あらすじ
一攫千金を夢見て忍び込んだ砂漠の街にある高レートカジノで、見事大金を得たジョージ。誰にも見咎められずにカジノを抜け出し、盗んだバイクで逃げだす。途中、バイクの調子が悪くなり、調整するために寄った小屋で休むが、翌朝外へ出ると、カジノがあった砂漠の街は一夜のうちに跡形もなく消えていた──第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に選ばれた表題作を始め、奇跡の如き消失劇を5編収録。稀代のトリックメーカー・北山猛邦の新たな代表作となる、傑作推理短編集。/【目次】一九四一年のモーゼル/神の光/未完成月光 Unfinished moonshine/藤色の鶴/シンクロニシティ・セレナーデ
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全編"消失"というシチュエーションのみを扱った本格ミステリーで、銃のスコープの中の屋敷、砂漠の街、ポオの遺稿に書かれた小屋、神聖な丘の頂上に建つ鳥居、複数の人間の夢に現れる白亜の館の五編が収録されていて、どれもが読み手の意表を突くトリックと幻想的な雰囲気が魅力的で外れ無しの短編集だった。
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9月に刊行されていたのをすっかり見落としていた、北山猛邦さんの最新刊である。帯によると、週刊文春ミステリー・ベスト10で第2位、そして何と、2026本格ミステリ・ベスト10で第1位。遅れ馳せながら手に取った。
本作は、全5編とも、建造物が姿を消す消失トリックを扱っているという。ネタの難易度が高いせいか、自分が知る限り先行例は少ない。1編だけでも大変なのに、5編揃えるとは。期待以前に、斜に構えてしまったことを告白しておこう。
「一九四一年のモーゼル」。酒場で老人から聞いた話。監視していた邸宅が、跡形もなくなっていた。本作中、最もトリックらしいトリックか。伝説の某コント番組を思い浮かべたのは、自分だけだろうか。時代は戦時下なのに、何と愉快なことか。
「神の光」。ラスベガス近郊の秘密のカジノで儲けた男。翌日、カジノは町ごと消失していた。史上最も大掛かりな消失トリック(?)に違いない。米国の地理や歴史、そしてあのことを考慮すれば、なるほど、あり得ない話ではないかもしれない。
「未完成月光」。エドガー・アラン・ポオのものだという未完成原稿に描かれた、小屋消失の謎とは。確かにそのような事故は発生していた。北山さんはこの事故を知っていてアレンジしたのか。情報収集力もまた、作家の重要な資質に違いない。
「藤色の鶴」。時代が1055年、現代、近未来の2055年と前後する構成は見事だが、ファンタジーかリアリティか、ぎりぎりの線を攻めた印象を受ける。言うなれば、最先端技術と伝統技法の融合。自分が知らないところで、ここまで進んでいたのか。
「シンクロニシティ・セレナーデ」。山中に佇む、夢に出てきた洋館。ここに建てられた理由とは。オカルトっぽい展開かと思ったら、結末は予想外だった。ハウダニットでもあり、ホワイダニットでもある。それは欲望に塗れた人間たちへの警鐘か。
全5編とも、史実や社会情勢を巧みに取り入れ、派手さだけに頼らない作品に仕上がっているのは、作品世界を緻密に作り上げることに長けた北山さんらしい。本作は、物理の北山の面目躍如であると同時に、原点回帰ではないだろうか。
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大長編のメイントリックに使えそうな大ネタをそれぞれの短編に惜しげもなく詰め込んでいる。圧巻。
特に表題作「神の光」や、「藤色の鶴」などは、小説としての情感もあり、見事というほかない。
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建物消失という壮大なテーマの五篇の短編集。
「その街は、たった一晩で姿を消した」という帯に猛烈に惹かれてまんまと買ってしまいました。
トリックが壮大すぎて、ちょっとそれは無理がないか?と思うものもありましたが、そういうのも自分の予想の範疇を超えているだけでもしかしたら不可能ではないのかもしれないと思わされるくらい、全ての作品がハイクオリティ。
そもそも建物や街を消すなんて、無理やりすぎるくらい大がかりな仕掛けがないとできないですしね。
というかトリック抜きにしても一篇50ページ程度でこんなに独自の世界観を作り上げられるのかというほど面白く、ゆっくりじっくり読もうと思っていたのに続きが気になって読む手が止まりませんでした。
表題の「神の光」と「未完成月光」が特に好きです。
すごく面白い本読んじゃった!という満足感でいっぱいです。
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建物消失の謎でしばった五篇の短編集。
正直、「一九四一年のモーゼル」の美しさに他が普通だろうと北山さんのロマンと本格への情熱にやられた。
だから他の作品も良かった。他の作品も普通じゃない、傑作。
3035冊
今年263冊目
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超★5 建物が消失した…? 弩級本格謎解きでありながら幻想的! 気品に溢れるミステリ短編集 #神の光
■きっと読みたくなるレビュー
超★5 ベテラン先生の技と底力が堪能できる、高品質なミステリー短編集。まぁさすがといったところです、おもろい!
