福井晴敏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ作者の執念で書きあげた感がある。最後まで読んで初めて救いが得られるので、長編で経済新聞の様な話が長々と続いて辛い人にはつらいかもしれないが、是非、最後まで読んでいただきたい。作者お得意でもはやお約束になった感のあるスマートで何でもできる主人公となってもおかしくない若者そっちのけで中年おじさん頑張るという話は痛快。ただし、詐欺師のトリックが出来過ぎなのは、よくありたいという人が本来もっている善意がテーマだからであって、綱渡りの様なトリックは人の善意に基づく助けがあって初めて成り立ったと考え、余計な突っ込みはやめた方がよい。ここで語られた未来が我々の未来であってほしいと切に願う。
-
Posted by ブクログ
長かった。最後まで読んだが長かった。
結構面白かった。映画を見たせいか、真舟のセリフが佐藤浩市の声と立ち居振る舞いで脳内再生されたし、鵠沼もオダギリジョーの声と顔を連想させた。
他の人は映画の中での印象がなかったせいか、そんなことはなかったが。
仕手戦を仕掛けながら船で移動するのは面白い。
最近の相場ではこんな話が中々ないので、面白かった。
経済を話の中心に据えたのだから金融で一勝負しかけるのはアリだし、しかもそれが引っ掛けというシナリオがよくできている。
真舟のキャラがまた良くできていて、この人物を主役にしたからこそ面白い話になったのだと思う。
むしろ暢人いらなくね?囚われのお姫様かっていう役回りで、最後までいいところが無かった気がする。
そして映画でもよく分からなかったけど、カペラから写真がたくさん送られたからどうなるもんだろう?としか思えなかった。
石の演説だけではダメだったのか?映画化前提の作品だったから見栄えがよい場面づくりのためのアイデアではなかったか。
文章が緻密に構成されているものの、映像があった方が分かりやすい場面も多く
途中までのプロットで映画化したような、断片の継ぎ接ぎみたいなのではなく、7巻までをきちんと映画化して欲しかった。
むしろ前後編かアメリカみたいな長編ドラマ化しても良かったくらいよくできてる。
現代に蔓延している閉塞感をよく捉えてるし、それをブレイクスルーした場面には爽快感があった。
映画は駄作だと思ったが、全部読んだ記念にもう一度見るのもアリかな。
切れ切れで分かりにくい場面を補完するのが小説版、という訳でもないだろうが前回よりはマシに見れる気がする。
10年後の終章は蛇足感が強いが、酒田とハロルドのための終章っぽい。
それと主人公たちがどうなったかが分かるが、10年後にまだスマホを使ってる姿は想像付かないし、1年後でもおかしくないような想像図だった。
日本の戦後と経済戦争の歴史小説みたいで中々面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ福井晴敏によるM資金にまつわる長編第7弾にして最終巻。
囚われの身となった暢人を助けるため、真舟と美由紀、石が行動を起こす。その端緒がディスカバリーオイルというボロ株を使ってカペラの注目を高めることだった。
まさしく、最終巻にふさわしく、これまで登場してきた主要な登場人物がそれぞれに果たすべき役割を果たしていく。その結末はややもすれば希望を持てなくなりそうな世の中に差す一筋の光明のような印象を与える。
個人的には終章は蛇足のような気がするが、未来へ希望を持たせるという意味で作者の気持ちを表しているのかもしれない。
亡国のイージスや終戦のローレライのような冒険活劇ではないが、手に汗握る展開も散りばめられた本作は福井晴敏の新たな代表作と言える。 -
Posted by ブクログ
その題名から内容を推測できない小説こそ面白い。
著者の意図が最後までわからず、シナリオがどう展開されていくのか予想できない。
そんな面白さが秘められていると思う。
この物語の魅力は、「人間くさい」ところ。
特に夢や目標は持たず、なんとなく生きてきた元・刑事の男と、大切な人を守るために全てを敵にまわして逃亡する少年。
「平凡」と「非日常」という、真逆の世界で生きていた二人が、ひょんなことから出会い、ぶつかって、失敗しながらも、変わっていく。
人の世の「悲しさ」と「美しさ」、そして「優しさ」がじわじわと伝わってきて、読み進めているうちに、胸がきゅっとなります。
もう一つ魅力的なのは、著者の福井さんが綴る言葉の美しさ。
登場人物の言葉一言一言に意味があり、それが物語を紡いでいく。全ての言葉や行動が、物語を色づける。だから、一人一人の人間らしさ、個性が引き立てられてくる。そんなことを、読みながら実感させられました。
また、戦争アクション系の小説を多く書かれていることもあって、戦闘シーンの表現がとてもリアル。特に、クライマックスで主人公の二人が戦闘機を操縦するシーンは本当に迫力満点です。
