中沢新一のレビュー一覧
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ネタバレ二項対立というものが持つ胡散臭さがどうにも気に食わんくて、
「この世」と「あの世」の間に「その世」とかを導入したらどうか、
なぞと考えていたんだけれど、
この本を読んでなんとなく見えてきたような気がする。
(気がするだけのような気もひしひしと感じはする)
境界が発生する前の渾沌を保つ。
天使が男女の両方であり同時に両方でないように。
けれども、言葉はなにもかもを分節してしまう。
だからたぶん言葉が概念を創る手前で留まる、
あるいは意味が生成される手前で横すべりし続けることが必要になる。
それは本書でいうところの「意味の微分=差異化」ってこと。
「点」という存在しない空間(0次元)に居座るって -
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「人類最古の哲学」とは神話である。神話は感覚の論理を駆使することで、宇宙における人間の生の意味を見出そうとする始祖の創造的活動であり、ゆえに最古の哲学だ。
神話の臨界点とその役割は、空間や時間の中に散逸して、おおもとのつながりを失ってしまっているように見えるものに、そのつながりを修復し、崩れてしまったバランスを均衡状態に戻すことだ。非対称性となってしまった事象に本来ある対象性を取り戻し、現実の中で両立不能になっている対立項に共生の可能性を論理的に探り出す、決して空想ではない実際的な営みである。
「もはや存在せず、恐らく決して存在しなかったし、これからも多分永久に存在しないであろうが、そ -
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ネタバレ3.11をきっかけに「生き方や考え方を変えようとしている人々は、誰もがエネルゴロジストになれる」と中沢新一は言う。
エネルゴロジストとは、「地球科学と生態学と経済学と産業工学と社会学と哲学とをひとつの結合した、新しい知の形態」としてのエネルゴロジーを理解しようというひとのことであり、そうした視点から「この先」を見ようとするひとのことである。
そこで、まずこの本の前半では、いわゆる石炭や石油といった「化石燃料」と「原子力」との「ちがい」について語られる。太陽の恵みを、あくまでも生態圏の範囲内で長い時間とたくさんの媒介を経てつくられる化石燃料に対して、原子力は、ほんらい太陽圏の活動である核反応 -
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このカイエ・ソバージュの5冊セットは買ってしましました。
(抜き書き)
――神話と哲学
ハイデッガーは近代の技術の本質を明らかにするために、技術というものが、古代ギリシャ人たちのもとでどう考えられていたのか、と問うことからはじめました。テクノロジーの語源は、ギリシャ語の「テクネー」という言葉でしたが、この言葉は「ポイエーシス」という言葉と対比される意味を持っていました。「ポイエーシス」は自然に花が咲き出すように、自然が自分の中に隠している豊かなものを、外に持ち出してくることを言います。そういう「豊かなもの」に出会った人間は、それをまるで自然からの贈り物のように、少しも無理をすることなく -
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冒頭の「序曲」に、この本の主旨はほとんど語り尽くされている。
人類学で有名な「贈与の循環」を「ものを結びつけるエロスの力」と位置づけ、これに対し「「もの」と「ひと」、「人」と「人」の間に距離をつくりだし、分離する」という「売買」のシステムを対置させる。
後者の市場の論理は、網野善彦さん(中沢新一氏の「おじさん」らしい)の、「市場」を「日常の世界での関係の切れた「無縁の場所」」とする指摘(『日本の歴史をよみなおす』)から敷衍されたものだろう。
本書では特に「贈与」をめぐって思考がおしすすめられる。
『カイエ・ソバージュ』の前に書かれたものらしいが、ひとつの考え方として、「思考」の冒険記として、お -
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<ブックレビュー>
人類の歴史や文化、思想といったものを、「神話」という観点から大胆に読み解いていく書。講義形式なので、口語調だし、難解な言い回しもなく、学術書なのにすらすら読める。
著者は、新石器時代に起こった人類の変化を、人類史上最大の革命的な出来事であるとし、それ以来、人類は根本的な変化や進化を迎えていないという(8千~1万年前から人間の脳味噌は根本的に進化していないのだ)。