全部で5編からなる作品集ですが、なんとすべてが同じテーマの謎解きなんです。これが興味深く、建物が消失してしまうというもの。えええぇえ、そんなこと可能なの?!
もちろん同じネタではないし、時代背景や構成プロットは当然全部違うのよ。全く違うお話になっていてバラエティに富んでる、なので最後まで飽きずに本格ミステリーを楽しめちゃうんですよね。
イチ推しなのは『神の光』もう最初から最後まで、熱中して読んじゃった。導入から惹きつけられ、中盤なんてめっちゃ切れ味鋭い、終盤からラストの真相フェーズもたまんなかったなー
北山猛邦先生は弩級本格謎解きでありながらも、幻想的な表現も上手だし、美しく気品に溢れてるんですよ。読み物としても丁寧なので、読者も心に刻まれやすいと思います。じっくりとミステリーを楽しんでみたい方はぜひ手に取って欲しい作品です。
○一九四一年のモーゼル
英雄と言う名のバーをおとずれると、与太話をしているおじいさんが居た。戦時中の狙撃兵が体験した、建物がまるごと消失した話をきく…
いきなり雰囲気たっぷりですね、建物消失の謎解きとストーリーを繋げるのが上手で読み入っちゃう。真相はもはや猟奇的、これぞ北山猛邦先生ですよね。
○神の光【超おすすめ】
バーで呑んでいると賭けをしようという男が現れる。私自身も真相を知らない謎を問題として出し、彼がその謎を解いてみせると言うのだ。私は祖父がギャンブラーだった頃、ラスベガスでの不思議な出来事を話し出す…
素晴らしい、これぞミステリーの短編ですよ。シンプルかつ有り体なプロットながら、解像度の高いストーリーに入り込んでしまう。謎も魅力的だし、真相も納得感と恐ろしさは超級レベルでした。
○未完成月光 Unfinished moonshine
小説家の友人宅を訪れると、真剣な面持ちで相談を受ける。彼はエドガー・アラン・ポーの未発表作を持っており、その続きを書かなければならないという強迫観念を持っていた。しかし作中に山小屋が消えてしまったという謎があり、それが解けずにいたのだ…
何やら作品全体が陰鬱としてうすら寒い。ひとつひとつ謎を解き明かしていくアプローチのマニアぶりがタマランよね。終盤からラストにかけての不穏さがたまらなく好き。
○藤色の鶴
2055年戦争の最中、軍隊が吉へ突入するも、丘の上に見えていたはずの建物や車両が消えていた… 時をさかのぼること1055年、平安時代藤原家の嫡男は、勢力争いのために追手から逃げていた。そして彼も社の消失を体験する。さらに1999年…
行くところまで行ったな…と感じさせますね。なにせ本作、1000年規模で時間軸が変わります。もちろんそんなプロットにするのには理由があるんですが、小道具の使い方が綺麗なうえお上手でした。
○シンクロニシティ・セレナーデ【おすすめ】
ある男性はいつも同じ夢を見ていた、白い大きな館が目の前で消失するという不思議な夢だ。SNSで投稿すると大学准教授から連絡がくる。なんと同じ夢を見ている人がいっぱいというのだが…
かなり無茶な謎解きですね~。しかし幻想的で懐疑的で、ミステリーのネタとしては極上ものですね。終盤はトンデモナイのを放り込んできます、腰が抜けました。
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現時点、今年読んだ短篇集の中でベスト1です。『消失』という難しい題材で繋がる、恐ろしくハイクオリティな作品が並んでいます。
一番印象的だったのは、ポーの直筆原稿(と思わしきもの)とその作中の建物消失の謎をめぐる『未完成月光 Unfinished moonshine』で、謎に対する答えは提示しながらも、哀しくも幻想的な余韻を残すラストがとても好きでした。カジノで大儲けした祖父が遭遇した街の消失事件の顛末を描いた表題作の『神の光』も素敵な作品で、その場所、その時代でしかありえない真相が、丁寧に解き明かされていく様が圧巻でした。
意外とひとは大事なことを見逃していて、その盲点こそが、『消失』を生むのかもしれない、と読み終わったあと、なんだかそんなことを考えてしまいました。
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上質な消失トリックの詰め合わせ。
