中沢新一のレビュー一覧
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本書のキーワードを一つあげるなら「間(あわい)」ということになろうか。存在と非存在の間。男と女の間。発話と沈黙の間。意味形成性の間。──その微妙なあわい、空性をすり抜けて、意識の自然、大いなる歓び、大楽に辿り着かん。……こうして無理矢理要約するとまるで妖しげなカルト宗教書のようだが、本書はジュリア・クリステヴァを軸にポスト構造主義思想とタントラ密教の教えを互いが互いの添え木となるようパラレルに展開しながら、現代社会が繰り出す足枷をすり抜けて真に自由に今を生きる知恵を提示しようと試みる。浅田彰が『構造と力』や『逃走論』で「クラインの壺型社会」からの「スキゾフレニックな」「逃走」という極めて抽象的
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Posted by ブクログ
これは、かなりすごい本だった。
この本を読むと、何故、神話や夢というのは、冷静な思考からしてみたら不可思議な形をとって表現されることが多いのかということが、とてもよくわかる。
もう、世界の見え方がすっかり変わってしまうぐらいに衝撃的な内容が、当たり前のように整然とまとめられた上で、語られている。
アリストテレス式の論理学や、コンピュータの演算では、「人間である」と「ヤギである」は同時には満たされることはない。それが、あらゆる論証をおこなう上での、大前提であり決まり事であるけれども、神話の論理というのは、その点を完全に無視して、「AでありBである」を矛盾なく受け入れる。同じ場所に、複数のものが -
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#講談社選書メチエ #中沢新一 #カイエソバージュ 愛と経済のロゴス
純粋贈与という概念を加えた 贈与論の講義録
贈与論から 経済学の価値増殖に展開し、贈与原理の無効化により資本主義が発生するとした
富の増殖過程でなく、冨の源泉が「神や自然」から離れ、人間が支配する貨幣と商品の市場によることを批判する論調。「緑の資本論」の序論となっている
純粋贈与は、2巻の「熊」と同様に 「神や自然」と同義だと思う。2巻3巻に共通しているのは、権力や富が神や自然から 人間の内側に移っていること
著者のメッセージは
人間が求めるべき「富」は、交換により生まれる貨幣でなく、贈与や純粋贈与から生 -
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ネタバレ初期マルクスの「経哲草稿」には、愛に触れたこんな一節があるとは些か不意をつかれた感がした。
「きみが愛することがあっても、それにこたえる愛をよび起すことがないならば、換言すればきみの愛が愛として、それにこたえる愛を生み出すことがないならば、きみが愛する人間としてのきみの生活表現によって、きみ自身を、愛された人間たらしめることがないならば、きみの愛は無力であり、一つの不幸なのである。」
これはまさしく愛の互酬性、贈与としての愛の言説ではないか、と。自分自身を愛するのではなく、他者を愛することによって、かえって自分自身が愛される人間になるという、愛についてのこの謂いが格別特殊なものでもなく、ごく