福井晴敏のレビュー一覧
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海上自衛隊のイージス艦を舞台にした物語。
上巻の前半は主要登場人物の背景や人物像、海上自衛隊組織などについて丁寧に描かれていて、ややスロースタートな感じだが、300ページを過ぎたあたりから物語が荒々しく一気に動き出した。
「守るべき国の形も見えず、いまだ共通した歴史認識さえ持ちえず、責任回避の論法だけが人を動かす」この国に「真実を告げる者」が行動を起こしたところで上巻が終わる。
行動を起こした者たちの目的がいまいち理解できず共感もできないまま読み進めてしまった。ハッピーエンドとはならなそうなシナリオと展開のように思えるけど、下巻でどうなるやら。
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ネタバレ2004年(第1回)。8位。第24回吉川英治文学賞新人賞受賞。
「亡国のイージス」の映画監督が、この作家に映画原作を頼み、書かれたのがこれらしい。
太平洋戦争末期ドイツ敗戦後、未来を見据えた敗戦の仕方の考えにより(ここでは明らかになってない)、秘密裏に潜水艦伊507に乗り込むべく広島に集められた軍人たち。アメリカの爆撃にさらされ、なんとか出発する。
伊507にはフリッツが乗船。見た目日本人なのにSS制服、違和感。どうやら祖母が日本人らしい。トイレのドアに貼られた「ヘンショ」。慣れない日本語でフリッツが艦内のいたるところに施設名を貼ったのだ。それを笑われ、紙を捨てたフリッツのエピソードが好き。
潜水艦を任された17歳少年たち。
重厚な序章~ 今後も重厚なはず~ -
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『ラプラスの箱』最後の鍵に迫る直前に状況を無視して戦いを挑んできたリディはもはや無茶苦茶な存在
けれど彼の視点に立ち物語を見返してみると、何となく理解できない部分がないわけではない
マーセナス家の人間として『箱』の因縁やそれに纏わるアースノイドとスペースノイドの対立に縛られていた。それは簡単に受け止めたり納得できるものではないから若い彼は同類と思われるミネバを求めたのに、ミネバはリディを拒否してバナージへ。しかもバナージも『箱』の因縁に関わる人間なのにリディと真逆の道を進んでいる
だからリディは孤独になるしか無くて、なのにマーセナス家の人間として機会と責任ばかり手にして…。だから駄々を捏ねるようにバナージに暴力を向けるしか取れる道がなくなってしまったと言えるのかな
なら、それを受け止める事になったマリーダはある意味母性の肩代わりをしたとも解釈できるのかな?
男たちの論理、戦争による犠牲。それにより女性としての尊厳を奪われた彼女がジンネマンに娘と認められた先で母親となるのか……
勿論、リディがマリーダに母性を求めたわけでもマリーダがリディを受け止めようと思ったわけでもないだろうけど、結果から見ればリディの傷と孤独を受け止める役目を担った形となったと言えるわけで……
行き着く先を失い殺してくれと懇願するリディ、マリーダを守れなかったと涙を流すバナージ
マリーダの死はガンダムを操る二人に大きな影響を残したようで
ネェル・アーガマは再び箱探しへと戻り、各勢力の思惑が入り交じる最終局面へ
そこへ向かうバナージがミネバと交わすのは帰還の約束、マリーダとは果たせなかったそれを今度こそバナージは守る必要がある
始まりの場所であり終わりの場所となるインダストリアル7。そこで彼らは『ラプラスの箱』にどのようないみを見出し、どのような答えを出すことになるのだろうね -
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軍属ではないバナージ、宇宙世紀の鍵となるユニコーン。当初は連邦の船に乗りジオンと戦っていた彼らが今やジオンと協力し連邦と対立している
