【感想・ネタバレ】小説・震災後のレビュー

あらすじ

人気作家が挑む、3.11以降の世界

『亡国のイージス』『終戦のローレライ』の作者、5年振りの現代長編!
未来を見失ったすべての人たちに贈る、傷ついた魂たちの再生と挑戦の旅路。

2011年3月11日、東日本大震災発生。
多くの日本人がそうであるように、平凡なサラリーマン・野田圭介の人生もまた一変した。

原発事故、錯綜するデマ、希望を失い心の闇に囚われてゆく子供たち。
そして、世間を震撼させる「ある事件」が、震災後の日本に総括を迫るかのごとく野田一家に降りかかる。

「どうだっていいよ。仮に原発がなくなったって、どうせろくな未来はないんだ」

「被災地の人たちには悪いけど、ここだけは無事に済みますようにって、本気で祈ってる自分が情けなくて……」

「道筋だけ示しておいてやれ。目指すべきものが示されれば、放っておいても子供たちは歩き出す」

傷ついた魂たちに再生の道はあるか。

祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語――。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

亡国のイージス、終戦のローレライと軍事関係の題材が多いというイメージだったが題名を見て気になり手にとってみた。非常に重たいテーマであるが家族とはなんであるかということをあらためて考えさせられる作品でした。自分は主人公と同年代であり同じ年齢にバブル崩壊を経験したので自分にリンクさせてしまった。また寡黙な父親との対話も自分の父親と自分にリンクさせてしまい涙がとまらなくなった。評価の星をもう一つつけたい。

0
2025年05月25日

Posted by ブクログ

先の震災を題材にある家族を通して、人が生きることの意味を描いた小説。細かい部分では青臭く聞こえてしまう部分もあるけれど、描いているテーマはローレライと同じ。それは私自身、若かりし日に仕事の方向を決める時に考えたことと通じるものがあり、すんなりと受け入れられる。

0
2014年11月24日

Posted by ブクログ

 福井晴敏 著「小説・震災後」を読みました。

 東日本大震災後、東京に住む平凡なサラリーマンの家庭が舞台。原発事故を経て、希望を失い心の闇にとらわれてしまう息子。その息子に希望を取り戻すためにあがいていく家族。そして、祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来の物語」が語られていく。

 フィクションでありつつも、そこに描かれている世界はまさに現実の世界、現実の家族であり、自分の家族や子供たちのことを考えずには読めませんでした。

 あの震災後、どの家庭でも今の生活のあり方やこれからのことをそれまで以上に考えずにはいられなかったと思います。

 そこに、未来や希望を見つけることは大変なことでした。

 しかし、作者が描くように、これからの世代の子供たちに前に進むべき未来を見せていくことが、今社会を支えている私たちには必要なのだと強く感じました。

 この小説で知った明るい未来を感じさせる新技術が現実のものとなることを一人の大人として期待したいです。

 自分の子供たちにもこれからの未来が思い描けるように自分自身の生き方を見つめていこうと思います。

 作者福井晴敏の熱い思いが描かれた小説でした。

0
2013年03月01日

Posted by ブクログ

久しぶりの福井晴敏。読み始めたときは、福井は原発廃棄路線でこの物語を綴るのか?という思いで読んでいた。物語は中盤から、震災後の日本を語る話から、一家族の話にスケールダウンして行く。その一方で、父が子に、親に語りかける言葉から、むしろ日本や近代社会への思いが強く伝わってくる。原発への思いは人其々だけれど、原発反対の人も、容認の人も、是非読んで欲しい作品だった。新幹線の中でちょっと泣いた。

0
2013年01月17日

Posted by ブクログ

不勉強なものでこの小説に書かれていることがどこまでが現実なのかはわからない。
しかし、ページを進ませるエネルギーは半端なかった。
野田の最後の演説は福井さんの作品だなーと思わさせられるが読み切らせるだけの力があったように思う。

あと、いつものことながら福井さんの作品は親父がかっこいい。
そして女が強い。

震災から少し時間がたち少しずつ忘れかけていた3.11あたりの記憶がよみがえった。
また、時間がたったら読みたいとおもえる小説であった。
次は自分の子が生まれたときにでも。

