中沢新一のレビュー一覧
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過去の蔵書も登録しておこうと思って、風邪気味の三連休に再読。
小泉純一郎元首相の話題があるけど、「ああ、そんな前に出版された本だったんだ(2006年初版)」。
現行の日本国憲法九条のネタだけでなく、宮沢賢治、田中智学、ドンキホーテをはじめとして会話は転がっていくけど、それは会話が転がっていく証拠で、ちょっとヒネた対談本ファンとしては醍醐味を感じる。
しかし、総選挙前のこの時期に読んだからか、太田光に一番共感できたのは、小泉純一郎に関して感じた部分だったりして。
オレには相容れない部分はあるんだよな。
(いい意味での)ペテン師というか、扇動者的な素養は評価するんだけど。まあ、そんな人が一 -
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ネタバレ千日前のジュンク堂で平置きされているのを見て衝動買いしました。「千日前」という土地のパワーがそうさせたのか(笑)、ちょうど知りたかったことが書かれている本でした。
大阪の地勢的な歴史を調べていると「アースダイバー」という言葉に行き当たっていたところなので、本書に巡りあえたのはラッキーでした。
上町台地の南西の端っこ、住吉大社のすぐそばに住まいしている身にとってはこの土地が古来から海の民が住み着いていた由緒正しい土地だと確認できて非常にうれしい。
本書で大阪の二つの軸の交点として中心的役割を与えられている四天王寺という寺が聖徳太子由来の日本最古級の寺であるにも関わらず、こんにちあまりにもカジュ -
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「人類最古の哲学」である神話のお話。
世界のなりたち、その中の自然、人間。それらの本質に関する抽象的思考を哲学とした場合、数万年前からの旧石器時代から哲学はあり、根本的な思考法やその道具立ては変わってない、というカウンターパンチは利いた。
動物や植物など自然界に関する広範な博物学的知識をもってして、その感触や視覚や行動特性などの感覚を項として論理的に世界を構築する「感覚の論理」。
神話を作っているものはこの分子的構造で、現代の自然科学の原子的構造とは違うけれど、作り方自体は同じなのだと。
世界中に拡散するシンデレラの物語を題材に、その分子的項が一部変形すると全体がその論理に沿って変化する仕 -
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原子力と資本主義という「炉」は、本来の生態系から外れているおかしいものだ、もとに戻すのではなく、新しい思考のチャンスだ、と。今この時点では、この本を読んでそれに気づく、という段階ではなく、「踏み絵」ではなくて、踏み絵の先にある階段、それもピッチがあっていないもので、進むのは快適ではないのだけど、という印象です。
新しい気づきや行動のヒントがあるわけではなかったけど、うまく言えないことを、代わりに言ってもらっているような本だなあ、と思う一方で、やはり改めて転換する気のない「炉」の人たちとは交差点が持てないのだろうなあということも。出版されてすぐなら、また違う印象だったのだろう、とも強く思うのです -
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ネタバレ本書は福島原発事故後のエネルギー政策、経済システムへの転換について述べている。エネルギー政策についてはちまたで騒がれている「再生可能エネルギーの推進」論を宗教的な立場から論じているように思えた。
著者は、原子力発電のシステムにおいて、原子炉とその外の生態系とを媒介するインターフェース装置が、きわめて脆弱につくられている、という事実を、「生態系の外部に属する核反応の現象を、無媒介的に生態圏の内部に持ち込んだシステム」として表現している。
Fukushimaの大事故は、人類のエネルゴロジー=エネルギーの存在論(著者の造語:地球科学と生態学と経済学と産業工学と哲学とを一つに結合した、新しい知の -
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噂では知っていたシンデレラのバージョン違いを考察する授業の記録。バージョン違いをいろいろと読んでいくという形式なので、集中力が途切れるtwitter好きにはちょっと読み進めるのが苦難の道。なのですが、授業形式なので続けられる。そしてアクセントに引用に挙げたような素晴らしい文章が。神話とは何か?なぜ神話が問題となるのか?ということを大変シンプルに伝えてくれてやっとわかった気がする。最近自分内部で流行の右脳、左脳議論に基づいて読むわけです。びっこをひくことの神話的意味のところでは、中学の時に読んだ井上ひさしの小説の最後のなぞのせりふ「地面に根が生えろ」
を思い出したり、金閣寺の主人公を思い出したり -
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ネタバレ朝日新聞で紹介されていたのと、爆笑問題の太田光と「アースダイバー」を書いた中沢新一の対談というのが面白そうで読んでみました。
私は珍しい組み合わせだな~とおもったけど、この二人はもともとメル友だったと書いてありました。
内容は、対談に初めと終わりに中沢新一の文章、中程に太田光の文章が入っていました。
九条を中心に憲法改正問題が出てきていますが、タイトルどおり九条についてあれこれを話しています。非常にいろいろな方面の話がひきあいに出されています。対談のためか、引き合いに出されても「○○の××という部分が△△だよね」といったくらいにしか触れられていないので、その○○を知らないと何を言っているか分 -
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お金では買えない価値がある。これこそが、資本主義が見失ってきたものの一つだろう。友達が、「コンビニには愛は売っていない」と嘆いていた一面を思いだした。この文章には、現代の資本主義が見失ってきた、根本が表現されていると思った。人と人が繋がるためには、相手を想いやる心が大切である。しかし、現代の世界で起こっているのは、関係性の「物化」だ。今や親友までもが、自分のステータスの指標にまで成り下がってしまった。いわゆる、親友とは「ブランド」と同じということだ。つまり、親友という存在を持って関係していくという意志ではなく、持って喜んだという完結である。労働者が汗水垂らして生み出すのが、人への想いではなく、
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中沢新一さんが何故か日本の哲学者田邊元について書いた本だが、これ自体がひとつの哲学書であり、中沢さんの本はいつも非常にわかりやすいのに、今回は抜群に読み応えがあり、難解な部分もあった。
田邊元の「種の論理」が、なぜ中沢さんの興味をひいたのだろう、とずっと不思議だったのだが、これを読んだら納得がいった。田邊元「種の論理」(岩波文庫)を読んだときにはイメージしていなかったような解釈が施され、「ああ、そういうことだったのか」という感じだ。
西田幾多郎に関しても章を割いて記述されているが、そのへんがさすがに難しい。田邊元は数学の話題が出てこない限り、さほど難解な印象はないが、西田は最初から最後まで難し -
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中沢新一の文章は、いつもこちらをハッと気づかせてくれるものがある。
哲学や宗教からから物理、エネルギー論、経済学まで非常に切れ味が鋭い。 大震災後3ヶ月間、思索を重ねた彼の著作がこれ。
内容を要約すると、脱原発によるエネルギー転換から、現在の閉塞した資本主義経済の在り方そのものの転換につながり、今こそ日本からその変化を起こしていくべきだという至極真っ当なものなのだが、そこに至る過程がすごい。
エネルギーの存在論=エネルゴロジー という概念を定義する。エネルゴロジーの原則として、太陽のエネルギーが生態圏の内部に取り込まれるためには、石油や石炭のような化石燃料にしても、光合成にしても、