その時々で主義が変わったのではなく、必死に今できる事をやり、何とかして戦闘を止めさせようと繰り返してきたからなのだろうね。だからその時々で戦闘回避の道に最も近い人物と協力する事になった。それが今はジンネマンであるというだけの話
ジンネマンも上の命令に逆らって大事な存在を守るために戦場に降り立った。だから同じようにミネバやマリーダを守ろうとするバナージと協力する
対立は一向に終わらない。戦闘は何度も起きる。けれどバナージの藻掻きによって生み出された変化の予兆が少しずつ形を取り始めたような気がするよ
バナージが体現し始める変化とは別の場所で、カークスも戦う理由を変化させていたね
カークスはもはや何処にも居ない死者の為に戦い始めてしまった。でも待ってくれる生者が居るキャンドル達なら帰る場所が有る。でも帰る為には戦いに身を投じ続けた行き方が邪魔をする
それをカークスが「お前達の戦いにはもはや意味などない」と明確に告げる展開は残酷だけれど、とても優しさに満ちたものだった
あの瞬間とてキャンドルは戦友を二人も失っているし、戦果は何も挙げられていない
それでもカークスが繋いだ未来への道によって、死ぬ為に戦うのではなく、生きる為に帰ると決められた彼らの姿はとても美しい
一方で変化を受け入れないどころか、自分の意思で凝り固まってしまったのがリディか……
箱の真実を知ってしまったが為に箱の危険性にも気付いてしまった。だからこそ守らねばならない者も明確になってしまって、守る為には変わる事を拒絶しなければならなくて…
カークスは守る者の為に変わった。けれどリディは守る為に変わらない事を自身に課した
男としてバナージからミネバを託された時のリディは既に死んでいると告げた時のリディの心境、それはどれだけ冷え冷えとしていたのだろうね……
そうして事態は囚われの人物を救い出す最終局面へ
バナージもジンネマンもリディも守りたい相手の為に高い空まで来た。けれど、ミネバもマリーダもただ守られるだけのお姫様ではなく意志を持つ人間。誰の手を取るかは選べる
それが事態の明暗を分けることになるわけだ -
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表舞台に出てきたビスト財団の女帝、マーサはその権力を背景に人々を掻き乱していく存在だね。唯でさえ『ラプラスの箱』という不確定要素によって掻き乱されていた面々は更に厄介な状況へ追い込まれていくわけだ
そんな中でマーサと対峙し行動を制限されつつも、密かな逆転の一手を打ち始めるブライトは頼りになるね。さすが歴戦の艦長といったところ
一方、女帝を前に為す術ないのは若い衆と成るわけで…
尋問に耐えても状況を変えられないバナージ、マーサの要求を跳ね除けても何かを得られるわけではないミネバ、間接的な人質の形となっているリディ
経験も権力も持たない彼らでは巨大な力には対抗できない
なら、こうした状況に対抗して自分の想いを通せるのはそれこそ重々しい人生経験を積んできた者達。フル・フロンタルの命令に逆らう形でミネバやマリーダの救出に向かうジンネマン達は格好良いよ
ただ、重々しい経験がそのまま助けとなってくれず、想いにより自分を縛り付ける羽目に陥ってしまったのがシンブ隊となるのか……
連邦から隠れ再びの戦争を待ち望んできたシンブ隊。その長い待ち時間は彼らから憎しみを奪うことはなかったかもしれないんが、一方で憎しみ以外の多くを与えるものだったはず
けれどこれまでの人生を戦いに捧げてきた彼らはその経験や想いを無碍に出来ない。結果、行動を共にするカークスにすら心配されると…
でも、その心配がカークスの心情を少しずつ変えていく構図へと繋がるのは面白い
望みを果たせず死んだ仲間達の為に戦う筈のカークスが、生きているキャンドル達を生かして村に返す事を戦う理由とする。それは同時にカークスが未来のために戦う理由となるわけだね