0
2012年08月20日

Posted by ブクログ

震災から1年経った今、是非読んでもらいたい作品。

文章の中には、戦後社会の歴史と現状に対する深い洞察に溢れている。
それを全肯定、というわけではないんだけど、全体としては鋭い洞察であると思うし、読者としても心に留めるべきだと思う。


「『未来』の対になる言葉は、おそらく『将来』」。本文中のこういった言葉が、非常に印象に残った。

最後に示されるものの具体的な内容は陳腐といえば陳腐だろうけど、現在の社会を深く分析し、「未来」を示すことの重要性も提示しているこの作品は、なるべく多くの人に読んで欲しいし、特に僕達若い世代には強く勧めたい。



福井さん、文章が少し柔らかくなった?

0
2012年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

福井さんの小説は好きなので、ほとんど読んでいる。震災を題材にした小説という事で気合を入れて読み始めた。
この本をこの時期に読んでおいて良かったと思う。
早めに購入して置いてあったので、もう少し早く読めば良かったかもしれない。

福井さんの作品だといつも舞台はどこか自分たちとは少しかけ離れた感じの事が多かったけれど、今回はごく普通の家庭のお父さん、野田が主人公だ。自分の父の仕事が元防衛省だったのが少し特殊ではあるけれど、しっかり者の妻と難しい年頃の息子、娘が登場する。

自分が震災後どうだったか?そんな事を省みながら読み進めた。とても辛くなるような場面もある。
読みながら、野田の家庭の動きを追いながら、自分はどう考えているんだろうと整理できる一冊でもあった。

福井さんの小説には父と子についての事がたくさん出てくると思う。
今回も仕事一筋に生き、野田に語り・託す父。
そして野田がこれから息子へ見せたい未来。

自然と人間の関わり、未来への思いなんかについてはこの本の前に読んだガンダムUCでも描かれていたのに繋がりそうだ。

なんにせよ、野田の父はとてつもなく格好良かった。

それと、亡国のイージスに出てくる人物がこの作品にも登場する。
嬉しかった。もしや!と思いながら読んでいたけど、名刺もらう場面で思わずニヤついた。

0
2012年05月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 東日本大震災が起こってから日本がどう変わってしまったのか。物語ではありながら限りなく現実に近い、現実でも起こり得るような話でした。
 今回の震災で未来を失ってしまった子供たちはたくさんいると思います。主人公、野田の息子もその一人。ですがこの国の未来を担うのは子供たちです。そんな彼らに少しでも未来の可能性を見せようとする野田と、その野田に道を提示する親父の関係性を楽しみながら読みました。

 福井先生の別シリーズに登場していた渥美さんの名前が出てきた時は、とてもテンションが上がってしまいました。

0
2012年05月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初にハードカバーでこの本を見たとき、胸が震えた。
文庫本になって、美しい装丁を手にしたとき、充分な重みを感じた。
でも読み終えたいま、その短さが心惜しい。
文庫本295ページの小説が、決して短いわけはないのだが、
従来の福井作品と比べると短編のようにすら感じる。

(短編集の「6ステイン」と比べたら長いはずなんだけど。
・・・とりあえず、今度また「6ステイン」も読もう 笑)

短編に感じるほど、この作品は大変読みやすい。
多くの人が関心を持たざるを得ないテーマをかかげ、
多くの人の心に伝わる正確な言葉で、
多くの人に共感を得やすいストーリーを語り、
多くの人へ向けたメッセージでラストシーンは埋め尽くされる。

正統的な小説だと思う。
解説の言葉を借りれば、
「世代間の断絶と理解」「公と私のあり方」「個と社会のあり方」がテーマ。
まさしく、福井作品の特徴的なテーマが並ぶが、
決して、使い回しの表現を感じさせない点にも、驚く。

