小川一水のレビュー一覧
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人類を滅亡させた謎の生命体を滅ぼすべく、特殊な兵士たちが何度も過去へ遡るタイムリープものSF。この手のジャンルではタイムパラドックスにどう説明をつけるかが肝になってくるが、本作では過去に遡った時点で未来に影響を与える行為をすると即座に現世に反映されるシステムを採用しているため(タイムリープ小説の時系列を説明する時の時制のややこしさは異常)過去に遡った兵士たちは、もう二度と自分達の生まれた現世に戻ることはできない。
22世紀初頭や第二次世界大戦期など様々な時代に飛んだ兵士たちは一進一退の攻防を繰り広げるが、最後には敗れてしまいその都度過去の時代に飛んでいく。物語が始まるのはまだ日本に邪馬台国が -
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小惑星セレスの地下シェルターに逃げ込んだ人類のあけぼの。
ここでやっと「メニーメニーシープ」につながりました。彼の地の始まり、そして太陽系の終幕。
次巻から「メニーメニーシープ」の続きになっていくのか?「救世群」が外で何をしているかはわからないけども。「メニーメニーシープ」は西暦2803年。「新世界ハーブC」終了時点は2555年。この語られていない時間で、「咀嚼者」たちは何をしていたのか。
メララの子守唄に込められた心情が、未来への希望になってくれることを願わずにはいられない。
『ちゃぁこいアラート、ちゃぁこいアラート
サソリに遭ったら逃げ込んだおることよ
ぼんだい体とか -
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星雲賞受賞の表題作『アリスマ王のー』ほか、全5篇収録の短編集。
『アリスマ王』は、何もかもを数字で予測しコントロールしようという装置"算廠"が不気味。
はじめ、アリスマ王子は数字に取り憑かれた、「ただの天才」だった。ほかに理解者がいないとあきらめた時に魔物が現れ、王子が狂気の力をふるいはじめるくだり、今まさに私たちの日々もデータとして集められ続けている不気味さに通じるようで。
個人的には、『ゴールデンブレッド』や、『星のみなとのオペレーター』『ろーどそうるず』の方が好み。
異文化間であったり、AIと人間であったりしても、きっと理解しあえる、信頼しあえる…というSFらしい愛と希望と夢がいい。 -
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メニーメニーシープのイサリがフェロシアンで孤立していた理由の根源は、アイネイアとの出会いにあるということか。
救世群が咀嚼者のあの異形の姿になったのはここから。
隠遁先の和歌山で「人間を恨まないで下さい」「無理です」。柊と千茅のやり取り。
青葉や圭伍との関わりが、千茅個人にとっては怨みを抱かない処方だったのだろうけども、冥王斑患者全体にそれが届くはずもなく。
今は無理でも遠い未来では、という願いをこめたであろう言行録も、圧しかかる世間に克ちえず、曲げられてしまう。
救世群の熱狂を疑い、隠された真実を知り、融和への狭い道を見つけたイサリが、どう決断をするのか。
それはPART2を読まないと、 -
購入済み
最終章、だよね?
今回の過去編二章は、以前ならそれぞれ1冊になったのでは?と思わせるが、最終章なので急ぎ足でまとめた感もある。
なかなかメインのストーリーが進まないが、ここまで広がった話がどう収束するのか目が離せない。 -
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「恋人(プロスティテュート)」の起源。
まだ呼び名はラバーズで、そう呼ばれるのはこの先の年月が必要か。メニーメニーシープで彼らのリーダーであった「ラゴス」が誕生した時から、「恋人」たちの歴史が始まったということか。
エランカがラゴスに子供を作ると言ったのは、崩壊を迎えるメニーメニーシープ。
あの一言を手に入れるための長い長い旅路は、キリアン・ゲルトレッド・アウローラ・ラゴスの4人が融合した時に始まりました。
生殖の為のSEX。
目的を失い、手段だけが加速・暴走していく中で、探し求めた「混爾(マージ)」という理。
達した先で手に入れたものは仮初であって、真実には決してとどかない。その煩悶があ -
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この長大な小説は「人間とは何か」を問うてきたんだと思っていたけど…そんな些細なことではなく、「生物とは何か。なぜそれが寿がれるべきか」だったのね!
物語はスペオペすら越えて、数多の形態をとる生命に満ちた宇宙樹のリングとか出てきて、ああもう『エンディミオン』のアウスター・バイオスフィアを思い出し、ロールが恋しくなるのですが、なんとなく収束が見えてきた…かも。
「今このようにあるのが当然だと思っていれば、かけらも気づくことができないが、このようになることができた、なってしまった何億年もの営みは、気が遠くなるほど貴重なものだった。その奇跡を表しているから、生き物が素晴らしいと言うんだな」
だから、人 -
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プラクティスと宇宙海賊とアウレーリア。地球外文明の遺産を巡る三つ巴の争奪戦。
真っ向勝負のスペースオペラ。
ドロテア上での最終決戦で明かされたダダーとミスチフの関係。2巻の冥王斑の曝露が物語の始まりかと思っていたけど、データに生きる彼らの誕生、生存理由が起源であり、伏流水のように地球人類の歴史と進化・未来と共に生きていくのだろうか。
彼らが表舞台に束の間現れたのが、ドロテアでの決闘か。
観察・共生のダダーと、そうでないミスチフ。
「オムニフロアと睦んでしまった」というのはどういうこたなのか?
断章で語られたダダーと羊飼いの接触。メニーメニーシープへの伏線がまた一つ。
断章のナンバリングが