【感想・ネタバレ】死後の恋―夢野久作傑作選―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

ロシア革命直後のウラジオストックで、怪しい男がロマノフ王家の宝石にまつわる奇妙な体験を語る(「死後の恋」)。海難事故で無人島に漂着した兄妹が出遭った悪夢を父母宛に綴る(「瓶詰地獄」)。鼓作りの男が想いを寄せる女に贈った鼓の、尋常ならざる音色が不吉な事件を起こす(「あやかしの鼓」)――。夢と現(うつつ)の狭間へと誘(いざな)う奇才夢野ワールドから厳選した究極の甘美と狂気、全10編。(編者解説・日下三蔵)

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Posted by ブクログ

読んでいる内に異界に入ったような感覚、読後に現実にいることを思い出す感覚、それを味わえただけで満足する、夢野久作らしい一冊でした。

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2022年01月06日

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手軽な狂気。そのまま読むぶんには良いが頭を捻って考察をしようなどと考え始めると途端に自分の肌の裏に蠢くものが血と肉であるのか分からなくなってくる。

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2021年01月03日

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ネタバレ

乞食のような青年の不可思議な話
話を聞き「死後の恋」と言うものが実際にあり得ると認めれば彼の財産を差し出すと言う
そして、彼の語りの最後で我々は衝撃の事実を知る
しかし、彼の話を聞いた後では彼の差し出す財産は受け取れなくなってしまう
受け取る気が失せてしまう・・・

人は目の前の欲望に囚われると、もっと大事な事が身近に現れていても気づく事ができなくなってしまう
そして、取り返しがつかなくなると今度はその過去に囚われてしまう

読み終わった後、悲哀感と言えばいいのか、喪失感と言えばいいのか、形容し難いジクジクとした感覚がじわじわと染み入ってくる

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2022年01月31日

Posted by ブクログ

好奇心から「ドグラ・マグラ」を少し読んで挫折したので心配でしたが、そんなに面白いなら私も続いてみようと思って。惚れたのねと#棚の一覧を眺めたのです。

不思議な文体にあふれている、初めての久作ワード、カタカナも混じっていて、読み慣れるのに少し時間がかかった。

「死後の恋」「瓶詰地獄」は名作ということで、ストーリーだけ取ると、家系を守るために男になり、死んだ後に持っていた宝石だけが残されるというのは、特に戦争や革命で社会制度の変わり目に揉まれて死んでいくということは珍しくないと思ったが、死の悲惨な姿や残された宝石との対比が見てきたような凄さをもっていた。それに、ロマノフ王朝の令嬢が男装していたという意外さもあって、ちょっと悲しい片想いも絡むという作りは、ミステリにはこういう話も作れるのかと着想が面白かった。

「瓶詰地獄」も兄妹が二人きりで島に取り残されて成長する間には、愛も恋もあるに違いない、血のつながりが成長とともに背徳地獄に落とされるというのは、別に驚くことではないと思いながら、健康的だった二人が成長するにつれて地獄の思いにとらわれていく様子が残酷だった、成長過程の心理は読者には手紙でしか知らされない。瓶の手紙が書かれた順に届くのではないというテクニックがやはり巧みさなのかと思う。

「悪魔祈禱書」は、くだけた一人称の語りが面白い。ふたを開けてみると、という最後になって思わず拍手。好きな作品だった。

「いなか、の、じけん」
事実なのか創作なのか、実際にあった話だと作者が言っているのも面白く怪しいけれど、びっくりの田舎の出来事が書かれている。
世界には「奇想天外」な話はおおくて、興味があるのでTVを見てはへぇ~と驚いている。田舎には、こんな怪奇な出来事が起きる、かもしれない。まだ今よりもっと夜が暗く山が深かった頃、妖怪や、狐狸や、貧しさや、男と女のもつれや、心の乱れが死の狂気を招く。
最後の一行で恐ろしい話の種明かしをされてはっと我に返る。かつての田舎経験者なので雰囲気がよくわかって面白かった。

「怪夢」「木魂」は自分が作り出した怪異に憑かれる。現実と幻の中で恐怖に震え命を落とすなど、今でもないとは言えないかもしれない。こういう手慣れた恐怖話は、真骨頂かなと思わず震えた。

