北山猛邦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ評価
サプライズ ★★★☆☆
熱中度 ★★★☆☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター★★★★★
読後感 ★★★★☆
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★★☆
サプライズ ★★★☆☆
クリスチャン王子殺害の犯人がルイーズ王子妃だというのはある程度予想できてしまう。よって,この部分はあまりサプライズがない。魔女が二人いて,一人目の魔女がナポレオンに恋し,ナポレオンを助けていたという点もあからさまに書かれている。セレナの妹が二人目の魔女になっていたという点はややサプライズ。総合的にみると,★3かな。伏線が丁寧でよくできているので,納得のいく驚きである。
熱中度 ★★★☆☆
よくできた話。人魚姫が存在するファンタジー世界の話である。よって何でもアリ。どういう展開になるか気になる。話はそれほど荒唐無稽にならず,きれいにまとまっていく。先が気になることは確かだが,そこまで入り込むほどの展開ではない。背景となる魔女殺しを除くと,殺人はクリスチャン王子殺害の1つしか起きない。捜査も丁寧だがやや冗長。熱中度は★3で。
インパクト ★★★☆☆
人魚姫を下敷きにしたミステリというわけで,これだけでもある程度のインパクトはある。しかし,内容はまっとうな本格ミステリ。北山猛邦らしい物理トリックがあり,跳ね橋を使った死体異動の物理トリックのインパクトもある。ただし,インパクトがあるかというとうまくまとまっているという印象の方が強い作品
キャラクター★★★★★
グリム,セレナ,ハンスを始めとして登場するキャラクターは非常に魅力的である。ひと昔前の子ども向けアニメにでてくるファンタジーっぽいキャラクターが勢ぞろい。魔女になったセレナの妹の告白もリアル。キャラクターは★5を付けることができる。
読後感 ★★★★☆
セレナの心臓が戻らず,セレナの妹は魔女として生きていく。しかし,セレナは心臓がない状態でもある程度いきられそう。ラストシーンがセレナとハンスの笑顔というグリムの贈り物で終わるシーンの読後感はよい。★4で。
希少価値 ★☆☆☆☆
徳間文庫というのが何とも言えない。地味な作品であり,将来的に手に入りにくくなる可能性があるかも。
総合評価 ★★★★☆
ミステリとしては,跳ね橋の物理トリックを使った死体移動のトリックのみ。ミステリとしてはそこまでの作品ではない。しかし,魔女の企みが背後にあり,ナポレオンを支えるという魔女の企みが生きている。各キャラクターも非常に魅力的。ハンスはまさにひと昔前のアニメに出てきそうなキャラ。グリムとセレナもとてもいきいきしている。特殊世界のミステリとして非常に丁寧に作られており,ラストもさわやか。万人におすすめできる作品だと思う。良作。★4で。
〇 メモ
プロローグは1793年。人魚姫がある男性を助ける。しかし,男性はほかの女性に助けられと誤解する。
第1章
1816年のデンマーク・オーデンセ。ハンス・クリスチャン・アンデルセンの父が病死する。ハンスは父の形見の人形を探しているときに,自分が死神だと誤解した男,グリムに出会う。グリムとハンスは人形を探している中で,セレナという女性に出会う。セレナは人間の姿をしているが人魚。離宮で起こったデンマーク王子(クリスチャン王子)殺人事件の真相を解明したいという。セレナの妹は魔女の力で人間となっていた。王子と結ばれないと泡となって消える。魔女が用意した短刀で王子を殺害すれば人魚に戻ることができる。しかし,妹は王子を殺害しなかった。その後,王子が魔女の短刀で殺害された。王子殺害の真犯人を見付けないと,妹に不名誉な噂が生じ,ひいては海の世界の戦争につながるという。
セレナは魔女と取引した。心臓と引き換えに人間の姿を得た。1週間以内に真相を見付け心臓を取り戻さないと死んでしまう。
1793年。ある人魚が魔女に会うシーン。
第2章
