北山猛邦のレビュー一覧
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ネタバレ優しく,美しく,甘やかな世界が,ラスト数行で「残酷」に反転する衝撃が評価されている5編からなる短編集。北山猛邦作品の中でも特に好きな一冊である。個々の作品の所感は以下のとおり。
○ 恋煩い
主人公の女子高生の淡い片思いと,男女の幼なじみたちが登場する恋愛小説風の作品。幼なじみの男子からは好意を寄せられているが,主人公は幼なじみ同士が付き合うことを密かに望んでいる。一方,主人公自身は高校の先輩に恋をしている…という,ひと昔前の恋愛漫画,「あだち充」作品のような世界観で物語は進む。
しかし,その世界は一変する。主人公がおまじないにはまっていく描写は,実は幼なじみの女子が主人公を殺害するための「プロバビリティの殺人」だったというオチ。プロバビリティの殺人自体は手垢のついたプロットだが,「私は…待つ」、「私がやっても意味ないよ」といったセリフが鮮やかな伏線になっている。何より,ラスト一行の「死ね」のインパクトは強烈。傑作といっていい出来
○ 妖精の学校
過去の記憶を消された子どもたちが,妖精になるために謎の島で生活している。子どもたちは鳥の名前のニックネームで呼ばれ,「北の虚」と「東の虚」に入ってはいけないというルールの中で,「島を変わらない永遠のもの」にするため暮らしている。
クイナという少年が島の生活に疑問を抱き,禁を破って虚へ向かう。主人公のヒバリも後を追う。SF的な真相かと思いきや,最後の一行に示されるのは沖ノ鳥島の座標。真相は領土問題であり,日本が沖ノ鳥島を領土として維持するため,子どもたちを住まわせていたという現実的なオチだった。
幻想的な世界を現実へ引き戻す構成が見事。沖ノ鳥島をめぐる国際情勢まで想像させる,非常に残酷で印象深い作品。傑作
○ 嘘つき紳士
借金に苦しむ男が拾った携帯電話。その携帯には,持ち主の恋人からメールが届き続ける。ニュースで携帯の持ち主が事故死したことを知った男は,死んだ男になりすましてメールを続け,女性から百万円を振り込ませることに成功する。
やがて女性に好意を抱きつつも,思い出として写真を送ってほしいという願いに応じてメモリーカードを送り,関係を終わらせた…かに思える。
しかし真相は逆だった。女性こそ恋人を事故に見せかけて殺害した犯人であり,共犯者が写った写真を回収するため,純朴な恋人を演じ続けていたのである。他作品より現実的な設定だが,最後の反転は十分なインパクトがある。これも秀作
○ 終の童話
一転してファンタジックな作品。小さな村には,人を石に変えてしまう「石喰い」という怪物が現れる。主人公ウィミィが慕うエリナも石に変えられてしまうが,英雄ジャックネッタが怪物を倒す。
十年後,石になった人を元に戻せる「聖水」を作れるワイズポーシャが村を訪れる。しかしエリナは,今さら元に戻しても,状況も分からないまま死ぬだけの「手遅れ」の状態だった。
さらに,石喰いの呪いで怪物となったジャックネッタが現れ,ワイズポーシャとともに死亡。ウィミィはエリナを救うのか,それとも石像を壊すのかというところで物語は終わる。
リドルストーリーとして終わる作品だが,エリナという愛すべきヒロインが最後まで救われない理不尽さが強く心に残る。非常に残酷な作品
○ 私たちが星座を盗んだ理由
表題作。主人公には病弱な姉と,隣に住む憧れの「夕兄ちゃん」がいる。しかし夕兄ちゃんは主人公ではなく姉に好意を抱いており,主人公は家族からも姉ばかり優遇されることに嫉妬している。
七夕の日,「看護婦になりたい」と「星の首飾りが欲しい」という二つの願い事が書かれる。主人公の願いは後者だったが,夕兄ちゃんはそれを姉の願いだと勘違いし,姉へ星の首飾りを贈る。
嫉妬が頂点に達した主人公は,姉の容体が急変したとき,看護師を呼ばないという消極的な方法で姉を死なせ,星の首飾りを手に入れる。
その後,贖罪の思いから看護師となった主人公は夕兄ちゃんと再会し,すべてを告白する。しかし最後に,夕兄ちゃんの妻と子どもが現れる。
ラストの残酷さは十分だが,他の四作品ほどの衝撃は感じなかった。及第点ではあるが,本短編集ではやや印象が薄い。 -
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不思議な物語。
書物が焼かれていく、そして重なる天災で水没しつつある世界を、英国人の少年クリスは旅をしている。そして訪れた深い森の中で、この世界では概念の存在しない「犯罪」・・・連続殺人に遭遇する。そして、禁じられた「ミステリ」を削除していく「検閲官」のエノとの出会い。
なんというか、設定の甘さ?緩さ?が気になります。焚書が行われ紙すらも希少な世界なのに、文字はちゃんと存在して、黒板ではあるけど「宿帳」を書いたり。深い森といいながら、よそ者が入ってこられて、どうやら他の町との行き来があったりしそうだったり。その割には、隔絶された孤島のように文化的に閉塞していたり。
