あらすじ
何人も書物の類を所有してはならない。もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。僕は書物がどんな形をしているのかさえ、よく知らない――。旅を続ける英国人の少年のクリスは、小さな町で奇怪な事件に遭遇する。町じゅうの家に十字架のような印が残され、首なし屍体の目撃情報がもたらされるなか、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが……。書物が駆逐されてゆく世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。メフィスト賞作家の野心作、《少年検閲官》連作第一の事件。
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北山猛邦さんの書くファンタジー系の作品は、どれも独創的な世界観で読んでいてすごくワクワクします。
この作品も夢中でハマってしまいました。ただ、グロいのが苦手な方はあまりお勧めできないシーンがありますが…。
真相編までに犯人が分かった方は尊敬します(相変わらずわたしよ推理はポンコツでした)。
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クロック城をはじめとする、いわゆる城シリーズのようなファンタジーな世界観で描かれたミステリーで読み進める中で、様々な情景が目に浮かぶようでした。
一方で、本格ミステリーのスタイルをとっている謎解きの部分は、そのファンタジーな世界でのギミックをうまく活用してトリックを描き出しています。
そのように描かれたストーリーなので、この世界に興味をそそられ、この世界の話をもっと読んでみたいと思わせるような読後感でした。
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オルゴーリェンヌ を買ったので、
1作目を再読。
だいぶ前に読んだけど
世界観がすぐに思い出せた。
この作者なのかこの作品なのかわからないけど
すごく読みやすくて入り込みやすい。
個人的にファンタジーが苦手なんだけど
ファンタジーと見せかけて
えげつないくらいちゃんと現実みがある。
主人公が少年なのと
ファンタジーのような世界の中で
突然氷の刃を突きつけられるような感覚。
とても好き。
オルゴーリェンヌもすぐに読みだしました。
3作目が随分出てないらしいけど
早くもクリスとエノの物語を読みたい。
それまでに北山猛邦さんの作品を漁りそう。
オススメあったら教えて欲しいです。
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温暖化と異常気象によって海面が上昇し水没しかけている世界。
そして、情報統制と検閲のため書物もなく「ミステリ」の概念自体が人々の共通認識として成立しない世界。
そこで起こる不可思議な事件を引き起こしているのは「探偵」と言われていて…
北山さんらしい世界観の中で、二人の少年によって謎が解き明かされていく。
うん、こんな話大好きです。
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書物が駆逐されるディストピア風のファンタジーに本格ミステリーを組み込んでいて、家の扉や壁に赤い十字架のような印に首なし死体といった謎や『検閲官』のエノや旅をする少年のクリスという登場人物の魅力にも溢れた作品だった。
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本が禁止され、世界の陸地が沈みつつあるパラレルワールド
憎悪や殺人、果ては感情が動くことすらタブーとなりあらゆる物語が無くなった世界
犯罪という概念すらないこの世界の片隅で起こる首無し連続殺人
不可思議不条理な犯罪であっても、自然死扱いになるシチュエーションでミステリを成立させるのが凄い
折れた竜骨のように、ファンタジー特殊世界でキチンとミステリという技が凄い
個性ある少年たちが活躍するので、アニメとかビジュアル向きな面もありますが
Posted by ブクログ
本が失われた世界。
「探偵」がどのようなものか知っている私たちにとっては想像もつかないが、主人公が訪れた街の人々は「探偵」とは「人を殺すもの」と認識し、また「探偵が人を殺すこと」を雨が降るのと同じような「自然現象」だと考えている。この様な世界で主人公はどうやって犯人を突き止めるのか。
設定に入り込むまでが少し大変でしたが、入り込むと一気に読めるとても面白い一冊だと感じた。
Posted by ブクログ
書物というものが全て駆逐され、教育から報道まですべてのことが検閲されたラジオでしか情報を得ることが出来なくなってしまった世界の物語。
<あらすじ>
旅を続ける英国人少年クリスは、家の扉や室内の壁に赤い十字架が描かれた古い小さな町を訪れる。
その町では『探偵』といわれる覆面の男が恐れられていた。
家々の赤い十字架も探偵によってペンキで描かれたらしく、目的は不明とのこと。
それと町の近くの森に入った人は『探偵』によって殺されて首ナシ死体になってしまうそうで、実際に森に入った人たちはみんな首ナシ死体になって殺され犠牲者は30人以上いるとのこと。
そんな話を色々聞いていたクリスは、町の近くの湖で、ボートに乗る探偵を発見!町のみんなで湖畔を取り囲んだ。