離宮に入るためにハンスはセレナとブンケフロード牧師夫人に会う。偶然グリムもブンケフロード牧師夫人のところにいた。ブンケフロード牧師夫人の紹介で,離宮に入る。ハンスとセレナは図書室から抜け出し捜査をする。その捜査の中で庭師のラーセンから話を聞く。ルイーズ王女に会ったところでヨハンネス執政官に見つかるが,フレデリク第3王子の助けにより無事離宮を出る。捜査の結果,王子を殺害できる人間はいないように思われた。
1793年。ある人魚は魔女を殺害し,人間になる。しかし,魔女の呪いで魔女になってしまう。
第3章
更なる捜査。翌日,ハンスは先生に見つかり,学校に行く。1日が終わる。ハンスはセレナに会う。セレナは町で情報収集をしたがあまり収穫はなかった。セレナの姉からの情報によると魔女の行方が分からないという。セレナとハンスは魔女の遺体を見付ける。セレナがクリスチャン王子殺害の疑いで逮捕される。
1796年
謎の人魚は愛する男のために諜報活動をする。男は勝利を重ねる。
第4章
グリムとハンスによる推理。ハンスは自分が探偵になるという。ハンスはセレナから預かった笛を利用してセレナの姉妹の人魚に会う。人魚はセレナを救出しようとし,ハンスに協力を求める。ハンスは人魚から王子殺害に使われた短刀を受け取る。グリムは魔女が少なくとも2人いること,短刀が2つあることを見抜く。
翌日,ハンスは学校に行く。それから,夜,セレナを救出するために人魚に会う。ハンスは人魚の力を借り,離宮に潜入する。
セレナの脱出は失敗する。しかし,グリムは事件の謎を解く。
1814年
謎の人魚が助けていたのはナポレオンだった。
【真相】
犯人はルイーズ王子妃。ルイーズは馬留めでクリスチャン王子を殺害し,跳ね橋を使って死体を部屋に運んだ。ルイーズ王子妃は凶器の魔女の短刀を町で入手していた。
セレナの妹がクリスチャン王子を殺害しなかったのは自分が魔女に利用されていることに気付いたから。セレナの妹は短刀を捨てることで魔女をおびきだし,魔女を殺害した。セレナが殺した魔女は,ナポレオンを皇帝に返り咲かせるために行動していた。
セレナの心臓を戻すには血が必要だった。しかしセレナはハンスを殺さなかった。
最後にセレナとハンスはグリムから絵を送られる。その絵を見てセレナとハンスは笑った。 -
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とりあえず読み終わってまず考えたのは、本格ミステリとは一体どこまで示すのだろうか、ということだ。
本著は裏表紙のあらすじに本格ミステリを謳っているのだが、他の本格派とはかなり毛色が異なる。
まず設定だが、終焉をむかえつつある人類の世界、が舞台だ。これは件の裏表紙あらすじから抜粋させて頂いた。
主人公はゲシュタルトの欠片と本作内では呼ばれる見えざる者が見えてしまう探偵、南深騎。彼は一般人が可視出来ないゲシュタルトの欠片を退治することを仕事としている。
そんな南深騎と行動にするのがどこにでもいてどこにもいない謎に包まれた少女、菜美。
ある日二人の元に瑠華という少女が訪れる。
彼女は自宅であるクロック城に住まうスキップマンと呼ばれるゲシュタルトの欠片を退治してほしいと依頼する。
彼女が世界の終焉を止める鍵だと命を狙う武装集団のSEED、逆に彼女を守って世界を救おうとする十一人委員会、あらゆる組織、人間が渦巻くクロック城で首なし遺体が発見されて惨劇が始まる。
犯人は誰なのか、世界の終焉を止める鍵とは何なのか、殺人事件の犯人探しに留まらないミステリーがラスト怒涛の数十ページで展開される。
ストーリーを語るならこんなところだろう。
ここまで読んで伝わる人には伝わると思うが、私は初めて本作を読んだときに西尾維新の戯言シリーズを思い出した。
異型な世界において繰り広げられる突飛なミステリー。世界観だと言われては何とも言い難いが、かなり独特だと思う。ちなみに本作を読んだ50代の母は何がなんだかと首を傾げていた。
本格ミステリーだと思って読むとうぅん、となるかもしれない。
だが謎解き自体は理路整然としていて本格的で作者の得意とする物理的トリックが余すところなく使用されている。