そんなファンタジックな世界を舞台に、描かれるのはいわゆる「本格的な謎解き」というのも不思議な感覚をもたらしています。ファンタジーじゃない、ミステリだ、という主張が立ち上ってくるのです。町自体が密室じゃない空間なのに、密室殺人を読んでいるような。
そしてなにより、クリスとエノの今後が気になって仕方がありません -
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ネタバレひえー何が起きたんだ。わけわかんないぞこれ。物理トリックやばい。でも叙述トリックもなかなか。ひえー。
**ネタバレ**
ギロチン城のスケールが大きくて笑いました。上に刃物ぎらりんしてたら気付けよ…。あの図で廊下は丸く回らないよ…。うまくしゃがんでないと全身がぶつ切り(楽しい)になっちゃう。突然「城はシリーズだったんです!」っていろいろなネタ入れてきたのは何故。
なんか逆叙述トリックとかいうすごいのが使われてるらしいのですがギロチンどすんのインパクト強すぎてあまり印象に残ってないです。名前がわかりやすくて大変よかった。適当な名前ながらキャラ判別できたし。
天井のギロチン錆びなかったの?って思ったけど錆びてた方がホラーチックですね。さっくり切れないと余計痛そう。つっこみどころをいろいろ想像するのも楽しい本でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ異常気象により海に飲み込まれ、終わりへと向かう世界が舞台。
書物を禁じられた社会で、ミステリを求める少年とミステリを検閲する少年の交友を主軸に、この特殊な世界設定を使って「ミステリ」を表現し解き明かしていきます。
冒頭の青年と女性の冒険や、少年と折りたたまれる少女の話などは童話みたいで暗く幻想的。
これらの猟奇的で不可思議な事件が「書物が禁じられた世界」というキーひとつで様相を変えるのがおもしろいです。
いたるところに真相を暗示する場面がありました。
検閲官の少年と旅を続ける少年の行く先も興味を掻き立てられるところで、シリーズとしての続編が待ち遠しい。
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「ミステリ」がなければ「犯罪」を知らない、「ガジェット」がなければ「トリック」を知らないというのが、アイテムを手に入れないと攻略できないゲームみたいでした。
書物がないという事象をミステリや犯罪と絡めるのがおもしろいです。
クリスの持つガジェットが「記述者」というのがまた意味深。
人々の思考やラジオなどから「書物が禁じられた世界」を「情報が制限された世界」と連想してしまうのですが、それが「紙がない世界」であり動機につながっていくのが盲点でした。
しかしあれだけ殺人を犯し、壁紙を手に入れたなら1冊くらい本が作れそうですが、どの程度用意したらみせるつもりだったんだろう。そしてどんな内容を書くつもりだったんでしょう。 -
Posted by ブクログ
『名探偵音野順の事件簿』(東京創元社)などで知られる本格推理小説作家、北山猛邦の、デビュー2作目。
『クロック城』につづく、そして、『アリス・ミラー城』、『ギロチン城』(いずれも講談社)とつづく、城シリーズの二作目でもある。
※シリーズ二作目だけど、前作と、お互いに関連性はないので、独立して読んで大丈夫です。
読んでる最中に思っていたのは。
「これ、レーベル違うんじゃない?」
今回は、舞台が転々とします。
・1989年の日本
・1243年のフランス
・1916年のドイツ
時代も超えて、舞台も変わる。
そして、登場人物は同じ。
時と場所は違えども、「転生」によって記憶を受け継いだ二人の男女が、果てしなくお互いを殺し合う物語。
ほらほら。
誤解を恐れずに言うと、この作品は、「ラノベレーベルで出した方が、売れただろう」。
それほどに、それぞれの時代と国を生きる登場人物たちが、その掛け合いが、好感が持てて、楽しい。
もしこれに、いい絵師の表紙、挿絵があれば。
見事に「このラノベがすごい!」と注目を浴びただろうになあ、というのは、作家の問題では全くなく、単純に編集者の方の問題であるし、今の時代だから言えることだし。
まあ、与太話です。
では、肝心のミステリとしての部分はどうかというと。
「物理トリックの北山」といわれるほどに、古典的とも言えるほどに計算されたトリックを練り上げる北山猛邦ならではの、「すべての時代での、物理トリック」の、その見事さよ。
その物理トリックを成立させるための、転生の絶妙な使い方。
時間と場所を飛び越えて初めて完成される、大胆なトリック。(ミステリはネタバレが怖いから突っ込んで書けないのが辛いのう)
これは、既存のミステリの枠に収まらない、しかし純然たるミステリ。
その上で、先にも書いたように、ラノベと言っても通じるほどに、愛すべき登場人物たち。
そして、読み終わって思うこと。
「これは、ラノベの範疇には収まらない」
「見事なまでに本格ミステリである」
「北山猛邦は、スゴイ」