中沢新一のレビュー一覧

  • 日本の大転換

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    東日本大震災後に著された、社会基盤であるエネルギーと資本主義の関係性、日本の社会の在り方についての本。原子力発電への依存度を低減させる必要があるが、そのためには日本社会・日本文明のあり方も根底から見直さなければならない、という提言。
    甚大な被害を(特に原発事故により)被った日本だからこそ、新たな世界をリードできる。キリスト教などの一神教社会ではなく、仏教徒神道が共存する多神教の日本だからこそ新たな道を見出せる。

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    2019年03月17日
  • 大阪アースダイバー

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    昔の職場近辺の話が盛りだくさん。へーとかほーとか言いなが一気に読んでしまった。大阪のディープさは古代から脈々と受け継がれている。

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    2019年03月10日
  • 俳句の海に潜る

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    俳句は反人間中心主義で生死の境界が曖昧になるアニミズムを励起し脳内の古代人的思考回路を回復させると語る。中沢新一は後期ハイデガーに生物学を配合したような説を文学の皮を被せて唱えていてハマると面白い。俵万智はダメ出しされてる。そら豆=クリトリス説など独自の思いつきは流石。

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    2019年01月24日
  • 熊を夢見る

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    「虎山に入る」の方が面白い。日本に関するエッセイが多数。寺山修司や俳句から古代人の思考を辿る。人間と動物の差がなくなる世界を描いているがこれって死の世界では?

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    2019年01月20日
  • アースダイバー 東京の聖地

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    築地市場と明治神宮。人工的に作り出された場所でありながら(前者は埋立地、後者は練兵場の跡地に植林)、「そこにほかのどんな場所にもまして、日本人の伝統的思考が凝縮されて表現されている」(序文より)、と著者は主張する。

    海の民は、古より天皇家に海産物を届けるという役割を担って来た。その流れを汲む魚河岸の気風は、関東大震災を機に日本橋から移転した築地においても受け継がれた。戦前建築の代表作ともいうべきカーブを描いた建屋の中で味の目利きとしての仲買人が立ち回るさまは、「制御された混沌(Controlled chaos)」と外国の人類学者に言わしめた。豊洲は幹線道路によって敷地を4つに分断し、この類ま

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    2019年01月01日
  • 大阪アースダイバー

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    大阪は南北を貫く軸に、太陽が通る「東西」の軸をメインにした場所であった。

    ナニワでは信用に対する信仰に支えられた商人たちが活躍し、「有縁社会の中の無縁」を体現しており、ミトコンドリアのように大阪に活気を与えていた。

    四天王寺には聖徳太子伝説が息づき、敗者をも退けない「和」という思想がみられた。

    ミナミは胎蔵界曼荼羅を表している。
    無産者のためのあいりん地区は「アンフラマンス(超薄い)」世界で、静の向こうの師が透けて見える。
    そこでは風俗と共にお笑いが生み出された。

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    2018年12月22日
  • 対称性人類学 カイエ・ソバージュ(5)

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    #講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 対称性人類学

    まとめと結論の最終巻。他の巻と比べて読みやすい。この巻 読めば十分な気がする


    一神教、国家、資本主義が非対称性という点において、同型の形而上学として全体化し、思考が自分の根源の場所を見失ったことを論証


    著者の主張は、無意識を人間の「心」の本質とする 対称性人類学の思考実験のなかで、世界を非対称的な形而上学から対称性無意識の働きによって「自然化」するということだと思う


    対称性無意識のイメージ
    *分類上ちがうものの間に深い共通性のあることを見出す
    *表と裏、内部と外部の区別や向きを持たない高次元の多様体


    〈一〉の

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    2018年10月19日
  • 神の発明 カイエ・ソバージュ(4)

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    #講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 神の発明

    スピリットという概念を用いて、キリスト教の資本主義的性格と弊害について講義した本


    スピリットの意味を「人間の心の中」と捉えた。当初のスピリットは「超越性」や思考外に導く能力を持っていたが、神(ゴッド)の出現により、スピリットが物質化し、現在は その能力を失っているとのこと