本屋さんの店頭で「おすすめ1位」と書いてあったので、何気なく手に取った本でしたが、あっという間にその世界観に囚われてしまい、最後は一気に読みきりました。 -
Posted by ブクログ
全10巻(読書記録によれば、半年)の長丁場、十分以上に物語世界を満喫することができた。
まず感心したのは、物語の締め方。すごく真っ当に盛り上がって、ちょっと、ご都合主義を感じさせるところはあれど、落ち着くところに落ち着いた感動。最初から、プロットとラストシーンがしっかり構想されているのだろう。さらに、このラストシーンに向けて、途中それほど中だるみ、迷走、無駄なエピソードを挟まず、10巻を読ませる力。
さらに感心させられたのが、背景世界への深い理解と配慮。自分が創作に関わっていない世界に対して、これだけ矛盾なく、また、結果として大きく世界、登場人物を変質させることなく、それでいて、将来的に歴史的な一歩として位置づけられる「可能性」をしっかりと残す。自分で書いていても矛盾しているようでいるのだけれど、でも、実際にそうなのだから仕方がない。
これらを高次元にまとめ上げた手腕。伊達に、人気作家ではないなぁ。ガンダムファンには、ぜひ一読をお勧めしたい作品。長い時間をかけるだけの価値はある。 -
Posted by ブクログ
映像化されないかな…。
上、中、下巻の長編とはいえ、並河と朋希、朋希の過去という三つの話が、最終章に向けてうまいこと語られていきます。下巻の最終章では、文字通り1分1秒が濃密なアクションとしてラストまで駆け抜けていく。
さすが福井氏の作品だなぁと感動する各種ウェポンが入り乱れるそれは、軍事モノに無知な自分にも、頭のなかで明確にイメージされます。なんといってもそれらを扱う各登場人物が、とても魅力的に描かれているからでしょうか。
留美なんか、最終章で一気にファンになった読者も多いはず…。(自分はまさに)
ともあれ、映像化を望んで止まない作品に出会えた。(ヘタに映像化してもガッカリですが)
新しい言葉、探してみます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「川の深さは」……
タイトルの雰囲気だけ見ると、純文学のような恋愛もののような感じだけれど、中身はバリバリの軍事謀略モノ冒険小説という(笑)。
『問われている』と書き出された巻末解説者の言葉の通り、福井さんの物語はまだ2作しかドクリョウしていないにも関わらず筆者が現代日本に問う強いメッセージ性を感じる。きっと、彼の作品に一貫して流れるテーマなのだろうな、と感じる。
終始閉塞感に包まれて進んだ哀しきストーリーであったが、初出では描かれず本書の出版にあたって加筆されたというエピローグに、救われた。
※さて、本作……実は筆者の“応募作”だとのこと。
“デビュー作”ではなく“応募作”。
最終選考まで残りつつも受賞することなく埋もれていた佳作が、デビューし数年が経ち代表作と呼ばれるような作品を送り出した後に、結局は受賞ならなかった作品が出版される、という点に……
また、それでいてなお高いクオリティが証明されている点に、筆者の非凡さが感じられた。
★5つ、9ポイント半。
2014.02.03.了。
本作が選考に漏れた際の受賞作(野沢尚「破線のマリス」)も以前に読んだ。
しかし、ソレも確かにエンタテイメントと世間への問題提起に満ちた面白い作品ではあったが、どう考えても本作の方が“上”だと感じる……のは、自分だけだろうか???
心理テスト“川の深さは…?”、
自分の答えは、「膝くらい」。
…………当たってる(笑)。 -
Posted by ブクログ
日米開戦とM資金奪取。戦後の復興に血流のように使われたM資金は、誰がコントロールしていたのか。笹倉暢人は、アジアの辺境を旅しながら資本主義の限界と危機を知ることになる。
本作は資本主義の危機を、リーマンショックを契機に感じたことが背景にある。資本主義は、お金がお金を産み、膨張し続けている。価値が高まることで、お金も多くなっていることから、その価値が失われるという事態が起きた時に、真の価値が表に出てくることになる。100兆円という経済規模が、一瞬の内に何千、何万分の一になったら。。。そんな感覚を持っているのだ。
実は、資本主義は確かにゲームである。価値は市場が決めるわけだが、例えばゲーム機の価値は電気が無ければ価値ゼロになる。人類が真に必要とするものは、生きていくために必要なもの。衣食住と娯楽であろう。そのものに価値というものがあるとすれば、ある前提が崩れたら価値がなくなるものを持っていることがリスクになる。例えば、現金もその一つだけど、価値がなくなったらなんてことを金融機関にいる人以外はきっと考えもしないだろう。