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カイエ・ソバージュここに完結。新たな知の営みへ! 神話、国家、経済、宗教、そして対称性人類学へ。「圧倒的な非対称」が支配する世界の根源を問う冒険、ここに堂々完結。抑圧された無意識の「自然」は甦るのか?「対称性の論理」が切り開く新たな世界とは?野生の思考としての仏教を媒介に、来たるべき形而上学革命への展望を示す。
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Posted by ブクログ
カイエ・ソバージュシリーズの第一巻を買ってから8年も経ってしまったが、ようやくいま、全五巻を読み終えた。8年の間、理解できなくなっては投げ出し、暫くして最初からまた読み直すという繰り返しであったが、不思議と途中で諦めようと思ったことは一度もなかった。 これは私だけの感覚なのだろうか。長い時間、理屈を...続きを読む考え続けていると、だんだん頭が熱くなってくることがないだろうか。私にはそのとき同時に、脳の表面は活発に動いて熱くなっているけれども、脳の奥の方は、実はちっとも動いていないのではないかという実感が残っている。 中沢新一が「流動的知性」だとか「対称性思考」などと定義し、言葉を尽くして説明しようとしているのは、この頭の内側に広がる脳の未開発の部分を動かすには、通常の思考パターンとはまったく別の回路を開く必要があるということだろう。 三次元の世界に住む私たちに、四次元の存在を直感的に把握することができないのと同様に、日頃、脳の表面しか使っていない私たちには、この新たな思考回路をすんなりと理解することは難しい。 中沢新一は『虹の理論』以来ずっと、私たちにこの新たな思考の姿を伝えようと努力してきた。その表現は時に難解なものとなり、論理展開についていけない自分の頭の堅さに辟易することも多々あるけれども、それでもなお諦めずに頭をフル回転させていると、ふと、これまで経験したことのないような頭の動かし方を一瞬だけ実感することがある。そのとき私は、ようやく脳の奥に一筋の光が届くのを感じるのだ。
5冊シリーズ読破。5冊ともタイトルがおしゃれ。今までのまとめって感じです。講義録なので、かなり読みやすい。こういう講義を大学生の時に受けたかったな。 昔の人はまるで違う2つの異なるものをつなげていろんなモノを創り上げて生きていたんだというのがよくわかる。このへんが「対称性」に関係していて、そこらへ...続きを読むんが崩れてきて自然の声を聞けなくなっている(想起する力が乏しくなった?)のが現代社会のよう。 ヤギと人間は夫婦でもあるのだ、だからメスと子供のヤギは狩ってはいけないのだ、とか。現代ではまったくもってぶっ飛んだ考え方だけど、良く考えてみると我々が知る現代よりもっと長い間にそういう考え方がなされていたということを思うと、馬鹿にできる考え方ではないんだと思う。
#講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 対称性人類学 まとめと結論の最終巻。他の巻と比べて読みやすい。この巻 読めば十分な気がする 一神教、国家、資本主義が非対称性という点において、同型の形而上学として全体化し、思考が自分の根源の場所を見失ったことを論証 著者の主張は、無意識...続きを読むを人間の「心」の本質とする 対称性人類学の思考実験のなかで、世界を非対称的な形而上学から対称性無意識の働きによって「自然化」するということだと思う 対称性無意識のイメージ *分類上ちがうものの間に深い共通性のあることを見出す *表と裏、内部と外部の区別や向きを持たない高次元の多様体 〈一〉の原理〜非対称性論理のイメージ *〈一〉の原理が登場すると、それまでの対称性の論理が非対称な関係につくりかえられる *〈一〉の原理が〈多〉の原理によって生きてきた精霊の世界を抑圧することにより、一神教の世界が生まれる 神話の思考は、流動的知性=無意識の働きを直接に反映してつくられたものによって、人間に深い思慮と動物や弱者に対する思いやりのある態度を生み出す〜無意識を通して、人間の「心」は、自然に、宇宙に直接的につながる 無意識は秩序を持った巨大な大陸〜現世人類の「心」の本質をかたちづくる原初的な基体であり、現実世界で通用している論理とは別の論理によって作動している
5冊のシリーズの中で、話口調が少なく一番読みやすかった。 昔、中学校の頃に自分の中に仏教が流行っていたことを思い出した。ちょっと、内容にノスタルジー。 自分は分裂症気質なため、意図的に非対称的な考え方をするように心がけて、秩序を保っているとことがあると思う。 音楽でいえば、 ロック=非対称的 ヒッ...続きを読むプホップ=対照的かな。 それにしても、人間は無意識においても2項対立からは逃れられないのか。