トリックは着眼点に驚かされるものが多く、技巧というよりも、意外性が光る。
短編集は賞レースには不向きな印象もあるが、各ミステリ賞にでもランクインしててすごい。
Posted by ブクログ
今年初レビュー。
戦時中のロシアで豪邸が一夜にして消える「一九四一年のモーゼル」、カジノのあった砂漠の街が一夜にして消える「神の光」、未完成の小説に出てくる小屋が忽然と消える「未完成月光 Unfinished moonshine」、2025年の未来、カスピ海の小国で一瞬にして消えた車輛や建物「藤色の鶴」、度々見る夢の中で霧に消える館「シンクロニシティ・セレナーデ」と5つの消失推理短編集。
どの作品も建物や街などが忽然と消えるミステリー。不思議な感覚で、まるで歴史小説を読んでいるよう。そして、そのネタバレがどれも感心させられ、知識が増えた気分になるものばかり。
「神の光」は第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に選ばれた作品とあって、なるほどな種明かし。作者の北山さんは初読み。なかなか知的な小説だった。
殺人事件がメインのミステリーばかり読んでるけど、こういうミステリーも心の栄養になるなぁ。
今年も昨年のように、たくさん読んで、たくさんレビューできればと思ってます。みなさんのレビュー楽しみにしてます!
Posted by ブクログ
消失ものだけを扱った短編集。
様々な形や規模の建物が消えるのが面白い。
SFやファンタジーの要素を感じさせつつも、不思議なだけでは終わらない着地の仕方をしている。
好みの作品は「一九四一年のモーゼル」と「未完成月光」どちらも余韻が良い。
自称長年のファンとしては「本格・ミステリベスト10」で1位になったことがとても嬉しい。
Posted by ブクログ
“消失”をテーマとした短編集。
建物だったり街だったり、消失する対象のスケールが大きく、謎自体にワクワク。異国の地を舞台に選んだり、時代を変遷しながら物語をつむぐことによって、破天荒な真相に納得感を加えて着地させている。ロジックよりトリック、リアルより幻想、に寄った本格ミステリ。
◆一九四一年のモーゼル
独ソ戦最中のレニングラードで、屋敷ごと消失した宝石装飾部屋『硝子の間』
最後に一気に繋がるのが爽快。
◆神の光
カジノで大勝ちして大金を得た後、一夜にして消失した街。光に包まれた後、大金も失ってしまい…
異世界オチを想像していたが、撃沈。
◆未完成月光
ポオの未発表原稿の続きを書きたい作家のために、作中に出てくる山小屋消失の謎に挑むが…
消失の種明かしはまだ理解できるが、その後の不穏な展開が意味不明。
◆藤色の鶴
消えた砦の上の建物と車両、鍵を握ると目された少女までも消失。
千年の時空を越えて謎解きをする構成がユニーク。こんなプロット読んだことない。トリックがぶっ飛んでて苦笑。
◆シンクロニシティ•セレナーデ
館が消える夢を繰り返し見る人たち
物理が嫌いな人、化学はいかが?
『消失』で思い出した。中西智明さんはいずこへ?
週刊文春ミステリーベスト10 2位
このミステリーがすごい! 7位
本格ミステリ・ベスト10 1位
ミステリが読みたい! 8位
リアルサウンド認定国内ミステリーベスト10 5位
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『一九四一年のモーゼル』はアイデアのみで評価すれば『占星術殺人事件』に匹敵するレベルかと思います。殺人のトリックではないのが玉に瑕ですが、心理の盲点を突いたようなエレガントな消失ものです。2004年初出ということで、20年も書籍にならずに埋もれていたのが信じられません。このアイデアだけで星4献上です。
ただ、この短編だけクイズの側面が強い。後半の『藤色の鶴』や『シンクロニティー・セレナーデ』あたりは消失をメインに添えるのではなく、ドラマ性で支えていただけになんか惜しい。
表題作『神の光』はギャンブルものとして開幕し、街が一つ消失する。「インセキジャネーノ?」と思ったが、さらにとんでもない真相だった。一応ロジックなるものがあり、世界史にそこそこ詳しい人間なら推理が可能ということで本格の範疇か?