唯一、「男とは・・・」の語りは、おなじみの話。
「生きること、働くこと、死ぬこと……。
なんにでも意味を見つけ出さなきゃ気が済まない。
見つからなきゃ、自分で作ってでもなにかに自分を賭けようとする。
その点、女は自然体だよな」
わたしは女で、確かにいろんな意味付けはしないわね、と思う。
でも、すべてに意味を見出そうとするサガに惚れるのは、
わたしが女だからなのかしら、と考え、
ま、意味なんてどうでもいいわね、とただ文字を見つめてみる。

『他人が他人に示せる善意には限度があり、
それを踏み越えた先には個人生活の破綻が待っている。
まだ社会のなんたるかを知らない少年には、
そんな不文律も大人の欺瞞としか聞こえず、
世界をまるごと救おうと突っ走ってしまうものなのか』

これは中学生の息子を語った、父の言葉。
福井氏が描く、若者と中年男性の関係性は見事なバランスと形だといつも思うが、
今回は息子と父、そして祖父の三世代である。

如月行、フリッツ、一功と朋希・・・
いわゆる女性読者が惚れるスター(笑)の役割が、今回はこの息子かと思いきや、
さすがにそこは中学生。
もっとたくさん動いてくれればいいのに、と思ったりもしたが、
もし彼が歴代のスター並みにかっこよくて、
わたしが惚れちゃったりしたら、それはもう年齢差から言って、
犯罪になりかねない 笑

もちろん、中学生の息子によって、このストーリーは動き出したこと、
未来の象徴として、重要な人物であることは明らか。
さらりと、若者の特徴を香らせているところも、いい。
惚れはしなかったけど、彼のことをとても好ましく思った。

福井作品ファンとして、祖父には、いろんな人物の面影が重なる。
あの小説のあの人の老後は、こんな感じかしら、と
こんな感じだといいな、と願う。

「日本人を日本人たらしめる感性は失われ、
欧米的な合理精神のみが人を動かすようになる。
それはつまり、わしのようなつまらん人間が増えるということだ。
いつでも最善の対処方法を考え、切り捨てたものには見向きもしない。
そうしなければ生き残れないという理屈で自分を正当化して、
誰もが孤独の穴に落ちてゆく……」

「これを最後の任務と思っとったが、結局なにもできなかった」

ファンにとっては、しびれる台詞。
この言葉だけで、いろんな背景をイメージできる。

この作品だけを読む人間には、どんなふうに映るのか想像もつかないが、
きっと深い人間性は、誰の目にも読み取れることだろう。

そして無辜の民の代表である父。
リアリティあふれる無辜の民が、
自然で驚きの変貌をする点もすばらしい。
成長物語ともいえる作品です。

0
2012年09月06日

Posted by ブクログ

”小説”なんだけれど、実際にあってもおかしくはない。
震災後の日本に住む人が持つ不安と恐れと希望。
特に子供たちの思いはどうなんだろう。我が家の子供たちは、同居はしているけれどもう立派?な大人なので、通り一遍の感想を言い合っただけで心に持ってしまった傷を明らかにするようなことはなかった。
傷ついてしまった息子と父親の助けを借りながら立ち上がろうとするお父さん。ボランティアに行った先での出来事が生々しくせまってきます。
泣けました。そして希望ももらえた。
子供たちに示すことの出来る未来へのビジョンを持たない自分はホントにその他大勢なんだなと思う。息子のために学校で皆を前に未来への希望を熱く語ったお父さんに脱帽です。
そういえば、以前テレビで、月に発電帯を作ってそこから電波で電力をおくるという、荒唐無稽と思える話をやっていた。それに近いことが本当にあるのかもと思える。

0
2012年04月20日

Posted by ブクログ

痛いなぁ~。グッサリと深くまで刺さったなぁ~。

あくまでもノンフィクション小説だとは言え、まさに「震災後」の社会の成り行きと我々の心模様とをしっかりと見据えて書かれた作品。

これを読んだからといって「何か行動を起こそう!」って感じではないとは思うが、少しでも多くの人がこの作品を読んで“闇”を抜け出せるようになればいい。

0
2012年04月14日

Posted by ブクログ

決してドキュメンタリーではなく
あくまでも小説に仕上げておきながら
この味も素っ気もないタイトルに込めた思いが
滲みてくる。
父と息子の物語にもなっているあたりが
涙腺を刺激する。
いつもの福井ではないけど
やっぱり福井であります。
石破茂のあとがきがこれまた良い。

