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あっしの洋行の土産話ですか。何なら御勘弁願いたいもんで。明治時代末期、大工の治吉はセントルイスで開かれる大博覧会で働くため、アメリカへ旅立った。ある夜、職場で出会った美しい中国人女性に誘われるがまま街へ出ると、不気味な地下室に連れ込まれる。そこで治吉が眼にしたのは、ガリガリと耳障りな音を立てて稼働する謎の肉挽機械だった……。「人間腸詰」「木魂」「無系統虎列剌」「近眼芸妓と迷宮事件」「S岬西洋婦人絞殺事件」「髪切虫」「悪魔祈祷書」「戦場」、幻想と猟奇趣味に彩られた粒ぞろいの短編8編を収録。
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Posted by ブクログ
表題の『人間腸詰』を始め、一人称視点で描かれた作品は文体が生き生きとしていてユーモアがある。
当時の日本人から見た西洋はやはり得体の知れないものだったのだろうが、正にその得体の知れなさが夢野を強く惹きつけていたことが伺える。
推理色が強い短編は個人的にイマイチだったが、怪奇・幻想味のある作品はどれも素晴らしい。
中でも『木魂』、『髪切虫』は傑作だと思う。
特に前者は怪奇現象を科学で説明するという現代的な面白味の中に、主人公の抑圧された希死念慮を間接的に表現するという意義を与えていて、唸らされる。
胸が締め付けられるような物語にとても感動した。
江戸川乱歩を思わせるようなエログロの怪奇趣味ではあるのだが、不思議と嗜虐的な匂いがしない。
皮肉めいた内容にも、人間に対する慈愛のような繊細さを感じる。
Posted by ブクログ
表題作『人間腸詰』:夢野久作らしい語り口とおかしみと血生臭さのある作品。かみんかみん。
『木魂』:優しくて繊細な数学教師の父と、賢くて素直な幼い息子、二人の家族の悲劇。悲しいのに神秘的で美しい。
『悪魔祈祷書』:店主がいわく付きの商品について客に語るのは同作者の『白くれない』もそうだったと思うけど、ぞっとさせるだけさせて真相は拍子抜けするくらい単純なものというオチも似ていた。でもその“ぞっとさせる”部分が凝りに凝ってて好きだし面白いから、もっと頂戴という気持ちになる。
『戦場』:情景描写が凄まじく、戦地となっているフランスの夜の極寒が読んできて身に染み渡る。
この辺りの作品が好き。
Posted by ブクログ
再読本
と言っても、読んだのはもうふた昔も前になる。
ただ、奥付を見たら改版初版のようだ。
もちろん違いなんて分かるはずもなく(笑
かなり久しぶりの再読なんだけど「人間腸詰」「木魂」はなんとなく読んだ記憶があった。
なんとなくのイメージとしての記憶だけど。
一番好きなのは「戦場」
とにかく引き込まれる。そして感情が忙しい。
迫力のリアリティで戦争を語ったかと思えば、ハインリヒとの神秘的な交流が始まる。と思ったらまた戦争の恐ろしい描写が始まり……と、展開が目まぐるしいけどとても面白い!
作品によっては思ってた以上に装飾過多な文章でとても驚いた。
(というか、作品ごとに語り口が違いすぎるのよね)
「髪切虫」のポエムは半分流し読んでしまったよ……ごめんね……
Posted by ブクログ
夢野久作お得意の独白体の物語。
独白体故、事実か嘘か読者に決定は出来ない。
だが、誇張の入った面白い話は全てこうしたパラドックスを含んでいるものだ。
アメリカが遥かなる国であった時代。
遥かなる国は、想像の国でもある。
想像には羽根がつくので、想像力はドンドン飛翔していく。
ましてや、この語りを確かめることはだれにも出来ないのだ。
語り手が調子に乗って、あることあること、あることないこと、そしてないことないことをいくら喋っても、それは違うとは誰も言えないのだ
物語に登場するアル•カポネのようなギャングが「カント•ディック」と命名されているのが笑ってしまう。
アメリカに行った語り手の主人公が、アメリカでまっさきに覚えたスラングに違いない。
何せ、「カント•ディック」とは、直訳すると、「ま◯こ•ち◯こ」なのだから。
彼(?)はきっとアンドロギュヌスに違いない。
聞き手に、「カント•ディックは日本名だと何と言うのか」と問われて、語り手はニヤリと笑って、嬉しそうに答えるのだ。
そして、語り手、聞き手共に大笑いをすると言う寸法だ。
表題の「人間腸詰」はそのアンドロギュヌス•ギャングが、語り手である主人公を脅すために使うミンチ用の巨大な機械から来ている。
(語り手によれば)主人公を救うために、美女がその機械に放り込まれて、ミンチ美人になってしまうと言うブラック•ユーモアだ。
夢野久作の作品はこうしたブラック•ユーモアのレベルで終わる短編が多い。
しかし、彼の真骨頂は、「ドグラ•マグラ」や「押絵の奇蹟」のように、同じ一人称独白体の自己言及パラドックス構造を持ちながらも、ブラック•ユーモアの地平を超えて、真に狂気のレベルに達する作品にある。
夢野のブラック•ユーモア作品に飽きたら、「ドグラ•マグラ」に赴くべし。
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