果たして舞台が終焉を迎える世界であることに意味はあったのかと聞かれれば口籠る部分もあるが、SF要素の何でもありな世界観を舞台が証明しているのだろう。
ありえない世界な上でのありえない人間たち、感情、一般人には理解出来ない亜種な世界を楽しんで欲しい。
個人的には最後の謎解きのまどろっこしさがあまり好きになれない。伏線回収を詰め込み過ぎて情報の過多にキャパオーバーした。
ただ全体的には世界観、トリックもよく出来ていると思う。有栖川有栖のあとがきを読むと何だか読後の違和感を嚥下させられる感じがする。流石ベテラン。
ところでその有栖川有栖のあとがきに北山氏は叙述トリックが嫌いとあるのだが他作で叙述トリックを拝見したような……(笑)
最後に本作の感想や紹介から逸れてしまったが、好き嫌いは分かれるものの1回読んでみるべき作品だとは思う。特にメフィスト賞の系譜が好きな人は是非。 -
Posted by ブクログ
ネタバレようやく読んだ名探偵音野順シリーズ。
小説の表紙も可愛らしいイラストなので、けっこうほんわか系?と思ったらなかなかコミカル。
殺人は起こるし、物騒な事件も起きているのに、シリアスになりきらぬ、ちょっと脱力感のある作品。
まず、名探偵の音野順が超弱気。
名探偵の才能はあるものの、彼を名探偵だと盲信したきつけるのは専ら大学時代からの友人であり推理作家の白瀬白夜。
自分の作品のネタになるということもあって音野の面倒をみつつ、やれ事件だと引っ張り出す。
そして、名探偵たるものこう言えこうしろとやいやい言うが、気の弱い音野は基本白瀬の背中に隠れ、人前に出されてもたどたどしく控え目に発言するばかり…。
そんなすったもんだコンビながら事件をきっちり解決するあたり、ちゃんと名探偵、かな?
個人的にはもう少しハラハラするミステリが好きだけれど、それぞれの事件、トリックはしっかりしていて興味深く、面白くて目が離せなくはなったので、次の本も読んでみたい。 -
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ネタバレ〇 概要
大東亜帝国探偵助手学部に所属する月々守と君橋君人のもとに,前作,「猫柳十一弦の後悔」で知り合った小田切美奈からある依頼がされる。その依頼は,月々守の体を張った解決策で解決されるが,ゼミ教官で女探偵の猫柳十一弦は,これから連続見立て殺人が起こると推理する。猫柳と君橋は,惨劇をひそかに,未然に防ぐために山間の小村・稲木村に向かう。果たして,猫柳は惨劇を未然に防ぐことができるのか?
〇 総合評価 ★★★★☆
探偵は殺人事件が起こってから活躍する…結局,連続殺人として,何人も死んでから犯人を指摘する…という古典的な本格ミステリの探偵像に真っ向から向かい合う猫柳十一弦という探偵の存在が魅力的。殺人が起き,凄惨な死体の描写と魅力的な謎を見せてた方が,読者としては興味をもって作品を読めるので,作家としても楽そうに思う。しかし,あえて殺人が起こらないように,事前に犯人のトリックを暴こうとする猫柳の探偵スタイルは設定としては面白い。とはいえ,使えるトリックは限られてしまう。今回は,後鏡ヨシ子がたたりのような形で犯行を行い,うまくいかなければそれでよいというイメージで殺人を計画したからこそ成り立つトリックばかり。また,殺人が起こらないので,どうしても中だるみしがち。そこを,猫柳が君橋(クンクン)に好意を抱いているという設定で,二人の関係を見せることで読者の興味を引いている。結果として,あまり類がないミステリに仕上がっている。猫柳のキャラクターが非常に好みなので楽しく読むことができた。ミステリとしての完成度もそこそこ高いと思う。
〇 サプライズ ★☆☆☆☆
「第1条 常識人でなければならないー大団円」のオチ,月々守が本当に後鏡千莉にプロポーズをするというのは,すこしサプライズを感じたが…まぁ,予想できてしまうかな。後半の猫柳と君橋(クンクン)による捜査は,猫鏡が犯人と予想していた後鏡ヨシ子が犯人だったので,真犯人については,あまりサプライズはない。最後に,“もう一人の探偵”として,後鑑絵都が登場するところは,ややサプライズっぽいが…やはり,そこまで驚けない。まぁ,サプライズを狙った作品ではないので仕方ないかな。