0
2012年04月05日

Posted by ブクログ

発売即買い後ずっと読めず…やっと読書再開、で即完読。
大好きな作家の一人の福井晴敏さんはユニコーンガンダム以来久しぶりの単行本。臨場感ある描写にいつも引き込まれます。
震災後一年すぎた今、「大人の男」として社会や家族の中で「未来を示すこと」の大切さを改めて認識させられました。

0
2012年04月01日

Posted by ブクログ

1.著者;福井氏は小説家。映画好きで、映画用シナリオを書いていたのが小説執筆の契機。大学中退後、働きながら小説を書き始めました。「川の深さは」が話題となる。「Twelve Y.O.」で江戸川乱歩賞、「終戦のローレライ」で吉川英治文学新人賞、「亡国のイージス」で大薮春彦賞などを受賞。「福井氏は、究極の状況を作り出し、そこにおける“人間”のあり方を浮かび上がらせるという手法を多く用いてきた作家」と言われています。
2.本書;東日本大震災(マグニチュード9.0・最大震度7・死者15,900人という戦後最大の大地震)での大津波と福島第一原発の事故をモデルに書かれた作品。震災後の日本人の狼狽と不安を描き、未来に向けた問題・課題を提起。主人公である野田と父親の言葉の重み、息子の未来への期待が心に浸透します。福井氏は「今まで自分が書いた作品の中で、一番読んでもらいたい大事な本」と言っています。
3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
(1)「日本は現場力(前線・会議等の広い意味)の国だ。何としても危機を乗り切れ、法整備も含めて必要なものはすべて用意する。トップがそう言ってくれれば、現場は命に替えても不可能を可能にする。資源も信用もない敗戦国が、経済大国の仲間入りを出来たのも現場力のお陰だ。・・安定した社会では上の方から現場意識が失われてゆく。規定のルールに頼り、自己判断の責任を回避して、想定外の事態に対して腹を括るという事ができなくなってしまう。プロ意識の欠如だ」
●感想⇒組織は大きくなればなるほど、規則やルールを重んじます。人を一枚岩に束ねないと職務遂行出来ないと考えているからです。確かに、それは一理あります。しかし、ルールで対処困難な場合には現場の知恵が極めて重要です。上司も部下も、ルール通りに仕事をしていれば、楽に決まっています。人の上に立つ者は、いざという場合に、解決策を見出せない時は、現場を知り尽くしている者に任せ、責任はとるという度量が必要です。私は色々な上司に仕えてきました。事なかれ主義で責任を部下や同僚に転嫁する輩が多かった気がします。そうした中で、「事実を隠さずに説明してくれ。責任は俺がとる」という上司もいました。彼からは、組織人としての多くの知恵を学びました。
(2)「日本に取り憑いた“闇”は、すでに次の局面に入っている。忘却だ。心に傷を負った事、その前後に感じた事を丸ごと忘れ去り、縮こまった精神を復元させようとする。回復に向けた重要なステップであるが、突きつけられた問題(地震大国で原発を運用するのはリスクが大きすぎる)も忘れてしまっては・・。犠牲から何も学ばなかった復興など無意味だ。もう一度、失われた未来を取り戻す為に」
●感想⇒嫌な事が起きると、“時が解決”とばかりに、問題の要因を突き詰めて、対策しようとしない人がいます。確かに、嫌な事は忘れる事も必要でしょう。“人の噂も七十五日”とばかりに、忘れ去り、また同じ過ちを犯す事もしばしばです。以前某社(製造業)を見学する機会がりました。正門を入ってすぐに品質棟という建屋があり、見せて貰いました。中は、“失敗に学ぶ”事例で埋め尽くされていました。製品品質の保証は、重要課題との事。震災に関しても、“個人への啓発と共に、後世まで語り継ぐ”取組みは、大変良い事です。忘却の一言で済ましては決してならないと思います。
(3)「問題は、社会の仕組みが依然として成長を求め続けているという事です。・・経済成長する代わりに失業者が増え、一人一人の負担が大きくなり、格差が拡がるというのでは本末転倒もいいところです。幸福と繁栄という人類共通の目的に対して、今の仕組みはもはや最適とは言えない。・・仕組みを変えずにそこにこだわったら、日本は世界の中で置き去りになってしまう。・・それは未来じゃない。停滞の果てに訪れる黄昏、緩やかな自殺にも等しい」
●感想⇒社会は、どの分野でも成長する事を目標にしがちです。豊かな生活を目指しているからでしょう。企業は活動や決算数値・・など、前年・前回より向上したいと考え、切磋琢磨します。それを周囲が良否の判断基準としているので、止むを得ない面もあります。しかし、現在は地球温暖化や食糧危機等で、将来に疑問を投げ掛けられています。成長指向はある部分は認めざるを得ないと思うものの、行過ぎは子々孫々にまで、大きな負担(環境・借金等)を背負わせるのは自明の理です。先ずは幸福とは何かを考え直す事です。物心のバランスはいかに。それには、個々人の意識改革、良識・実行力のある政党・政治家選び等が重要でしょう。
4.まとめ;「関東でマグニチュード7級地震が起こる確率は70%、東海に至っては80%以上。地震大国で、原発を運用するのはリスクが大きすぎる。今回の震災で得た、それが最大の教訓だ」とあります。東京電力の“福島第一原発廃炉への中長期ロードマップ”では、40年ですべての工程を終える事になっています。しかし、「40年廃炉は無理。100年、200年という長いスパンで考えるべきだ」という専門家もいます。大量の放射性廃棄物の後始末は先送りされたまま。震災から11年経ちました。原発のあり方のさらなる検討と対策を願ってやみません。また、震災に向けては「なるようになる」ではなく、個人は出来る事(防災対策・避難訓練参加など)を確実にやるのが最低限の責務です。絶対神話はありません。本書の解説を書いた、石破茂氏の言葉「“人間は歴史に学ぶ”というのは嘘で、“人間は歴史に学ばない”というのが歴史の最大の教訓」は納得出来る名言。(以上)

