小川一水のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2010年代。感染症専門医の圭伍は、腐れ縁の同僚・華奈子と共に正体不明の疫病が発生したパラオのリゾート地へ向かう。二人が離島へ到着すると、滞在客は一部を除いて目の周りに大きな黒い斑が浮かび、既に死亡しているか瀕死の状態にあった。圭伍たちは顔に斑を持ちながら生きている少数民族の青年ジョプを発見、保護し、彼がウイルスのキャリアだということを突き止める。半年後、島で唯一の回復者となった日本人の少女・千茅は、ジョプと共に圭伍たちが管理する隔離施設にいた。顔の斑以外は完治していたが、体内のウイルスが他者に感染する可能性は残っているため、隔離され続けているのだった。その間にも疫病は広まり、「冥王斑」と名付けられた印を持つ回復者たちは激しい差別に晒されていく。〈天冥の標〉シリーズ第2作。
10年以上前に「パンデミック下の日本」を予見していた物語としてそりゃー話題になるわ、と納得せざるをえないリアリティ。特に、大衆やメディアが感染者の倫理観を問うて非難するところなど、2年前に散々見た!という気持ちになるし、都市機能が漫然と動き続けていたり、外国の要人が出歩くのを止められなかったり、日本社会の体質を読みすぎている。2010年には"いつか"の悪夢だったものが現実に顕現してしまったのが恐ろしい。けれどこの話を2010年代に設定した著者には、その"いつか"がほど近いこともわかっていたのかもしれない。
Ⅰ巻の舞台は完全なるSF世界だったが、今作は冥王斑の存在以外ほとんどリアリズム小説だ。日本の医師団とWHO、米軍のイニシアチブをめぐる駆け引きや、現地で適当につけられた「疾病P」という名前があれよと言う間にPlutoと紐付けされ、大層な病名になってしまうところなど、案外こういうもんなんだろうなと面白く読んだ。千茅以外の合宿所メンバーや医師たちが最後までジョプをけっして平等に取り扱わないのも日本人だな〜と思った。
ただ、惜しむらくは主人公・圭伍のことを私は好きになれなかった。圭伍は仕事はできるけど出世欲はなく、ほどほどに堕落しているけれども熱意は失っていない、巻き込まれ型の中年男性である。この手のヤレヤレ系キャラが元々苦手なのだが、そこへさらに「冥王斑の患者は生殖行動に影響を及ぼすフェロモンを分泌する」という設定が入ってくる。そのせいで圭伍は10代の患者の乳房に触れてしまい後悔するが、自分の体が発するフェロモンのせいだと理解した患者は彼を許し、恋愛感情を持つという展開になっていく。これが個人的には受け入れがたい。
最後には他の職員によるレイプにまで発展するこの設定に意味を持たせるのなら、世界中の隔離施設内での性犯罪が作中社会でもっと問題になっているべきだと思うし、そうでないならフェロモンではなく本人が自覚して患者の人権を不当に踏み躙る行為としてレイプを描くべきだったと思う。シリーズものなのでフェロモンの設定が今後どう生きてくるかによって意見が変わるかもしれないが、この巻を読む限りでは千茅と圭伍の悲恋を描くために付けたのかと思ってしまう。華奈子がジョプに性的魅力を感じるシーンなどはないので余計に不自然な感じがする。
他にもお清めセックス概念が堂々と語られていたり(挿入後も喋り続けるから笑ったけど)、圭伍と華奈子を聖人にしないためにわざと露悪的に書いているのはわかるけど、その点はあまり好きではなかった。でも小説全体はとても楽しんだし、好きになれないキャラクターも巻が変わって数百年飛べばもういないと思うと許せるものだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めは全く関係のない短編集かと思ったのだが、人間の狭いスケールと時間感覚で測れるものではないと分かった。それほど壮大な宇宙感覚でまとめられた1冊で、神話のような悠久の時が流れている。
人類にとって当たり前に暮らす日々の均衡が崩れたらどうなるか、身体の能力に限界のあることをもどかしく思った。けれど『ギャルナフカの迷宮』や『漂った男』での人間の生きる力の逞しさにも出会い、「それでも生きよう」と思えるような前向きさを貰った。
特に『漂った男』が良かった。
偵察機で他の星で「生命の匂い」のする風を受ける、そういう表現が新鮮に届いた。パラーザの海はまるで羊水のようだと思った。その海に包まれて生きる地獄を、狂いながらも続けるところが特に良い。
最後の数ページで緊張感が一気に増し、なんとか帰還してほしいと思っていた自分に気付いた。 -
Posted by ブクログ
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ゆめを、みさせる、ちから。
ゆめを、とばす、ちから。
まったく主人公ってやつは大変である。
あなたはきっとツイスタだよ。
待望の続巻であり、上下巻の下巻のようでもあるけどそこは小川一水、全20巻の序章が終わったんだとしても驚きません。というかそれくらい続いてほしいなぁ。
1巻の勢いをそのままに、故郷に誘拐されたダイオードの奪還作戦が始まる。形式美みたいな展開だけれど80〜90年代ラノベ的な腰の座った書き口が安心してわくわくさせてくれる。SF考証やら設定展開やらと比べて、主人公たちの心理的なところは描写がさっぱりしてるのも好み。そういうのは近頃のラノベでやってください、である。
ことばと行動、それで読ませる感情のやりとり。そういうことをしてこないから最近の読者はだな…←
はいはいやめますよーだ。
☆4.0。まだまだランナウェイははじまったばかりよ…!
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Posted by ブクログ
「ハイウイング・ストロール」を思い出しました。バチゴンドウのところです。
あれも、ミッションをクリアしてゆくタイプの物語で、ゲームプレイしている感覚になりました。「ツインスター」も、そのためテンポがよくて読みやすい。
タイトルから、表紙の二人が行く先々で大立ち回りを演じて、旅を続けてゆくみたいな珍道中かな、と想像していました。
「ツインスター」はあっていたけど、「サイクロン」と「ランナウェイ」がちょっと違うか。続編があるなら「サイクロン」と「ランナウェイ」で3部作みたいな形になったりするのでしょうか。
終盤で明かされた世界の真実とダイオードの夢が、実現する時が「ランナウェイ」になるはず。
ぶちギレ早口ダイオードが心地よいのは、権威・慣習なんてクソ喰らえ!の心意気があるからで、彼女の過去に根付いているもの。一方で、強気でいないと受け入れられない現実に流されてしまう、という弱さを自覚しているからでもあるのでしょう。
ダイオードの心の危うさを、受け入れくるんであげれるテラの性質はかけがえのないもの。精神的にも物理的にも、つつんであげれます。
反抗心と想像力の厨二病コンビの「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」。
長老会から無理難題押し付けられて、大胆不敵な二人が解決してゆくというアクションものも読んでみたい気がする。アニメ化とかされたら、人気出るんじゃないかな。 -
Posted by ブクログ
壮大なタイムパラドックス、タイムリープSF小説。宇宙規模の戦いの歴史をコンパクトにまとめて居るけれど内容はかなり重め。でも文章は非常にこなれていて非常に読みやすいです。人類を救うために作られたクローン?人造人間?のメッセンジャーと言われる人々が、奮闘して人類を滅亡から救おうとするのですが、敵も味方も時代を超越して戦うので26世紀頃と卑弥呼の時代と紀元前10万年を入り乱れてで壮大極まりありません。
パラレルワールドの何処か一つでも人類が生き残る未来があれば、そこを死守するという人類の大義と、今この時に愛着を持ってしまったメッセンジャーオーヴィルの奮闘が次第に目的がずれて行く所がとても美しい。
結末迄美しい名作です。