半年)の長丁場、十分以上に物語世界を満喫することができた。
まず感心したのは、物語の締め方。すごく真っ当に盛り上がって、ちょっと、ご都合主義を感じさせるところはあれど、落ち着くところに落ち着いた感動。最初から、プロットとラストシーンがしっかり構想されているのだろう。さらに、このラストシーンに向けて、途中それほど中だるみ、迷走、無駄なエピソードを挟まず、10巻を読ませる力。
さらに感心させられたのが、背景世界への深い理解と配慮。自分が創作に関わっていない世界に対して、これだけ矛盾なく、また、結果として大きく世界、登場人物を変質させることなく、それでいて、将来的に歴史的 -
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Posted by ブクログ
映像化されないかな…。
上、中、下巻の長編とはいえ、並河と朋希、朋希の過去という三つの話が、最終章に向けてうまいこと語られていきます。下巻の最終章では、文字通り1分1秒が濃密なアクションとしてラストまで駆け抜けていく。
さすが福井氏の作品だなぁと感動する各種ウェポンが入り乱れるそれは、軍事モノに無知な自分にも、頭のなかで明確にイメージされます。なんといってもそれらを扱う各登場人物が、とても魅力的に描かれているからでしょうか。
留美なんか、最終章で一気にファンになった読者も多いはず…。(自分はまさに)
ともあれ、映像化を望んで止まない作品に出会えた。(ヘタに映像化してもガッカリですが)
新 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「川の深さは」……
タイトルの雰囲気だけ見ると、純文学のような恋愛もののような感じだけれど、中身はバリバリの軍事謀略モノ冒険小説という(笑)。
『問われている』と書き出された巻末解説者の言葉の通り、福井さんの物語はまだ2作しかドクリョウしていないにも関わらず筆者が現代日本に問う強いメッセージ性を感じる。きっと、彼の作品に一貫して流れるテーマなのだろうな、と感じる。
終始閉塞感に包まれて進んだ哀しきストーリーであったが、初出では描かれず本書の出版にあたって加筆されたというエピローグに、救われた。
※さて、本作……実は筆者の“応募作”だとのこと。
“デビュー作”ではなく“応募作”。
最 -
Posted by ブクログ
日米開戦とM資金奪取。戦後の復興に血流のように使われたM資金は、誰がコントロールしていたのか。笹倉暢人は、アジアの辺境を旅しながら資本主義の限界と危機を知ることになる。
本作は資本主義の危機を、リーマンショックを契機に感じたことが背景にある。資本主義は、お金がお金を産み、膨張し続けている。価値が高まることで、お金も多くなっていることから、その価値が失われるという事態が起きた時に、真の価値が表に出てくることになる。100兆円という経済規模が、一瞬の内に何千、何万分の一になったら。。。そんな感覚を持っているのだ。
実は、資本主義は確かにゲームである。価値は市場が決めるわけだが、例えばゲーム機