0
2022年03月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

エンタテイメントではない。
血沸き肉躍るような興奮も無ければ、スカッとする結末が待つわけでもない。

“家族小説”と銘打たれてはいるが、これはむしろ……福井晴敏の思想表明本、とでも位置付けるのが正しいだろうな。

彼の、いくつかの代表作すべてに共通する筆者からのメッセージが、本書はより強く感じられるから……。

決して楽しく読めたわけではないし、筆者の主張に全面賛成なわけでもないけれど、読んで損はない一冊かと。

★4つ、7ポイント半。
2015.04.08.古。

“渥美”は、明らかに記憶にある“あの人物”だとして……、主人公の父も、設定的には(現役を退いて10年?)、例の代表作に登場していたのかしら??

0
2015年05月22日

Posted by ブクログ

小説に名を借りた「未来」へのメッセージ

久々に福井さんの小説を読みました。
「亡国のイージス」以来、福井作品はよく読んでいましたが、この作品にも、やっぱり脇役ながら出てくるんですね。市ヶ谷とか...そして、おじいちゃんがまた格好いい(笑)

震災から3年たって、改めて、本作品で震災後を振り返ることができました。震災後、原発事故後の日本での行動の総括と、その後の未来を語る作品となっています。
自分の子供、さらにはほかの子供たちにどんな「未来」を残せるのかを考えさせられました。

主人公は平凡なサラリーマン。震災後の原発事故を含むさまざまな出来事がすべての人の希望を失わせていきます。そんなさなか、息子が起こしたネット上の事件。
震災後の家族の不安、そして未来への不安の中、なぜか、主人公の父親がそっち系の重要人物だったりして、とてもミステリアス(笑)そんな格好いい父親との交流を通して、主人公が一歩踏み出し、そして、息子と向き合い、メッセージを託す、そんな感じの物語。
エネルギー問題をどう解決するかも、本書の中では語られていますが、その解決策がどうこうというよりも、未来を見据えて、まずは、一歩を踏み出そうっというメッセージを強く感じました。

「将来は放っておいても必ずその人のものになるけど、未来は必ずやってくるとは限らない。見よう、見せようとしなければ見れないし、手にも入らないもの…それが未来です」

私たちは子供たちの未来に何を見せてあげらるのでしょうか?

