夢野久作のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「読むと精神に異常をきたす」という評判から読者を当事者として物語に没入させるような小説なのかと思っていましたが、そのような形式の本ではありませんでした。むしろ読者側は物語に引き込まれながらも、目まぐるしく展開していく文章に、数多の「?」を浮かべたまましがみつくことしかできないような本だったと感じます。
作中に披露される知識の膨大なこと、それを書き表す表現力、何よりその文字数。人生を賭してこの作品を大成させた作者の執念が、重厚な説得力として迫ってきました。
人生の早い時期にこの本に出会えたのは幸運だったと思います。これから何度も何度も読み返したい一冊です。
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Posted by ブクログ
初めての夢野久作・著の作品がコレ。
読書が苦手ながら一気に世界観に引き摺り込まれました。
元々イッキ読みは出来ない性格も相俟って、上巻だけでも読破は予想以上に根気のいるものでした。
が、それでも挫折しなかったのは、矢張り『夢野節』があったから。
『内容』を理解するには、二、三度繰り返し読まなければ難しいが、『文』としての吸収は容易に出来る…。
日本語のリズミカルさと狂気を前面に出し、その心地良さを何枚も剥げば、ようやく意味が4割分かる……みたいな不思議な感覚に酔い痴れた作品でした。
下巻は絶賛奮闘中なため、どうなるかがトテモ楽しみです。 -
Posted by ブクログ
「読んだら精神に異常をきたす」と評される日本文学の奇譚。夢野久作自身も「読者を狂わせる」ことを目的として書いている。
横溝正史エッセイの落合信彦の対談で「この本読んでいると気が変になりますよねー、はっはっは」みたいなことを話していた。「気が変になる」という言葉はこの二人の対談から広まった。
しかし私としては、上巻の半分の精神科博士の論文が理解できなくて狂う余裕がなかった^^; 本書で気が変になるのは、この論文が理解できる頭の良い人(横溝正史くらいに)だけですね ^^;
※差別用語も本文のまま記載しています。
※※※※わりとネタバレ気味ですのでご了承ください※※※※
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………ブウウ -
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、夢野久作さんとホノジロトヲジさんのコラボ作品「瓶詰地獄」です。「この表紙いいね~!今まで借りた中で一番いい!」と、ボカロ好きなうちの息子が言いました。現役乙女世代にも、いい感じに見えるんですね!でも息子は読まないと思うけど(^-^;
浜辺に流れついた、ビール瓶3本…その中には手紙が詰められていた…。この手紙はある無人島から流れついたもので、その手紙には無人島で暮らす兄と妹の生活が綴られていた…。漂着当初は不自由もなかったが、年月の経過によりお互いに成長したことでふたりの心に変化が生じたことで苦しみ、やがては死をも覚悟するようになる…。
ふたりはどうなったんだろ -
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Posted by ブクログ
ネタバレまずこの本は短編集です。
その中でも表題の「少女地獄」の感想になります。
「少女地獄」は「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」の三作で構成されています。この中でも「殺人リレー」は先に発表され、後から「何んでも無い」と「火星の女」と共に一つの本となって刊行されました。
書簡形式で書かれた作品ですが、同じ書簡形式をした短編は同じ著者だと「瓶詰めの地獄」がありますね。
閑話休題。
私がこの中でも一番好きな話は「何んでも無い」になります。私自身、虚言癖があります。なので、この「何んでも無い」のユリ子という彼女の嘘とその末路が美しくも鮮やかで寂しくて大好きです。
嘘つきにはロクな死に方は求められ -
ネタバレ 購入済み
これも謎めいた掌編ですね…
池袋の旧文芸坐だったかで、これの映画、見た記憶があります。もうロマンポルノを作っているにっかつの映画でしたから、言うまでもなくそういう内容でしたね。
映画ではアヤ子さん役の女優さんが大きな瓶の入っているシーンが印象的で……兄妹姦の描写もありました。
夢野久作氏の作品には、こういう信用できなさそうな語り手でしばしば出てきますね。ドグラ・マグラはその典型ですし。
3通の手紙、おそらく書かれた順番は逆でしょうが、こういうのは色々と解釈ができそうで……読者の様々な想像力を刺激する作品になっていますので、古くはならないですね。青空文庫に大感謝です。
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ネタバレ 購入済み
天下の一大奇書です‼︎
夢野久作氏が作家人生を賭けて10年ほどかけて執筆し、それで力尽きたのか、程なく亡くなっていますね。
私は最初、学生時に米倉斉加年さんが表紙を飾っている角川文庫本(上下巻)で読みました。
なるほど、これを熟読して読み切ると、精神に変調をきたしそうで……けっきょくこの語りである私は誰なのかとか、正木・若林両博士は何故いきなり変貌したりとか、もう不条理小説もビックリな訳分からず要約は到底、不可能と言われている話が続きますよね。
これ、故・松本俊夫監督による映画がDVDにもなっているようですし、そういうのを先に見た方が分かりやすいような気は致しますが、映画では分かりやすくし過ぎているキライもありますの -
Posted by ブクログ
夢野久作の短編集。『ドグラ・マグラ』よりも好きかも。相変わらず読後感が悪い(そこが良いんだが)エログロナンセンスの世界。『瓶詰めの地獄』『死後の恋』など評価の高い作品も良かったが個人的には『鉄鎚(かなづち)』が好きだった。悪人だったはずの叔父が次第に弱く軟化してくる様子。対して主人公と、伊奈子の悪魔性が増長するさまは面白い。人間って環境とか、時間が変われば中身も変わるんだよねーとしみじみ。
『一足お先に』は、サスペンス的な要素が面白かったけどオチが弱かったかな?
『瓶詰めの地獄』は短いながらかなり印象に残った作品で、手紙の順が時間と逆行しているのも小説としてストーリーが秀逸。
それにしても今か -
Posted by ブクログ
ネタバレ夢野久作の幻魔的世界へ!
何回読んだか知れない大傑作『瓶詰の地獄』に始まって、ちょっとゾクッとする『人の顔』を挟み、『死後の恋』後半の圧倒的衝撃と描写力に恍惚と震え上がり、『支那米の袋』でのeroguronansensuに目を離せなくなり、そのまま『鉄槌』を読んでチョット感傷的になったかと思えば、『ドグラ・マグラ』の香りが漂う『一足お先に』と『冗談に殺す』の事件ものがあり、締めは中井英夫の解説……と、これだけで分かる圧倒的充実感! それと、私の角川の本は装丁のイラストが米倉斉加年版なので、雰囲気もバッチリなんですよねェ。たまりませんわ。
収録作の中で好きなのはヤッパリ『瓶詰の地獄』、『死 -
購入済み
タイトルが、「地獄のような内容の手記が瓶に詰められている」の意味と、無人島という閉ざされた環境での苦しみのメタファーと、二重の意味がある。