再びの戦闘、この最中にミネバを助けようとするバナージが再会する相手としてジンネマンほど頼りになる相手は居ないね! -
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ガーベイによるダカール侵攻。それは『箱』の謎を解くという当初の目的を越えてあまりに凄惨な虐殺を生む戦場となってしまったね
そうなったのはマハディ・ガーベイの中に渦巻く復讐心が周囲の想像を超える淀みを持っていたと言えるし、同時に連邦が行ってきた傲慢な振る舞いがそうした者を生み出してしまったとも言える
シャンブロという超巨大MAは太刀打ちが難しい戦場の論理を体現しているかのよう。ロニも父の論理が判らないわけではないからシャンブロの暴虐を止められない
けれど、止められないからと何もしないのはそれはそれで間違いなんだよね
これまで何も知らない子供のままに戦場に介入し多くの後悔を抱えてきたバナージ。彼がまずこれまで通りの正義論を振りかざして対峙したのはジンネマン。ジンネマンも戦争の悲しさを知っているが、同時にマハディの悲しさに同調出来ないわけでもない
そんなジンネマンにバナージが投げかけるのはやはり綺麗事の正論とジンネマンがバナージに語った大人の言葉。その中にバナージの変化を見るならば、「わからない」と言いつつも止まることを良しとしなかった点だね
マリーダとの関わりの中で得た「それでもと言い続けろ」 これは子供じみた癇癪から戦場であろうとも人として決して失ってはらない大原則へと変化し始めているように感じられたよ
バナージの底意地はユニコーンと共に戦場に立つ事で、戦場にて憎しみと悲しみを撒き散らす者達にも影響していくね
だけどバナージの命がけの行動はロニに影響しそして父のマハディへ……とならないのが戦場で渦巻く復讐の根の深さを感じてもしまったけど…
娘の言葉に耳を貸さず復讐に身を任せてしまったマハディはもはや救いようがない存在
そこでバナージが同じように復讐に身を任せなかったのはこれまでの経験と「それでもと」正義を求め続けたからだね
マハディを人の親ではないと撃ってしまえば楽になれる。でも、それではマハディ等の復讐者達と何ら変わらない。そういった意味では諦めずに誰かを救う道を求め続けたからこそ、ロニはバナージにシャンブロ機能停止の場所を示したのだろうね
ただ、バナージの影響が限定的であったのはバナージが未熟だからか戦場の論理があまりに大きすぎたのか……
リディは『箱』に関わる世界のどうしようもなさを知ってはいるが、復讐に身を任せているわけではない。だからバナージの綺麗事に同調しない。結果、リディが行った現実論はバナージに跳ね返ってくるわけだ
悲しいことを無くす為に別の行動を選んだ筈なのに、悲しさから逃れられなかったバナージ。そんな彼に襲いかかるマリーダ操る黒いガンダムは彼にどのような戦場の悲しさを教え込む存在となるのだろうね -
購入済み
アニメの補完として
劇場番、テレビ番とも違う展開で描かれなかった部分が記される。ロニの内面、連邦の政治的な動きなどが描かれます。キャラクターをより深く知ることができるのでアニメを楽しんだ方にもぜひ読んでほしい作品です。
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荒涼たる砂漠を歩むバナージの姿、自分が進むべき道に迷う心境をそのまま表しているかのよう
ただ、彼にとって不幸中の幸いと言えるのはその無限に思える旅路にを共に歩むジンネマンの存在があったことか。ギルボアの件が有ったから何もかも心を預けられる相手ではない。けれど大切な者の死や自分が助けられなかった命への悔いを心に留める同士だからジンネマンの言葉はバナージの中に優しく広がるのかもしれない