〇 熱中度 ★★★☆☆
犯罪が起こって,探偵が真相を解明するというミステリの普通の構成ではなく,探偵役の猫柳が犯罪方法とトリックを推理し,それを探すという構成になっている。目新しいのでそこそこ楽した。作中で殺人は一回も起こらないし,中盤ややだれ気味になったが,猫柳十一弦のかわいらしいキャラクターの魅力に惹かれ,最後まで楽しめた。熱中度はそこそこかな。
〇 キャラクター ★★★★☆
探偵役の猫柳十一弦は,とてもかわいらしく描かれており,魅力満点。クンクンが,「後鏡千莉の赤みがかかった髪が特徴的だった」というと,「髪を染めようかな」と言ったり,探偵五箇条の「事件関係者と深い関係になってはならない」を破ってクンクンといい関係になろうと思って「新しい時代の探偵助手を目指せと云ってたじゃないですか。五箇条を一個や二個破っても…」と言って,クンクンに「だめです」と言われるところなど…かわいらしい。猫柳以外のキャラクター,クンクンやマモル,伝説の探偵助手という扇孤月といった面々がそれほど活躍しなかったのはちょっと残念でうはある。猫柳の露骨で不器用なクンクンへの愛情表現も含め,猫柳萌えを楽しむのが正しいスタイルなのだろう。
〇 読後感 ★★★★☆
結局,後鏡ヨシ子による殺人は全て失敗に終わる。三女の後鏡絵都が引きこもりを脱して探偵を目指すことになり,猫柳とクンクンはちょっといい雰囲気で終わる。読後感はかなりよく,読んだらさわやかな気持ちになれる。
〇 インパクト ★☆☆☆☆
後鏡色葉を殺害するために後鏡ヨシ子が仕掛けた小屋を崖に落とそうとするトリックはインパクトがあるが,その程度。後鏡二帆殺害のための銃とツララを使ったトリックや,後鏡絵都を殺害するための天井裏の穴を利用したトリックなどは地味。殺人すら起こらず,犯人も地味なので,インパクトはかなり希薄。犯人も地味。
〇 希少価値 ★★☆☆☆
これはあまり売れてなさそう…。設定は面白いけど,玄人受けしそうにないし,映像化したりしない限り,手に入りにくくなりそうな気がする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ書物というものが全て駆逐され、教育から報道まですべてのことが検閲されたラジオでしか情報を得ることが出来なくなってしまった世界の物語。
<あらすじ>
旅を続ける英国人少年クリスは、家の扉や室内の壁に赤い十字架が描かれた古い小さな町を訪れる。
その町では『探偵』といわれる覆面の男が恐れられていた。
家々の赤い十字架も探偵によってペンキで描かれたらしく、目的は不明とのこと。
それと町の近くの森に入った人は『探偵』によって殺されて首ナシ死体になってしまうそうで、実際に森に入った人たちはみんな首ナシ死体になって殺され犠牲者は30人以上いるとのこと。
そんな話を色々聞いていたクリスは、町の近くの湖で、ボートに乗る探偵を発見!町のみんなで湖畔を取り囲んだ。
ボートの上で探偵が斧を振り下ろす光景を目撃するクリスと町民たち。
その後、探偵はふっと消え、そのボートが湖畔に流れ着くと、探偵は乗っておらず、首ナシ遺体だけが残されていた。
一体探偵はどこへ行ったのか。。。
その翌日、ついに情報統制のために検閲官たちが町を訪れる。
その中心人物が少年・エノ。
エノはクリスから町で起きた事件を聞き、問題とされる森へ侵入する。
すると探偵がいると予想される小屋を発見。
中に入るとそこには、人間がバラバラにされて、巨大な鍋に入れられ、はがされた人皮が棒にかけられた、無数の死体があった。。。
少年検閲官・エノの推理により事件の謎が明かされる。
<オチ>
犯人は町人の1人で、目的は犯人の息子が望んだ『本』を作るためだった。
本が存在しない世界で必要なのが『紙』。
本が駆逐される以前に建てられた家の壁にペンキで十字架を描くことで、十字架が簡単に消えないからとその壁の『壁紙』を取り替えるときに、その『壁紙』を回収することで『紙』をゲットしていた。
でもそれだけじゃ足りないから、人の皮で本を作ろうとしていた。
そして、紙にインクを安定させるサイズ液を作成するため、遺体をバラバラにして鍋で煮てニカワ液を作っていた。
