福井晴敏のレビュー一覧
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軍属ではないバナージ、宇宙世紀の鍵となるユニコーン。当初は連邦の船に乗りジオンと戦っていた彼らが今やジオンと協力し連邦と対立している
その時々で主義が変わったのではなく、必死に今できる事をやり、何とかして戦闘を止めさせようと繰り返してきたからなのだろうね。だからその時々で戦闘回避の道に最も近い人物と協力する事になった。それが今はジンネマンであるというだけの話
ジンネマンも上の命令に逆らって大事な存在を守るために戦場に降り立った。だから同じようにミネバやマリーダを守ろうとするバナージと協力する
対立は一向に終わらない。戦闘は何度も起きる。けれどバナージの藻掻きによって生み出された変化の予兆が少 -
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表舞台に出てきたビスト財団の女帝、マーサはその権力を背景に人々を掻き乱していく存在だね。唯でさえ『ラプラスの箱』という不確定要素によって掻き乱されていた面々は更に厄介な状況へ追い込まれていくわけだ
そんな中でマーサと対峙し行動を制限されつつも、密かな逆転の一手を打ち始めるブライトは頼りになるね。さすが歴戦の艦長といったところ
一方、女帝を前に為す術ないのは若い衆と成るわけで…
尋問に耐えても状況を変えられないバナージ、マーサの要求を跳ね除けても何かを得られるわけではないミネバ、間接的な人質の形となっているリディ
経験も権力も持たない彼らでは巨大な力には対抗できない
なら、こうした状況に対抗 -
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ガーベイによるダカール侵攻。それは『箱』の謎を解くという当初の目的を越えてあまりに凄惨な虐殺を生む戦場となってしまったね
そうなったのはマハディ・ガーベイの中に渦巻く復讐心が周囲の想像を超える淀みを持っていたと言えるし、同時に連邦が行ってきた傲慢な振る舞いがそうした者を生み出してしまったとも言える
シャンブロという超巨大MAは太刀打ちが難しい戦場の論理を体現しているかのよう。ロニも父の論理が判らないわけではないからシャンブロの暴虐を止められない
けれど、止められないからと何もしないのはそれはそれで間違いなんだよね
これまで何も知らない子供のままに戦場に介入し多くの後悔を抱えてきたバナージ。彼 -
購入済み
アニメの補完として
劇場番、テレビ番とも違う展開で描かれなかった部分が記される。ロニの内面、連邦の政治的な動きなどが描かれます。キャラクターをより深く知ることができるのでアニメを楽しんだ方にもぜひ読んでほしい作品です。
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荒涼たる砂漠を歩むバナージの姿、自分が進むべき道に迷う心境をそのまま表しているかのよう
ただ、彼にとって不幸中の幸いと言えるのはその無限に思える旅路にを共に歩むジンネマンの存在があったことか。ギルボアの件が有ったから何もかも心を預けられる相手ではない。けれど大切な者の死や自分が助けられなかった命への悔いを心に留める同士だからジンネマンの言葉はバナージの中に優しく広がるのかもしれない
一方でジンネマンもバナージをユニコーンのパイロット以上に扱っている点が垣間見えるのが良いね。道を選びようのない立場に追い込まれた経験があるから、道に迷うバナージを通して過去の自分を見てしまったのかもしれない。
シム -
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人を殺したくないこだわりと自分を中心に戦場が構成される無慈悲さによるジレンマ。殺しを避ける為に加減しても意味を成さず、むしろ追い詰められてしまう
バナージ一人で出来る事なんて限界を迎えていたと言えるわけで。傍で見守るダグザが行動に移るのはある意味当たり前なんだけど、MSに白兵戦を挑むなんて無謀が過ぎる
それでも……。別れ際にとても優しい表情でバナージに導きの言葉を授けたダグザはああして子供を希望へと導けて、後悔なんて一切抱かない満足できる行為だったんだろうなぁ……
ただ、受け取った側のバナージは印象が変わりつつあった者の死を目前にした衝撃やそれによって生じた憎しみの方が強すぎた。それは彼が職業 -
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シャアの亡霊フル・フロンタルに襲撃されるネェル・アーガマの乗員たち
亡霊なんて本来は見えてはいけない代物。けれど実際に見えるしリディ達に襲いかかる
だから対処しなければいけないけれど、見えてはいけないものが見えてしまっている誤りを自覚しないと対処法まで正しい形を取らなくなる
その誤りの代表格が「姫様」ミネバ・ラオ・ザビの人質作戦
確かにミネバはジオンにとって大切な遺児であるだろうが、それをシャアが助けるなんて可怪しな話。ダグザは状況の主導権を握る為に対処的にも人道的にも誤った手段を用いてしまった
ここでミネバの存在に惑わされず行動を変えないフル・フロンタルは食えない人物。彼にとってミネバは見 -
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遂に全貌を現したユニコーンガンダム。通常状態だと地味な見た目のMSが覚醒状態に入れば馴染み深いガンダムの形に変形する流れは燃えるね
また、それが読者・視聴者側だけでなく、戦況を見守っていた周囲の人間に対してもガンダムの登場が特別な意味を持って受け止められている。それはガンダムが強い機体というだけでなく戦争や歴史を変えてきた機体という意味を持っているのだと感覚的に理解させられる作りになっているね
更に象徴的な強さだけでなく実際に強ければ尚良し