一方でジンネマンもバナージをユニコーンのパイロット以上に扱っている点が垣間見えるのが良いね。道を選びようのない立場に追い込まれた経験があるから、道に迷うバナージを通して過去の自分を見てしまったのかもしれない。
シムーンの際にバナージに覆い被さって助けようとする姿にはただの敵味方以上の何かを感じさせるし、バナージが心機一転して決意表明する場面の表情にも彼の人の良さが現れているね
こうしてジンネマンとの交流を見ると、バナージは良い大人に度々出逢っていると感じてしまうね
そしてバナージが砂漠を抜けた先で出逢ったのはロニですか
アースノイドとして、女性として、マハディ・ガーベイの娘として、連邦の敵として。様々な顔を持つ彼女がバナージとの交流の中で最も強く見せたのは女性としての顔だったように思う
バナージに「あなたはもう戦わなくていい」と言う包容力、自身にできる最大の抵抗として出産を挙げた点など。ガンダムシリーズには主人公に重要な思想を授ける大人の女性が度々登場するように、本作でその役割はロニが担っているような
けど、そんな彼女が駆るのは超巨大MAシャンブロ。一度ダカールに入ってしまえば大量虐殺は止められないし、止まるときはシャンブロと共にロニが沈む時
ロニが言う通り、何もしていなければ自分が再び誰かの死に関わる未来は生じない。けどそれはユニコーンや『箱』の使い方として「正しい」のか。バナージにとって重要な分岐点となり得る一戦が始まったね
バナージが迷いを懐きつつも前へ進んでいるのに対してリディの立場は微妙なものになりつつ有るね
バナージからミネバを託されて戦争を止める道を探っていた筈なのに、ブライト旗下に入り新たな戦場へ。更にはミネバにあんな提案まで……
その有り様はどう考えても変節したようにしか見えない。未だ志を変えないミネバが彼の提案を呑む可能性なんて無い
ただ、ミネバに拒まれたということはリディは独りで苦しむしか無いわけで…。なんだかんだ人に恵まれているバナージに対してリディは繋がりを次々と失っていくね
そんな彼が何人ものニュータイプやガンダム搭乗者とか関わってきた歴戦の艦長であるブライトと出逢ったのは何かしら良い変化を齎すのだろうか……? -
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人を殺したくないこだわりと自分を中心に戦場が構成される無慈悲さによるジレンマ。殺しを避ける為に加減しても意味を成さず、むしろ追い詰められてしまう
バナージ一人で出来る事なんて限界を迎えていたと言えるわけで。傍で見守るダグザが行動に移るのはある意味当たり前なんだけど、MSに白兵戦を挑むなんて無謀が過ぎる
それでも……。別れ際にとても優しい表情でバナージに導きの言葉を授けたダグザはああして子供を希望へと導けて、後悔なんて一切抱かない満足できる行為だったんだろうなぁ……
ただ、受け取った側のバナージは印象が変わりつつあった者の死を目前にした衝撃やそれによって生じた憎しみの方が強すぎた。それは彼が職業軍人ではなく民間人だった事を思えば仕方ないのだろうな…
更に戦場の無慈悲さはバナージに襲いかかるね。
ダグザの仇討ちにとフル・フロンタルを追い込もうとした行為は戦場において我儘の域を出ない。そんな事を繰り返していれば大気圏に燃え落ちるかもしれないし、もっと酷い事が起きるかもしれない
それが現れてしまったのがあの瞬間……
フル・フロンタル戦での流れ弾は意図した死ではなかった
再戦では戦況を有利に進める為にダグザが死を自ら選んだ
けれど、フル・フロンタルを追撃する中でのギルボアの死は誰かのせいになんて出来ない。無我夢中になって誰の言葉も聞こえなくなっていたバナージが殺してしまった
ギルボア一家を見て殺しを避けるようになった筈なのに、そのギルボアを殺してしまった。バナージが抱えた罪はあまりに大きいね……
バナージが宇宙で大変なことになっている間にリディは何してるの……?何で呑気にお馬さんに乗ってるの……?