中沢新一さんが大学で行った講義を本にまとめた「カイエ・ソバージュ」シリーズの第5巻、最終巻であり、総集編のような一冊です。 5冊読むのが大変な方はこれだけどうぞ。。。とヨコシマなレビューですみません。 本書は911以後の世界の価値観再構築のためにかかれいますが、311以後、ますます重要になっている...続きを読むと思います。 「レヴィ・ストロースの神話論、クラストルの国家論、マルクスの経済学批判、バタイユの普遍経済学、ラカンによる無意識のトポロジー論、ドゥールズの多様体哲学、などで示された思想の今日的な再構成を試みている」野心的なシリーズです。
[ 内容 ] 神話、国家、経済、宗教、そして対称性人類学へ。 「圧倒的な非対称」が支配する世界の根源を問う冒険、ここに堂々完結。 抑圧された無意識の「自然」は甦るのか? 「対称性の論理」が切り開く新たな世界とは? 野生の思考としての仏教を媒介に、来るべき形而上学革命への展望を示す。 [ 目次 ] ...続きを読む序章 対称性の方へ 第1章 夢と神話と分裂症 第2章 はじめに無意識ありき 第3章 “一”の魔力 第4章 隠された知恵の系譜 第5章 完成された無意識―仏教(1) 第6章 原初的抑圧の彼方へ―仏教(2) 第7章 ホモサピエンスの幸福 第8章 よみがえる普遍経済学 終章 形而上学革命への道案内 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
神話と科学、哲学の意外な繋がり。人間の、思考する、という行為の奥底には一体どのような力が働いているのか、思考の原点を突き詰めています。
これは、かなりすごい本だった。 この本を読むと、何故、神話や夢というのは、冷静な思考からしてみたら不可思議な形をとって表現されることが多いのかということが、とてもよくわかる。 もう、世界の見え方がすっかり変わってしまうぐらいに衝撃的な内容が、当たり前のように整然とまとめられた上で、語られている。 ...続きを読むアリストテレス式の論理学や、コンピュータの演算では、「人間である」と「ヤギである」は同時には満たされることはない。それが、あらゆる論証をおこなう上での、大前提であり決まり事であるけれども、神話の論理というのは、その点を完全に無視して、「AでありBである」を矛盾なく受け入れる。同じ場所に、複数のものが同時に存在するということが可能になっている。 前に「パラレルワールド」という最新宇宙論の本を読んだ時に、「3次元を2次元の中に封じ込めるホログラムと同じ原理で、4次元以上のn次元空間は(n-1)次元の中に圧縮して封じ込めることが出来るという理論が、今では常識として考えられている」というような話しがあったけれど、この「対称性人類学」で説明されている、「対称性を持った神話」の構造というのは、ほとんどまったくそれと同じことを言っているのだと思った。 般若経や華厳経の仏教思想を、宗教ではなく、対称性をベースとして考えぬかれた知恵なのだととらえる見方はとても面白かった。今後、重要性を増すのは、交換にもとづいた経済ではなく、贈与による経済だと語られているけれど、WikipediaやLinuxのようなボランタリーな活動というのは、まさに対称性への揺り戻しが起ころうとしている、一つの顕れである気がする。 【特に面白かった話し】 ・中央アフリカのレレ族では、イニシエーションとしてアリクイを食べる。レレ族はあらゆるものを「右=男=人間性」と「左=女=動物性」の2種類のいずれかの分類に分ける。アリクイ(穿山甲)は、全身が鱗でおおわれた哺乳動物で、鱗は魚を思わせるが、木によじ登り、くるくる体を丸めて木にぶらさがって眠ることもある。形は哺乳類というよりも、卵生のトカゲに似ている。ほかの哺乳類は一度にたくさんの子供を生むが、このアリクイは一度に一匹しか生まない。人間を襲うことも、逃げることもなく、狩人が通り過ぎるのをじっと聖者のように待つ。この動物はレレ族の動物分類学のどこにも所属しない「例外者、怪物」である。この怪物的な動物を、許された少数の男だけが、儀式の中で食べることで、その力を取り込むことをおこなう。(p.124) 現実の世界を支配している思考では、生きていることと死んでいることは同じではありません。生と死のあいだには、およそ考えられる限りでもっとも深刻な非対称性がある、といっても言い過ぎではありません。しかし、神話はそんなにも異質な生と死のあいだにさえ、同質性と対称性を見出そうと努力するのです。(p.31) 同じ場所に複数の存在が同時にいても、ちっともおかしくないような世界のことを、神話は語ろうとしています。ひとつの椅子に私が座ってしまえば、もうそこにあなたが座ることはできません。二人が同時に座れるようにするためには、どうすればいいのでしょう?