【感想・ネタバレ】純粋な自然の贈与のレビュー

あらすじ

モースの贈与論、マルクスの剰余価値説、キルケゴールの愛の思想、レヴィ=ストロースの構造主義を超えて、価値増殖の本質を解き明かす未来の贈与価値論、ここにはじまる! 贈与は結びつけるエロスを、貨幣は分離するロゴスを持つ。すべての富は、物質性をもたない「無」の領域から「有」の世界に贈り物としてやってくる。古式捕鯨の深層構造を探る「すばらしい日本捕鯨」、モースの思想的可能性を再発見する「新贈与論序説」などを収録。贈与の原理を、経済や表現行為の土台に据え直し、近代の思考法と別の世界を切り開く。

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Posted by ブクログ

素晴らしい。

純粋な自然の贈与
という言葉は、重農主義者のものだそうだ。

ここに扱われている全ての短編を貫いて、
この純粋な自然の贈与が溢れている。

大好きな、
カイエソバージュシリーズに連なる思想が、
すでにここにわかりやすく取り出されている。

そして、どの文もとても美しい。

中沢新一の文体、好きなんだなあと改めて思った。

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2010年01月25日

Posted by ブクログ

冒頭の「序曲」に、この本の主旨はほとんど語り尽くされている。
人類学で有名な「贈与の循環」を「ものを結びつけるエロスの力」と位置づけ、これに対し「「もの」と「ひと」、「人」と「人」の間に距離をつくりだし、分離する」という「売買」のシステムを対置させる。
後者の市場の論理は、網野善彦さん(中沢新一氏の「おじさん」らしい)の、「市場」を「日常の世界での関係の切れた「無縁の場所」」とする指摘(『日本の歴史をよみなおす』)から敷衍されたものだろう。
本書では特に「贈与」をめぐって思考がおしすすめられる。
『カイエ・ソバージュ』の前に書かれたものらしいが、ひとつの考え方として、「思考」の冒険記として、おもしろかった。

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2011年05月22日

Posted by ブクログ

贈与の可能性についての考察。

いかにして外部を引き入れ、この世界を活性化させるかというように読んでしまえば
彼の意図とはずれるのだろうけれど。

それでも、安直に「無の領域」などと言ってしまえば
霊的な言葉と戦うことになる。
その戦いは覚悟の上だったとしても、ヒロイックな感傷を携えては駄目だ。

広大な他者の領域、そこに種を播く。
じっくりと真摯に腰を据えて水をやり、耕す。
恩寵ではあるが、奇跡ではない。

それらはあらかじめ無数に存在していた。
常にすでに寄り添っている。亡霊などという言葉に騙されてはならず
数多の未来が今ここに眠っているのである。

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2011年07月17日

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