夢野久作のレビュー一覧
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これも謎めいた掌編ですね…
池袋の旧文芸坐だったかで、これの映画、見た記憶があります。もうロマンポルノを作っているにっかつの映画でしたから、言うまでもなくそういう内容でしたね。
映画ではアヤ子さん役の女優さんが大きな瓶の入っているシーンが印象的で……兄妹姦の描写もありました。
夢野久作氏の作品には、こういう信用できなさそうな語り手でしばしば出てきますね。ドグラ・マグラはその典型ですし。
3通の手紙、おそらく書かれた順番は逆でしょうが、こういうのは色々と解釈ができそうで……読者の様々な想像力を刺激する作品になっていますので、古くはならないですね。青空文庫に大感謝です。
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ネタバレ 購入済み
天下の一大奇書です‼︎
夢野久作氏が作家人生を賭けて10年ほどかけて執筆し、それで力尽きたのか、程なく亡くなっていますね。
私は最初、学生時に米倉斉加年さんが表紙を飾っている角川文庫本(上下巻)で読みました。
なるほど、これを熟読して読み切ると、精神に変調をきたしそうで……けっきょくこの語りである私は誰なのかとか、正木・若林両博士は何故いきなり変貌したりとか、もう不条理小説もビックリな訳分からず要約は到底、不可能と言われている話が続きますよね。
これ、故・松本俊夫監督による映画がDVDにもなっているようですし、そういうのを先に見た方が分かりやすいような気は致しますが、映画では分かりやすくし過ぎているキライもありますので……まぁ探偵小説ではこれと「虚無への供物」や「黒死館殺人事件」が三大奇書ですので、どうせならばこの三作品、読んで欲しいです。 -
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夢野久作の短編集。『ドグラ・マグラ』よりも好きかも。相変わらず読後感が悪い(そこが良いんだが)エログロナンセンスの世界。『瓶詰めの地獄』『死後の恋』など評価の高い作品も良かったが個人的には『鉄鎚(かなづち)』が好きだった。悪人だったはずの叔父が次第に弱く軟化してくる様子。対して主人公と、伊奈子の悪魔性が増長するさまは面白い。人間って環境とか、時間が変われば中身も変わるんだよねーとしみじみ。
『一足お先に』は、サスペンス的な要素が面白かったけどオチが弱かったかな?
『瓶詰めの地獄』は短いながらかなり印象に残った作品で、手紙の順が時間と逆行しているのも小説としてストーリーが秀逸。
それにしても今から半世紀以上前にこんな作品が世に発表されていたなんて、日本の文学界ってかなり昔から自由な風潮があったのね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ夢野久作の幻魔的世界へ!
何回読んだか知れない大傑作『瓶詰の地獄』に始まって、ちょっとゾクッとする『人の顔』を挟み、『死後の恋』後半の圧倒的衝撃と描写力に恍惚と震え上がり、『支那米の袋』でのeroguronansensuに目を離せなくなり、そのまま『鉄槌』を読んでチョット感傷的になったかと思えば、『ドグラ・マグラ』の香りが漂う『一足お先に』と『冗談に殺す』の事件ものがあり、締めは中井英夫の解説……と、これだけで分かる圧倒的充実感! それと、私の角川の本は装丁のイラストが米倉斉加年版なので、雰囲気もバッチリなんですよねェ。たまりませんわ。
収録作の中で好きなのはヤッパリ『瓶詰の地獄』、『死後の恋』、『支那米の袋』かなァ。でも、個人的には、どこまでも続く謎を残す『瓶詰の地獄』と『死後の恋』が飛び抜けて好きです。
『瓶詰の地獄』★5
何回読んだか知れない、個人的には大傑作。あっという間に読み終わるのに、残るものが多すぎて考察が捗る作品。丸尾版コミカライズも読んだけれど、やっぱり原作の煌々とした禍々しさがクセになって戻ってきます。
『人の顔』★4
ゾクッとする短編。おぼつかない口調で恐ろしいことを話し出すチエ子が好きすぎて……。幼いながらも持ち合わせる不気味な魅力と育ての良さがチエ子の会話の節々に見られて、読んでいて虜になる作品。
『死後の恋』★5
これは文句なしの傑作だと思います。初読は前半部分の複雑さというか言い回しがしっくりこなくて進みが遅くなりますが、後半の圧倒的衝撃と描写力には恍惚と震え上がり、そこからはもうこの作品の虜です。夢野久作の複雑怪奇な話の展開とグロデスクな描写が見事にこの作品には収斂されていると思いました。最高!