ボートの上で探偵が斧を振り下ろす光景を目撃するクリスと町民たち。
その後、探偵はふっと消え、そのボートが湖畔に流れ着くと、探偵は乗っておらず、首ナシ遺体だけが残されていた。
一体探偵はどこへ行ったのか。。。
その翌日、ついに情報統制のために検閲官たちが町を訪れる。
その中心人物が少年・エノ。
エノはクリスから町で起きた事件を聞き、問題とされる森へ侵入する。
すると探偵がいると予想される小屋を発見。
中に入るとそこには、人間がバラバラにされて、巨大な鍋に入れられ、はがされた人皮が棒にかけられた、無数の死体があった。。。
少年検閲官・エノの推理により事件の謎が明かされる。
<オチ>
犯人は町人の1人で、目的は犯人の息子が望んだ『本』を作るためだった。
本が存在しない世界で必要なのが『紙』。
本が駆逐される以前に建てられた家の壁にペンキで十字架を描くことで、十字架が簡単に消えないからとその壁の『壁紙』を取り替えるときに、その『壁紙』を回収することで『紙』をゲットしていた。
でもそれだけじゃ足りないから、人の皮で本を作ろうとしていた。
そして、紙にインクを安定させるサイズ液を作成するため、遺体をバラバラにして鍋で煮てニカワ液を作っていた。
首ナシなのは『本』を作る材料として不要だから。
ボートの探偵消失は、探偵を紙で作りボートにいるように見せたトリックだった。
※解説:法月綸太郎
Posted by ブクログ
不思議な物語。
書物が焼かれていく、そして重なる天災で水没しつつある世界を、英国人の少年クリスは旅をしている。そして訪れた深い森の中で、この世界では概念の存在しない「犯罪」・・・連続殺人に遭遇する。そして、禁じられた「ミステリ」を削除していく「検閲官」のエノとの出会い。
なんというか、設定の甘さ?緩さ?が気になります。焚書が行われ紙すらも希少な世界なのに、文字はちゃんと存在して、黒板ではあるけど「宿帳」を書いたり。深い森といいながら、よそ者が入ってこられて、どうやら他の町との行き来があったりしそうだったり。その割には、隔絶された孤島のように文化的に閉塞していたり。
そんなファンタジックな世界を舞台に、描かれるのはいわゆる「本格的な謎解き」というのも不思議な感覚をもたらしています。ファンタジーじゃない、ミステリだ、という主張が立ち上ってくるのです。町自体が密室じゃない空間なのに、密室殺人を読んでいるような。
そしてなにより、クリスとエノの今後が気になって仕方がありません
Posted by ブクログ
異常気象により海に飲み込まれ、終わりへと向かう世界が舞台。
書物を禁じられた社会で、ミステリを求める少年とミステリを検閲する少年の交友を主軸に、この特殊な世界設定を使って「ミステリ」を表現し解き明かしていきます。
冒頭の青年と女性の冒険や、少年と折りたたまれる少女の話などは童話みたいで暗く幻想的。
これらの猟奇的で不可思議な事件が「書物が禁じられた世界」というキーひとつで様相を変えるのがおもしろいです。
いたるところに真相を暗示する場面がありました。
検閲官の少年と旅を続ける少年の行く先も興味を掻き立てられるところで、シリーズとしての続編が待ち遠しい。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ミステリ」がなければ「犯罪」を知らない、「ガジェット」がなければ「トリック」を知らないというのが、アイテムを手に入れないと攻略できないゲームみたいでした。
書物がないという事象をミステリや犯罪と絡めるのがおもしろいです。
クリスの持つガジェットが「記述者」というのがまた意味深。
人々の思考やラジオなどから「書物が禁じられた世界」を「情報が制限された世界」と連想してしまうのですが、それが「紙がない世界」であり動機につながっていくのが盲点でした。
しかしあれだけ殺人を犯し、壁紙を手に入れたなら1冊くらい本が作れそうですが、どの程度用意したらみせるつもりだったんだろう。そしてどんな内容を書くつもりだったんでしょう。
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「死」を忌避する余りの「死」への無関心。情報統制の元での認識としての表面的な「犯罪」の皆無と、書物の駆逐によるそれら「情報」あるいは「知識」の欠落による無知。
さてどれを主題に読んだらいいのかしらと読み進めてみれば、主題はまぎれもなくミステリであり、前述のそれら全てがミステリに奉仕する仕掛けでした。ああー!やられた!
p301「残すことに意味があるからだろう」…ミステリを愛する全てのひとへ。
Posted by ブクログ
タイトルと表紙に惹かれて購入。
書物がなく情報統制された世界で起こる殺人事件。民衆は『ミステリ』の知識がないので首なし屍体を見てもそれを犯罪だとは思わない。そんな世界設定が斬新だなと思った。
少年検閲官エノが出てくると事件解決まであっという間に読んでしまった。シリーズ次作が刊行予定とのこと。
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ミステリーというよりファンタジーに近いと感じました。
ミステリーを読まない私でもどんどん読み進めることができました。
クリス君とエノ君が今後どうなっていくのか気になります。
Posted by ブクログ
書物のない世界、ミステリを知らない世界で起こる事件…
この世界観でないと読めない真相だったなと思います
良い意味で不思議な読書体験でした!