「あやかしの鼓」は技巧的な文章で、ストーリーも鼓にまつわる因縁噺が世代を超えて伝わる。芸事に憑かれた人達の怨念や執念がこもる道具立ての話は多いが、鼓の音色に現れるというのは興味深かった。お囃子の調子、不気味な音が聞こえるようだったが、鼓に籠った執念ということが実は、精神的に倒錯した人たちの狂気が作り出した因縁噺かもしれず、雑誌の入選作だというのは、知られた話かもしれないが、後にある批評を読むと興味が倍増される。
鼓が作られた当時悲劇が続いて、作者の怨念がこもったということで、封印されるが、やはりそういったいわれのあるものは、打ってみたいというのが人情で、それが災いを招く。鼓にまつわる薄気味悪い出来事が続いている。もっと怖がらしてほしいと、不吉を呼ぶ「あやかし」の増量を期待しつつ。人間関係の不思議さ気味悪さなど充分怪しかった。
狂気の伝承を扱ったようなストーリーと独特の夢野ワードにうまく引きずり込まれた。変態女性は少し書き方が荒っぽく苦手なのかなと思ったが。やはり変態は美人でないと似合わないかも。

選者は、知らない方々もいたが江戸川乱歩の率直さが愉快で納得する部分も多く、あぁこの方は実在した人でこういうことを書くこともあるのかと当然のことだけれどひどく身近に感じた。
なんだか時々は、今の様々な賞についている評が生臭く感じることがあるだけに、こういう時代があったことにちょっと感動した。
受賞した夢野さんの謙虚ながら裏話めいた「所感」は、微笑ましかったし、解説を読むと10年足らずで書き溜めた作品で全集が刊行されたという、書く威力を感じた。そのうち『ドグラ・マグラ』が読めるようになるだろうか。名作というものを読むと、好奇心だけでは足りない気がしてきた。

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2021年02月11日

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ネタバレ

デビュー作「あやかしの鼓」含む10編からなる短編集。
短編ではあるが、しっかりと夢野久作ワールドを楽しめる。
夢野久作を読んでみたい!と思ったけど、長編はちょっと…という人にぴったり。
あと、ドグラ・マグラとか少女地獄とかで挫折した人にもよいと思う。

いなか、の、じけんはちゃんとオチが付いているし(まぁ結構アレだけど)、個人的にはちょっと笑える。
表題作の死後の恋は、短いけど"これぞ夢野久作ワールド"みたいな感じだし、あやかしの鼓は言うことなしだし…
再読だが、ページを捲る手が止まらなかった。

この短編集のいいところは、ちょっと夢野久作読みたいって時にさっくり読めるところだと思う。

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2021年02月02日

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夢野久作傑作選。ちくま文庫の全集から来た短編集。
死後の恋、瓶詰地獄(「瓶詰の地獄」改題)、人の顔、支那米の袋、あやかしの鼓、は以前、角川文庫で読んだが、強烈な印象のあった瓶詰地獄以外はすっかり忘れていた。読んでいくうちに思い出したのが、支那米の袋とあやかしの鼓。女性の語り口調が特有だが、昭和初期のこの時代だからだろうか。
どれも独特の不気味さ、後味の良くないもの、それでも癖になるようなじわじわくる話ばかりだが、少し違った印象を受けたのが「いなか、の、じけん」。はじめは、如何にも田舎で起きるような、しょうもない事件を集めたものか、というのが多かった。だが次第に、笑えない事件も出てくる。不気味な話、隠微な話、不吉な話…。

全体で言うとやっぱり怖い。怖いけど読みたい。夢野久作、中毒性があるのかもしれない。

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2017年09月21日

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久しぶりの夢野久作作品でしたが、相変わらずの世界観に圧倒されてしまいました。一度読み始めるとまさに夢の中に迷い込んでしまったかのような感覚に囚われてしまう、それがたまらなく好きです。
収録作品の幾つかは過去に読んだことがありましたが、改めて読み直すと内容をあまり覚えていなかったので、新鮮に読めました。お気に入りは『白菊』です。
第2弾の刊行を楽しみにしています。

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2017年05月07日

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描かれた一つひとつのシーンが鮮やかに目に浮かんでくる、とても映像的な短篇集だと感じた。切ないけど面白い。