『支那米の袋』★5
これぞ夢野久作文学の真骨頂! 幻想的な雰囲気の作品と言うよりは『いなか、の、じけん』を彷彿とするような粗野で下劣、ナンセンスな事件の被害者の話ですが、その生々しさと、夢野久作が生涯言っていた「人間の闇」的な部分も垣間見ることができて、個人的にはとても満足の一作です。すべての遊びに飽き飽きて「ステキな遊び」を語るワーニャさん、ものすごく蠱惑的です…
『鉄槌』★4
『なんでもない』で有名な姫草ユリコなど、夢野久作の作品に登場する魅力的な女性像をこの作品にもまた感じますね。マゾヒズムの趣があったり、本文中に「悪魔」と多用されていることからも、安直ながら、そのまま『悪魔』と題のついた谷崎潤一郎の作品を彷彿とさせます。愛太郎が伊奈子に向ける複雑な感情はまた、夢野久作作品には珍しい儚さを感じますね。
『一足お先に』★4
イヤハヤこれは夢か現か・・・・・私とは一体何者なのか・・・・・・・。病院、妹、殺人、不気味な赤ん坊の描写、忘れていた記憶・・・・・・・夢野久作の作品の中で牙城の如く聳える『ドグラ・マグラ』の血腥い臭いが漂う、病院の中で起こった奇妙な体験ですね。完璧な世界観でタイトルの『一足お先に』が秀逸なのはともかく、これは怖い! 特に最後の妹と青木の会話に主人公が全く加わらず、「・・・・・・・」と続くともう!
『冗談に殺す』★3
この作品はやはり冒頭、活劇女優が主人公に見せる残虐な遊戯の描写力と、彼女の心理をうかがわせる明晰な描写に光るものがあると思います。『空を飛ぶパラソル』などに代表される夢野久作の残虐な構成力を堪能できる一作です。 -
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タイトルが、「地獄のような内容の手記が瓶に詰められている」の意味と、無人島という閉ざされた環境での苦しみのメタファーと、二重の意味がある。
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ホラーもの
タイトルだけしか知らなかったので読んでみました。
自分自身のことを思い出せない主人公が、不可思議な体験をし、壮大な実験に巻き込まれていることを知りますが…まさかのラストでした。 -
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ネタバレ好奇心から「ドグラ・マグラ」を少し読んで挫折したので心配でしたが、そんなに面白いなら私も続いてみようと思って一覧を眺めたのです。
不思議な文体にあふれている、初めての久作ワード、カタカナも混じっていて、読み慣れるのに少し時間がかかった。
「死後の恋」「瓶詰地獄」
名作ということで、ストーリーだけ取ると、家系を守るために男になり、死んだ後に持っていた宝石だけが残されるというのは、特に戦争や革命で社会制度の変わり目に揉まれて死んでいくということは珍しくないと思ったが、死の悲惨な姿や残された宝石との対比が見てきたような凄さをもっていた。それに、ロマノフ王朝の令嬢が男装していたという意外さもあって、ちょっと悲しい片想いも絡むという作りは、ミステリにはこういう話も作れるのかと着想が面白かった。
「瓶詰地獄」
兄妹が二人きりで島に取り残されて成長する間には、愛も恋もあるに違いない、血のつながりが成長とともに背徳地獄に落とされるというのは、別に驚くことではないと思いながら、健康的だった二人が成長するにつれて地獄の思いにとらわれていく様子が残酷だった、成長過程の心理は読者には手紙でしか知らされない。瓶の手紙が書かれた順に届くのではないというテクニックがやはり巧みさなのかと思う。
「悪魔祈禱書」
くだけた一人称の語りが面白い。ふたを開けてみると、という最後になって思わず拍手。好きな作品だった。
「いなか、の、じけん」
事実なのか創作なのか、実際にあった話だと作者が言っているのも面白く怪しいけれど、びっくりの田舎の出来事が書かれている。
世界には「奇想天外」な話はおおくて、興味があるのでTVを見てはへぇ~と驚いている。田舎には、こんな怪奇な出来事が起きる、かもしれない。まだ今よりもっと夜が暗く山が深かった頃、妖怪や、狐狸や、貧しさや、男と女のもつれや、心の乱れが死の狂気を招く。
最後の一行で恐ろしい話の種明かしをされてはっと我に返る。かつての田舎経験者なので雰囲気がよくわかって面白かった。
「怪夢」「木魂」
自分が作り出した怪異に憑かれる。現実と幻の中で恐怖に震え命を落とすなど、今でもないとは言えないかもしれない。こういう手慣れた恐怖話は、真骨頂かなと思わず震えた。
「あやかしの鼓」
技巧的な文章で、ストーリーも鼓にまつわる因縁噺が世代を超えて伝わる。芸事に憑かれた人達の怨念や執念がこもる道具立ての話は多いが、鼓の音色に現れるというのは興味深かった。お囃子の調子、不気味な音が聞こえるようだったが、鼓に籠った執念ということが実は、精神的に倒錯した人たちの狂気が作り出した因縁噺かもしれず、雑誌の入選作だというのは、知られた話かもしれないが、後にある批評を読むと興味が倍増される。
鼓が作られた当時悲劇が続いて、作者の怨念がこもったということで、封印されるが、やはりそういったいわれのあるものは、打ってみたいというのが人情で、それが災いを招く。鼓にまつわる薄気味悪い出来事が続いている。もっと怖がらしてほしいと、不吉を呼ぶ「あやかし」の増量を期待しつつ。人間関係の不思議さ気味悪さなど充分怪しかった。