0
2014年10月18日

Posted by ブクログ

人類資金を書くに至った作品ではないだろうか?
後世に何を残すのか?

そんな難しく考えることはなくとも、我が子には幸せな世界を残したいという気持ちを持つのが普通の親ですね。

私もその一人だと自負しますが、東日本大震災のあと、原発問題がさかんに議論されても電力不足で現在の生活レベルを下げることは無理だと諦めの境地に立ったのを思い出します。
そんな中、自分一人の力ではどうすることもできないじゃないか?と簡単に割りきり喉元過ぎればという感じで、普通の生活に戻ってしまってる自分を戒めるきっかけとなりました。

ちょうど娘が高校進学、息子が中学進学というタイミングで、この作品に出会えたのはきっともう少しちゃんと考えろと言われているような気もします。

何ができるかはわからないが、きっと何かできる。そう信じて自分に出来る精一杯をやっていこうと思います。

0
2014年03月19日

Posted by ブクログ

未曾有の被害をもたらした東日本大震災。

あの日を境に、日本中を包んだ「闇」。
主人公である野田の息子の心に巣食った闇を中心に話が進む。

息子、父、祖父、それぞれの思い。葛藤。
いろいろな気持ちを抱え、どうやって「震災後」を生きていくか。
忘れてはいけない大惨事。でも、若い世代はこの「震災後」を生きていかなくてはならない。

主人公野田が、息子に、子供達に話しかける。
「こんなときだけど、そろそろ未来の話をしようか」

前を向いて生きていくことの大切さを再認識しました。

0
2013年03月11日

Posted by ブクログ

震災後、なかなか答えが出せない山積みの問題。作者は鮮やかに定義し、苦悩しながら答えを出す。なかなか考えさせられる作品。

0
2012年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

出版社が違うからと油断していたら、ダイスシリーズとちょっとリンクしていたー!とても嬉しい。

小説の中の震災の話がいまいち実感できなかった。
地震当日は情報がほとんど入ってこない状況で徹夜で仕事していたし、原発の話も理解しようとしないまま毎日過ごしていたから。
小説を読んで、非常事態だったんだと驚いた。

息子に未来を示す主人公。
それに共感できないのは自分がまだお子様の立場でしか物を考えられないからだろう。

0
2012年06月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中まで、このトーンで終わったら救われないぞ、と思いながら読み進めていたが、少し希望を感じさせて終わり、後味は悪くなかった。小説というより、ドキュメンタリーのようにも思える内容。決して解決しているわけでもない、現状をあらためて認識させられる。常に「経過」を生きている、と言い聞かせてうまずたゆまず進んで行くことが大切。

0
2012年05月08日

Posted by ブクログ

震災後、原発問題が生じた。
政府の対応の過ちもあり、このことが人々の心に闇をもたらした。
国はもはや我々を守ってはくれない、と。

このような不信感が蔓延した国を子供たちにそのまま渡して良いものだろうか。
大人たちには責任がある。
この国を今のようにしてしまったという責任が。
大人たちには、また責任がある。
めざすべき未来を子供たちに提示する責任が。

「未来の対になる言葉は、たぶん将来です。」

人類は文明により繁栄してきた。いくつもの課題を内に抱えながらも。
原発問題も大きな課題である。
経済の発展と、安全・安心の間でゆれる課題である。

原発問題については、SSPSという、ひとつの解決策を本書で提示している。
そこにはたしかに未来が見える。

なるほど、こういう強い言葉が未来を築き、人を動かすのだろう。

我々が悲観しすぎることはない。生まれてきた子供たちにとって、世界ははじめから今ある形である。
課題があれば、これまでそうしてきたように、次の世代がそれを解決していくだろう。
人類は、そのようにして進歩してきた。

