中沢新一のレビュー一覧
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築地市場と明治神宮。人工的に作り出された場所でありながら(前者は埋立地、後者は練兵場の跡地に植林)、「そこにほかのどんな場所にもまして、日本人の伝統的思考が凝縮されて表現されている」(序文より)、と著者は主張する。
海の民は、古より天皇家に海産物を届けるという役割を担って来た。その流れを汲む魚河岸の気風は、関東大震災を機に日本橋から移転した築地においても受け継がれた。戦前建築の代表作ともいうべきカーブを描いた建屋の中で味の目利きとしての仲買人が立ち回るさまは、「制御された混沌(Controlled chaos)」と外国の人類学者に言わしめた。豊洲は幹線道路によって敷地を4つに分断し、この類ま -
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#講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 対称性人類学
まとめと結論の最終巻。他の巻と比べて読みやすい。この巻 読めば十分な気がする
一神教、国家、資本主義が非対称性という点において、同型の形而上学として全体化し、思考が自分の根源の場所を見失ったことを論証
著者の主張は、無意識を人間の「心」の本質とする 対称性人類学の思考実験のなかで、世界を非対称的な形而上学から対称性無意識の働きによって「自然化」するということだと思う
対称性無意識のイメージ
*分類上ちがうものの間に深い共通性のあることを見出す
*表と裏、内部と外部の区別や向きを持たない高次元の多様体
〈一〉の -
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#講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 神の発明
スピリットという概念を用いて、キリスト教の資本主義的性格と弊害について講義した本
スピリットの意味を「人間の心の中」と捉えた。当初のスピリットは「超越性」や思考外に導く能力を持っていたが、神(ゴッド)の出現により、スピリットが物質化し、現在は その能力を失っているとのこと
王と国家の発生により、高い対称性を保つスピリット世界が解体し、低い対称性の「神の世界」が出現し、多神教な宇宙が形成される、という流れ
さらに、モーセ思想やトーラス型の宗教的思考(一神教の神(ゴッド)だけがみたすことができる)により、多神教が一神教に作 -
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#講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 熊から王へ
対称性社会を破壊して、野蛮な国家に至った人間の思考の変化を論じた講義録。神話世界へのノスタルジーや人間の思考変化を批判したのではなく、現代国家の野蛮性を明らかにしたいのだと思う
超越的な存在(=人食い)が、熊(自然)から 王に変化したことにより 国家が生まれ、その国家が 野蛮(=人間の思い上がり)と結びついているという論考
「対称性社会に危険を導いたのは、あまりによく切れる鋭利な剣」から考えると、「よく切れる剣」が 人間の思考を変え、自然や動物を軽視し、自らを超越への野心に導いたという意味に捉えた
メインテー -
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講談社選書メチエ 中沢新一 カイエソバージュ 人類最古の哲学
「シンデレラ」をテキストとした神話学講義録
神話とは、人間の考え出した哲学であり、現実の矛盾を思考的に解決する具体的なもの。宗教の抽象性と距離を置いている
神話において、人間はバランスや対称性が欠落した弱い存在。人間のあるべき姿は、自然や文化の一定の距離を保つことであり、神話により対称性を取り戻し、一定の距離を保ちつつ共生を探り出すという論調
神話とは
*人間が最初に考え出した最古の哲学である
*「感覚の論理」を駆使して、宇宙の中で人間の生の意味を語る
*神話は、現実と幻想のあいだにたって 二つを仲介する
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〜というようなことが言えるんじゃないかな。みたいな本。柳田国男だとか荒俣宏、澁澤龍彦の仕事に近い。アカデミックではなくセンスで書いてある。様々な事実を踏まえて感性で融合させている。中沢新一氏が博学で勉強熱心だと認めた上で読み方を間違えなければ面白い読み物。こういう風に歴史を眺めるのは素敵なことではある。歴史の事実の話と言われると疑問符が沢山つく。が、このような試み、読み、知的統合、考察といったものは失われつつある感性の賜物だとも思う。大阪が違って見えてくるという意味では面白い。事実と感性の比重が通常と違うことを注意して読めば面白いと言える。
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私たちが考える「意識」よりずっと高次元にある、深遠で微妙な「意識」。その状態に自分を持って行くことができれば、日常の「現実」とは全く異なる高次の「現実」を体験することになるという(いわゆるトランス状態)。
イスラーム神秘主義やヒンドゥー教の本、あるいは心理学の本などを読んでいると、しばしばこのような境地について語られるのに出くわす。そういう神秘的な心の状態について、とても興味はあるものの、やはり自分とは遠い世界の話のように思ってきた。
しかし、自らチベットで修行をした経験のある中沢氏の描くそれは、圧倒的な臨場感と迫力に満ちていて、説得力がある。とはいえ、私の想像力をはるかに超えたもので、そ -
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大昔にニューアカなどといわれていたときに何冊か読んだことのある中沢新一であるが、最近どうしているのかな、とふと思い、本を検索してみれば、すごくご活躍のご様子。
ということで、ここ数年の著書で、評判のようである本書を読んでみる。
講義録であるため、すごく分かりやすいし、講演録とは違って、一つのテーマをさまざまな角度から丁寧に論じていて、面白い。こういうスタイルの本は、もっとあっても良いと思う。
内容的には、文化人類学入門というか、神話学入門というところかな。シンデレラやかぐや姫など、だれでも知っている話をもとに、その物語の様々な国のヴァージョンを比較していくことで、神話の構造、そして -
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カイエ・ソバージュも後半戦である。定常社会(中沢氏の言葉では対称性社会)、国家の誕生、資本主義の誕生と進んできた話は、一神教の誕生となる。
中沢氏の専門の宗教の話で、講義はいきなり宗教儀式でのトリップの話から始まる。そこから、現世人類の脳の話に展開しつつ、宗教論へ。
さまざまなスピリットから、一段高いところにあるスピリットがでてきて、それが神に移行していく。その過程で、対称性の破れが生じて、トポロジカルな転換が生じ、メビウス縫合型とトーラス型の神が出現する。そうだ。
とまあ、物理学とか、トポロジーの喩えを使った説明が分かりやすいかどうかは別として、その主張は、なるほど感は高い。とい -
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中沢新一による「カイエ・ソバージュ」、最初の一冊。文化人類学の基礎である神話研究のレポート。公演を書籍化したものなので、語り口調で非常に読みやすかった。純粋な理論的立場から考えると一見トンデモ理論に見えてしまう神話研究ですが、人間の潜在意識の糸を手繰り寄せながら、人間と文化を紡ぎ出そうとしています。理性を絶対視した啓蒙主義の限界から、人間の思考の無意識の側面を理論家していったものが文化人類学であり、現在の社会学の基礎にもなっている。こういうものは人間の活動の上澄なのか、骨組みなのかと考えてしまう。完全にしっくり来ているわけではないが、知ることの必要性は感じる。
17.3.24