私のお気に入りは『未完成月光 Unfinished moonshine』 幾度となく擦られた「エドガー・アラン・ポーの未発表原稿ネタ」で、恐らく唯一原稿の中身までしっかりと描かれた作品。「ポオにしてはなんか軽くね?」に対する言い訳もいい。大鴉に館の焼失、美女の死とポーネタ散りばめ、消失ものを演出。ポーならこんな種明かしはせず、『アッシャー家の崩壊』のようにぶん投げて終わりそう。語り手と小説家の2人のキャラはどことなく三津田信三作品っぽさもある。
『シンクロニティー・セレナーデ』は異質な雰囲気で、消失よりも館が消失する夢の共有という現象に惹かれて読んでしまう。夢と記憶の共有・集合的無意識を取り扱った幻想小説としても読める。荒唐無稽だが面白い。
Posted by ブクログ
気持ちいいくらい鮮やかに消えてしまう消失ものの短編集
時代背景や事件内容はバラバラだけど全編において「何故消える!?」と疑問から物語に引き込まれた
「藤色の鶴」が雰囲気的に1番好きかな
ちょっとマニアックな物理と化学と歴史も多くて勉強になった
Posted by ブクログ
街、建物等の消失をテーマにした5編から成る短編集。
短い中にもブレがなく、また短いがゆえにしっかりと組み立てられていてミステリーの醍醐味を堪能した。表題作も面白かったが、第1話の一九四一年のモーゼルが図解まであって気に入った。かなりドライなマティーニが飲みたくなる作品だった(どんな意味よ)
Posted by ブクログ
消失トリックと言われてピンとこなかったんだけど、館が街がお社が一瞬で消失するという不可能状況で統一されたミステリ短編集。どの作品もトリックありきなんたけど、それをどう語るかがミステリ小説の面白さのひとつなんだなということを再認識させられる。私自身物理トリックは「ふーん」で流すタイプなんだけど、本作は各作品とも楽しく読めました。
「一九四一年のモーゼル」→戦時下のロシア、狙撃手の監視下で文化財の館が一晩で消失
「神の光」→一攫千金を狙って潜り込んだ違法カジノが街ごと消失
「未完成月光 Unfinished moonshine」→ポーの未発表原稿とされる作品中、小屋が一晩で消失
「藤色の鶴」→千年前の日本で山の上の社が、ちょっと未来の異国で監視下の少女が、そして現代田舎のお祭りで鳥居が消失
「シンクロニシティ・セレナーデ」→白い屋敷が消失する夢を繰り返し見る主人公。同じ夢を見るという人物から接触があり…。この作品、夢についての仮説と屋敷消失のイメージが一致する「腑に落ちた」感覚が忘れがたいのと、全編通しての神秘的な雰囲気が好きで印象に残りました。
Posted by ブクログ
期待して読んだけれども
新本格隆盛期の短編集に比べるとちょっと期待外れかなあ
どれもものすごく読ませるのだけれども
なるほど!とか、うまいなあ、というのがあんまり
トリックは出尽くしたということか…
Posted by ブクログ
消失をテーマにした短編集。
5篇有りますが、2篇のトリックはイマイチしっくりこなかった。
稀代のトリックメーカーと言われる作者の本を読んだのがこれで3作品目たが、今のところ私にはもう一つハマりません。
Posted by ブクログ
【収録作品】
一九四一年のモーゼル
神の光
未完成月光 Unfinished moonshine
藤色の鶴
シンクロニシティ・セレナーデ
5つの消失の謎。
消失トリックを扱っているのだが、状況は多彩。
「一九四一年のモーゼル」独ソ戦を背景に、美を守ろうとする人間の姿が描かれる。
「神の光」壮大なトリック。ただ、「彼」を助けたのが謎。
「未完成月光」ホラーテイストで鬱々としている。
「藤色の鶴」時代も場所も異なる消失事件だが、トリックは同じ。時空を越えたファンタジーの味わいがある。
「シンクロニシティ・セレナーデ」同じ夢を繰り返し見る理由。警告は間に合うのか。