まあ、一応は父親からとんでもない真実を聞いてしまってその受け止め方に困っているようだけど……
リディの姿を見て唖然としているミネバはちょいと可愛い
バナージとユニコーンは地球に落ち、ガランシェールと行動を共にすることになった
それと時を同じくして蠢き始める幾つもの思惑。『シーゴースト』を駆るロニ、ビスト財団の女帝に取り込まれるマリーダ、そして活躍の機会が巡ってきたブライト
その全てが次なる座標、ダ・カールを目指しているようでワクワクしてしまうね -
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シャアの亡霊フル・フロンタルに襲撃されるネェル・アーガマの乗員たち
亡霊なんて本来は見えてはいけない代物。けれど実際に見えるしリディ達に襲いかかる
だから対処しなければいけないけれど、見えてはいけないものが見えてしまっている誤りを自覚しないと対処法まで正しい形を取らなくなる
その誤りの代表格が「姫様」ミネバ・ラオ・ザビの人質作戦
確かにミネバはジオンにとって大切な遺児であるだろうが、それをシャアが助けるなんて可怪しな話。ダグザは状況の主導権を握る為に対処的にも人道的にも誤った手段を用いてしまった
ここでミネバの存在に惑わされず行動を変えないフル・フロンタルは食えない人物。彼にとってミネバは見えてはいけない代物ではないから、正しく見た上で正しい対処をしている
印象的な要素はここでミネバも誤った行動を取る側に回ってしまっていることか
ダグザに銃口を突きつけられ政治的な扱いをされているが為にミネバも政治として対応する。自身の命すら軽んずる
だとしたらこの状況に割り込んだバナージは何処まで正しく物事が見えていたと言えるのだろうか……?
バナージがミネバがミネバであると認めず「オードリーだよッ」と言うのはどうしようもなく誤っている。けれど自身が子供ならオードリーも子供であり、子供を人質に取った行動を糾弾する点には正しさが見える
ただ、バナージの問題点は何の政治的後ろ盾も無ければ大人と渡り合う交渉力も無いこと
そんな彼が他者の誤りを正そうと思えば、バナージだけが持てる力、ユニコーンを使用する話になってしまう
一方でミネバはバナージがユニコーンに再び乗る事態を避けようとしていたわけだから、このようにバナージが追い詰められてしまったのは誤りと言える
亡霊に振り回され、正しさを次々と失う戦場
そんな場所でただの若造であるバナージが戦場の専門家に敵う道理なんてある筈がなくて
正しさどころかバナージとユニコーンを失うことになったネェル・アーガマとミネバ。そこでミネバを訪ねるのは仲間を失ったリディか……
早くも変質を見せ始めたリディがミネバとの会話で何を見出そうとするのか。それを次巻で改めて感じ取りたいな -
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遂に全貌を現したユニコーンガンダム。通常状態だと地味な見た目のMSが覚醒状態に入れば馴染み深いガンダムの形に変形する流れは燃えるね
また、それが読者・視聴者側だけでなく、戦況を見守っていた周囲の人間に対してもガンダムの登場が特別な意味を持って受け止められている。それはガンダムが強い機体というだけでなく戦争や歴史を変えてきた機体という意味を持っているのだと感覚的に理解させられる作りになっているね
更に象徴的な強さだけでなく実際に強ければ尚良し
ここまではコロニー内の戦闘で猛者達を打ち破ってきたクシャトリヤが劣勢に回るというのは初戦闘にしては出来すぎというもの
と言うか、アムロを思い出させるような回避行動をっているのは地味に恐ろしい……
ただ、出来過ぎなら誰もが警戒し注目するのは当たり前というもので
エコーズにアナハイム、更にネオジオン残党と様々な勢力が群がってくるのはガンダム作品が単純なロボットバトルモノではなく、政治劇も描こうとしているのだと伝わってくるね
けれど、誰しもにとって予想外だったのはユニコーンの中から出てきたのが少年であった点か
軍人からすれば予想外、友人達からすれば驚愕、そしてオードリーにとっては……
ガンダムの再来に合わせるようにして、姿を表した赤い彗星。おまけに「三倍の速度で~」なんて懐かしい台詞も飛び出して、まるで一年戦争の再現が行われているかのよう