こういう場合に数学では、どう考えるかというと、二人の人間を四次元とかもっと上の次元をもった空間に埋め込んでしまえばよい、と言うのです。こういうことは、数学者の考え出した知的なお遊びのようにも思えます。ところが、こういう三次元よりも高い次元が実在していることを、神話を語っていた人々はごく当然のこととして認めていたようなのです。(p.39) 無意識は、非対称的な関係をまるで対照的であるかのように扱おうとします。分裂症にしめす一例では、「ジョンはピーターの父である、だからピーターはジョンの父である」というタイプの思考を進めていきます。私たちの生きている「正常な世界」では、息子と父とは非対称的関係の最たるものですが、無意識は三位一体説を唱えるキリスト教神学のように、息子と父の同質性を強く主張してゆずりません。(p.54) 高次元のなりたちをした流動的知性の活動は、たえまなく三次元的な構成をした通常の論理への「翻訳」がおこなわれていく。次元数を下げて、ふつうの思考にも理解のしやすい形へ「翻訳」されるたびに、そこには圧縮や置き換えの現象がおきることになる。夢はそうやって製造される。(p.75) 私が「本物の知恵」と呼んでいるのは、私たち現生人類の「心」の原初の働きについての正確な知識を人々に伝えるために、巧みに案出され、創造されてきた知識の体系のことです。つまり、「心」の基体である流動的知性=対称性無意識の働きがどいうものであるのかを、人々の前に具体的にあらわにしめしてくれる特別な知識の体系を、私は「知恵」と呼ぼうとしているのです。(p.121) 「男たちは、ああやって貴重な知恵を求めて冒険に出ていきます。ところが、女の人たちは村でそれを待つだけです。なにか不公平ではありませんか。女性はそういう知恵に近づくことを許されていないわけですから、差別があるのではないですか」。これにたいして村の女性が笑いながら、こう答えたそうです。「男たちはかわいそうに、あんなにでもしなければ、知恵に近づくことはできないんだよ。ところが、女は自然のままにそれを知っているのさ」。(p.143) 対称性人類学は「抑圧されていない無意識」の働きを、できるだけ純粋な形で取り出してこようとする試みですが、仏教はすでに二千数百年も前から同じ試みに取り組んで、その思想を哲学や共同体の形として、現実世界の中に表現し、実践しようとしてきました。(p.146) 仏教以外の大宗教はどれも、新石器型の野生の思考を否定することによって、新しい文明型の宗教をつくりだしてきました。とくに一神教の場合、野生の思考にたいする否定は徹底していたために、そこに発達した文明はどれも手のつけられないほどに頑固な「非対称性」と特徴をおびることになりました。ところが仏教だけは、そうした大宗教の中にあってただ一人、野生の思考との共通地盤に立つ対称性の思考の可能性を、最後の帰結にまで発達させるという試みに挑戦してきました。(p.163) すべてのものが無「自性」で、それら相互の間には「自性」的差異がないのに、しかもそれらが個々別々であるということは、すべてのものが全体的関連においてのみ存在しているということ。つまり、存在は相互関連性そのものなのです。根源的に無「自性」である一切の事物の存在は、相互関連的でしかあり得ない。(p.191) 死の衝動のことを、本質的な部分に組み込んである経済学は、まだつくられたことがありません。世の中で通用している経済学のほとんどすべてのものが、ただ「生の衝動」のあらわれ方を、手を替え、品を替えて理論的に表現しているにすぎないようにも思えます。そういう経済学を土台から「転倒」するものとして、バタイユの「普遍経済学」は構想されました。その意味でも、対称性人類学と普遍経済学とは仲のよい兄弟なのです。(p.238) 数学の不思議さは、それが無意識の領域の出来事まで記号(シニフィアン)にしてしまうことができるところにあります。しかもその記号は厳密な論理の規則にしたがわなければならない、というのが数学のルールです。それによって、対称性の論理で動いている無意識の領域の出来事が、厳密に非対称的な論理で表現されるという、希有のことがおこるわけです。音楽にもそういうところがあります。また、神話的思考もそれとよく似た動作をおこないます。夢もそうです。「超実数」の考え方には、数学の持つそういう特徴がみごとに発揮されています。(p.252)
全5巻の最終巻。「人間/自然」「精神/肉体」「理性/感情」のような二項対立的思考の機能不全ぶりを突く。 「至高性」は「彼岸」にあるのではない。わたしたちは常にそれにアクセスしている。
圧倒的非対称が支配するこの世界で、対称性が支配する神話や古代宗教について考えることは、とても有意義なことです。
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