そして、その新石器時代の大変化が生み出したものこそ、神話的な思考であり、その神話的思考の原型は世界に散らばる様々な神話やおとぎ話の中に見いだせるのだとし、実際に様々なおとぎ話や神話を題材にし、その中に神話的思考を -
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本書は、文化人類学や宗教学をはじめとして様々な分野・領域の成果を利用しながら、「神」という存在が人類の心のなかにどのようにして成立したのかを論じる。
「神(God)」とは、本書ではキリスト教など唯一神を奉ずる宗教における神を指す。しかし原初的なアミニズムやグレート・スピリットなど、また多神教における神的存在やスピリット(精霊)といった存在をどう考えればよいか。人類が当初思い描いた数多くのスピリット集団を説明し、そのなかからグレート・スピリットといわれる特に重要な精霊が分化・発生し「来訪神」と呼ばれる存在になる段階を説く。そして、そこから人類の思考がさらに変化して「高神」と呼ばれる、いわゆる唯 -
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ネタバレ中沢新一カイエ・ソバージュの最終巻。
唱えてきた今のところの対称性人類学のまとめだ。
以下は気になるところをつらつらと。
序章より
・神話に登場する動物は「気まぐれ」では選ばれない。
・ガンギエイが神話に登場するのは、ある側面から見るか他の側面から見るかによって、イエスかノーか一つの答えのみを与えうる動物だから。
いわばその答えを積み重ねることによって非常に難しい問題を解く現代のコンピューターと同じである。
第三章より
・キリスト教と結びついた資本主義が発達した理由は三位一体にある。
・グアラニ族の預言者たちは<一>を恐れていた。
・私たちは<一>の魔力にとりつかれている。
第四 -
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中沢新一のカイエ・ソバージュ 第三巻。
まずは気になったところを羅列。
序章より
・経済の深層部分で「愛」と融合しあっている。
第一章より
・経済の基本であるのは「交換」「贈与」「純粋贈与」。三つは相互に結びついている。ラカンは「ボロメオの結び目」と呼んだ。
・贈与は中間的対象。交換はモノと人格を分離する。
第三章より
・ラスコーなどの壁面に描かれた動物」などは「無からの有の創造」を思考したという、純粋贈与の形を感じていたのではないか。
・洞窟の奥に描かれたパイソンの横に倒れているペニスがエレクトしている男性はシャーマンだったのではないか。いわゆる「ドラックパーティー」に使われていて二 -
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[ 内容 ]
[ 目次 ]
序章 全体性の運動としての「愛」と「経済」
第1章 交換と贈与
第2章 純粋贈与する神
第3章 増殖の秘密
第4章 埋蔵金から聖杯へ
第5章 最後のコルヌコピア
第6章 マルクスの悦楽
第7章 聖霊と資本
終章 荒廃国からの脱出
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考とな -
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[ 内容 ]
内部視覚、瞑想、夢の時間…。
「宗教的思考」の根源はどこにあるのか?精霊が超越を生む。
高神から唯一神へ。
“精神の考古学” が、神々の基本構造をあざやかに解き明かす。
[ 目次 ]
スピリットが明かす神の秘密
脳の森の朝
はじめての「超越」
神にならなかったグレートスピリット
自然史としての神の出現
神々の基本構造(メビウス縫合型;トーラス型)
高神から唯一神へ
心の巨大爬虫類
未来のスピリット
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆ -
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[ 内容 ]
神話、国家、経済、宗教、そして対称性人類学へ。
「圧倒的な非対称」が支配する世界の根源を問う冒険、ここに堂々完結。
抑圧された無意識の「自然」は甦るのか?
「対称性の論理」が切り開く新たな世界とは?
野生の思考としての仏教を媒介に、来るべき形而上学革命への展望を示す。
[ 目次 ]
序章 対称性の方へ
第1章 夢と神話と分裂症
第2章 はじめに無意識ありき
第3章 “一”の魔力
第4章 隠された知恵の系譜
第5章 完成された無意識―仏教(1)
第6章 原初的抑圧の彼方へ―仏教(2)
第7章 ホモサピエンスの幸福
第8章 よみがえる普遍経済学
終章 形而上学革命への道案内
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