ここまではコロニー内の戦闘で猛者達を打ち破ってきたクシャトリヤが劣勢に回るというのは初戦闘にしては出来すぎというもの
と言うか、アムロを思い出させるよう -
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迫り来る戦争の足音……を前にしてカーディアス・ビストを目指すバナージと「姫様」の道中はけれどお出掛け模様のように映ってしまうのは面白い
ここで「姫様」があの映画の看板を見て「オードリー」と名乗った点含め彼女の正体や後々の展開を思えば、このバナージとの短い道行きは本当に尊い時間だったんだろうなぁ……
一方でこういった歩幅を合わせて歩けたシーンが描かれたからこそ、その後に描かれるバナージとオードリーの歩調の違いが明白になってしまう
オードリーはカーディアス・ビストに会ってすぐに政治の話ができる程に調子を変えられた。けれどバナージはオードリーが只者で無いと察しつつも彼女を自分と一緒に歩ける、自分が -
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1.著者;福井氏は小説家。映画好きで、映画用シナリオを書いていたのが小説執筆の契機。大学中退後、働きながら小説を書き始めました。「川の深さは」が話題となる。「Twelve Y.O.」で江戸川乱歩賞、「終戦のローレライ」で吉川英治文学新人賞、「亡国のイージス」で大薮春彦賞などを受賞。「福井氏は、究極の状況を作り出し、そこにおける“人間”のあり方を浮かび上がらせるという手法を多く用いてきた作家」と言われています。
2.本書;東日本大震災(マグニチュード9.0・最大震度7・死者15,900人という戦後最大の大地震)での大津波と福島第一原発の事故をモデルに書かれた作品。震災後の日本人の狼狽と不安を描き -
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再読
初読はもう数年前になるかな。当時は「福井晴敏の作品を読みたい」という気持ちから、wikiやら何やらで大急ぎにガンダムワールドを予習してからこの作品を読み始めた。
付け焼き刃のガンダム知識ながらも福井ガンダムワールドにどっぷりと浸り楽しめた。ついでに、それまでは「アニメオタクのやつ」と若干蔑んでいたガンダムに対して「面白いじゃん」と認識を改めた。
この数年でガンダム知識を多少増やした上での再読・・・やっぱり面白い。
いや、ガンダム知識が増えたことで、さらに面白く読めた。
「ユニコーンガンダムは伊達じゃない」の台詞は、劇場版人気作へのオマージュだったのね。往年のファンにはたまらない -
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敵艦にも勝利しウェーク島へ向かう道中で訪れた8月6日。原爆投下の瞬間の人々の描写が詳細でとても恐ろしかった。まず体が燃えて衝撃波が訪れ死に至るなんて知らなかった。
聞いてはいけない話を盗み聞きしてしまい物音を立ててしまうという、使い古されたベタな展開もあるが、読み進めるうちに伊507の乗員たちがどんどん好きになっていく。特にフリッツがかっこいい。ストーリーの構成要員の一つとしてではなく、登場人物を好きになるのは久しぶり。全4巻と長いけれど、その分着実に心を掴まれていく。
敗戦はわかりきった事実として横たわっているが、歴史に名を残さない戦艦の行く末が救われたものであるように、と願って止まな -
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本巻では第4章を収める。遂に広島・長崎への相次ぐ原爆が投下された。従来の戦争の概念を完全に覆すほどの破壊力、たった一つの爆弾で都市を丸ごと一つ吹き飛ばす威力を持つ史上最悪の兵器と言ってもよい。そもそも7月にポツダム宣言を受諾していればこの惨事は起きなかったのだが、軍部はその時点での受け入れを拒否。その時にアメリカから言われた通り「迅速かつ十分な壊滅」をもたらす新型兵器が落とされた。もはや戦争の継続が困難なのは誰の目にも明らかなのに、どこに拘っていたのか。恐らくは天皇の統帥権、いわゆる国体の護持といったところか。無条件にポツダム宣言を受諾すれば、それは失われる。その結果、多くの命が犠牲となった
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本巻は第2章・第3章を収めている。
私はこの小説が原作となった映画「ローレライ」を見ていないが、潜水艦の構造などはやはり映像で見たほうが分かりやすいかなと感じる。文章からは緊迫感や戦闘シーンなどは読み取れるのだが、いかんせん細かいところになるとイメージがわきにくい。挿絵でもあればまた少し違うのかもしれないが。
本編を読むと、誰のための何のための戦争だったのだろうかと改めて思う。戦争責任とはそもそもどういったもので、誰が負うのか?それがただ巻き込まれた国民が負うべきものなのか?
ただ、この第二次世界大戦の引き金になったナチスの台頭には、第一次大戦で莫大な賠償金を課した側にも遠因があるよう -
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《いそかぜ》の叛乱が本格的に始まる下巻。
『このミサイルの弾頭は通常とは異なる』
…つまりGUSOH(米軍が秘密裏に開発したバイオ兵器。気化する事で猛毒となる液体)を積んでいる事を明言し、
辺野古から始まった日・米・そして北朝鮮の思惑を全て公開せよ、
と日本政府に迫る宮津艦長とホン・ヨンファを筆頭とした叛乱グループ。
梶本総理を中心に、警察、公安、そして自衛隊の隠密組織であるダイスで構成された緊急対策会議では
この期に及んでも尚、自身の組織の権益のみを考えた無意味な話し合いが為されていた。
そんな中ダイスの渥美は、《いそかぜ》にまだダイス工作員の如月行と先任伍長の仙石が残って戦っている事、