    王と国家の発生により、高い対称性を保つスピリット世界が解体し、低い対称性の「神の世界」が出現し、多神教な宇宙が形成される、という流れ

    さらに、モーセ思想やトーラス型の宗教的思考(一神教の神(ゴッド)だけがみたすことができる)により、多神教が一神教に作

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    2019年11月05日
  • 熊から王へ カイエ・ソバージュ(2)

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    #講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 熊から王へ


    対称性社会を破壊して、野蛮な国家に至った人間の思考の変化を論じた講義録。神話世界へのノスタルジーや人間の思考変化を批判したのではなく、現代国家の野蛮性を明らかにしたいのだと思う


    超越的な存在(=人食い)が、熊(自然)から 王に変化したことにより 国家が生まれ、その国家が 野蛮(=人間の思い上がり)と結びついているという論考


    「対称性社会に危険を導いたのは、あまりによく切れる鋭利な剣」から考えると、「よく切れる剣」が 人間の思考を変え、自然や動物を軽視し、自らを超越への野心に導いたという意味に捉えた


    メインテー

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    2018年07月07日
  • 人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1)

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    講談社選書メチエ 中沢新一 カイエソバージュ 人類最古の哲学 


    「シンデレラ」をテキストとした神話学講義録


    神話とは、人間の考え出した哲学であり、現実の矛盾を思考的に解決する具体的なもの。宗教の抽象性と距離を置いている


    神話において、人間はバランスや対称性が欠落した弱い存在。人間のあるべき姿は、自然や文化の一定の距離を保つことであり、神話により対称性を取り戻し、一定の距離を保ちつつ共生を探り出すという論調


    神話とは
    *人間が最初に考え出した最古の哲学である
    *「感覚の論理」を駆使して、宇宙の中で人間の生の意味を語る
    *神話は、現実と幻想のあいだにたって 二つを仲介する

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    2018年07月07日
  • チベットのモーツァルト

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    意識の深部を 著者と一緒に探検しているような本。映画「マトリックス」のように 現実の多層性を感じながら、ミクロの世界で 意識の深部には何があるのか探検している。宇宙のような無限性も感じる

    「極楽論」の章は、生存と非生存の間(あわい)にある 無限の 天国、浄土を 横断している。点としての 天使、極楽浄土の音楽を感じながら

    「病のゼロロジック」以後は 本のテーマから少し外れるが、聴きなれない哲学用語も少なく 読みやすいし、面白い

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    2018年07月07日
  • 大阪アースダイバー

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    〜というようなことが言えるんじゃないかな。みたいな本。柳田国男だとか荒俣宏、澁澤龍彦の仕事に近い。アカデミックではなくセンスで書いてある。様々な事実を踏まえて感性で融合させている。中沢新一氏が博学で勉強熱心だと認めた上で読み方を間違えなければ面白い読み物。こういう風に歴史を眺めるのは素敵なことではある。歴史の事実の話と言われると疑問符が沢山つく。が、このような試み、読み、知的統合、考察といったものは失われつつある感性の賜物だとも思う。大阪が違って見えてくるという意味では面白い。事実と感性の比重が通常と違うことを注意して読めば面白いと言える。

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    2017年12月18日
  • チベットのモーツァルト

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    私たちが考える「意識」よりずっと高次元にある、深遠で微妙な「意識」。その状態に自分を持って行くことができれば、日常の「現実」とは全く異なる高次の「現実」を体験することになるという(いわゆるトランス状態)。

    イスラーム神秘主義やヒンドゥー教の本、あるいは心理学の本などを読んでいると、しばしばこのような境地について語られるのに出くわす。そういう神秘的な心の状態について、とても興味はあるものの、やはり自分とは遠い世界の話のように思ってきた。