狂気の伝承を扱ったようなストーリーと独特の夢野ワードにうまく引きずり込まれた。変態女性は少し書き方が荒っぽく苦手なのかなと思ったが。やはり変態は美人でないと似合わないかも。
選者は、知らない方々もいたが江戸川乱歩の率直さが愉快で納得する部分も多く、あぁこの方は実在した人でこういうことを書くこともあるのかと当然のことだけれどひどく身近に感じた。
なんだか時々は、今の様々な賞についている評が生臭く感じることがあるだけに、こういう時代があったことにちょっと感動した。
受賞した夢野さんの謙虚ながら裏話めいた「所感」は、微笑ましかったし、解説を読むと10年足らずで書き溜めた作品で全集が刊行されたという、書く威力を感じた。そのうち『ドグラ・マグラ』が読めるようになるだろうか。名作というものを読むと、好奇心だけでは足りない気がしてきた。 -
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初めて読んだ夢野久作の著書でした。
死後の恋の一周まわって気持ちいいくらいの惨憺たる残酷描写が好きです。
三大奇書にも選ばれている「ドグラ・マグラ」の作者ともあって、私が期待していた通りの文章の奇怪さ、陰惨さ、陰鬱さでした。
特に印象に残ったのは瓶詰めの地獄、死後の恋、支那米の袋。
この短編集はどの話も、「救いようのない」終わり方をします。それでは何の解決にもなっていない、という終わり方です。
特に瓶詰めの地獄は手紙方式ですが、順番になっている割になんだか話が前後しているような感覚でした。
夢野久作という人物は、人は救われない、「救われない」という意味で人生には終わりがないと考えている人なのかもしれない。
私は狂気に満ちたような描写やストーリーが好きです。とても肌に会う作品でした。
残酷描写が苦手な人は気をつけてください。 -
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ネタバレ過不足の無かったはずの楽園が、時を経て性徴という魔力を前にじわじわと崩壊していく様の、うつくしさと残酷さ。
そして、神の目から逃れるように、救いを投げ出すように目印を倒し聖書を焼いたのに、瓶の中に残されていた手紙に綴られていたのはひたすらに懺悔だった。
そういう歪さに、ただただ感服させられたというか、謎の高揚めいたものを覚えてしまいました。昔の作家はすごい……。
第二の手紙を読み終えた時に、「間に合わなかった」(或いは抗えなかった)ことを示す第一の手紙の意味を知り、締めくくりの第三の手紙で得も言われぬ気持ちにさせられる構成の巧みさも良いです。
挿絵がまた大変に美しいので、文章だけの本が苦手な人でも読みやすいです。 -
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デビュー作といわれる「あやかしの鼓」も収録された一冊。
「氷の涯」を読んでいるときは、それこそ中島河太郎の解説にあるような「大衆読物視された作品」にすぎないような気がしていたけれど、表題作「押絵の奇蹟」を読んでからはもう全然違って、やはりロマンと推理の複合的怪作を描かせたら夢野久作が一番、という感を新たにせざるをえない。
「押絵の奇蹟」にせよ、「あやかしの鼓」にせよ、それは『ドクラ・マグラ』に通ずる「出生の秘密」×「言い伝えの秘密」×「自我の秘密」をめぐる推理と夢想の境地であり、これを頭脳明晰、あるいは技能随一の登場人物が喝破看破しまくるところがたまらない。もちろん彼ら彼女らは終局的に、左記の「三密」にうなされ、惑わされ、自らの揺らぎに耐えられなくなるのだけれど・・・。
夢野久作文学に多い手記調の魅力は「語り手への信ぴょう性」をめぐる文学的「信頼」のおきどころだと思う。果たして主人公は、あるいは手記の書き手は、あるいは「神の視点」までも・・・、誰しもが本当のことを言っている(書いている)とは限らないから、自分の読みが正しいかどうかを終始疑わなければならない。そのことが敷衍していくと、自らの記憶、自らの思考体系、ひいては自らの存在意義までもが揺さぶられてくるというのが、夢野久作文学の醍醐味といえよう。
「『ドクラ・マグラ』を読むと精神に異常をきたす」というのは左記のような揺らぎから考えると至極当然のことで、僕たちはこの文学的ダイナミズムの対流に、そして人類が永劫のかなたに抱える「大記憶」のロマンに、全身全霊でぶちあたっていかなければならないのだ。「読み」という行為の髄の髄までためされるようなスリルと覚悟。それこそが、夢野久作を読むということなのだ。 -
Posted by ブクログ
怪異小品集。狂気に満ちていて、だけどどこかしらユーモラスで、そして美しく思える作品ばかりです。
「猟奇歌」いいなあ。短いのだけれど、短いがゆえに想像の余地が多くって、いろんなことを夢想(妄想?)させられてしまうのがとても素敵です。
お気に入りは「瓶詰地獄」。タイトルは有名で知っていたのだけれど、読むのは初めて。想像したような物語じゃなかったけれど(もっとおどろおどろしいかと)、ある意味想像したよりも恐ろしくて悲しい物語でした。ひどく印象的。
「書けない探偵小説」も好き。たしかにこれらは探偵小説とは言えないかもしれないけれど。いやいや、かなり面白そうな気がします。「大人のお伽話」は充分素晴らしいですよねえ。