首ナシなのは『本』を作る材料として不要だから。
ボートの探偵消失は、探偵を紙で作りボートにいるように見せたトリックだった。
※解説:法月綸太郎 -
Posted by ブクログ
ネタバレ引きこもりの名探偵「音野順」と,ワトソン役のミステリ作家「白瀬白夜」が活躍する短編集。それぞれの短編は,プロットもトリックも平凡なのだが,作品の雰囲気が素晴らしい。古きよき時代の本格ミステリを思わせるような様式美が守られつつ,そのパロディのような作りになっている。探偵と警察の関係,事件への関与の在り方,トリックが早業殺人だったり,容疑者が少ない状態で殺人をしたり…。リアリティこそないが,本格ミステリらしい作品ばかり。北山猛邦が本格ミステリを愛してやまないことが垣間見える,魅力的な短編集である。おすすめ。
個々の作品の所感は以下のとおり
○ 踊るジョーカー
大量のトランプが散らかされていた密室で南斉一郎が刺殺される。凶器のナイフは,多量のトランプを貫いていた。容疑者は三人。南斉一郎の子,南斉貴一。その恋人である藍子。そして,古くからの使用人の根津。密室の合鍵を持っている貴一が最大の容疑者として警察から疑いを掛けられる。
密室のトリックは,早業殺人。日頃からトランプで一郎を脅しておき,多量のトランプを換気口から投入しておき,それを見て悲鳴を上げた一郎のために部屋に入り,その直後に根津が一郎を殺害した。問題は凶器。犯人は,ナイフでトランプを貫き,円状にしたトランプを転がすことで,ナイフを手に入れ殺害をしていたのだ。トリックは陳腐だが,作品全体の雰囲気,キャラクターが秀逸。なかなかの作品。
○ 時間泥棒
上野家で,アナログ時計が次々に盗まれるという事件があった。いずれも安物の時計だが,なぜ時計だけが盗まれるのか。上野カイという男は,姉,上野アサヒの恋人である長崎という男と一緒に,音野の事務所を訪れる。真相は,合鍵を持つ長崎が盗聴の際の邪魔な音をなくすために,アナログ時計を撤去していたというもの。音野と白瀬は長崎の本性をアサヒに伝える。プロットは特に目新しいというほどではないが,雰囲気がよく,これもなかなかの秀作。
○ 見えないダイイングメッセージ
笹川明夫が殺害されるシーンから,この物語が始まる。明夫は,自分しか暗証番号を知らない金庫が開けられなくなるのを防ぐため,金庫の暗証番号を示すダイイングメッセージを残すために,ポラロイドカメラで写真を撮影する。ダイイングメッセージの真相は,映ったものではなく,写真そのものに指紋で残されていた。今回は音野順ではなく,兄,要がダイイングメッセージの謎を解き,順は,真犯人が依頼者である笹川明夫の子,笹川晃であることを見抜く。
○ 毒入りバレンタイン・チョコ
ある大学の研究室で,バレンタイン・チョコの中に毒が入っており,それを食べた女学生が倒れるという事件があった。32個入りのチョコのうち,1つのチョコから毒が検出された。ゼミに所属している2人の女学生と2人の男子学生がチョコを食べていた。無差別殺人なのか,女学生の自作自演なのか。真相は,男子学生が,女子学生の気を引くために致死量に至らない毒を飲ませたというもの。トリックは,磁石を使い,チョコを包んでいた包みを利用して狙っていた女学生がチョコを食べるチャンスを利用して毒を仕掛けたというもの。仕掛けがあるチョコをほかの人が食べるときは,仕掛けを作動させていない。犯人にとっては,この犯罪は,恋する人に接近するためのイベントだったのだ。チャンスを待った気の長い犯罪だった。
○ ゆきだるまが殺しにやってくる
音野と白瀬が遠方の依頼を終えた帰りに道に迷ってたどり着いた山荘で,事件が起こる。山荘は,笹宮家という名家。山荘では,一人娘の美子の結婚相手を見つけるために,雪だるまを作るというイベントが開催されていた。イベントの最中,二人の挑戦者のうちの一人,藤原昆が殺害される。凶器のバールは雪だるまの腕のところにあった。まるで,雪だるまが殺害をしたかのように。
真相は,美子が無理やり結婚させられることを辞めさせるために,殺害を行った。トリックは,風船を利用して死体を隠し,殺害された時間をごまかすというアリバイトリック