    しかし、自らチベットで修行をした経験のある中沢氏の描くそれは、圧倒的な臨場感と迫力に満ちていて、説得力がある。とはいえ、私の想像力をはるかに超えたもので、そ

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    2017年10月05日
  • 俳句の海に潜る

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    兜太は肌にあわない。だからほとんど読んでいない。中沢新一に私淑しています。そういうとらえ方があるのか、と納得させる論法、「いま、兜太は」でも読んでみるか、蜂飼耳が読みたいし。 

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    2017年05月25日
  • 人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1)

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    大昔にニューアカなどといわれていたときに何冊か読んだことのある中沢新一であるが、最近どうしているのかな、とふと思い、本を検索してみれば、すごくご活躍のご様子。

    ということで、ここ数年の著書で、評判のようである本書を読んでみる。

    講義録であるため、すごく分かりやすいし、講演録とは違って、一つのテーマをさまざまな角度から丁寧に論じていて、面白い。こういうスタイルの本は、もっとあっても良いと思う。

    内容的には、文化人類学入門というか、神話学入門というところかな。シンデレラやかぐや姫など、だれでも知っている話をもとに、その物語の様々な国のヴァージョンを比較していくことで、神話の構造、そして

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    2017年05月02日
  • 神の発明 カイエ・ソバージュ(4)

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    カイエ・ソバージュも後半戦である。定常社会(中沢氏の言葉では対称性社会)、国家の誕生、資本主義の誕生と進んできた話は、一神教の誕生となる。

    中沢氏の専門の宗教の話で、講義はいきなり宗教儀式でのトリップの話から始まる。そこから、現世人類の脳の話に展開しつつ、宗教論へ。

    さまざまなスピリットから、一段高いところにあるスピリットがでてきて、それが神に移行していく。その過程で、対称性の破れが生じて、トポロジカルな転換が生じ、メビウス縫合型とトーラス型の神が出現する。そうだ。

    とまあ、物理学とか、トポロジーの喩えを使った説明が分かりやすいかどうかは別として、その主張は、なるほど感は高い。とい

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    2017年05月02日
  • 人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1)

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    中沢新一による「カイエ・ソバージュ」、最初の一冊。文化人類学の基礎である神話研究のレポート。公演を書籍化したものなので、語り口調で非常に読みやすかった。純粋な理論的立場から考えると一見トンデモ理論に見えてしまう神話研究ですが、人間の潜在意識の糸を手繰り寄せながら、人間と文化を紡ぎ出そうとしています。理性を絶対視した啓蒙主義の限界から、人間の思考の無意識の側面を理論家していったものが文化人類学であり、現在の社会学の基礎にもなっている。こういうものは人間の活動の上澄なのか、骨組みなのかと考えてしまう。完全にしっくり来ているわけではないが、知ることの必要性は感じる。

    17.3.24

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    2017年03月24日
  • 熊楠の星の時間

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    南方熊楠の思想を西洋の碩学らとの対比で考察した本だが,難しい.第1章では土宜法竜,明恵上人,ラカンらとの華厳経の議論,第3章ではジョイスのフィネガンズ・ウェイク,第4章ではフィリップ.デスコラ,第5章ではレイチェル・カールソンやレヴィ=ストロースが登場し,熊楠の思想との接点が考察されている.第2章は1906年に始まった神社合祀の話で比較的楽に読めた.明治政府は宗教的に酷いことをやってきたのが実感できた.

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    2017年02月17日
  • 神の発明 カイエ・ソバージュ(4)

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    「客観的な現実などというものはなく、お互いの会話を通じて共通の認識をつくることができる」という趣旨のことが書いてあり、まったくその通りだと思いました。

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    2016年05月08日
  • 大阪アースダイバー

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    タイムマシンに乗って数千年前から数百年前の大阪に行ってドローンから空撮した映像を見ている気分になる本。アースダイバーというよりバードビューアーか。学問的な裏付けがあるかどうかはともかく、人間の生活・移動の観点から大局的に分析して推論を組み立てていて、とても面白い。

    この本を読み始めたことで、この週末に生駒山と摩耶山の両方に登り、大阪平野を東西それぞれから眺める機会を作れた。

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    2016年04月04日