夢野久作のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
上巻のみ、以前に読んだことがある。
日本三大奇書として有名な本書だが、最も流通している文庫本であるにも関わらず、卑猥な表紙が一向に改善されないのが残念である。
確かに怪しさはあるし奇書っぽさは出ているけれど、本編にこんな女が登場するわけでもないし、この表紙を隠さずして堂々と街中で読むのは憚られる。むしろ、シンプルな表紙で何の害も無さそうな本なのに、中身がスチャラカ、チャカポコの方が面白くて良いのに。
せめて精神病院の標本室にある絵の構図ならば、卑猥さがあっても納得できるのにな…と読みながら改めて思った。
やはりお気に入りは、キチガイ地獄外道祭文の皮肉っぷり。ちょっと長すぎるけど。
スチャラ -
Posted by ブクログ
高校時代に熱愛した怪奇幻想小説。
米倉斉加年の色っぽい表紙が魅力的だった。
久作の「押絵の奇蹟」、「ドグラマグラ」、乱歩の「押絵と旅する男」、正史の「かいやぐら物語」「真珠郎」がとストライクの趣向だった。
これらの作品で、自分の嗜好の方向性が決定付けられた。
「不義密通!」と叫んで妻と娘を斬り殺すところに江戸時代の残滓を感じたが、本当に不義密通があったのか、それとも胎教による影響なのか、結論を宙吊りにしたまま物語は終わる。
夢野は一人称語りを得意としているが、本作も手紙体の一人称語りだ。
夢野はこのスタイルをエドガー•アラン•ポーからの学び、多くの一人称小説を生み出していく。 -
Posted by ブクログ
男の目が覚めると、自分の過去に関する記憶が全て失われていました。
男は、九州大学の精神病科にいましたが、ある怪事件の目的は何か、犯人が誰かという真相を明らかにするため、医学教授若林博士が記憶を回復させようとしていました。
男は若林博士から絶世の美少女が許嫁と言われ、彼女のためにも記憶を喚び起こそうとしますが、全く思い出せず、自分が誰だかわからない恐ろしさや、精神病患者であるみじめさを感じます。
また、男は自分が偉人正木先生の実験『狂人解放治療』にかけられていると知らされます。
正木先生の研究内容について読んでいると、脳髄の機能や、精神病について考えると同時に、自分が何者か考えてしまいます。