未来を提示しよう。次の世代が解決すべき課題と、目指すべき未来を。
そうすれば意志は受け継がれ、未来はきっと実現していく。

0
2012年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

震災(東日本大震災、原発事故)後に大人以上に不安や絶望に直面しているのは、子供たちであり、その子供たちに大人が未来を語っていく大切さを教えてくれる小説。現場の判断力を奪う政治主導や、原発事故直後に国民を保護することを放棄した(出来なかった)こと、無責任なネットデマなど、色々な視点で震災後の政治や社会の問題点を示してくれる。頼りない父親が、息子に生き方を示すために成長していく物語でもある。

0
2012年04月01日

Posted by ブクログ

読んでいるうちに、あの時の気持ちがよみがえる。
やっぱり苦しくなる…。

子供たちの未来と将来について、とても考えさせられた。
親父と妻は芯が強くて、主人公のダメっぷりが際立つが、
これが私自身も含めて、大多数なのかもしれない。

0
2019年08月22日

Posted by ブクログ

息子にどんな未来を残すのか、残してあげられるのか、そんなことを少し考えてみたいと思った一冊。取り扱っているテーマをみて何気無く手に取った一冊だったがなかなか良い本でした。

0
2014年08月13日

Posted by ブクログ

小説という場で自分の言いたいことを言っているので最後のほうはひたすら聞いているだけになるが、その主張の中で「未来と将来は違う。未来を考えるべき」というのには共感。世の中は成熟しきっていて、この15年ぐらいの激しい進歩は一般人レベルでは想像することができなくなってしまっているため、現状の負の面ばかりに焦点を当てげんなりさせることしか大人はしていない。プラスの面はなにひとつなく、高齢化や原発などシビアな局面をどうやって乗り切っていくか、ということしか語られない。そんなことばかりを聞かされながら大人になっていく今の子ども達はこの先をどうやって生きていくのだろうか。
震災がきっかけではあるが、今まで考えたこともかいような、そんなことを考えさせられる。

0
2013年10月13日

Posted by ブクログ

 二〇一一年三月十一日、東日本大震災発生。多くの日本人がそうであるように、東京に住む平凡なサラリーマン・野田圭介の人生もまた一変した。原発事故、錯綜するデマ、希望を失い心の闇に囚われてゆく子供たち。そして、世間を震撼させる「ある事件」が、震災後の日本に総括を迫るかのごとく野田一家に降りかかる。傷ついた魂たちに再生の道はあるか。祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語―。『亡国のイージス』『終戦のローレライ』の人気作家が描く3・11後の人間賛歌。すべての日本人に捧げる必涙の現代長編。

0
2013年08月04日

Posted by ブクログ

タイトルにある“震災”とは、もちろん、3.11の東日本大震災の事。一般市民の生活に焦点を当て、日本の「未来」について語っている作品。

福井晴敏と言えば、『亡国のイージス』とか、『戦国自衛隊1549』とか、『終戦のローレライ』とかの、戦争モノ・自衛隊モノが強い作家のイメージですが、この作品はそれらの作品群とは一線を画しています。原発事故を下敷きに、親子のあり方、日本人のあり方を描いており、ある意味非常に重い、そして、含蓄のある作品になっています。

読んでいて、最近の原発を巡る騒動にも関連して「そうだよなぁ。」と思うことしきりです。原発の再開にしても全面廃止にしても、もはやエネルギー議論というよりイデオロギー論になってしまっていて、本当に日本の「未来」を考えた議論になっているのかが疑問です。作中の「未来を返せ!」と言う少年のセリフを、もっとちゃんと考える必要があると思いました。

タイトルは地味ですが、内容は重厚で充実しています。考えさせられました。

0
2012年06月03日

Posted by ブクログ

あのときあんな風だったな、と確認できる小説でした。ただ、おじいちゃんが元国家機関の重要者?重要者いうのは出来すぎかなぁ。

0
2012年05月23日

Posted by ブクログ

久しぶりの福井晴敏。帯に書かれた言葉を見て、購入。
福島原発事故による放射能問題を小説として書かれています。
この問題の解決方法に正解はないと思うが、細くはあっても光
が見える答えがあった気がする。
離れた地に暮らす私が言っても、説得力はないと思うが・・・

0
2012年05月17日

「小説」ランキング