でも状況はあの一年戦争とは確実に異なるわけで。それが戦争を避けるために行動を始めたバナージやオードリーにとって何を意味していくのかな? -
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迫り来る戦争の足音……を前にしてカーディアス・ビストを目指すバナージと「姫様」の道中はけれどお出掛け模様のように映ってしまうのは面白い
ここで「姫様」があの映画の看板を見て「オードリー」と名乗った点含め彼女の正体や後々の展開を思えば、このバナージとの短い道行きは本当に尊い時間だったんだろうなぁ……
一方でこういった歩幅を合わせて歩けたシーンが描かれたからこそ、その後に描かれるバナージとオードリーの歩調の違いが明白になってしまう
オードリーはカーディアス・ビストに会ってすぐに政治の話ができる程に調子を変えられた。けれどバナージはオードリーが只者で無いと察しつつも彼女を自分と一緒に歩ける、自分が守れる対象だと調子を変えられなかった
そんなのは子供の論理だからオードリーにすら拒絶される。と言うか、気を遣われる
見るべきものが見えない中でようやく辿り着いた指標から拒まれるバナージの姿は無力としか言いようがない
ただ、力が有れば自分の意志を通せるかと言えば、そうでないのはこの世界の難しさ
カーディアスもジンネマンも状況を動かす力を持つ人物。けれどもっと大きな力、戦争によってその意志は通せない。情勢を変える筈の会談があっさり水の泡と消える様はジンネマンの「人が人を信じるのは本当に難しい」という台詞に集約されているね
そして始まる戦争はコロニーやそこに住む人々を無惨に焼き払っていくと……
教師もガードマンも親も子もパイロットも生徒も誰も彼も為す術なく死に消える様は平和の終わりをこれでもかと訴えているね
その中でバナージが友人を置き去りにしてもオードリーを守ろうとしたのはある意味初志貫徹しているが、それでも彼は無力なまま
そんな彼に渡った宇宙世紀に光明を齎す力。それと彼はどう向き合っていくのだろうね -
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1.著者;福井氏は小説家。映画好きで、映画用シナリオを書いていたのが小説執筆の契機。大学中退後、働きながら小説を書き始めました。「川の深さは」が話題となる。「Twelve Y.O.」で江戸川乱歩賞、「終戦のローレライ」で吉川英治文学新人賞、「亡国のイージス」で大薮春彦賞などを受賞。「福井氏は、究極の状況を作り出し、そこにおける“人間”のあり方を浮かび上がらせるという手法を多く用いてきた作家」と言われています。
2.本書;東日本大震災(マグニチュード9.0・最大震度7・死者15,900人という戦後最大の大地震)での大津波と福島第一原発の事故をモデルに書かれた作品。震災後の日本人の狼狽と不安を描き、未来に向けた問題・課題を提起。主人公である野田と父親の言葉の重み、息子の未来への期待が心に浸透します。福井氏は「今まで自分が書いた作品の中で、一番読んでもらいたい大事な本」と言っています。
3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
(1)「日本は現場力(前線・会議等の広い意味)の国だ。何としても危機を乗り切れ、法整備も含めて必要なものはすべて用意する。トップがそう言ってくれれば、現場は命に替えても不可能を可能にする。資源も信用もない敗戦国が、経済大国の仲間入りを出来たのも現場力のお陰だ。・・安定した社会では上の方から現場意識が失われてゆく。規定のルールに頼り、自己判断の責任を回避して、想定外の事態に対して腹を括るという事ができなくなってしまう。プロ意識の欠如だ」
●感想⇒組織は大きくなればなるほど、規則やルールを重んじます。人を一枚岩に束ねないと職務遂行出来ないと考えているからです。確かに、それは一理あります。しかし、ルールで対処困難な場合には現場の知恵が極めて重要です。上司も部下も、ルール通りに仕事をしていれば、楽に決まっています。人の上に立つ者は、いざという場合に、解決策を見出せない時は、現場を知り尽くしている者に任せ、責任はとるという度量が必要です。私は色々な上司に仕えてきました。事なかれ主義で責任を部下や同僚に転嫁する輩が多かった気がします。そうした中で、「事実を隠さずに説明してくれ。責任は俺がとる」という上司もいました。彼からは、組織人としての多くの知恵を学びました。
