あらすじ
ロシア革命直後のウラジオストックで、怪しい男がロマノフ王家の宝石にまつわる奇妙な体験を語る(「死後の恋」)。海難事故で無人島に漂着した兄妹が出遭った悪夢を父母宛に綴る(「瓶詰地獄」)。鼓作りの男が想いを寄せる女に贈った鼓の、尋常ならざる音色が不吉な事件を起こす(「あやかしの鼓」)――。夢と現(うつつ)の狭間へと誘(いざな)う奇才夢野ワールドから厳選した究極の甘美と狂気、全10編。(編者解説・日下三蔵)
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Posted by ブクログ
乞食のような青年の不可思議な話
話を聞き「死後の恋」と言うものが実際にあり得ると認めれば彼の財産を差し出すと言う
そして、彼の語りの最後で我々は衝撃の事実を知る
しかし、彼の話を聞いた後では彼の差し出す財産は受け取れなくなってしまう
受け取る気が失せてしまう・・・
人は目の前の欲望に囚われると、もっと大事な事が身近に現れていても気づく事ができなくなってしまう
そして、取り返しがつかなくなると今度はその過去に囚われてしまう
読み終わった後、悲哀感と言えばいいのか、喪失感と言えばいいのか、形容し難いジクジクとした感覚がじわじわと染み入ってくる
Posted by ブクログ
デビュー作「あやかしの鼓」含む10編からなる短編集。
短編ではあるが、しっかりと夢野久作ワールドを楽しめる。
夢野久作を読んでみたい!と思ったけど、長編はちょっと…という人にぴったり。
あと、ドグラ・マグラとか少女地獄とかで挫折した人にもよいと思う。
いなか、の、じけんはちゃんとオチが付いているし(まぁ結構アレだけど)、個人的にはちょっと笑える。
表題作の死後の恋は、短いけど"これぞ夢野久作ワールド"みたいな感じだし、あやかしの鼓は言うことなしだし…
再読だが、ページを捲る手が止まらなかった。
この短編集のいいところは、ちょっと夢野久作読みたいって時にさっくり読めるところだと思う。
Posted by ブクログ
少し古さを感じるとしても文章がフランクで読みやすい。編集が入っているのだろうか?とても大正〜昭和初期の人物の作品とは思えない。
この著者は推理小説作家としてデビューしているのだが、ホラー作家の適性の方があるのではと思った。
気味の悪い独特の雰囲気を描くのは上手い。対して推理やミステリーものの質は低いと思った。この時代(= 新本格以前)のほとんどの推理小説は今と比べると質が低く、読めたものじゃないと思うことも多いので時代が悪かった可能性もあるが。
読まないまま上巻の中途で放り出している著者の別の作品『ドグラマグラ』では明るいキチガイを描いていたので、『白菊』(;人形だけがいる館と脱獄囚の話)のような異界感に得意の明暗のキチガイ感をピンポイントで組み合わせると特異な、そして非常に気味の悪いホラー作品になったのではないかと思った。