町田そのこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
プロローグがどのような場面であったのか、彼らがどのような関係で、なぜこのようなことになってしまったのか。主人公のみちるが事実に近づき、いろいろなことが一つに繋がっていく流れが読みやすく、ページを繰る手が止められなくなった。
同時に、この事件に関わった人物たちの心が明かされるにつれ、なんとも言えない気持ちにもなった。
その人の特性などによる生きづらさ、家庭環境などによって得られ難かった愛を求める心、無自覚に人を傷つける残酷さなど、おそらく誰しもが持つ弱さや脆さに繋がるところを突きつけられて、胸が苦しくなりながら読み進めるところもあったが、最後はある種の救いも感じられる結末で、読後感はすっきり。
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Posted by ブクログ
前からタイトルが気になっていて、ようやく読むことができた、町田 そのこさんのデビュー作品で、5編の連作短編集。
『52ヘルツのクジラたち』や『宙ごはん』、『星を掬う』同様に心にズキズキと突き刺すような描写が多いけれども、決して嫌な読後感にならないのが、魅力の作家さんです❗️
また『うつくしが丘の不幸の家』のように、少しずつ物語が繋がっていて、読後にはこう繋がっていたんだと、ちょっと驚いてしまうのも魅力のひとつではないでしょうか⁉️
個人的に好きな話しは、『波間に浮かぶイエロー』と『溺れるスイミー』ですが、特に『波間に浮かぶイエロー』は群を抜いてお気に入りの作品です❗️
時々読み返したい -
Posted by ブクログ
めっちゃおもしろかった。今まで読んだ町田そのことテイストがかなり違って、ドキドキハラハラする話だった。
宗教はどの国にもあり、ある程度は必要なものかもしれない。人々は、信仰する対象があるだけで安心するし、その信仰心から決心がついて事がいい方向に進むこともあると思う。日本は無宗教の人が多く、その感覚はあまりないかもしれないけど、助けを求めている人は意外とたくさんいるし、助かるためなら周りが見えなくなってもおかしくない。
古の時代から、友情はきっと大切なものだったし、素敵なものだった。その友情を、歪んだ形でも守り抜きたいと思うほどの思いの強さと、それを今の時代までつなげていくホラー感で、最後ま -
Posted by ブクログ
町田その子さんが『月とアマリリス』や『蛍たちの祈り』でミステリーへ、さらには今回ホラーへと新境地を開拓!
ピンクの可愛らしい表紙や楽しそうなタイトルからまさかのホラーとは想像しにくい。
内容はおぞましいヘビーな物語。
九州のとある田舎町の山の中腹に、NI求会という新興宗教の施設が建設された。
楽園と称されたその敷地には、移住してきた信者たちが住んでおり、選ばれた3人の若者による儀式が行われていた。
時を同じくしてその街では、若者が両目の眼球を取られて奇怪な死を遂げるという事件が勃発していた。
普段ホラー小説を読むことがないため、どうしてもどこかで読んだ漫画のような話に感じてしまう。
祠、儀 -
Posted by ブクログ
何度も泣きそうになりながらあっという間に読み終えた。幼い子供時代から寂しさや不満を自分で解決しなきゃと奮闘する宙ちゃんが健気で愛おしい。佐伯の存在が本当に暖かくて、物語の中で常に希望の光として寄り添ってくれる。最終章は特に読んでいて辛かったけど、考え得る限り最高のエンディングでした。赦してもらおうと謝罪することは暴力になること、日頃から忘れないでいようと思っていることなので、この作品でまた深く刻んでもらった。あと、大切な人を亡くしてしまうと、不在の事実が大きすぎて胸を塞いでしまうけど、その人からもらったたくさんのものを忘れずに自分のこれからの糧にすることも大事だと思い出させてくれました。