これからどうなるのか…
次のオルゴーリェンヌも読みたいと思います!
Posted by ブクログ
洪水と津波で世界が水没しつつある中、14歳のクリスはひとり異国を旅していた。
母は幼い頃に亡くなり、英国軍人の父は潜水艦ごとどこかの海底に沈んで戻らなかった。
クリスは、森に囲まれた小さな町でホテルの息子ユーリから、町の不穏な噂をきく。
「探偵」が町の家々に赤い十字架のような印を残し、森に迷い込んだ人々の首を切っている。
ある夜、クリスは「探偵」を誘き出そうとする自警隊と行動を共にして、森で「探偵」の犯罪を目撃する。
書物が禁じられ、ラジオのみが情報という世界で、失われた「ミステリ」に思いを馳せるクリス。
父から聞いた「ミステリ」の「探偵」は正義のはずが。
「ミステリ」とは「探偵」とはをじっとりと語っている物語。検閲官エノが登場するまではジリジリする展開。
どうなっていくのか先が読めないので、「探偵」の正体も犯罪の動機もなかなか衝撃的だった。
ここのところ、タイムリープとか超人たちとか、人体実験とかのミステリを続けて読んでしまって、そろそろ、私の常識が通じる世界のミステリを読みたい気持ちに。
Posted by ブクログ
ちょっと回りくどいチャプターもあったけど、しっかりしたミステリーでした。ファンタジーと言うのかもしれないけど、想定外な世界観とかが楽しめる人には二度美味しい、かな?
Posted by ブクログ
ほわっとした表紙からすると意外な内容。
SFのようなファンタジーのような、ミステリーのような。
しっかり猟奇殺人まであったりして。
そういった感じなので、シリーズ1作目のこちらは世界観に関する説明事が多かったかも。
続編の「オルゴーリェンヌ」でどう進むのか気になります。
Posted by ブクログ
書物が禁じられた世界という、特殊な設定が導入された幻想的なミステリー。主人公のクリスと探偵役の少年検閲官・エノが不可解な事件を解明していきます。
舞台設定の作り込みが甘いせいか、卜リックや動機がやや強引に感じるものの、ある真実が露見されることによって数々の謎が氷解してしまうところは良く出来ていると思いました。
特異な世界観の作品は個人的に苦手ですが、本作はきちんとミステリーとしてのケリをつけているので楽しめました。
Posted by ブクログ
書物が失われた時代、ミステリという概念がない世界のファンタジックミステリー。
ああでも終わってみれば、一応きっちりそこは物理の北山、ミスリードもフーダニットもハウダニットもミステリーのそれであった。
〈探偵役〉〈犯人〉〈語り手〉ここに加わるのが〈少年検閲官〉、彼の登場から物語が秩序をもって整頓され始める。
エノ可愛い。
Posted by ブクログ
ー書物が禁じられた世界ー
書物は、人々に悪い知識を吹き込み
道を外れさせるものとして厳しく管理・焚書されてしまう
相次ぐ戦争・天災でもって安寧の住処を追われた人々は
今や検閲の入ったラジオやテレビからもたらされる情報だけを頼りに
先の見えない生活を送るのだった
事故で両親を失った少年クリスは故郷の英国を離れ
単身とある島国へたどりついた
そこは、父から教えられた物語
『ミステリ』が最後に眠る場所
*
情報統制モノ
書物が禁止され、検閲の行きとどいた情報のみが人々に伝えられる世界
海面上昇というので、近未来の話かと思いきや
大戦が終わったあたり?の年代のよう
私たちの世界がたどったかも知れないパラレルワールド的なものとして身近だ
主人公のクリスは、旅先の集落で
失われたはずのミステリに深く関わるとされる事件に遭遇する
事件を解き明かすことに使命感と高揚を覚えるものの、
やがて直面する『ミステリの本質』に向き合ったとき
彼の意思はどう変化するのか……?
続きが楽しみ