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2016年12月28日

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『ドグラ・マグラ』は挫折したが、この作品は短編集で内容も比較的読みやすかった。
特に「死後の恋」「瓶詰地獄」「あやかしの鼓」は面白く読めたが、その他の作品はあまり印象に残らなかった。
全体の雰囲気は江戸川乱歩の作風に近いようにも感じられたが、解説によれば江戸川乱歩は「あやかしの鼓」を酷評しており、その見方はさすがだなと思った。

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2025年10月05日

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ネタバレ

少し古さを感じるとしても文章がフランクで読みやすい。編集が入っているのだろうか?とても大正〜昭和初期の人物の作品とは思えない。

この著者は推理小説作家としてデビューしているのだが、ホラー作家の適性の方があるのではと思った。
気味の悪い独特の雰囲気を描くのは上手い。対して推理やミステリーものの質は低いと思った。この時代(= 新本格以前)のほとんどの推理小説は今と比べると質が低く、読めたものじゃないと思うことも多いので時代が悪かった可能性もあるが。
読まないまま上巻の中途で放り出している著者の別の作品『ドグラマグラ』では明るいキチガイを描いていたので、『白菊』(;人形だけがいる館と脱獄囚の話)のような異界感に得意の明暗のキチガイ感をピンポイントで組み合わせると特異な、そして非常に気味の悪いホラー作品になったのではないかと思った。

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2025年06月03日

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挫折した。
「死後の恋」「瓶詰地獄」「支那米の袋」は世界観を味わえたけど、他は“もういいか”でした。
次は学生時代から読もうと思って未だ読めてない「ドグラ・マグラ」。跳ね返されるかな。

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2023年05月17日

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近代文学は純文学より大衆文学派だった私からすると、すごくドキドキワクワクしながら読みました。
これに収録されてるなかでいうと、『いなか、の、じけん』が気に入りました。ブラックジョーク的な話やエログロナンセンス要素のあるお話も多かったですが、短編なので読み進めやすかったです。

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2022年07月11日

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★4.0 「瓶詰地獄」
★3.5 「死後の恋」「悪魔祈祷書」
「ドグラ・マグラ」ほどのおどろおどろしさはないかな。

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2022年01月30日

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短編集、読んだ事の有る作品、読んだ事のないので面白かったのは「あやかしの鼓」。 いなかの、じけんは少し狂ってて、次から次に短いのに読み終わるのに時間がかかった。

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2019年08月13日

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あとがきに書かれているように、私も以前「ドグラ・マグラ」から夢野久作に入ろうとして門前で弾き飛ばされた一人なのですが、この本は短編集で読みやすく、夢野久作入門には最適でした。幻想怪奇趣味が詰まっていて、好み。近藤聡乃さんの表紙絵はイメージぴったりだと思いました。「いなか、の、じけん」だけは青空文庫で既読。「瓶詰地獄」が特に面白かった。いまだに本棚の奥で眠っているドグラ・マグラに再挑戦してみようかな。

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2017年06月22日

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とても面白かったです。既読の作品もいくつかありましたが、何度読んでも、目眩く狂気の世界に惹きつけられます。「瓶詰地獄」「いなか、の、じけん」「怪夢」が特に好きです。カタカナの挟まれる文章も癖になります。「いなか、の、じけん」は、こんなに狂った事件がいくつも起こる地域なんて嫌だと思ってしまいました。初めて読んだ「あやかしの鼓」については、作者の言葉と、江戸川乱歩とかの評論も収められていて贅沢です。狂気と正気は紙一重で、狂気の側に陥った人の描写に怖いと思うと同時に、すごく惹かれている自分もいます。夢野久作の作品も、もっと読みたいです。

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2017年05月25日

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ドグラ・マグラでチャカポコしている時にはどうしてその後夢野久作作品続けて読むようになるなどと予想できただろうか。不気味でグロテスクで背筋が冷たくなったりもするんですが、狂言じみた言い回しがどこか美しくて。表題作のほか『支那米の袋』が好きでした。ほかにもロシア絡みのネタがちょいちょい挟まれてたのですがそれがまたいい味でした。『いなか、の、じけん』はちょっと柳田国男っぽい感じで面白かったー。

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2017年02月09日

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