(2)「日本に取り憑いた“闇”は、すでに次の局面に入っている。忘却だ。心に傷を負った事、その前後に感じた事を丸ごと忘れ去り、縮こまった精神を復元させようとする。回復に向けた重要なステップであるが、突きつけられた問題(地震大国で原発を運用するのはリスクが大きすぎる)も忘れてしまっては・・。犠牲から何も学ばなかった復興など無意味だ。もう一度、失われた未来を取り戻す為に」
●感想⇒嫌な事が起きると、“時が解決”とばかりに、問題の要因を突き詰めて、対策しようとしない人がいます。確かに、嫌な事は忘れる事も必要でしょう。“人の噂も七十五日”とばかりに、忘れ去り、また同じ過ちを犯す事もしばしばです。以前某社(製造業)を見学する機会がりました。正門を入ってすぐに品質棟という建屋があり、見せて貰いました。中は、“失敗に学ぶ”事例で埋め尽くされていました。製品品質の保証は、重要課題との事。震災に関しても、“個人への啓発と共に、後世まで語り継ぐ”取組みは、大変良い事です。忘却の一言で済ましては決してならないと思います。
(3)「問題は、社会の仕組みが依然として成長を求め続けているという事です。・・経済成長する代わりに失業者が増え、一人一人の負担が大きくなり、格差が拡がるというのでは本末転倒もいいところです。幸福と繁栄という人類共通の目的に対して、今の仕組みはもはや最適とは言えない。・・仕組みを変えずにそこにこだわったら、日本は世界の中で置き去りになってしまう。・・それは未来じゃない。停滞の果てに訪れる黄昏、緩やかな自殺にも等しい」
●感想⇒社会は、どの分野でも成長する事を目標にしがちです。豊かな生活を目指しているからでしょう。企業は活動や決算数値・・など、前年・前回より向上したいと考え、切磋琢磨します。それを周囲が良否の判断基準としているので、止むを得ない面もあります。しかし、現在は地球温暖化や食糧危機等で、将来に疑問を投げ掛けられています。成長指向はある部分は認めざるを得ないと思うものの、行過ぎは子々孫々にまで、大きな負担(環境・借金等)を背負わせるのは自明の理です。先ずは幸福とは何かを考え直す事です。物心のバランスはいかに。それには、個々人の意識改革、良識・実行力のある政党・政治家選び等が重要でしょう。
4.まとめ;「関東でマグニチュード7級地震が起こる確率は70%、東海に至っては80%以上。地震大国で、原発を運用するのはリスクが大きすぎる。今回の震災で得た、それが最大の教訓だ」とあります。東京電力の“福島第一原発廃炉への中長期ロードマップ”では、40年ですべての工程を終える事になっています。しかし、「40年廃炉は無理。100年、200年という長いスパンで考えるべきだ」という専門家もいます。大量の放射性廃棄物の後始末は先送りされたまま。震災から11年経ちました。原発のあり方のさらなる検討と対策を願ってやみません。また、震災に向けては「なるようになる」ではなく、個人は出来る事(防災対策・避難訓練参加など)を確実にやるのが最低限の責務です。絶対神話はありません。本書の解説を書いた、石破茂氏の言葉「“人間は歴史に学ぶ”というのは嘘で、“人間は歴史に学ばない”というのが歴史の最大の教訓」は納得出来る名言。(以上) -
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再読
初読はもう数年前になるかな。当時は「福井晴敏の作品を読みたい」という気持ちから、wikiやら何やらで大急ぎにガンダムワールドを予習してからこの作品を読み始めた。
付け焼き刃のガンダム知識ながらも福井ガンダムワールドにどっぷりと浸り楽しめた。ついでに、それまでは「アニメオタクのやつ」と若干蔑んでいたガンダムに対して「面白いじゃん」と認識を改めた。
この数年でガンダム知識を多少増やした上での再読・・・やっぱり面白い。
いや、ガンダム知識が増えたことで、さらに面白く読めた。
「ユニコーンガンダムは伊達じゃない」の台詞は、劇場版人気作へのオマージュだったのね。往年のファンにはたまらないだろうな。
ネェルアーガマ、ラーカイラム、その他モビルスーツも既存のガンダムファンにはニヤリとなる機体ばかりだったのね。
今作(黒いユニコーン)では、
ミネバが「受け止めなさい、バナージ」と念じて高空から身を投じるシーンがとても好き。
★4つ、9ポイント半
20211003